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自閉症等激しい行動障害のある 知的障害者ケアホームに関する研究

2011年度 日本福祉大学大学院社会福祉学研究科 社会福祉学専攻 修士課程(通信教育)

序章 研究の目的と方法

第1節 問題の所在と研究の必要 重

ループホーム及び福祉ホームについては,「重度障害者などのニーズに応じて利用できるよう量的・質的充実に努める」としている。すなわち,国は,今後の障害者福祉施策の基本的方向性として,従来の大規模収容施設中心の福祉から,小規模生活ホーム中心の福祉へと,軸足をシフトしてきているのである。このような国の方向性をふまえながら,障害者自立支援法に規定された福祉サービス事業所の枠組みを鑑みると,これからの重度知的障害者,とりわけ強度行動障害のある方の暮らしの場として考えられる事業所形態としては,「共同生活介護事業所(ケアホーム)」以外にないように思う。
しかしながら,筆者の地元福岡県内においても,激しい行動障害者を積極的に受け入れているケアホームは皆無に等しいのが実情である。その背景には,このような行動上の障 害をもつ人たちの暮らしの場においては 多くの場合マンツーマン対応が求められるとと もに 周囲の他者に危害が加わることが多い。 また,大 声や 乱暴, 物壊し等パニック行動 が発生したら近隣地域住民からの苦情や立ち退き要求に遭遇することも懸念される 。 そ れ ら のため に,ケアホームを運営する事業者 は 様々なリスク回避を優先 し行動障害をもつ 人の 受け入れを拒否することが多い。そのため 激しい行動障害のある人たちの暮らしの 場は その多くが 在宅生活か精神科病院への入院 あるいは自宅と病院入院との往復を 余儀なくされている 状況がある。 そうした中,彼ら を在宅で抱える 家族 は まさに家庭崩 壊の危機と隣り合わせの生活を営んでいる のである 。したがって ,激しい 行動障害 をもつ 人 は おそら く他のどのような障害者よりも社会における福祉資源の活用を必要とされて いる人たちであるにもかかわらず 実際には 逆に それが最も困難な状況にある人たち である ともいえるだろう。このことは極めて大きな社会的な問題といえるのではないだろ うか。
そうした状況の中,本テーマの研究を通じて,居住環境における様々な工夫や配慮,環境設定により事業所側の受け入れのリスクを最大限減らし,彼らを安心して受け入れることが可能となるような方法論を明らかにすることは,今後の知的障害関係事業所における強度行動障害者の受け入れの促進に寄与することにつながるのではないかと考える。また,このことは,何より社会資源を活用できず,在宅を余儀なくされている強度行動障害者自身とそうした人たちを抱える家族にとって大きな希望となり生きていく力となっていくのではないかと思う。 2010 年 5 月, 福岡市 は 市内に所在する 70 ヶ所の知的障害者 福祉サービス 事業所を対象 に 「強度行動障害者支援に関するアンケートの集計結果」 5 回答数 51 ヶ所 回答割合 72 9 を発表した。それ によると「現在 激しい自傷や他傷 パニック こ だわり等 生 活環境に極めて特異な不適応行動を頻回・強度に示し 日常の生活に困難を生じていると 認められる利用者 以下 本アンケート上の「強度行動障害者」とします。 がいますか」 5 福岡市保健福祉局 障害 者施設支援課長 2010 8 3 「強度行動障害者(児)支援に関するアンケート結果について」 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 5 という問いに という問いに,,「いる」と回答した施設が「いる」と回答した施設が2929ヶ所ヶ所,,「いない」と回答した施設が「いない」と回答した施設が2222ヶ所とヶ所という結果となっており,市内全知的障害者福祉サービスいう結果となっており,市内全知的障害者福祉サービス事業所の事業所の5656..99%において強度行動%において強度行動障害者がいることが判明した。障害者がいることが判明した。またまた,,この調査においてこの調査において,,「「((他の知的障害者に対する支援他の知的障害者に対する支援と相対的にと相対的に))強度行動障害者に対しては強度行動障害者に対しては,,高度な支援技術高度な支援技術,,専門的知識が必要と考えますか。」専門的知識が必要と考えますか。」という問いに対してという問いに対して,,回答数回答数5050ヶ所中ヶ所中,,「かなり高度な支援技術「かなり高度な支援技術,,専門的知識を要すると専門的知識を要すると考える」と回答した者が考える」と回答した者が1414ヶ所ヶ所,,「高度な支援技術「高度な支援技術,,専門的知識を要すると考える」と回専門的知識を要すると考える」と回答した者が答した者が2020ヶ所ヶ所,,「相応の支援技術「相応の支援技術,,専門的知識を要すると考える」と回答した者が専門的知識を要すると考える」と回答した者が1616ヶ所ヶ所,,「それほど高度な支援技術「それほど高度な支援技術,,専門的知識は要しないと考える」と回答した者が専門的知識は要しないと考える」と回答した者が00ヶヶ所という結果が出ている。所という結果が出ている。
このことは,もはや,知的障害者福祉サービス このことは,もはや,知的障害者福祉サービス事業所において事業所において,,強度行動障害者支援強度行動障害者支援方方法法の習得は必要不可欠の課題となっていることを表しの習得は必要不可欠の課題となっていることを表してている。しかしながら,そうした支いる。しかしながら,そうした支援方法についての実践的研究は,未だ緒に就いたばかりであり,明確な理論化がなされて援方法についての実践的研究は,未だ緒に就いたばかりであり,明確な理論化がなされている状況ではない。したがって,強度行動障害者支援において,現場は試行錯誤の真っ直いる状況ではない。したがって,強度行動障害者支援において,現場は試行錯誤の真っ直中にいるというのが実情なのである中にいるというのが実情なのである。。

第2節 研究の目的

1 研究の視点
激しい 行動障害を持つ人々が地域で暮らすためには 本人と家族の「自助努力」だけで はさ まざまな困難があり 環境的配慮や専門的支援が 不可欠 である。例えば 利用者を受 け 入れ るにあたっての受入方法 支援 における 基本的 な 方向性 についての考え方 個別の 利用者支援 のあり方 物理的環境の整備 の方法 職員の意識づくりと支援技術の向上のた めの職員研修プログラムの計画実施のあり方 情報の管理 の方法など である。 福祉サービ ス事業者が行動障害者を支援するにあたっては これらをトータルシステムとして整備す る必要がある。 行動障害者に対するアプローチ方法は,従来の直接支援技術の方法論のみ に視点をあてた 「微視的アプローチ」が多かったが 当事者にとっての環境に働きかける このようなアプローチ方法は, 近年 「巨視的アプローチ」と呼ばれ 両アプローチの統合 が重視されてきている。しかしながら 両アプローチの統合という考え方は 2000 年以降 に提起されたものであり 現状において 具体的実践事例はまだほとんど報告されていな い。
そこで 筆者 は 強度行動障害者のケアホーム支援実践において 微視的・巨視的の両ア プローチを統合した取り組みを行 っている先進的事業所の実践を調査分析することにより そこでの課題や方向性を明らかにしていきたいと考える。 2 研究の目的
本研究では,行動障害者がケアホームで受け入れることの困難性(阻害要因)を究明し,これまで不十分ながらも受け入れてきたところでの実践経験を分析し,先駆的実践と対比することによって彼らが安心して活動し,安住できるようにするためには,どのような方 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 6 向と条件が求められているのかについて実証的に検討することが目的である。 具体的には 具体的には,,20002000年代の年代の行動障害者支援行動障害者支援ででは地域での生活を保障は地域での生活を保障していくことが重視さしていくことが重視されてきたが,「れてきたが,「Lucyshyn et al(Lucyshyn et al(19951995))はは,,行動障害を示す人の環境やサービスを見直し行動障害を示す人の環境やサービスを見直し,,そその人の特性に合った生活を提供の人の特性に合った生活を提供しし,,その結果として行動障害も減少することを示している。その結果として行動障害も減少することを示している。さらにさらに,,今日今日,,最も強調されていることは最も強調されていることは,『,『個人の権利個人の権利』』でありであり,,行動障害の軽減にとど行動障害の軽減にとどまらずまらず,,あくまでも行動障害を示す人の生活の質の向上に向けた援助の必要性であるあくまでも行動障害を示す人の生活の質の向上に向けた援助の必要性であるとしとしている」ている」6))ように,ように,近年ではその地域生活の質が問題となっている。また近年ではその地域生活の質が問題となっている。また,,そのその支援方法支援方法はは,,個人へのアプローチである「個人へのアプローチである「微視的アプローチ微視的アプローチ」だけでなく」だけでなく,,環境改善をも視野に入環境改善をも視野に入れた「れた「巨視的アプローチ巨視的アプローチ」と」と統合して対応す統合して対応すべきだという考え方が注目され始めた。べきだという考え方が注目され始めた。すなわち,行動障害者支援においては,現場実践における利用者への直接的な支援方法だけではなく,広く環境や社会の条件改善も不可欠で巨視的アプローチの必要が指摘されるようになったが,そうした統合的アプローチについてはまだ十分に解明されていない。 こうした点をふまえて,本研究は,行動障害者の生活支援モデルを提起するのに必要な基礎的研究とすることが目的である。

第3節 研究の方法

本研究の目的を達成するために,まず,行動障害者が地域生活を実現するための環境的配慮や専門的支援のあり方についての先行研究を検討する。そして,今日,福祉サービス事業所において行動障害者の支援がどのように実践されているかについての現状の把握のために,日本知的障害者福祉協会等の全国団体が実施した過去の調査の結果や,福岡市が市内事業所等を対象に行った強度行動障害者支援実態調査の結果等を分析し,激しい行動障害を持つ自閉症の人たちをどの程度受け入れ,行動障害者の支援においてどのような取り組みを行っており,そこでの課題や問題点としてどのような内容が存在するのかなどについて実証データを分析する。さらに,具体的な事例研究として,筆者が所属する社会福祉法人が運営する強度行動障害者ケアホームの実践的データを分析し,行動障害者のケアホーム支援のあり方について検討する。そして,それらを踏まえた上で,わが国において行動障害者のケアホーム生活支援に積極的に取り組んでいる事業所のひとつである北海道のはるにれの里の実践事例について調査研究し,その実践の優位性や課題を明らかにすることで,今後の支援の方向性やあり方を提起したい。
1 行動障害者支援に関する先行研究
筆者は,強度行動障害者支援に関する先行研究を検討し,その理論的到達点と実践的到 達点を明らかにする。そして,微視的アプローチと巨視的アプローチの両アプローチ統合 の視点から,ケアホームにおける行動障害者支援のあり方について明らかにしていきたい 6 下山真衣・園山繁樹 2005 行動障害に対する行動論的アプローチの発展と今後の課題-行動障害の低減から生活全 般の改善へ-特殊教育学研究, 43 1 ) 9 20 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 7 と考えている。そこで,先行研究検討においては,強度行動障害者支援に対する考え方と と考えている。そこで,先行研究検討においては,強度行動障害者支援に対する考え方と支援方法についてのこれまでの研究成果を明らかにする。先行研究収集は,主に支援方法についてのこれまでの研究成果を明らかにする。先行研究収集は,主にCiNiiCiNiiをを活用する。検索用語は,「行動障害」「強度行動障害」「知的障害」「地域生活」「グループホ活用する。検索用語は,「行動障害」「強度行動障害」「知的障害」「地域生活」「グループホーム」「ケアホーム」などーム」「ケアホーム」などである。また,そのようにして入手した論文の末尾に記載されてである。また,そのようにして入手した論文の末尾に記載されている文献リストより,筆者の研究と関連性があると思われる論文についても,出版社等かいる文献リストより,筆者の研究と関連性があると思われる論文についても,出版社等から取り寄せる。ら取り寄せる。 第 第11章では,本研究の目的を達成するために,先行研究の検討を行い,これまでの研究章では,本研究の目的を達成するために,先行研究の検討を行い,これまでの研究で明らかにされてきたこと,明らかにされてきていないことを示す。で明らかにされてきたこと,明らかにされてきていないことを示す。
2 福岡市「強度行動障害者支援に関するアンケート調査」結果データの検討
2006年6月及び2010年5月に,福岡市が市内に所在する知的障害者福祉サービス事業所を対象に行ったアンケート調査結果について,行動障害者の所在の実態や利用者に対する支援の工夫や配慮,運営上の配慮や地域との関わりの意識的な取り組み,さらに行動障害者支援における実践上の行き詰まりの状況や事業所の抱える課題等について検討する。
3 「強度行動障害者支援研究事業」の事例研究
筆者が所属する社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会では,強度行動障害者支援のあり方について実践的研究を進めることを目的のひとつとして,2009年11月,入居定員6名の強度行動障害者専用のケアホームを開設した。ここでの実践的研究は,日本財団の研究費助成と福岡市の「強度行動障害者支援モデル事業」の指定を受けて研究プロジェクトにより進められた。筆者もこの研究プロジェクトのメンバーのひとりとして参加した。
そこで,「研究事業」の実践過程で蓄積された支援記録や会議録等を精査・分析し,強度行動障害者支援におけるアプローチの方法について検討していく。
4 先進的実践に取り組む事業者に対する聞き取り調査
上記1の中でも先進的なとりくみをさらに広い視点からより深くとらえるために,強度行動障害者の地域生活を積極的に展開している石狩市の「はるにれの里」の行動障害者を対象としたケアホーム実践に注目し,事業所を訪問し,事業所の管理者並びに現場の責任事業所の管理者並びに現場の責任者に対して,強度行動障害者支援についての基本的な考え方や環境上の配慮,当事者の生者に対して,強度行動障害者支援についての基本的な考え方や環境上の配慮,当事者の生活の質を高めるための取り組みの内容等についてインタビュー調査を行う。そこから当該活の質を高めるための取り組みの内容等についてインタビュー調査を行う。そこから当該事業所が取り組んでいる微視的アプローチと巨視的アプローチの双方について明らかにす事業所が取り組んでいる微視的アプローチと巨視的アプローチの双方について明らかにする。
調査の留意点として,この訪問調査の 調査の留意点として,この訪問調査の目的,筆者の問題意識,調査の段取りについて,目的,筆者の問題意識,調査の段取りについて,まず先方の事業所管理者に電話で伝え,訪問及び調査協力の承諾を得ることができたら正まず先方の事業所管理者に電話で伝え,訪問及び調査協力の承諾を得ることができたら正式な「事業所訪問依頼文書」(資料式な「事業所訪問依頼文書」(資料11参照)を「調査要綱」(資料参照)を「調査要綱」(資料22参照)を添えて送付す参照)を添えて送付する。

