「社会事業」が担う次世代の日本

2022.06.12

 日本での障害者人口は、年々増加傾向にあり、令和元年度の内閣府による調査では、障害者は約108万2000人、精神障害者は約392万4000人となりました。国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有しているということになり、この数値は2014年の推計と比べて175万6000人、2018年の統計に比べて26万9000人増加している。その中において、18歳以上の知的障害者の高等教育進学率はわずか0.57で「学ぶ」という選択肢がない状況だ。

 高校卒業後の知的障害者に「学びの場」を提供する株式会社ゆたかカレッジの長谷川社長と、全国でスポーツスクールを展開し、スポーツを通した人間性教育を展開するリーフラス株式会社伊藤社長に、日本に不足する「社会事業」と次世代教育の提言について聞いてみた。

成長期の人間力形成にフォーカスをあてる

長谷川社長からみた伊藤社長とは

 伊藤社長は、スポーツで自己肯定感や協調性、社会性などの非認知能力を育てることをコンセプトとし、まさにゆたかカレッジが目指している心の土台作りやレジリエンスを養う教育と共通してると思い、シナジーを感じたそうです。

伊藤社長からみた長谷川社長とは

 リーフラスでは、パラリンピックアスリート支援をはじめ、身体的な障害を持つ子どもたちへのスポーツ指導には取り組んできましたが、知的障害のある子どもたちの社会的ステージをアップさせるための学校という理念と発想には驚きました。こうした素晴らしい事業に株式会社としてチャレンジされていることに尊敬の念を抱いたそうです。

ゆたかカレッジを設立したきっかけ

 社長の娘が重度の知的障害を持っていて、18歳で養護学校高等部を卒業後、単純作業の福祉作業所で働くという進路しかなかったそうです。その際に妻と相談し、健常者の多くが大学や専門学校で学び、青春を謳歌する時間があるのに対し、知的障害者だけがその機会がないのは理不尽だと話していたのが会社設立のきっかけになったそうです。

知的障害者へのスポーツ指導で連携

リーフラスの場合

 リーフラスでは社会課題を解決するソーシャルビジネスなので、これまでもリクエストに応える形で身体に障害のある子ども達に指導してきました。障害の重さによって集団指導か個別指導かを適切に判断しながら進めていきます。

ゆたかカレッジの場合

 ゆたかカレッジのカリキュラムにもスポーツの授業はあるが、現在は小中学校の教師経験者が担当している。スポーツに特化した専門性はない状況です。リーフラスさんはスポーツの面ではプロフェッショナルなので、スポーツ科目を担当してもらったり、スーパーバイザーとして指導していただけることを本当に感謝しています。

多様性を受け入れるインクルーシブな社会に

 障害者の職場定着も支援しています。離職した場合でもカレッジで学び直せる仕組みを構築しています。5年間はキャリアサポーターが卒業生の現場に出向き、企業側と就労状況を共有するために、89%の定着率を実現しています。残り1割も引っ越しなどのやむを得ない事情によるものであり、企業も学生も安心できる環境を作れており、上場企業も含めて多くの企業に受け入れられています。

これからの展望

 ゆたかカレッジは日本全国にカレッジを展開し、18歳以上の知的障害者が学べる社会にしていきたいことで、リーフラスは、学校の部活動を「スポーツ」に変えていきたいという思いです。