Essay

エッセイ

 故有って、幼少時から私(GG)と妻(バーバ)との三人での生活が始まり現在に至っています。つまり、私(自他共にGGと称しています)が孫娘の保護者となったわけです。孫が2歳中頃になっても“片言も発しない”、話しかけても“無表情”、しかも“歩かない”ことに加えて“食欲だけは旺盛、有ればあるだけ食べて太るばかり”で、先が全く見通せない真っ暗で長い長~いトンネルの中を、まさに暗中模索する日々を過ごしていました。

 

 ところが、友人を介して保育園や療育指導センターに出会い、適切な保育や療育を受けることにより、徐々に改善の兆しが見えはじめたものですから、小学校は“特別就学措置・条件観察付”ということで通常学級で学ぶことができました。幸いなことに6年間、「いじめ」らしいことを受けることはなかったものの、学習にはまったくついていけず、かといって、先生がプリントなどの別教材を渡すなど特別扱いされることについては“強く拒絶”し、合わせて、同級生との会話や交流がほとんどできず、いつも無表情で暗いい面持ちで過ごしていました。

 

 そこで、中学校は私の強い希望で特別支援学校中学部に入学させることにしました。環境の急激な変化に対応できるだろうかと、私は強い不安を抱いていましたが、特別支援学校は幸いにも心地よい居場所になり、表情が見違えるように明るく笑顔に満ちあふれるようになっていきました。中学部に引き続き高等部も特別支援学校に入学し、一般就労をめざして能力開発センター体験入校など、いくつかの現場実習を積み重ねるなどして学習を深め、県南部障害者就職面接会で二社を受験しましたが不採用になり、その後、能力開発センターを受験しましたが、これまた不合格となりました。

 

 ところがタイムリーなことに、あらたにオープンすることになった“ゆたかカレッジ”に巡り会うことになり受験し、「入学」が許可されました。

 

 “ゆたかカレッジ”「入学」に先立つ説明会などにおいて、長谷川正人学長が話されたことの中で特に強く印象づけられたことは、①健常者には専門学校、短大、大学などへ進学する道があるように、特別支援学校高等部の卒業生にも、それらに相当する学習の場が保障されるべきである。②一般就労しても中途で挫折した場合、学習期間が長いほど立ち直りがはやい。③余暇を有効に活用すること、つまり、楽しみ方を知っておかないと働くことは長続きしない、という三つのことで、どれもが“ナルホド!!”と納得させられるものでした。

 
 
また、“ゆたかカレッジ”は、制度上は「自立訓練(生活訓練)」の場ではありますが、持別支援学校高等部卒業後の学びの場であり、自立していくための「金銭管理」「食生活」「調理実習」「余暇活動」「職場体験」など、特別支援学校高等部の延長(支援学校の「大学」)という位置づけで 4年間の教育課程が組まれており、その内容は1・2年生が教養課程、3・4年生が専門課程となっているということです。

 
 さらに、「大学」と位遣づけてのことで、自分でテーマを見つけて調べ学習の発表の場としての「研究論文染表会」や、近隣の大学との交流なども企画され、社会性を学ぶ機会を作って頂いています。

 

 ところで、ゆたかカレッジは福祉サービス事業所なので学校法人ではありませんが、崇高な精神で、内部的には特別支援学校の「大学」という位置づけで、「入所」は「入学」と称し、また、「利用者」であるが「学生」と呼び、「支援員」であるが「支援教員」と呼ぶなど、本人たちには「大学生」という自覚を持つように指導されています。

 

 ちなみに、こんなことがありました。心臓疾患(肺動脈弁狭窄症)手術のため入院中に、本人が見るからに幼い容貌なので看護師さんから「中学生ですか?」と尋ねられたとき、「いいえ、大学生です」と誇らしげに“即答!”したので、「なるほど!」と実感させられた次第です。

 

 自立をめざして「学習」している内容について、これまでに学んだことなどを貝体的に紹介し、振り返ってみます。

 

1)「金銭管理」について

 