第4節 本研究に関連する用語の定義

第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 8 本節では,本研究における基礎となるいくつかのキーワードについて,それらの定義に ついて整理する。
1 「 障害 」の定義
わが国を含めて,世界各国の「障害」に対する概念規定は大きく変化してきている。 ICF International Classification of Functioning, Disability and Health )は 2001 年に WHO (世界保健機関)の総会で採択された障害観であり,日本語では,「国際生活機能分 類」と訳されているものである。 ICIDH は,障害を 3 つのレベル,すなわち「機能障害」 「能力障害」「社会的不利」で障害を把握しようとした点で,発表当時は画期的といわれて いたが,やがて,「医療を中心と した障害観から抜け出していない」「障害をこのような直 線的な次元でとらえられるものなのか」「障害は単独では存在せず,社会との関わりの中で 存在するものだ」といった批判が寄せられるようになり, 1990 年代に入って国際障害分類 の第二版の策定作業が開始された。このような経過をたどり, ICF は, 1980 年の国際障 害分類( ICIDH )の改定版として登場した。
この分類の特徴は,障害を否定的なイメージで捉えるのではなく,機能障害の代わりに 「心身機能・構造」,能力障害の代わりに「活動」,社会的不利の代わりに「参加」という 中立 的な用語を使用している。また,「すべての人間が何らかの障害をもっている」という 視点から,「健康状態」が環境因子や個人因子により「機能障害」「活動制限」「参加制約」 を引き起こし,阻害されるというように,障害の概念が疾患だけではなく,妊娠,加齢, ストレスなどの健康状態にも拡大された。また,障害の発生と変化に影響するものとして, 新たに「環境因子」と「個人因子」を加えた。さらに, ICIDH では,要素の関係が一方向 だという誤解があったため, ICF では,それぞれの要素が相互に影響しあう双方向のモデ ルとした。 7 ICF の最も大きな特徴は,単に心身機能の障害による生活機能の障害を分類するという 考え方でなく,活動や社会参加,特に環境因子というところに大きく光を当てていこうと する点である。 8 上田は, ICF モデルの基本的特徴として,以下の 6 つを挙げている。第一に, ICF は, 生命レベル・生活レベル・人生レベルを包括する概念であること。第二に, ICIDH は「障 害」というマイナス面だけに注目していたが, ICF は「生活機能」というプラス面に注目 していること,第三に,「心身機能・構造」「活動」「参加」の 3 つのレベルの相互作用モ デルであること,第四に,環境因子と個人因子という背景因子を導入したこと,第五に, ICIDH では,障害を起こす原因が疾患・変調(病気やけが,その他の異常)であったが, ICF では,それだけではなく,妊娠,高齢(加齢),ストレス状態なども含む広い概念と したこと,第六に,「活動」を「できる活動」と「している活動」とに分け,二つの面から 捉えていることである。 9 また,わが国における障害の定義は,障害者基本法第 2 条において,「この法律におい て「障害者」とは,身体障害,知的障害又は精神障害があるため,継続的に日常生活 又は 7 小澤温 他 2007 「よくわかる障害者福祉」 p .28 8 障害者福祉研究会編 ( 「 I CF 国際生活機能分類-国際障害分類改訂版- 」まえがき ,中央法規 出版 9 上田敏 2007 「 ICF の理解と援助」 pp. 15 28 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 9 社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と明記されている。 本研究においては,障害の捉え方として,ICFICFの考え方に則り,障害とは,人と環境がの考え方に則り,障害とは,人と環境が相互に影響しあって発生するものであるという捉え方をする。相互に影響しあって発生するものであるという捉え方をする。
2 「知的障害」の定義「知的障害」の定義
わが国において,「知的障害」に対する定義は,法令上いまだに明確にされていない。わが国において,「知的障害」に対する定義は,法令上いまだに明確にされていない。福福祉施策の対象者としての知的障害者について定義する法令は存在するが、個々の法令にお祉施策の対象者としての知的障害者について定義する法令は存在するが、個々の法令において、その目的に応じた定義がなされている。いて、その目的に応じた定義がなされている。また,また,客観的な基準を示さず、支援の必要客観的な基準を示さず、支援の必要性の有無・程度をもって知的障害者が定義される性の有無・程度をもって知的障害者が定義されることもある。客観的基準を示す法令にあこともある。客観的基準を示す法令にあっては、発達期(おおむねっては、発達期(おおむね1818歳未満)において遅滞が生じること、遅滞が明らかであるこ歳未満)において遅滞が生じること、遅滞が明らかであること、遅滞により適応行動が困難であることのと、遅滞により適応行動が困難であることの33つを要件とするものが多い。遅滞が明らかつを要件とするものが多い。遅滞が明らかか否かの判断に際して「標準化された知能検査(田中ビネーやか否かの判断に際して「標準化された知能検査(田中ビネーやWISCWISCややKK--ABCABCなど)で知能など)で知能指数が指数が7070ないしないし7575未満(以下)のもの」といった定義がなされることもある。未満(以下)のもの」といった定義がなされることもある。
医学的な診断名としては,「英:Mental Reterdation : Mental Reterdation : MRMR」の訳として「精神遅滞」「精」の訳として「精神遅滞」「精神発達遅滞」という用語が用いられている。なお,アメリカ精神遅滞学会神発達遅滞」という用語が用いられている。なお,アメリカ精神遅滞学会(AAMR)(AAMR)の定義での定義では,「精神遅滞」は,「知的障害」の症状に加えて,生活面すなわち「意思伝達・自己管理・は,「精神遅滞」は,「知的障害」の症状に加えて,生活面すなわち「意思伝達・自己管理・家庭生活・対人技能・地域社会資源の利用・自律性・学習能力・仕事・余暇・健康・安全」家庭生活・対人技能・地域社会資源の利用・自律性・学習能力・仕事・余暇・健康・安全」のうちのうち22種類以上の面にも適応問題がある場合を指している。種類以上の面にも適応問題がある場合を指している。10)) 3 3 「自閉症」の定義「自閉症」の定義 自閉症(自閉症(autistic disorder/childhood autismautistic disorder/childhood autism)は,)は,19431943年,カナー(年,カナー(Kanner,L.Kanner,L.)に)により報告され,より報告され,現在では脳機能障害が強く推測される発達障害とされる。その診断は,現在では脳機能障害が強く推測される発達障害とされる。その診断は,33歳までに①相互的社会交渉の質的障害,②言語と非言語性コミュニケーションの質的障害,歳までに①相互的社会交渉の質的障害,②言語と非言語性コミュニケーションの質的障害,③活動と興味の範囲の著しい限局性の三つの行動的症状が揃うことによりなされる。思春③活動と興味の範囲の著しい限局性の三つの行動的症状が揃うことによりなされる。思春期から青年期・成人期への経過中に,自傷,他害,こだわりなどが目立つようになる。期から青年期・成人期への経過中に,自傷,他害,こだわりなどが目立つようになる。11)) アメリカ精神医学会よりアメリカ精神医学会より19941994年に出版された年に出版されたDSMDSM--Ⅳ(Ⅳ(Diagnostic and statistical Diagnostic and statistical manual of mental disorders, manual of mental disorders, 44thth editionedition)では、)では、自閉性障害(自閉性障害(autistic disorderautistic disorder)」は,)」は,「通常,幼児期,小児期または青年期に初めて診断される障害」のなかの,「広汎性発達障「通常,幼児期,小児期または青年期に初めて診断される障害」のなかの,「広汎性発達障害(害(pervasive developmental disorderspervasive developmental disorders)」のひとつとして分類されている。この診断基)」のひとつとして分類されている。この診断基準では,以下の準では,以下の44つが柱となっている。①社会性相互作用(対人関係)の質的な障害,②つが柱となっている。①社会性相互作用(対人関係)の質的な障害,②コミュニケーション行動の質的な障害,③限定された興味関心や常同的・反復的な行動,コミュニケーション行動の質的な障害,③限定された興味関心や常同的・反復的な行動,④④33歳までの発症である。一方,歳までの発症である。一方,WHOWHOよりより19941994年に出版された年に出版されたICDICD--1010((InternationalInternational statistical classification of diseases and related health problems, statistical classification of diseases and related health problems, 1010ththrevisionrevision))では,「小児自閉症(では,「小児自閉症(childhood childhood autismautism)」という名称が使用され,「精神および行動の障害」)」という名称が使用され,「精神および行動の障害」の中の「広汎性発達障害」の一つに分類されている。この診断ガイドラインでも,の中の「広汎性発達障害」の一つに分類されている。この診断ガイドラインでも,DSMDSM--ⅣⅣと同様に,主障害として社会的相互作用の障害,コミュニケーションの障害,限定的・反と同様に,主障害として社会的相互作用の障害,コミュニケーションの障害,限定的・反復的行動があげられ,復的行動があげられ,33歳までに発症するとされている。歳までに発症するとされている。12)) 10))赤塚俊治赤塚俊治((20082008))「新・知的障害者福祉論序説」中央法規出版「新・知的障害者福祉論序説」中央法規出版p.43p.43 11))財団法人日本知的障害者福祉協会編財団法人日本知的障害者福祉協会編((20042004))「障害福祉の基礎用語-知的障害を中心に」「障害福祉の基礎用語-知的障害を中心に」p.p.5555 12))小林重雄他小林重雄他((20032003))「自閉性障害の理解と援助」コレール社「自閉性障害の理解と援助」コレール社pp.pp.2626--2929 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 10 なお,わが国では,なお,わが国では,20052005年年44月に施行された発達障害者支援法月に施行された発達障害者支援法13))において,法制度的ににおいて,法制度的に初めて自閉症が認知された。初めて自閉症が認知された。
4 「「行動障害行動障害」の定義」の定義
わが国で,行動上の異常について関心が払われるようになる大きな契機となった文献が,わが国で,行動上の異常について関心が払われるようになる大きな契機となった文献が,19671967年に発表された菅の『精神薄弱児の行動障害とその取り扱い方』である。その中で,年に発表された菅の『精神薄弱児の行動障害とその取り扱い方』である。その中で,行動障害は,感情障害,意志障害,特殊な行動障害の三つに分類されており,特殊な行動行動障害は,感情障害,意志障害,特殊な行動障害の三つに分類されており,特殊な行動障害の中に,自閉症,収集癖,常同症,自傷癖,不潔症を含めている。また,異常行動に障害の中に,自閉症,収集癖,常同症,自傷癖,不潔症を含めている。また,異常行動について,①刺激性,粗暴行為,興奮,②運動性不安,多動,③寡動,無為,横臥,④病的ついて,①刺激性,粗暴行為,興奮,②運動性不安,多動,③寡動,無為,横臥,④病的本能又は特殊異常行動をあげている。本能又は特殊異常行動をあげている。14)) 一方,わが国において全国規模で行動障害に関する本格的な調査研究が行われたのは, 一方,わが国において全国規模で行動障害に関する本格的な調査研究が行われたのは,19771977年の日本精神薄弱者愛護協会によるものである。その中では,行動障害を以下の年の日本精神薄弱者愛護協会によるものである。その中では,行動障害を以下の1515に分類している。①多動,②寡動,③衝動的行動または粗暴行動,④常同症(同じ姿勢やに分類している。①多動,②寡動,③衝動的行動または粗暴行動,④常同症(同じ姿勢や動作や言語を意味なく繰り返す),⑤衒奇症(意味の分からない奇をてらうような動作をす動作や言語を意味なく繰り返す),⑤衒奇症(意味の分からない奇をてらうような動作をする),⑥大小便失禁またはその他の不潔症,⑦破衣症,⑧偏食または拒食,⑨反芻癖またはる),⑥大小便失禁またはその他の不潔症,⑦破衣症,⑧偏食または拒食,⑨反芻癖または嘔吐症,⑩自傷癖,⑪収集癖または盗癖,⑫性的異常行動,⑬無断外出(目を離すと外出嘔吐症,⑩自傷癖,⑪収集癖または盗癖,⑫性的異常行動,⑬無断外出(目を離すと外出してしまう場合),⑭自閉症的症状(自己の世界に閉じこもって,他人と精神的接触をもとしてしまう場合),⑭自閉症的症状(自己の世界に閉じこもって,他人と精神的接触をもとうとしない),⑮その他。うとしない),⑮その他。 