知的障害を持つ学生が学び、自立を目指す福祉型カレッジ「ゆたかカレッジ」とは?

2022.06.09

「大学」に見立てた福祉事業所

 「ゆたかカレッジ」では、修業年限を4年とし、最初の2年間を自立訓練(生活訓練)事業、後半2年間を就労移行支援事業による就労に向けたトレーニングを行っています。障害者総合支援法にも基づいた福祉サービスを活用した学びの場であり、事業所を4年制大学に見立て「福祉型大学」と呼んでいる。余暇活動の費用として月5000円程度かかることもあるそうだが学費は基本的に無料である。

 障害者手帳がなくても、自治体で発行している受給者証があれば利用できる。入学基準は本人の意思と身辺自立。迷惑行為をしないという3点である。この3点の条件が揃えば、基本的に受け入れをしている。

ゆたかカレッジの授業

 1・2年次は2学年合同で90分間の授業が行われ、「一般教養」や「資格・検定」といった社会で生きていくために必要な知識・スキルを学んでいく。全学年共通で「課題研究」の時間が設けられており、学生らは自ら設定したテーマを1年間かけて調査し、論文、パワーポイントにまとめて発表する。自分の伝えたいことを伝えることをテーマに、長期間目標に向かって取り組めるようになるためのものだ。

 授業内容は、学生が就職・自立するために必要なことを学べるように構成されている。指導計画は職員間の話し合いで作り上げる。それらは全カレッジ間でインターネットクラウドで共有されている。職員はその指導案を参考に、受け持ちの学生レベルや特性に合わせて教材を作成している。

学生にマッチしたしごとで定着を促す

 2021年より法定雇用率が2.3%(民間企業)に引き上げられたなかで、特別支援学校高等部を卒業した知的障害者のうち、進学者は0.7%、就職するのは32.9%であった、ゆたかカレッジの卒業生は現在118名で、約72%が一般就労もしくはA型事務所につき、約22%がB型事務所で働いている。一般就労をした卒業生の多くは、特別支援学校卒業時に「一般就労は難しい」と 言われていた。ゆたかカレッジでの4年間の学びを通じて自信や「働きたい」という気持ちを育て就職を実現している。

ゆたかカレッジの卒業後

 ゆたかカレッジの卒業生の離職率は現状11%である。就職後の定着に向けた活動も力を入れており、卒業後5年間は定着支援を行っている。卒業後の初年度前半は毎月職場に訪問し、後半は2ヶ月に1回、1年後からは年に4回と頻度を減らしつつサポートを継続的に行う。離職してもカレッジに来れば、再度就職活動の支援を受けられる。