 学習の一環として小遣い帳の付け方や間食の管理・指導までも目的意識的になされており、徐々にではあるが、自覚の高まりが感じられます。現在は私が毎週月曜日に300円与えていますが、それらも含めて収人・支出の記録指導をしていただいています。これまで、レシートと記帳内容とが合わなかったことから、使途の「問題点」が発覚し、指導に活かされたことが何度かありました。しかしながら、まだまだ私の不安感は拭える状況に到達していません。ついでながら、お金(数)の量的な認識のレベルで言えば、例えば先日、「230円の半分はいくらか」と尋ねてみたが、「115円である」ことが出てこず、バーバ(妻)が、「200円の半分は100円。30円の半分は15円。だから、230円の半分は115円でしょう。」と説明していたが、今ひとつ釈然としない表情をしていました。以前、大金の管理で大失敗をしました(短期間での買い食い)が、最近、今後の障害年金受給を想定して預金通帳の作り方を学習したそうで、その成果として、今回の成人祝いにかかわる大金の扱いについては先生の巧みな指導を受け入れて“マイ通帳”に入金したとのことです。お金(特に大金の場合)への執着が強く、これまで何回か難儀したことを思えば、“ゆたかカレッジの先生様様!”と深く感謝しているものです。

 

2)「食生活」について

 

 隠れ食い、買い食いなどの問題を抱えているので、間食のあり方についても学び、徐々に意識は高まっているように見受けます。ただ、自宅からの「登下校」の途中での買い食いや帰宅した際の食にかかわる自制や自己管理については、まだまだ課題を抱えているようです。

 

3)「知的学習」について

 

 一般就労など自立に向けては、生活面だけでなく、知的にもまだまだ「学習」を継続していくことが必要だと思います。このことにかかわっても、調べ学習発表の場としての「研究論文発表会」が設定され、昨年度は心臓手術入院のことにかかわり「生まれ変わった自分」というテーマで発表することができましたが、今年度は「CMについて」というテーマで発表することになっています。また、「ワープロ検定」、「漢字検定」、「数学(算)検定」などにも取り組んでいますが、これまでに「ワープロスビード検定5級」、「漢字検定7級(小学4年程度)」、「数学(算数)検定10級(小学2年程度)」にそれぞれ合格し、新たに「電卓検定」と合わせて、次のレベルへの挑戦を目指しています。

 

4)「特別講座」について

 

 特別に外部講師に指導していただいた講座は以下のようなもので、それぞれが味のある経験になったようです。

 
 ボウリング、太極拳、釣り、筆ペンアート、みそ作り

 

5)「余暇活動」について

 

 これまでに以下のような活動をし、余暇の過ごし方について体験しながら社会性を身につける上で大きなブラスになっています。

 

 国体開会式参加、国体ボランティア参加、研究論文発表会、マラソン大会、オリエン合宿(少年自然の家)、キャンプ(少年自然の家)、ボウリング、カラオケ、たこ焼きパーティー、登山、プール、初詣、バザー販売(フライドポテト、たこ焼きなど)、花見、川遊び、ドライブ&図再館。

 

 “「学生」こそが主人公”という理念が端々に感じられます。とりわけ、驚いたことは入学式の進行でした。先輩がいない第1期生初めての「入学式」、だから前例がない。式次第の作成•掲示から当日の司会・進行までも学生たちが自分たちで話し合って分担したとのこと。当日は、保護者・来賓が室内にて着席。外に並んだ新入生のひとりが「新入生入場」と号令を発したものですから、思わず大声を出して笑いそうになったものです。学生(といっても全員が新入生)入場後の司会・進行も同様。また、終了後の懇談会(茶話会)もゲームを含めてすべて学生が取り仕切り、先生方は一切口出しをされませんでした。私は、入学式の有様に“ゆたかカレッジ”の日々の学習や諸活動のあり方が読み取れると感慨深く思ったものです。“「学生」こそが主人公”という基本理念はもとより、個々の学生の実態に応じたきめこまやかな指導がなされているのも“ゆたかカレッジ”ならではのことだと思います。

 

 私・GGにかかわることに限定して言えば、金銭の管理や食にかかわる指導、はたまた、清潔・衛生観念の釀成ということにかかわっては、先生方に大変お世話になっています。家庭では言葉のやりとりでは、受け入れ側の限界があり大変離儀することが度々ありましたが、先生方の適切な指導・支援があったればこそと、そのたびに深く感謝しありがたく思ってきました。

 

 人生は長い。学ぶ期間は1年でも長い方がよい。ハンディを抱えていればなおさらのことです。これまでの“ゆたかカレッジ”での学びを通して、強く実感しています。孫娘は現在2年目終了間近ですが、今後も継続し4年間の全課程の修了を目指しています。

 

 今後、“ゆたかカレッジ”の仲間が増え、お互いの成長を喜び合えることを願っています。多くの「新入生」の「入学」を首を長くして心待ちしています。

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