石井 石井は,厚生省心身障害研究『行動障害の処遇に関する研究』(平成は,厚生省心身障害研究『行動障害の処遇に関する研究』(平成44年度研究報告書)年度研究報告書)において,行動障害と自閉症との関係について,「行動障害は自閉症に固有な障害というよにおいて,行動障害と自閉症との関係について,「行動障害は自閉症に固有な障害というより,自閉症に固有な症候が行動障害に結びつきやすいと考えるのが妥当とされ,自閉症以り,自閉症に固有な症候が行動障害に結びつきやすいと考えるのが妥当とされ,自閉症以外にも,非定型自閉症,レット症候群,他の小児期崩壊性障害,あるいは精神遅滞および外にも,非定型自閉症,レット症候群,他の小児期崩壊性障害,あるいは精神遅滞および常同行動に関連した過動性障害などがあげられる」と述べている。常同行動に関連した過動性障害などがあげられる」と述べている。15))また,石井は,行動また,石井は,行動障害という概念をその処遇の難しさから派生した概念であるとして,「行動障害という概念障害という概念をその処遇の難しさから派生した概念であるとして,「行動障害という概念の意義はより現象的であり,実の意義はより現象的であり,実際の処遇に即しているということにある。特に発達障害と際の処遇に即しているということにある。特に発達障害と呼ばれる者の生活全般を援助する際に関係の形成が困難な状況がある。その際に生じてい呼ばれる者の生活全般を援助する際に関係の形成が困難な状況がある。その際に生じている症候を全体として行動障害と呼んでいる。したがって,これを一般的な現象として捉える症候を全体として行動障害と呼んでいる。したがって,これを一般的な現象として捉えるならば,周囲の人との人間関係の形成が困難な状況の全般が該当するであろう」といっるならば,周囲の人との人間関係の形成が困難な状況の全般が該当するであろう」といった整理を行っている。た整理を行っている。16)) なお, なお,20072007年の日本知的障害者福祉協会が発行した『行動障害の基礎知識』では,行動年の日本知的障害者福祉協会が発行した『行動障害の基礎知識』では,行動障害の定義について,「そのまま放置すれば日常生活の営みや健康に悪影響のある逸脱行動障害の定義について,「そのまま放置すれば日常生活の営みや健康に悪影響のある逸脱行動が持続し,そのために社会生活への参加や健康管理が長期にわたって困難をきたしているが持続し,そのために社会生活への参加や健康管理が長期にわたって困難をきたしている状態」としている。状態」としている。17)) 小林隆児は,「行動障害」の定義について,ICD-10では,発達障害においてみられるばかりでなく,他の精神障害においても認められるものであり,それらをすべて包含した内 13))自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害などの発達障害を持つ者自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害などの発達障害を持つ者の援助等について定めた法律。全の援助等について定めた法律。全2525条。平成条。平成1717年年44月月11日施行。日施行。 14))菅修菅修((19671967))「行動障害とその取り扱いについて」財団法人日本精神薄弱者愛護協会「行動障害とその取り扱いについて」財団法人日本精神薄弱者愛護協会 15))石井哲夫石井哲夫((19931993))厚生省心身障害研究「強度行動障害の処遇に関する研究」(平成厚生省心身障害研究「強度行動障害の処遇に関する研究」(平成44年度研究報告書)年度研究報告書) 16))石井哲夫石井哲夫((19931993)):前掲書:前掲書 17))財団法人日本知的障害者福祉協会編財団法人日本知的障害者福祉協会編((20072007))「行動障害の基礎知識」「行動障害の基礎知識」p.p.1616 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 11 容を指しているとしており,DSM-Ⅳでは,通常,幼児期,小児期または青年期に初めて診断される障害の中の注意欠陥および破壊的行動障害のみに行動障害が適用されるとしている。18)これらのことから,肥後祥治は「行動障害という概念は,精神科領域における症候を総括する概念であったり,情緒障害と同様のものとみなされたり,明確に定義されていない」としている。19)そこで,本論文では,DSM-Ⅳの定義を用いることとする。
5 「強度行動障害」の定義「強度行動障害」の定義
「強度行動障害者」は,「強度行動障害者」は,19881988年に,厚生省児童家庭局障害福祉課において使われた用語年に,厚生省児童家庭局障害福祉課において使われた用語である。行動障害があまりに激しいために,施設においても受け入れられず,在宅のまま,である。行動障害があまりに激しいために,施設においても受け入れられず,在宅のまま,生死に関わるほどの病態を呈している事例を頂点として,その多くが家庭崩壊寸前の状態生死に関わるほどの病態を呈している事例を頂点として,その多くが家庭崩壊寸前の状態であることが明らかになった。このような悲惨な状況に置かれている人たちへの福祉対策であることが明らかになった。このような悲惨な状況に置かれている人たちへの福祉対策を行う必要が指摘されたのである。を行う必要が指摘されたのである。20)) その後,その後,19901990年に石井哲夫を主任研究者として,厚生省心身障害研究「強度行動障害の年に石井哲夫を主任研究者として,厚生省心身障害研究「強度行動障害の処遇に関する研究」が行われた。また,飯田雅子を代表研究者とする行動障害児(者)研処遇に関する研究」が行われた。また,飯田雅子を代表研究者とする行動障害児(者)研究会も強度行動究会も強度行動障害の先駆的な調査・研究を行っている。行動障害児(者)研究会は,「強障害の先駆的な調査・研究を行っている。行動障害児(者)研究会は,「強度行動障害」を以下のように定義している。度行動障害」を以下のように定義している。21)) 「強度行動障害児(者)とは,直接的他害(噛みつき,頭つき等)や,間接的他害(睡「強度行動障害児(者)とは,直接的他害(噛みつき,頭つき等)や,間接的他害(睡眠の乱れ,同一性の保持,場所・プログラム・人への拘り,多動,うなり,飛び出し,器眠の乱れ,同一性の保持,場所・プログラム・人への拘り,多動,うなり,飛び出し,器物破損等)や自傷行為などが,通常考えられない頻度と形式で出現し,その養育環境では物破損等)や自傷行為などが,通常考えられない頻度と形式で出現し,その養育環境では著しく処遇の困難な者をいい,行動的に定義される群である。その中には医学的には,自著しく処遇の困難な者をいい,行動的に定義される群である。その中には医学的には,自閉症児(者),精神薄弱児(者),精神病児(者)等が含まれるものの,必ずしも医閉症児(者),精神薄弱児(者),精神病児(者)等が含まれるものの,必ずしも医学によ学により定義される群ではない。主として,本人に対する総合的な療育の必要性を背景として成り定義される群ではない。主として,本人に対する総合的な療育の必要性を背景として成立した概念である。」立した概念である。」 行動障害児(者)研究会の行動障害児(者)研究会の33年間の実験的な処遇の試みと研究の蓄積をふまえて,年間の実験的な処遇の試みと研究の蓄積をふまえて,19931993年に,厚生省は,「強度行動障害特別処遇事業」をスタートさせた。年に,厚生省は,「強度行動障害特別処遇事業」をスタートさせた。
「強度行動障害特別処遇加算費の取扱いについて」 「強度行動障害特別処遇加算費の取扱いについて」((19981998..77..3131厚生省大臣官房厚生省大臣官房障害保健障害保健福祉部障害福祉課長福祉部障害福祉課長通知通知))では,では,「強度行動障害」「強度行動障害」についてについて以下のように以下のように規定規定されている。されている。すなわちすなわち,,「「11..ひどい自傷」「ひどい自傷」「22..強い他傷」「強い他傷」「33..激しいこだわり」「激しいこだわり」「44..激しいもの壊し」「激しいもの壊し」「55..睡睡眠の大きな乱れ」「眠の大きな乱れ」「66..食事関係の強い障害」「食事関係の強い障害」「77..排泄関係の強い障害」「排泄関係の強い障害」「88..著しい多動」「著しい多動」「99..著しい騒がしさ」「著しい騒がしさ」「1010..パニックがもたらす結果が大変なため処遇困難」「パニックがもたらす結果が大変なため処遇困難」「1111..粗暴で相手に粗暴で相手に恐怖感を与えるため処遇困難な状態」の恐怖感を与えるため処遇困難な状態」の1111項目について項目について,それぞれ,それぞれの出現頻度によりの出現頻度により11点点,,33点点,,55点のポイントを付け点のポイントを付け,,その合計点がその合計点が,,1010点以上とされている。例えば点以上とされている。例えば,,「「11..ひどい自傷」についてはひどい自傷」については,,行動障害の目安の例示として行動障害の目安の例示として,,「肉が見えたり「肉が見えたり,,頭部が変形に至頭部が変形に至るような叩きをしたりるような叩きをしたり,,つめをはぐなど。」を指すと記載されておりつめをはぐなど。」を指すと記載されており,,その出現頻度が週にその出現頻度が週に11,,22回の場合回の場合11点点,,11日に日に11,,22回の場合回の場合33点点,,11日中の場合日中の場合55点と規定している。点と規定している。(表(表00--11参照)なお,強度行動障害特別処遇事業の対象は参照)なお,強度行動障害特別処遇事業の対象は2020点以上の者となっている。点以上の者となっている。 18))小林隆児小林隆児((20022002))「行動障害と国際診断分類」『自閉症と行動障害』岩崎学術出版社「行動障害と国際診断分類」『自閉症と行動障害』岩崎学術出版社pp.pp.22--33 19))肥後祥治肥後祥治((20012001))「行動障害の類型」長畑正道他編著『行動障害の理解と援助』コレール社「行動障害の類型」長畑正道他編著『行動障害の理解と援助』コレール社pp.pp.2323--2424 20))小林隆児小林隆児((20022002))「自閉症と行動障害」「自閉症と行動障害」p.p.55 21))飯田雅子飯田雅子他他((19891989))「強度行動障害児(者)の行動改善および処遇のあり方に関する研究「強度行動障害児(者)の行動改善および処遇のあり方に関する研究」」行動障害児(者)研究会行動障害児(者)研究会 財団法人キリン記念財団助成研究報告書財団法人キリン記念財団助成研究報告書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 12 これらの強度行動障害の基盤に存在する発達障害は,自閉症である場合が極めて多いと考えられている。それゆえに,今日自閉症にみられる行動障害が大いに注目されているの考えられている。それゆえに,今日自閉症にみられる行動障害が大いに注目されているの である。22)) 表0-1 行動障害の判定基準
行動障害の内容
1点 3点 5点 1 ひどい自傷
週に1,2回 一日に1,2回 一日中 2 つよい他傷
月に1,2回 週に1,2回 一日に何度も 3 激しいこだわり
週に1,2回 一日に1,2回 一日に何度も 4 激しいものこわし
月に1,2回 週に1,2回 一日に何度も 5 睡眠の大きな乱れ
月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日 6 食事関係の強い障害
週に1,2回 ほぼ毎日 ほぼ毎食 7 排泄関係の強い障害
月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日 8 著しい多動
月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日 9 著しい騒がしさ
ほぼ毎日 一日中 絶え間なく 10 パニックがひどく指導困難
あれば 11 粗暴で恐怖感を与え指導困難
あれば なお,大塚は,強度行動障害の概念が,現場において支援を行う職員の専門性として発 なお,大塚は,強度行動障害の概念が,現場において支援を行う職員の専門性として発展してきたものであり,施設における支援の科学的方法論として意義を持つとともに,実展してきたものであり,施設における支援の科学的方法論として意義を持つとともに,実際には施設整備や職員配置基準として施設への報酬単価として意味を持ってきたものであ際には施設整備や職員配置基準として施設への報酬単価として意味を持ってきたものであると指摘している。ると指摘している。23))また,山口は,強度行動障害に関する長期間にわたる研究や事業のまた,山口は,強度行動障害に関する長期間にわたる研究や事業の実施は,個々の施設における強度行動障害児者への処遇の有効性の知見を集積してきたが,実施は,個々の施設における強度行動障害児者への処遇の有効性の知見を集積してきたが,必ずしも体系化されたものになっていないと述べている。必ずしも体系化されたものになっていないと述べている。24)) 22))小林隆児小林隆児((20022002)):前掲書:前掲書p.p.88 23))大塚晃大塚晃((20102010))「強度行動障害の定義について」厚生労働科学研究「強度行動障害の評「強度行動障害の定義について」厚生労働科学研究「強度行動障害の評価尺度と支援手法に関する研価尺度と支援手法に関する研究究 平成平成2121年度年度 総括・分担研究報告書」(研究代表者総括・分担研究報告書」(研究代表者 井上雅彦)井上雅彦)p.p.1111 24))山口和彦山口和彦((20052005))「行動援護の展開」財団法人日本知的障害者福祉協会「行動援護ガイドブック」(加瀬進編著)「行動援護の展開」財団法人日本知的障害者福祉協会「行動援護ガイドブック」(加瀬進編著)p.p.7272 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

第1章 知的障害者処遇の歴史的展開とケアホームに関する研究の成果

第1節 知的障害者のグループホーム制度の歴史的変遷

1 知的障害者のグループホームの国としての初めての制度化
わが国における知的障害者のグループホームは,国の制度としては厚生省児童家庭局長通知「精神薄弱者地域生活援助事業の実施について」において,1989年に「精神薄弱者地域生活援助事業」として制度化されたものをいう。25)この制度では,入居する知的障害者本人は就労することを原則としており,食事の準備などの家事や金銭管理などを世話人が援助するというもので,補助金は世話人の人件費相当額程度であった。そのため,補助金が低額であることから,十分な世話人の確保が困難であること,入居者が中軽度中心になり重度の障害がある人には利用しにくい制度であることなどの問題を抱えていた。
2 グループホーム制度の発展
1993年,国は,知的障害者入所施設利用者の入所期間が長期化している現状をふまえ,施設に対し利用者の地域移行の促進を促すことを目的に通知を発出している。26)さらに,1995年12月に策定された『障害者プラン~ノーマライゼーション7ヶ年戦略~』では,グループホーム整備の数値目標が福祉ホームと合わせて,2002年度末に2万人分を設置することとされた。 また制度の確立当初は,グループホームのバックアップ施設は,入所更生施設や通勤寮などの入所施設に限定されていたが,1995年には,バックアップ施設の要件が緩和され,通所施設のみを運営する法人についてもグループホームを設置することが可能となった。27)さらに,1996年には重度加算制度が創設された。これにより重度者については4人のグループホームの基本事業分の倍の額の加算分が上乗せされることになり,従来の世話人に加えてさらにもう一人の世話人の配置が可能になった。2000年4月の「知的障害者地域生活援助事業の実施について」において,次のような改正が行われることにより,グループホームの利用条件はかなり緩和され,知的障害者にとって利用しやすくなった。
①グループホーム対象者の就労要件が撤廃された。
25 厚生省児童家庭局長通知「精神薄弱者地域生活援助事業の実施について」 (平成元年 5 月 29 日児発第 397 号) 26 厚生省児童家庭局長通知「知的障害者援護施設等入所者の地域生活等への移行の促進について」 27 厚生省児童家庭局障害福祉課長通知「知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)におけるバックアップ施設 の要件緩和について」(平成 7 年 10 月 2 日児障第 48 号) 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 14 ②グループホーム内において,ホームヘルパーの利用が可能となった。
③運営主体について,グループホームに対する法定施設による支援体制の確立している民法法人やNPO法人であって都道府県知事が適当であると認めたものにまで拡大された。
④共同生活の形態について,個々に生活できるワンルームマンション的形態でも,食事の提供ができる共有スペースがあり,世話人により入居者への援助に支障がないと認められる場合には可能となった。
⑤グループホームの入居対象者について,入居者の賃金および年金等の収入が利用者負担を下回る高齢者等であっても,貯蓄等の資産を補填することにより,日常生活を維持することが可能であると認められる場合には利用が可能となった。
2002年12月に策定された『重点施策実施5ヶ年計画(新障害者プラン)』では,地域生活援助事業(グループホーム)については,2007年度を目標年度として,34,000人分の整備を目標値として明示された。
2003年4月に導入された支援費制度では,措置制度から新たに利用者と事業者との契約により利用できるサービスの選択が可能となった。グループホームは,脱施設化を象徴するものであり,それは地域移行,さらにノーマライゼーションを体現するものとして地域生活の中心的役割を期待されることとなった。
3 障害者自立支援法における共同生活援助事業・共同生活介護事業
2006年4月,障害者自立支援法が施行され,地域生活援助事業であるグループホーム は,共同生活援助事業(グループホーム)と共同生活介護事業(ケアホーム)へと変わった。障害者自立支援法の新事業体系に位置づけられ,個別給付の事業として位置づけられたことにより,グループホーム・ケアホームの設置数は飛躍的に増加していった。 制度開始から2007年までのグループホーム(ケアホームを含む)の整備数は右表の通りである。(1-1表参照)28) (1)グループホームとケアホームの定義 障害者自立支援法第5条第16項では,グループホームは,「地域において共同生活を営むのに支障のない障害者につき,主として夜間において,共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行う」と規定されている。一方,ケアホームは,同条第10項において,ケアホームは,「障害者につき,主として夜間において,共同生活を営むべき住居において入浴,排泄又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便 28))知的障害者グループホーム運営研究会編集知的障害者グループホーム運営研究会編集((20012001))「知的障害者グループホーム運営ハンドブック」中央法規「知的障害者グループホーム運営ハンドブック」中央法規p.p.104104 厚生労働省ホームページ「平成厚生労働省ホームページ「平成1818年度社会福祉施設等調査結果の概要」(年度社会福祉施設等調査結果の概要」(2011.8.72011.8.7閲覧)閲覧)http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/0606/kekka/kekka22--11.html.html 1-1表 グループホーム設置数の推移 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 100 200 300 400 520 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 640 760 940 1,134 1,342 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 1,681 2,020 2,459 2,859 2,850 2004年 2005年 2006年 2007年 2,569 4,239 4,792 7,392 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 15 宜を供与する」とされている。 (2)グループホームとケアホームの利用者 利用については,グループホームは,障害程度区分非該当及び区分1の障害者が利用でき,ケアホームは,区分2から区分6の人が利用できる。 (3)グループホームとケアホームの職員配置 各事業所には,管理者,サービス管理責任者,サービス提供職員(世話人,生活支援員)が配置される。 ①管理者 管理者は,各事業所に1名配置され,他の職務,他の事業所の職務に従事可で,グループホーム・ケアホームの運営管理の責任を担う。
②サービス管理責任者 サービス管理責任者は,30名までの利用者を担当して,個別支援計画の作成,事業所等の日中活動の場との連絡調整などを行う。概ね30分以内で移動可能な範囲の複数のホームを担当することも可能である。
③世話人 世話人は,グループホームの場合,利用者を10で除した数以上又は6で除した数以上で配置し,ケアホームの場合は,6で除した数以上で配置する。グループホーム,ケアホーム両方の対象者が利用するホームは6で除した数以上が世話人の配置基準である。世話人の業務は,食事や掃除等の家事支援や日常生活の相談支援である。概ね10分程度で移動可能な範囲の複数の住居の業務を行うことも可能である。
④生活支援員 生活支援員は,ケアホームに配置される。区分3から6までの利用者がいる場合に,区分に応じて配置される。すなわち,区分3は9で,区分4は6で,区分5は4で,区分6は2.5で除した数を合算した数以上の職員が生活支援員の配置基準である。生活支援員の行う業務は,食事や排泄の介護などである。
4 本節の小括 わが国における知的障害者のグループホーム制度は,欧米先進国の脱施設化の流れや,ノーマライゼーション理念の浸透を背景に,最初は,身辺自立をしており,直接的な介護を必要としない,一般就労をしている軽度知的障害者を対象として確立した。その後,利用条件が段階的に緩和され,介護を必要とする重度知的障害者もその対象として位置づけられるようになった。さらに,障害者自立支援法が制定され,新たに障害程度区分2以上の障害者を利用対象者とする共同生活介護事業(ケアホーム)が制度化され,すべての知的障害者がグループホーム・ケアホームを利用することが可能となった。また,障害程度区分に応じて,自立支援報酬の単価も異なっており,手厚い支援を必要とする 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 16 重度障害者においても生活支援員を配置することによりケアホームでの生活ができるようになったのである。一方,障害者自立支援法では,事業運営主体を従来の社会福祉法人のみに制限するのではなく,株式会社,NPO法人など,法人格を持つ事業者であれば可能としているため,2006年の支援法施行以降,グループホーム・ケアホームの設置数は,年々,増加の一途を辿っている。 行動障害を伴う重度自閉症者が暮らす場所は,従来,自宅と入所施設という二者択一の選択肢のみしかなかったが,今後は,支援者と共に地域の中で少人数の暮らしを営むことができるケアホームでの生活が益々増加すると考えられる。

第2節 強度行動障害のある知的障害者のグループホームに関する 先行研究の検討

1 強度行動障害者支援が目指すもの
強度行動障害者といわれる人々が,日々の生活においてストレスを感じることなく,穏 やかに暮らすことのできる生活環境を確立することは喫緊の課題である。しかしながら, 強度行動障害者支援が目指すものは,単に,行動障害の軽減・除去ではない。大切なこと は,管理された生活や社会と隔離された限定的な空間の中で生活を完結することなく,地 域の中で,社会的に包摂されながら豊富な人間関係や多様な体験の中で質の高い暮らしを 実現することである。強度行動障害者支援に携わる者は,このことを常に認識しておく必 要があるだろう。 強度行動障害者支 援の捉え方や方法論が徐々に深化していく中で 高林は 支援の目的 について ,一定の危惧とともに重要な視点を提起している。彼は,「 強度行動障害者と呼ば れる人たちは 地域生活保障のための諸制度の不備・立ち遅れの中におかれており その うちの少なくない人たちが精神疾患の有無にかかわらず 多くが「社会的入院 」 によって 最終的な受け皿という社会的位置にある精神病院に入っている。そこでは 行動の問題が 落ち着いたとしても 本人にとっては何ら解決にならず かえって人間としての権利が保 障された当たり前の地域生活から遠ざけられるこ とになる 」 29 と指摘している。 筆者は, このことは ,入所 施設における支援場面においても同様であり 行動問題が解決すること により ますます施設での生活に定着し このことは 彼らの地域生活移行へのインセン ティブを低下させかねない と考える 。 このことについて 野口は 単なる行動障害の軽減は本当の意味での成功ではなく こ れまで行動障害によって排除の対象となっていた家庭 学校 地域 職場への参加を重要 視 しなければならないと 指摘している。 30 さらに 強度行動障害者支援の方法論について 実用的で適合性の高い方法とは 普通の大人であれば誰もができる援助方法になって初め 29 高林秀明 2005 「強度行動障害」の研究と地域生活保障の課題.障害者問題研究第 33 巻第 1 号, pp. 27 35 30 野口幸弘 2004 激しい行動障害のある人の地域生活を保障するために考えるべき要因.特殊教育学研究, 42 2 pp. 167 172 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 17 て学際的であり,,その援助方法がその援助方法が,,その人が日常生活をしながらその人が日常生活をしながら,,無理なくあらゆる文脈無理なくあらゆる文脈で行われるものであるかどうかが重要であると指摘している。で行われるものであるかどうかが重要であると指摘している。筆者は,支援者が支援目標筆者は,支援者が支援目標や支援システムの構築にあたって,上記のような視点を持つことは極めて重要であると考や支援システムの構築にあたって,上記のような視点を持つことは極めて重要であると考える。 また,福祉現場の支援者は,日々の支援の中で,ついつい目の前にある強度行動障害者の行動問題の解消のみに意識が向きがちであるが,本来の支援者の目的は,彼ら自身のよの行動問題の解消のみに意識が向きがちであるが,本来の支援者の目的は,彼ら自身のより高いり高いQOLQOLの実現を目指すことであり,行動障害の軽減・除去は,その一過程に過ぎなの実現を目指すことであり,行動障害の軽減・除去は,その一過程に過ぎない。そのような本来の目的を実現していくためには,施設という閉鎖的で特殊な場の中にい。そのような本来の目的を実現していくためには,施設という閉鎖的で特殊な場の中においてのみ環境を捉えるのではなく,野口が指摘するように家庭,学校,地域,職場等においてのみ環境を捉えるのではなく,野口が指摘するように家庭,学校,地域,職場等におけるこれまでの社会的排除を取り除くことこそが求められていることであると考えられおけるこれまでの社会的排除を取り除くことこそが求められていることであると考えられる。 地域の中で,強度行動障害者を含む重度自閉症の人たちに対し積極的な支援を展開して含む重度自閉症の人たちに対し積極的な支援を展開しているいる社会福祉法人はるにれの里社会福祉法人はるにれの里の「の「札幌市自閉症者自立支援センター札幌市自閉症者自立支援センターゆい」ゆい」の真鍋はの真鍋は,,支支援の基本的方向性として以下の点をあげている。すなわち援の基本的方向性として以下の点をあげている。すなわち,,①①支援者支援者の仕事はの仕事は,,生涯にわ生涯にわたって自閉症の人たちが幸せを追求するためのシナリオづくりを彼らに寄り添いながらおたって自閉症の人たちが幸せを追求するためのシナリオづくりを彼らに寄り添いながらお手伝いすることにある。②地域で生まれ地域で育った自閉症の人たちが手伝いすることにある。②地域で生まれ地域で育った自閉症の人たちが,,社会的な理由に社会的な理由によってよって,,施設入所を余儀なくされた場合施設入所を余儀なくされた場合,,施設から地域へ移行するという観点ではなく施設から地域へ移行するという観点ではなく,,もともとの居場所である地域へ戻るということを支え応援する。③障もともとの居場所である地域へ戻るということを支え応援する。③障害が重くても害が重くても,,行動行動障害があっても地域へ向けた生活をめざす障害があっても地域へ向けた生活をめざす,,地域の暮らしは自閉症の人ご本人が望んでい地域の暮らしは自閉症の人ご本人が望んでいるからでありるからであり,,その思いを支えその思いを支え,,お手伝いすることがお手伝いすることが支援者支援者の仕事である。④障害をもっの仕事である。④障害をもった人が地域で安心して暮らせる社会はた人が地域で安心して暮らせる社会は,,国民にとっても安心できる社会となる。自閉症の国民にとっても安心できる社会となる。自閉症の人が地域で暮らすことで社会をよりよく変革できる人が地域で暮らすことで社会をよりよく変革できる,,31))ということであるということである。。 このようにこのように,,今日今日,,強度強度行動障害者支援の方向性とは,行動障害者支援の方向性とは,彼らが地域の中で彼らが地域の中で,,高い高いQOLQOLを実現しながらを実現しながら,あ,あたり前に暮らしていくことを支援することでありたり前に暮らしていくことを支援することであり,,それらを通じたイそれらを通じたインクルーシブな社会のンクルーシブな社会の形成にあるといえるのではないだろうか。形成にあるといえるのではないだろうか。
2 2 行動障害の捉え方行動障害の捉え方
野口野口らが指摘するように,筆者も,自閉症のらが指摘するように,筆者も,自閉症の人たちが示す激しい人たちが示す激しい行動障害は,環境のあ行動障害は,環境のある側面を変えるように要求している信号であるる側面を変えるように要求している信号であるとと考える考える。。 松端は,「強度行動障害 松端は,「強度行動障害とされる行動はとされる行動は,,その人が他者・環境とのあいだでその人が他者・環境とのあいだで,,そして同時そして同時に自己自身とのあいだでに自己自身とのあいだで,,自己を保つために意識的自己を保つために意識的,,自覚的にというよりもむしろ生命・自覚的にというよりもむしろ生命・身体レベルにおいて身体レベルにおいて,,かろうじてとっている応急的で主体的な行動であると理解できるかろうじてとっている応急的で主体的な行動であると理解できる」」と述べている。さらにと述べている。さらに,,彼は彼は,,強度行動障害を現代社会の権力関係や社会システム強度行動障害を現代社会の権力関係や社会システム((例えば例えば能力偏重・学歴社会能力偏重・学歴社会))への問いかけではないかと指摘しへの問いかけではないかと指摘し,,強度行動障害とされる行動を強度行動障害とされる行動を,,本本人は必ずしも自覚していなくても人は必ずしも自覚していなくても,支配的な秩序や規範との対立,あるいは押しつけられ,支配的な秩序や規範との対立,あるいは押しつけられる役割期待る役割期待やアイデンティティへの拒絶・抵抗として捉えればやアイデンティティへの拒絶・抵抗として捉えれば,,むしろその行動のなかにむしろその行動のなかに現代社会の抑圧的なシステムから逃れ出る可能性が見出せはしないであろうかと語ってい現代社会の抑圧的なシステムから逃れ出る可能性が見出せはしないであろうかと語っている。る。32))このような視点から援助者に求められる役割としてこのような視点から援助者に求められる役割として,,松端は以下のように指摘して松端は以下のように指摘して 31))真鍋龍司真鍋龍司((20092009))強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行.発達障害研究第強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行.発達障害研究第3131巻第巻第55号,号,pp.pp.384384--399399 32))松端克文松端克文((19971997))「強度行動障害」児・者の居住施設処遇に関する考察-事例研究を中心として-.九州・大谷研究「強度行動障害」児・者の居住施設処遇に関する考察-事例研究を中心として-.九州・大谷研究 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 18 いる。 いる。「「援助者に求められるのは援助者に求められるのは,,利用者の問題行動を単利用者の問題行動を単に軽減することではない。閉じらに軽減することではない。閉じられたサイクルれたサイクル,,硬直した環境硬直した環境((施設でいえば既定の生活リズムや雰囲気施設でいえば既定の生活リズムや雰囲気))に利用者を一方的に利用者を一方的に適応させることではない。むしろそのかかわりを契機にしてに適応させることではない。むしろそのかかわりを契機にして,,入居者の側からその行動入居者の側からその行動の意味を読み解きつつの意味を読み解きつつ,,既定の秩序なり規範をずらせながら既定の秩序なり規範をずらせながら((再構築させながら再構築させながら)),,別の意別の意味次元において利用者と共にそれらを作りかえていくという絶え間ない営みではないだろ味次元において利用者と共にそれらを作りかえていくという絶え間ない営みではないだろうか。うか。」」 さらに さらに,,林は林は,,自閉症の人々を主対象とする「あさけ学園」の建築設計を担うことにな自閉症の人々を主対象とする「あさけ学園」の建築設計を担うことになりり,,設計ができるまでの過程で設計ができるまでの過程で,,自閉症児施設に延べ数ヵ月泊まり込んで観察自閉症児施設に延べ数ヵ月泊まり込んで観察調査を行っ調査を行った。そこで確信を持ったことはた。そこで確信を持ったことは,,行動障害というものは行動障害というものは,,環境とのかかわりの中で初めて環境とのかかわりの中で初めて生じてくるものであり生じてくるものであり,,的確な指導あるいは環境整備と入所する障害者にマッチする豊か的確な指導あるいは環境整備と入所する障害者にマッチする豊かな環境があればな環境があれば,,意外に容易に行動障害を消去・軽減できるということであったとしてい意外に容易に行動障害を消去・軽減できるということであったとしている。そしてる。そして,,行動障害の発生について行動障害の発生について,,彼らが自分の気持ちを表現する手段に乏しく彼らが自分の気持ちを表現する手段に乏しく,,環環境からのストレスを調整していく力も十分持ち合わせていないことを考えれば境からのストレスを調整していく力も十分持ち合わせていないことを考えれば,,彼らの無彼らの無断外出という行為も断外出という行為も,,社会化はされていないものの社会化はされていないものの,,「ここにいたくない」あるいは「もっ「ここにいたくない」あるいは「もっと注目してほしい」といった納得のいく自己表現として了解することは難しいことではなと注目してほしい」といった納得のいく自己表現として了解することは難しいことではないと指摘しいと指摘し,,したがってしたがって,,鍵や窓格子といった手段によって鍵や窓格子といった手段によって,,彼らの乏しいなかで最も効彼らの乏しいなかで最も効果的な表現手段である無断外出を阻止すれば果的な表現手段である無断外出を阻止すれば,,他の問題行動をその代わりとする危険性は他の問題行動をその代わりとする危険性は高く高く,,根本的解決にはならないと忠告している。根本的解決にはならないと忠告している。33))ちなみにちなみに,,鍵や窓格子のない「あさけ鍵や窓格子のない「あさけ学園」で無断外出を繰り返し学園」で無断外出を繰り返し,,周囲を悩ませていたある障害者は周囲を悩ませていたある障害者は,,11年半たった時点で飛年半たった時点で飛び出しがなくなったという。その背景にはび出しがなくなったという。その背景には,,施設職員が施設職員が,,「いらいらする。飛び出「いらいらする。飛び出したい」したい」という利用者の訴えをしっかりと聞きという利用者の訴えをしっかりと聞き,,受け止めるなかで培われた利用者と職員とのコミ受け止めるなかで培われた利用者と職員とのコミュニケーションの深化があったと総括している。ュニケーションの深化があったと総括している。 以上の先行研究をふまえると,行動障害とは,言語等の表出コミュニケーション手段を 以上の先行研究をふまえると,行動障害とは,言語等の表出コミュニケーション手段を持ち得ていない彼らが,自己の思いを他者に伝えようとする手段であったり,伝えたいこ持ち得ていない彼らが,自己の思いを他者に伝えようとする手段であったり,伝えたいことがうまく伝わらないもどかしさの表現であったりといった,彼らが自分らしく生きていとがうまく伝わらないもどかしさの表現であったりといった,彼らが自分らしく生きていく上で,極めて重要な意思表出手段であると考えられる。したがって,彼らに携わる援助く上で,極めて重要な意思表出手段であると考えられる。したがって,彼らに携わる援助者は,行動障害の現象面だけに目を向けてその軽減・消去のための者は,行動障害の現象面だけに目を向けてその軽減・消去のための対応を考えるのではな対応を考えるのではなく,彼らに内在する思いを周囲の者がしっかりと受け止め,彼らが自己実現できるようなく,彼らに内在する思いを周囲の者がしっかりと受け止め,彼らが自己実現できるような支援の方法と環境をいかに構築していくかということこそが重要であると考えられるので支援の方法と環境をいかに構築していくかということこそが重要であると考えられるのではないだろうか。はないだろうか。
3 3 微視的アプローチと巨視的アプローチの統合とは微視的アプローチと巨視的アプローチの統合とは
2000 2000年代に入り年代に入り,,行動障害の生起要因は行動障害の生起要因は,,個人にのみ帰属するのではなく個人にのみ帰属するのではなく,,その行動がその行動が生じている場面や生じている場面や,,周囲の人の対応も含めた環境との関係性の中に見出す必要性が指摘さ周囲の人の対応も含めた環境との関係性の中に見出す必要性が指摘されるようになった。れるようになった。野口は,野口は,今日今日,,強度行動障害者支援においては強度行動障害者支援においては,,質の高い地域での生質の高い地域での生活を保障していくこと活を保障していくことが最も重視されておりが最も重視されており,,そのための支援方法はそのための支援方法は,個人へのアプロー,個人へのアプローチである「チである「微視的アプローチ微視的アプローチ」」とと環境に対するアプローチである「環境に対するアプローチである「巨視的アプローチ巨視的アプローチ」」のの 紀要 紀要2323,pp.,pp.2323--4141 33))林章林章((19951995))知的障害をもつ人々にとっての生活の豊かさと施設の意味.建築雑誌知的障害をもつ人々にとっての生活の豊かさと施設の意味.建築雑誌Vol.Vol.11019951101995年年33月号月号pp.pp.3535--3636 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 19 2 2つの方略を統合して対応することつの方略を統合して対応することであるであるとと指摘して指摘している。いる。34))このことについて研究を行このことについて研究を行ったったLucyshyn et al(Lucyshyn et al(19951995))はは,,行動障害を示す人の環境やサービスを見直し行動障害を示す人の環境やサービスを見直し,,その人の特その人の特性に合った生活を提供し性に合った生活を提供し,,その結果として行動障害も減少することを示している。さらにその結果として行動障害も減少することを示している。さらに,,今日今日,,最も強調されていることは最も強調されていることは,,「個人の権利」であり「個人の権利」であり,,行動障害の軽減にとどまらず行動障害の軽減にとどまらず,,あくまでも行動障害を示す人の生活の質の向上に向けた援助の必要性であるあくまでも行動障害を示す人の生活の質の向上に向けた援助の必要性であるとしているとしている。。35))また,また,Carr et al(1998)Carr et al(1998)は,は,巨視的アプローチ巨視的アプローチととはは,,生活環境生活環境,,社会的関係社会的関係,,教育・就教育・就労・余暇の場における文脈要因を推定し労・余暇の場における文脈要因を推定し,,援助の対象となる人が充実した生活を送れるよ援助の対象となる人が充実した生活を送れるような生活環境を設定する方法であるうな生活環境を設定する方法であると指摘していると指摘している。。36)) また,両アプローチ統合の例として, また,両アプローチ統合の例として,Hieneman and DunlapHieneman and Dunlapはは,,地域生活における行地域生活における行動上の支援の成果に影響を及ぼす要因として動上の支援の成果に影響を及ぼす要因として,,①当事者本人の特徴の把握①当事者本人の特徴の把握,,②行動の特性②行動の特性と経歴と経歴((歴史歴史)),,③行動③行動支援計画のデザイン支援計画のデザイン,,④実行の確実性④実行の確実性,,⑤物理的な環境の特性⑤物理的な環境の特性,,⑥⑥支援の受け入れ体制支援の受け入れ体制,,⑦支援提供者の能力⑦支援提供者の能力,,⑧本人との信頼関係⑧本人との信頼関係,,⑨大方の考え⑨大方の考え((価値観価値観))と合っているかと合っているか,,⑩システムの応答⑩システムの応答性や柔軟性,⑪サービス提供者間の協働,⑫コミュニ性や柔軟性,⑪サービス提供者間の協働,⑫コミュニティの受け入れのティの受け入れの1212点を挙げている。点を挙げている。37)) さらに,西野は, さらに,西野は,「行動障害児「行動障害児((者者))の行動改善および処遇の在り方に関する研究」の行動改善および処遇の在り方に関する研究」((行動行動障害児障害児((者者))研究会研究会19891989))において,において,強度行動障害特別処遇事業の中で明らかになった適切な強度行動障害特別処遇事業の中で明らかになった適切な処遇条件として処遇条件として,,①構造化①構造化,,②コミュニケーション②コミュニケーション,,③薬物療法③薬物療法,,④キーパーソン④キーパーソン,,⑤静⑤静音環境音環境,,⑥生活リズム⑥生活リズム,,⑦成功体験⑦成功体験,,⑧学校と施設の連携を挙げている⑧学校と施設の連携を挙げている。。38)) 一方, 一方,日本知的障害者福祉協会福祉ホーム・グループホーム等分科会による「重度の障日本知的障害者福祉協会福祉ホーム・グループホーム等分科会による「重度の障害のある人が利用する地域生活援助事業害のある人が利用する地域生活援助事業((グループホームグループホーム))に関する調査報告」に関する調査報告」((20032003))ではでは,,調査結果に基づく提言において調査結果に基づく提言において,,「入所施設からの地域生活移行において「入所施設からの地域生活移行において,,重度の障害があ重度の障害があることがブレーキになっているようであるがることがブレーキになっているようであるが,,条件を整えれば重度の障害がある人であっ条件を整えれば重度の障害がある人であっても地域生活移行が可能であることをても地域生活移行が可能であることを,,今回の調査結果が示しているものと考える」今回の調査結果が示しているものと考える」とと言言及してい及している。る。 野口は野口は,強度行動障害者支援のあり方研究について,「,強度行動障害者支援のあり方研究について,「これまでもこれまでも,,行動障害の激しい人行動障害の激しい人たちへの援助においてたちへの援助において,,援助者の能力が重要な鍵となることはたびたび指摘されてきたが援助者の能力が重要な鍵となることはたびたび指摘されてきたが,,従来の研究は従来の研究は,,効果的な行動介入の方法や介入者や環境条件の許容範囲内での実験的な研効果的な行動介入の方法や介入者や環境条件の許容範囲内での実験的な研究が多く究が多く,,実践的な取り組みの中での援助者とそれを支援する体制に関する研究はほとん実践的な取り組みの中での援助者とそれを支援する体制に関する研究はほとんどないのが実状であるどないのが実状である」」と指摘している。同様にと指摘している。同様に,,高林も高林も,「,「行動障害に関する先行研究の行動障害に関する先行研究の多くは多くは,,行動障害の課題を行動障害の課題を,,対人的なスキルや教育・社会福祉の現場といった限定された対人的なスキルや教育・社会福祉の現場といった限定された生活場面における環境調整としてとらえている生活場面における環境調整としてとらえている」」と指摘しと指摘し,,さらにさらに,「,「今日今日,,強度行動障害強度行動障害を社会福祉の課題として取り上げる上で大切なことはを社会福祉の課題として取り上げる上で大切なことは,,強度行動障害を規定している問題強度行動障害を規定している問題の社会性を見失うことなくの社会性を見失うことなく,,生活の具体的な事実にあらわれている強度行動障害に関する生活の具体的な事実にあらわれている強度行動障害に関する課題をトータルに把握することである課題をトータルに把握することである」」と提言している。と提言している。39))一方,一方,下山らは下山らは,「,「19931993年に年に 34))野口幸弘野口幸弘((20042004)):前掲書:前掲書 35))下山真衣・園山繁樹下山真衣・園山繁樹((20052005))行動障害に対する行動論的アプローチの発展と今後の課題-行動障害の低減から生活全行動障害に対する行動論的アプローチの発展と今後の課題-行動障害の低減から生活全般の改善へ-特殊教育学研究,般の改善へ-特殊教育学研究,4343((11)pp.)pp.99--2020 36))園山繁樹・野口幸弘園山繁樹・野口幸弘他他(訳)(訳)((20012001))挑戦的行動の先行子操作-問題行動への新しい援助アプローチ.二瓶社,挑戦的行動の先行子操作-問題行動への新しい援助アプローチ.二瓶社,33--2626 37))Hieneman, M. & Dunlap, G. (Hieneman, M. & Dunlap, G. (20002000) Factor affecting the outcomes of community) Factor affecting the outcomes of community--based behavioral support.based behavioral support. 38))西野知子西野知子((20062006))強度行動障害への対応と課題.金強度行動障害への対応と課題.金城学院大学論集人文科学編第城学院大学論集人文科学編第22巻第巻第22号号pp.pp.5151--5757 39))高林秀明高林秀明(2005)(2005):前掲書:前掲書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 20 国の事業として強度行動障害特別処遇事業が開始されたが 国の事業として強度行動障害特別処遇事業が開始されたが,,行動障害を示す人への援助方行動障害を示す人への援助方法は未だ体系化されているとはいえず法は未だ体系化されているとはいえず,,福祉現場の困福祉現場の困惑が続いている惑が続いている」」と指摘している。と指摘している。40)) 以上の先行研究の検討を通じて筆者が実感したことは,今日,強度行動障害者支援にお 以上の先行研究の検討を通じて筆者が実感したことは,今日,強度行動障害者支援において,現場実践における対象者への直接的アプローチのみではなく,広く環境やシステムいて,現場実践における対象者への直接的アプローチのみではなく,広く環境やシステムに働きかける巨視的アプローチの重要性が指摘されているが,巨視的アプローチそのものに働きかける巨視的アプローチの重要性が指摘されているが,巨視的アプローチそのものの構造化や内容分類については明確な整理が出来ていないということである。の構造化や内容分類については明確な整理が出来ていないということである。 また,福祉や教育等の支援現場においては,強度行動障害者に対する支援方法はある程 また,福祉や教育等の支援現場においては,強度行動障害者に対する支援方法はある程度研究が進められてきているが,地域や家庭などを含む普通の暮らしの場での支援体制の度研究が進められてきているが,地域や家庭などを含む普通の暮らしの場での支援体制のあり方,支援現場を支援する体制のあり方等についての研究はほとんどなされておらず,あり方,支援現場を支援する体制のあり方等についての研究はほとんどなされておらず,そうしたふつうの地域を基盤とした実践的研究が今後の課題であるということである。そうしたふつうの地域を基盤とした実践的研究が今後の課題であるということである。
4 4 巨視的アプローチとしての物理的環境設定巨視的アプローチとしての物理的環境設定
行動障害者にとっての物理的環境の重要性が強く認識される中行動障害者にとっての物理的環境の重要性が強く認識される中,,そうした実践的研究もそうした実践的研究も進んでいる。進んでいる。当法人の強度行動障害者支援研究事業においても,このこと当法人の強度行動障害者支援研究事業においても,このことはとりわけ重視はとりわけ重視して事業に取り組んできた。そこで,先行研究により,これまでに国内で先進的に取り組して事業に取り組んできた。そこで,先行研究により,これまでに国内で先進的に取り組まれた物理的環境設定の内容を明らかにする中で,強度行動障害者支援においてどのようまれた物理的環境設定の内容を明らかにする中で,強度行動障害者支援においてどのような環境設定が求められるのかについて,検討していきたい。な環境設定が求められるのかについて,検討していきたい。 先に紹介した知花らによる自閉症関係施設を対象としたアンケート調査結果において先に紹介した知花らによる自閉症関係施設を対象としたアンケート調査結果において,,各施設が建物や設備・備品においてどのような物理的環境作りを行っているかについて明各施設が建物や設備・備品においてどのような物理的環境作りを行っているかについて明らかにされている。そこではらかにされている。そこでは,,居室においては居室においては,,生活の場にふさわしい環境作りとして観生活の場にふさわしい環境作りとして観葉植物や飾り付けの工夫葉植物や飾り付けの工夫,,パニック等で転倒さパニック等で転倒させ壊したりすることのないよう安全上の配せ壊したりすることのないよう安全上の配慮からテレビを天井近くに固定している慮からテレビを天井近くに固定している,,生活空間に暖かみを出すために床にカーペット生活空間に暖かみを出すために床にカーペットを使用しているなどがあがっている。またを使用しているなどがあがっている。また,,食堂・ダイニングにおいては食堂・ダイニングにおいては,,騒がしい雰囲騒がしい雰囲気が苦手の人に対し気が苦手の人に対し,,パーテーション等で仕切り構造化しているパーテーション等で仕切り構造化している,,動線を考えた設備動線を考えた設備,,使使いやすく良質の道具の導入などが行われている。作業室においてはいやすく良質の道具の導入などが行われている。作業室においては,,トランジッションルトランジッションルームと作業場とを仕切りームと作業場とを仕切り,,構造化している構造化している,,生活と日中活動との行動の切り替えが図れる生活と日中活動との行動の切り替えが図れるように職住分離を行っている。その他にはように職住分離を行っている。その他には,,とにかく頑丈なものを使用とにかく頑丈なものを使用,,壊しても壊しても本人に本人に危険の無いものなどを使用しているなどの意見があがっている。一方危険の無いものなどを使用しているなどの意見があがっている。一方,,設備・備品などで設備・備品などでの工夫としてはの工夫としては,,破損予防のため破損予防のため,,テレビを扉付きのケースに入れているテレビを扉付きのケースに入れている,,窓ガラスの代窓ガラスの代わりにアクリル板を使用しているわりにアクリル板を使用している,,ベッドを衝撃によるダメージを最小限に抑えるためロベッドを衝撃によるダメージを最小限に抑えるためロータイプのものにしているなどがあがっている。またータイプのものにしているなどがあがっている。また,,情報伝達の配慮として情報伝達の配慮として,,写真カー写真カードの使用ドの使用,,洗濯時にアラームタイマーを使用しているなどが行われている。洗濯時にアラームタイマーを使用しているなどが行われている。41))こうした取こうした取り組みはり組みは,,TEACCHTEACCHプログラムを導入している施設などではプログラムを導入している施設などでは,,環境の構造化として環境の構造化として,,概概ね導入されていると思ね導入されていると思われる。われる。 羽合ひかり園の強度行動障害者支援プロジェクト報告羽合ひかり園の強度行動障害者支援プロジェクト報告42))でではは,,20042004年から年から20092009年ま年までの間に強度行動障害者に対する支援を行ってきている。その成果としてでの間に強度行動障害者に対する支援を行ってきている。その成果として,,「「11.周囲の環.周囲の環境を調整することで境を調整することで,,行動障害は軽減する。行動障害は軽減する。22.周囲の環境を調整することで.周囲の環境を調整することで,,((行動自体行動自体 40))下山真衣・園山繁樹(下山真衣・園山繁樹(20052005):前掲書):前掲書 41))知花弘吉・貝戸裕子知花弘吉・貝戸裕子((20042004))自閉症者の行動障害と生活空間に関する研究.近畿大学理工学部研究報告自閉症者の行動障害と生活空間に関する研究.近畿大学理工学部研究報告4040,,pp.pp.8383--9090 42))信原和典・安田健太郎・土尾進・藤田英明・藤原悠平信原和典・安田健太郎・土尾進・藤田英明・藤原悠平((羽合ひかり園強度行動障害者支援プロジェクト羽合ひかり園強度行動障害者支援プロジェクト)) ((20102010)) 成成人施設における強度行動障害を有する方を対象とした支援結果について人施設における強度行動障害を有する方を対象とした支援結果について 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 21 は存在するが は存在するが))反社会的な行動を軽減することができる」ということを明らかにしている。反社会的な行動を軽減することができる」ということを明らかにしている。 一方,一方,現状として支援における環境的側面の調整が進んでいるのかについて現状として支援における環境的側面の調整が進んでいるのかについて,,京は京は,,否否定的な見解を示している。彼は定的な見解を示している。彼は,,行動障害もしくは強度行動障害が行動障害もしくは強度行動障害が,,先天性の障害などの先天性の障害などの個人的要因と生育歴や対人関係などの環境的要因の間で不調和が生じ個人的要因と生育歴や対人関係などの環境的要因の間で不調和が生じ,,結果的にパニック結果的にパニックや衝動的行動などが誘発されている状態を示しているという考えのもとでや衝動的行動などが誘発されている状態を示しているという考えのもとで,,特に近年特に近年,,そその発生について環境的要因が強く影響することが指摘されていることからの発生について環境的要因が強く影響することが指摘されていることから,,支援の実施に支援の実施に際し際し,,環境的側面の調整を求めることが共通理解となってきていると言及した上で環境的側面の調整を求めることが共通理解となってきていると言及した上で,,「とは「とはいえいえ,,支援を実施する体制は築けているかと言えば支援を実施する体制は築けているかと言えば,,その答えは否と言わざるを得ない」その答えは否と言わざるを得ない」と述べている。と述べている。43))また,また,多人数施設における環境調整の限界性多人数施設における環境調整の限界性についてについてもも声があがってい声があがっている。すぎのき寮の強度行動障害研究る。すぎのき寮の強度行動障害研究((19961996))の報告書の報告書には,には,「日中は居室や玄関の鍵をかけざ「日中は居室や玄関の鍵をかけざるを得ない状況の中でるを得ない状況の中で,,使える場所は使える場所は,,ホールホール,,廊下廊下,,ベランダだけでありベランダだけであり,,くつろげるくつろげる場所さえ確保されない現状の中で場所さえ確保されない現状の中で,,情緒の安定が図れるのであろうか」と疑問情緒の安定が図れるのであろうか」と疑問がが投げかけ投げかけられ,られ,さらに「小集団での処遇が必要なのは明白でありさらに「小集団での処遇が必要なのは明白であり,,早急に早急に,,ハード面での施設整備ハード面での施設整備が望まれる。加えてが望まれる。加えて,,職員を固定もしくはそれに近い状態での処遇が望ましいと思われ職員を固定もしくはそれに近い状態での処遇が望ましいと思われ,,人員の増員も望まれる」と述べている。人員の増員も望まれる」と述べている。さらに,さらに,既存の知的障害者入所施設のように硬直既存の知的障害者入所施設のように硬直した環境した環境,,大人数での生活を余儀なくされる環境の場大人数での生活を余儀なくされる環境の場においてにおいて行動障害者に対する適切な行動障害者に対する適切な環境設定を施すには環境設定を施すには,,極めて大きな困難性が伴うこと極めて大きな困難性が伴うことをを指摘指摘ししている。ている。44))西野は西野は,,知的障知的障害者更生施設のような環境の中では害者更生施設のような環境の中では,,個室化個室化,,冷暖房など温度・湿度調節冷暖房など温度・湿度調節,,照明照明,,静かな静かな環境環境,,一人で過ごせる時間一人で過ごせる時間,,プライバシーが守られる環境プライバシーが守られる環境,,そのための日課や個別プログそのための日課や個別プログラムと集団プログラムを十分充たすのは困難でありラムと集団プログラムを十分充たすのは困難であり,,環境を整えることにより環境を整えることにより,,強度行動強度行動障害の予防と軽減化が果たされると考えられるが障害の予防と軽減化が果たされると考えられるが,,現在の施設環境の中では難しいと言わ現在の施設環境の中では難しいと言わねばならないと強調している。ねばならないと強調している。45)) このように一般論としては,筆者も,既存の入所更生施設においては,行動障害者にと このように一般論としては,筆者も,既存の入所更生施設においては,行動障害者にとっての最適な環境設定を行うことは極めて困難であるというのが実状であろうと思う。っての最適な環境設定を行うことは極めて困難であるというのが実状であろうと思う。 しかしながら,知的障害者入所更生施設という法的枠組みの中においても,以下に述べ しかしながら,知的障害者入所更生施設という法的枠組みの中においても,以下に述べる施設は,建物の構造,間取り,運営システム,支援方法等において,一般的な施設とはる施設は,建物の構造,間取り,運営システム,支援方法等において,一般的な施設とは極めて異なっており,徹底した利用者の人権尊重と利用者主体を貫いた運営を行っている。極めて異なっており,徹底した利用者の人権尊重と利用者主体を貫いた運営を行っている。 その施設は,京都の その施設は,京都の「横手通り「横手通り4343番地『庵』番地『庵』」という障害者支援施設」という障害者支援施設((旧法「知的障害者旧法「知的障害者入所更生施設」入所更生施設」))である。筆者は,である。筆者は,20092009年年99月,その施設を訪問し見学した。そこでいた月,その施設を訪問し見学した。そこでいただいた施設のパンフレットと樋口施設長の話によると,その施設のだいた施設のパンフレットと樋口施設長の話によると,その施設の特徴は以下のとおりで特徴は以下のとおりである。①強度行動障害者や最重度障害者を積極的に受け入れている。②定員ある。①強度行動障害者や最重度障害者を積極的に受け入れている。②定員4040人の小規人の小規模の施設であるが模の施設であるが,,建物が建物が77棟に分かれており棟に分かれており,,11棟あたり棟あたり55人から人から77人で人で11ユニットをユニットを構成している。③居室は全室個室である。④各ユニットに住み込みの支援スタッフを配置構成している。③居室は全室個室である。④各ユニットに住み込みの支援スタッフを配置している。⑤日中活動はしている。⑤日中活動は,,居住棟から遠く離れており居住棟から遠く離れており,,場所も支援者も完全場所も支援者も完全に昼夜分離しに昼夜分離している。⑥居住棟での暮らしはている。⑥居住棟での暮らしは,,プログラムで動くのではなくプログラムで動くのではなく,,利用者の五感に届く営み利用者の五感に届く営みのサインに促され能動的に暮らす。⑦家族との連携のために週末帰宅を実施しておりのサインに促され能動的に暮らす。⑦家族との連携のために週末帰宅を実施しており,,家家に帰れない残留者に対しては充実した余暇活動を提供している。⑧徹底した掃除によりに帰れない残留者に対しては充実した余暇活動を提供している。⑧徹底した掃除により,, 43))京俊介京俊介((20102010))障害者福祉におけるコンサルテーションの役割に関する一考察-地域で生活する強度行動障害のある障害者福祉におけるコンサルテーションの役割に関する一考察-地域で生活する強度行動障害のある人の支援を通じて-.島根大学社会福祉論集第人の支援を通じて-.島根大学社会福祉論集第33号号pp.pp.2626--4444 44))山崎日出明他山崎日出明他((19961996))すぎのき寮強度行動障害研究すぎのき寮強度行動障害研究pp.pp.3333--5252 45))西野知子西野知子((20062006)):前掲書:前掲書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 22 臭いのしない施設となっている。⑨駅から徒歩圏内に所在している。⑩遮音性の高い良質 臭いのしない施設となっている。⑨駅から徒歩圏内に所在している。⑩遮音性の高い良質な建物となっている。このようにな建物となっている。このように,,この施設ではこの施設では,,様々な環境上の配慮を行うことにより様々な環境上の配慮を行うことにより,,行動障害の軽減を目指しているのである。行動障害の軽減を目指しているのである。 樋口は樋口は,,強度行動障害者にとってのユニットケアの持つ意味合強度行動障害者にとってのユニットケアの持つ意味合いについていについて,,以下のよう以下のように述べている。少し長くなるが引用する。「障害の重い人でも介護されているという受身なに述べている。少し長くなるが引用する。「障害の重い人でも介護されているという受身な部分をできるだけ少なくすることで部分をできるだけ少なくすることで,,能動性を引き出し能動性を引き出し,,高め高め,,利用者のエンパワメント利用者のエンパワメントの上に成り立つ生活を実現することの上に成り立つ生活を実現すること,,ユニットケアの目的である。小規模で構造化されたユニットケアの目的である。小規模で構造化された生活感のある住環境生活感のある住環境,,利用者とスタッフとの程よい距離感利用者とスタッフとの程よい距離感,,人と場所を変えての職住分離人と場所を変えての職住分離,,週末帰宅による地域や家庭との絶え間ない交流週末帰宅による地域や家庭との絶え間ない交流,,という施設の運営コンセプトによる環境という施設の運営コンセプトによる環境調整によって調整によって,,困難な障害状況にある人たちも困難な障害状況にある人たちも,,その複雑に絡んだ問題の糸が少しずつ解その複雑に絡んだ問題の糸が少しずつ解きほぐされきほぐされ,,問題となる行動が激減してきたことは特筆される成果であると考える。最重問題となる行動が激減してきたことは特筆される成果であると考える。最重度者や発達障害等に起因した環境に対する不適応に苦しむ人たちへの自立支援やその行動度者や発達障害等に起因した環境に対する不適応に苦しむ人たちへの自立支援やその行動の変容に向けての取り組みはの変容に向けての取り組みは,,こうした小舎制によるユニットケアの施設でこそできるプこうした小舎制によるユニットケアの施設でこそできるプログラムであると確かな手応えを感じている。しかしながらログラムであると確かな手応えを感じている。しかしながら,,根本的な問題として根本的な問題として,,彼ら彼らの持つ耐性の低さはの持つ耐性の低さは,,依然として残る問題であり依然として残る問題であり,,長期にわたり手厚い人的・物理的環境長期にわたり手厚い人的・物理的環境支援を必要としている。」支援を必要としている。」46)) 筆者は,この施設を見学し,これは,法律上は筆者は,この施設を見学し,これは,法律上は入所更生施設として建設されたが,事実入所更生施設として建設されたが,事実上は,ひとつの敷地内に複数のケアホームが合築されており,利用者の暮らしの環境を第上は,ひとつの敷地内に複数のケアホームが合築されており,利用者の暮らしの環境を第一に考えられた,非常に工夫された施設であると思った。このような施設形態は,強度行一に考えられた,非常に工夫された施設であると思った。このような施設形態は,強度行動障害者を地域で受け入れる施設として極めて理想的であると思う。その理由は,少人数動障害者を地域で受け入れる施設として極めて理想的であると思う。その理由は,少人数の暮らしを保障しながらも,ホーム同士が隣接しているため,各ホームが孤立化せず,支の暮らしを保障しながらも,ホーム同士が隣接しているため,各ホームが孤立化せず,支援者間の連携が取りやすいこと,さらに,近隣地域とのつかず離れずの一定の距離感を確援者間の連携が取りやすいこと,さらに,近隣地域とのつかず離れずの一定の距離感を確保している点で,地域住民とのトラブル等も未然に防止することが可能であることな保している点で,地域住民とのトラブル等も未然に防止することが可能であることなどがどが挙げられるだろう。このように既存の硬直した法制度のもとにおいても,利用者主体の信挙げられるだろう。このように既存の硬直した法制度のもとにおいても,利用者主体の信念と職員の工夫によって,強度行動障害を持つ人が快適に暮らすことのできる環境設定は念と職員の工夫によって,強度行動障害を持つ人が快適に暮らすことのできる環境設定は可能であることを痛感した。可能であることを痛感した。
5 5 巨視的アプローチとしての人的環境設定巨視的アプローチとしての人的環境設定
強度行動障害者を支援するにあたっては,他傷,物壊し等激しい破壊的行動などを避け強度行動障害者を支援するにあたっては,他傷,物壊し等激しい破壊的行動などを避けるために,利用者と職員の比率がるために,利用者と職員の比率が11対対11,又は,又は11対対22,あるいは,あるいは11対対33を必要とする人もを必要とする人もいる。そこで,これまで強度行動障害者支援現場において,彼らの人的環境をどのようにいる。そこで,これまで強度行動障害者支援現場において,彼らの人的環境をどのように整備していったのか,その考え方と実際整備していったのか,その考え方と実際の環境設定状況について先行研究を検討した。の環境設定状況について先行研究を検討した。 西野 西野は,は,職員配置数について職員配置数について,,強度行動障害特別処遇事業においても「真に成果をあげ強度行動障害特別処遇事業においても「真に成果をあげようとすればようとすれば,,逆に事業を受託した法人と施設には大きな経済的負担が掛かっているのが逆に事業を受託した法人と施設には大きな経済的負担が掛かっているのが現状」と指摘現状」と指摘ししておりており,,44人の強度行動障害者に対し人の強度行動障害者に対し33人の支援者という職員配置におい人の支援者という職員配置においてでさえ不十分であったとしている。このことについててでさえ不十分であったとしている。このことについて,,そもそも人員配置基準自体が低そもそも人員配置基準自体が低すぎるのでありすぎるのであり,,このことは指摘され続けているにもかかわらずこのことは指摘され続けているにもかかわらず,,改善されていないと述改善されていないと述べている。そして最後にべている。そして最後に,,施設の劣悪な環境施設の劣悪な環境,,建物・設備や人員配置をそのままにしてお建物・設備や人員配置をそのままにしておいていて,,すべての強度行動障害に対応せよというのは到底無理なことでありすべての強度行動障害に対応せよというのは到底無理なことであり,,制度制度,,施策に施策に 46))樋口幸雄樋口幸雄((20092009))知的障害者入所施設の新体系移行をめぐって.月刊ノーマライゼーション知的障害者入所施設の新体系移行をめぐって.月刊ノーマライゼーション20092009年年66月号月号 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 23 おけるさらなる改善が必要であると おけるさらなる改善が必要であると指摘している指摘している。。47)) さて,人員配置をより充実させるとは,言い換えれば,それに必要なサービス報酬を確 さて,人員配置をより充実させるとは,言い換えれば,それに必要なサービス報酬を確保するということに他ならない。なぜならば,充実した人員配置を行うには,人件費とし保するということに他ならない。なぜならば,充実した人員配置を行うには,人件費としての予算が必要不可欠だからである。このことについて,わが国のサービス報酬が米国とての予算が必要不可欠だからである。このことについて,わが国のサービス報酬が米国と比較してどうなのか,その多寡について検証した。比較してどうなのか,その多寡について検証した。 定藤は定藤は,,19961996年年1010月月,,カリフォルニア州の障害者グループホームを視察しカリフォルニア州の障害者グループホームを視察し,,そこでのそこでの海外視察事情が海外視察事情が,,月刊ノーマライゼーション月刊ノーマライゼーション((19971997年年55月号月号))に掲載されている。同州ではに掲載されている。同州では,,障害の程度に応じて障害の程度に応じて44段階のサービスレベルが設定されてい段階のサービスレベルが設定されている。その中で最も重度のレベる。その中で最も重度のレベルがルが,,レベルレベル44でありであり,,そこではそこでは,,生活の自己管理能力を欠いていたり生活の自己管理能力を欠いていたり,,あるいは日常生あるいは日常生活動作自立が厳しく制限されたり活動作自立が厳しく制限されたり,,または他傷または他傷,,自傷的な行動上の問題が深刻な人たちの自傷的な行動上の問題が深刻な人たちのためにために,,ケアと生活支援や助言および専門的にスーパーバイズされた生活訓練を行うものケアと生活支援や助言および専門的にスーパーバイズされた生活訓練を行うものであるとしている。レベルであるとしている。レベル44のグループホームではのグループホームでは,,利用定員が利用定員が33,,44人の少人数で人の少人数で,,ママンツーマンに近いスタッフ体制がとられている。Kホームには男性ンツーマンに近いスタッフ体制がとられている。Kホームには男性11人人,,女性女性22人が生活人が生活している。男性はしている。男性は,,身体が大きくて身体が大きくて,,時々怒り出すと乱暴で時々怒り出すと乱暴で,,石を投げたり石を投げたり,,人を追い回人を追い回すなどすなどの行動を起こすという。女性のの行動を起こすという。女性の11人は人は,,グループホーム入居前はグループホーム入居前は,,問題行動を起こ問題行動を起こすと精神病院に一時的に保護されたりすと精神病院に一時的に保護されたり,,警察にも数回保護された経験があるという。それ警察にも数回保護された経験があるという。それらの利用者に対しらの利用者に対し,,スタッフは彼らに絶えず接して強い関心を示しスタッフは彼らに絶えず接して強い関心を示し,,様々な生活支援を行様々な生活支援を行うことでうことで,,行動障害に対応しているということである。行動障害に対応しているということである。 このグループホームを運営している「カリフォルニア地域居住サービス会社」ではこのグループホームを運営している「カリフォルニア地域居住サービス会社」では,,レレベルベル44のグループホームをのグループホームを77ヶ所運営している。利用者の定員はヶ所運営している。利用者の定員は,,33人が人が55ヶ所ヶ所,,44人が人が22ヶ所である。またヶ所である。また,,夜間は夜間は,,スタッフスタッフ22人体制が人体制が22ヶ所ヶ所,,11人体制が人体制が55ヶ所となっていヶ所となっている。州からの一人あたりの支給月額はる。州からの一人あたりの支給月額は,,33,,924924ドルドル((470470,,880880円円))からから77,,154154ドルドル((858858,,480480円円))でありであり,,平均平均55,,300300ドルドル((636636,,000000円円))であるである((当時のレート当時のレート11ドルドル120120円換算による円換算による))。。これに利用者数これに利用者数33人と人と1212ヶ月を乗じると日本円にしてヶ月を乗じると日本円にして,,33,,000000万円を超えている。万円を超えている。48)) ちなみにちなみに,,日本において区分日本において区分66の障害者がの障害者が33名でケアホーム生活をした場合の自立支援名でケアホーム生活をした場合の自立支援報酬は報酬は,(,(基本額基本額66,,450450円+夜間支援体制加算円+夜間支援体制加算33,,140140円円))××3030日×日×33人=人=863863,,100100円となる。円となる。まさにまさに,,日本の日本の33人分の報酬が人分の報酬が,,カリフォルニアのカリフォルニアの11人分に匹敵しているということであ人分に匹敵しているということでありり,,33倍の開きがあるということになる。如何に日本の強度行動障害者支援にかける費用倍の開きがあるということになる。如何に日本の強度行動障害者支援にかける費用が低額が低額に設定されているかが明らかである。に設定されているかが明らかである。 一方一方,,支援者のスキルとして支援者のスキルとして,,松端は松端は,,当事者にとっては当事者にとっては,,援助者がその行動にこめら援助者がその行動にこめられているところの意味をれているところの意味を,,彼自身に示している意味のままに了解していけるような存在と彼自身に示している意味のままに了解していけるような存在として立ち現れることができるのかして立ち現れることができるのか,,あるいは援助者がそうした不安定な自己が安定し自己あるいは援助者がそうした不安定な自己が安定し自己限定していけるような滋養的応答性を備えた環境を調整できるのか限定していけるような滋養的応答性を備えた環境を調整できるのかということが何よりもということが何よりも重要になってくると指摘している。重要になってくると指摘している。49)) またまた,,Olney Frantangelo, and LehrOlney Frantangelo, and Lehrはは,,援助者と当事者との関係性について援助者と当事者との関係性について,,援助者援助者と当事者との間で作られた情緒的な絆がと当事者との間で作られた情緒的な絆が,,直接支援の重要な基盤を創り出していることを直接支援の重要な基盤を創り出していることを 47))西野知子西野知子((20062006)):前掲書:前掲書 48))定藤丈弘定藤丈弘((19971997))カリフォルニア州のグループホームは今.月刊ノーマライゼーションカリフォルニア州のグループホームは今.月刊ノーマライゼーション19971997年年55月号月号pp.pp.3636--4141 49))松端克文松端克文((19971997)):前掲書:前掲書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 24 強調している。 強調している。50))さらにさらに,,Bambara et alBambara et alはは,,支援者と当事者の関係の深さ支援者と当事者の関係の深さ,,友人として友人としての誠実さの誠実さ((傾聴傾聴)),,共感の大切さ共感の大切さ,,特有のコミュニケーションの取り方の発見など特有のコミュニケーションの取り方の発見など,,その人その人をたくさんの行動障害をもっている人ではなくをたくさんの行動障害をもっている人ではなく,,かけがえのない「個人」としてみることかけがえのない「個人」としてみることのできるのできる関係性の展開を強調している。関係性の展開を強調している。51)) 強度行動障害者支援において,障害者自立支援法における職員配置基準人数の改善や,強度行動障害者支援において,障害者自立支援法における職員配置基準人数の改善や,高い専門性と実践力を持つ質の高い職員の確保を裏付ける報酬単価基準額の改善等の制度高い専門性と実践力を持つ質の高い職員の確保を裏付ける報酬単価基準額の改善等の制度的見直しの視点も不可欠である。的見直しの視点も不可欠である。本研究の中で本研究の中で,,強度行動障害者をケアホームにおいて支強度行動障害者をケアホームにおいて支援をしていくためにはどれだけの職員配置が必要であり援をしていくためにはどれだけの職員配置が必要であり,,どれだけの財政的上乗せが必要どれだけの財政的上乗せが必要であるのか等についてであるのか等について,現場の実状や直接支援職員の意向等もヒアリングしながら,,現場の実状や直接支援職員の意向等もヒアリングしながら,具体具体案を提言して案を提言していきたいと考えている。いきたいと考えている。
6 6 本節の小括本節の小括
強度行動障害とは,本人が持って生まれたものではなく,また,一生涯,治らないもの強度行動障害とは,本人が持って生まれたものではなく,また,一生涯,治らないものでもない。すなわち,適切な支援や環境設定が提供されれば,なくなり得るということが,でもない。すなわち,適切な支援や環境設定が提供されれば,なくなり得るということが,先行研究において共通した認識となっていることがわかった。その際に,適切な支援,適先行研究において共通した認識となっていることがわかった。その際に,適切な支援,適切な環境設定とは何かが問われている。これらのことについては,自閉症等激しい行動障切な環境設定とは何かが問われている。これらのことについては,自閉症等激しい行動障害のある知的障害者が暮らすケアホーム自体がようやく広がりつつある現状であるから,害のある知的障害者が暮らすケアホーム自体がようやく広がりつつある現状であるから,今後,多くの実践現場において試行錯誤が繰り返され,データが蓄積されていくことで,今後,多くの実践現場において試行錯誤が繰り返され,データが蓄積されていくことで,その理論化が期待されるところでその理論化が期待されるところであろう。

第3節 本章のまとめ

重度自閉症者にとって居住環境の重要性が指摘されている中で,入所施設において,建 物を細分化し,少人数でのグループにより生活が完結できるユニットケアを取り入れてい るところが増えている。一般に知的障害者入所施設の定員は, 50 名が標準規模となってい る。入所施設で生活し様々な行動問題を起こしていた入所者が,ユニットケアの施設に移 ることによって随分と落ち着いたという報告もいくつか挙がっている。そこには,少規模 だからこそ,利用者個々人の状況に応じた環境設定が可能であったり,人刺激や 環境刺激 の軽減につながっているということがあるのではないだろうか。 そのように考えると,重度自閉症者にとってケアホームでの生活は,彼らが落ち着いて 穏やかに生活を送る上で,大きな可能性を秘めているのではないかと考えられる。このよ うに仮説立て,次章においては,実際の福岡市内の障害者福祉サービス事業所が行動障害 をともなう自閉症者に対しどのような環境上の配慮や支援を行っているのかをアンケート 結果を分析しながら検討していく。 50 Olney, M. F., Frantangelo, P., &Lehr, S.( 2000 )Anatomy of commitment: An in vivo study. Mental Retardation, 38 , 234 243 51 野口幸弘 2004 )):前掲書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

第2章 行動障害者支援の現状と課題-福岡市内事業所の調査結果より-

第1節 強度行動障害者の 人数

強度行動障害者が、全国にどの程度の人数がいるのか、あるいは、特別支援学校や知的 障害者施設の中での 占有率 などについて、厚生労働省等の行政機関により正確に調査され たデータは見あたらない が 、いくつかの先行研究の中では、それぞれ独自で一定の調査が 行われており、その結果について 報告 されている。 財団法人日本知的障害者福祉協会の 「 平成 18 年度全国知的障害児・者施設実態調査報 告 」 によると、知的障害者入所施設の利用者のうち、 IQ 35 以下の重度知的障害者が 53 4 %、 IQ 測定不能の知的障害者は 15 6 %であり、併せて約 70 %の利用者が重度・最重度の知的 障害者であることが報告されている。なお、知的障害者入所更生施設利用者のうち、自閉 症の人は 8 7 %であり、一方強度行動障害と見られる人々も入所者全体の 5 %となっている。 なお、強度行動障害と見られる人のうち、約 8 割が自閉症であり、全例で中度ないし重度 の知的障害があることが予測されている。 52 また、知花らは、 2001 年に日本自閉症協会の自閉症関係施設名簿の知的障害者施設など 児童・通所・作業所含む の中から、できるだけ都道府県が分散するように 26 施設を選定 し、独自にアンケート調査を行った。回答の得られた施設は 12 施設 回収率 46 であっ た。それによると、全施設における自閉症者は 406 人であり、そのうち行動障害のある人 が 92 人であった。また、入所者全体に対する行動障害のある人の 占有 率の平均値は約 22 で、 最低 4 から最高 50 %まで広く分布しており、施設によってバラツキがあることが 明 らかになった 。行動障害のある人 92 人について、具体的な行動障害の内容については、 器物類破損 23 3 、他害 15 0 、自傷 13 5 、こだわり 12 0 、異食 12 0 などが 報告されている。 53 さらに、財団法人キリン記念財団助成研究報告書「行動障害児 者 の行動改善および処 遇の在り方に関する研究」 1989 行動障害児 者 研究会 によると、同研究会は、 1988 年 から 2 年間にわたり強度行動障害について調査を行って おり、 知的障害児 者 施設 等 476 施 設から回答を得ている。その結果、総在籍人数 36,015 人のうち、 3 379 人 9 3 %に行動障 害がみられたということである。そのうち、「特に激しい行動障害がいつも見られる」のは 1 120 人 3 1 %であったとのことである。 54 以上の結果から、知的障害者施設利用者のうち概ね 5 %から 10 %の人に行動障害があり、 さらにそのうち 3 %程度が強度行動障害者であるということが推測できる。 「障害者白書 52 石川肇 2009 障害者自立支援法と行動障害. 四條畷学園短期大学紀要 42 53 知花弘吉・貝戸裕子 2004 自閉症者の行動障害と生活空間に関する研究. 近畿大学理工学部研究報告 40 54 西野知子 2006 強度行動障害への対応と課題.金城学院大学論集人文科学編第 2 巻第 2 号 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 26 22 22年度版」によると、全国の知的障害者の人数は約年度版」によると、全国の知的障害者の人数は約5555万人である。万人である。この人数から全国のこの人数から全国の行動障害者数および強度行動障害者数を推測すると、前者は概ね行動障害者数および強度行動障害者数を推測すると、前者は概ね33万万人から人から55万人、後者万人、後者は概ねは概ね11万万66千人程度であると考えられる。千人程度であると考えられる。 先進国といわれるわが国において、おそらく数万人はいると思われる行動障害のある人 先進国といわれるわが国において、おそらく数万人はいると思われる行動障害のある人たちが、今も最適な居住環境や福祉サービスを享受できていないと考えられる状況は早急たちが、今も最適な居住環境や福祉サービスを享受できていないと考えられる状況は早急に改善しなければならない社会的問題であるといえるだろう。に改善しなければならない社会的問題であるといえるだろう。

第2節 平成22年実施の福岡市調査結果の考察

1 調査の 内容
福岡市では,平成 22 年 5 月に,福岡市内に所在する障害者関係施設・事業所 70 ヶ所を 対象に,「強度行動障害者支援に関するアンケート」を実施した。その目的は,今後の強度 行動障害者支援及び「福岡市強度行動障害者支援モデル事業」の運用のための参考に資す るためである。このアンケート調査の回答集計結果は,同年 8 月 3 日,福岡市保健福祉局 障害者施設支援課長名で市内各施設に送付された。それによると,当該アンケート用紙の 発送日は平成 22 年 5 月 14 日,回収締切日は同年 6 月 16 日となっている。 アンケート対象施設・事業所の内訳は, 市立施設 10 ヶ所,民間事業所・施設 56 ヶ所, 行動援護事業所 4 ヶ所となっている。送付事業所等 70 ヶ所に対し,回答した事業所等は 51 ヶ所(回答率 72.9%72.9%)であり,その内訳は,市立施設 10 ヶ所(同 100%100%),民間事業所・ 施設 37 ヶ所(同 66.1%66.1%),行動援護事業所 4 ヶ所(同 100%100%)である。 アンケート調査項目は 13 あるが,本研究と関連のある質問事項は,以下 7 項目である。 質問内容は, 1 番目「現在,激しい自傷や他傷,パニック,こだわり等,生活環境に極 めて特異な不適応行動を頻回・強度に示し,日常の生活に困難を生じ ていると認められる 利用者(以下,本アンケート上の「強度行動障害者」とします)がいますか。」, 2 番目「( 1 で「いない」に該当する場合のみ回答)現時点,若しくは一定の条件が整えばそう遠くな い時期に,強度行動障害者を受け入れることが可能と考えますか。」, 3 番目「強度行動障 害者に対しては,他の知的障害者に対する支援と相対的に,高度な支援技術,専門的知識 が必要と考えますか。」, 4 番目「適切かつ継続的な支援により,強度の行動障害を軽減す ることが可能と考えますか。」, 5 番目「強度行動障害者の支援を行うにあたって,事業所・ 施設における重要な課題はどのようなことと考えますか。(どのような課題が解決されれば, 貴事業所・施設で強度行動障害者の受入れが可能となりますか。)」, 6 番目「今後,強度行 動障害者支援を拡充していくうえで重要なことはどのようなことと考えますか。」, 7 番目 「強度行動障害に対する支援として,優先的に取り組むべきことはどのようなことだと考 えますか」である。 2 調査結果の考察
( 1 事業所内における行動障害者の状況 「現在,激しい自傷や他傷,パニック,こだわり等,生活環境に極めて特異な不適応行 動を頻回・強度に示し ,日常の生活に困難を生じていると認められる利用者(以下,本ア 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 27 ンケート上の「強度行動障害者」とします)がいますか。」という質問に対し,「いる」と ンケート上の「強度行動障害者」とします)がいますか。」という質問に対し,「いる」と答えた事業所数は答えた事業所数は5151ヶ所中ヶ所中2929ヶ所で全体のヶ所で全体の56.9%56.9%。一方,「いない」と答えた事業所数は同。一方,「いない」と答えた事業所数は同2222ヶ所で全体のヶ所で全体の43.1%43.1%であった。(図であった。(図22--11参照)参照) 全体の事業所のうち,過半数の事業所に強度行全体の事業所のうち,過半数の事業所に強度行動障害者が所属しているという事実は,強度行動動障害者が所属しているという事実は,強度行動障害者支援の課題が,ごく一部の事業所の問題で障害者支援の課題が,ごく一部の事業所の問題ではなく,多くの事業所にとっての問題となっていはなく,多くの事業所にとっての問題となっていることを示唆している。また,一方では,強度行ることを示唆している。また,一方では,強度行動障害者といわれる人たちが,地域の中で非常に動障害者といわれる人たちが,地域の中で非常に多く存在していることをも物語っているといえる多く存在していることをも物語っているといえるだろう。だろう。 ( (22))今後の行動障害者の受け入れの可否今後の行動障害者の受け入れの可否 次に,上記の質問に対して「いない」と答えた 次に,上記の質問に対して「いない」と答えた2222事業所に対して,「現時点,若しくは一定の事業所に対して,「現時点,若しくは一定の条件が整えばそう遠くない時期に,強度行動障条件が整えばそう遠くない時期に,強度行動障害者を受け入れることが可能と考えますか。」と害者を受け入れることが可能と考えますか。」という質問を行っている。いう質問を行っている。 これに対し,「可能」と答えた事業所は,わずこれに対し,「可能」と答えた事業所は,わずかか44ヶ所(ヶ所(18.2%18.2%)であり,「不可能」と答えた)であり,「不可能」と答えた事業所が,事業所が,1818ヶ所(ヶ所(81.8%81.8%)にものぼっている。)にものぼっている。(図(図22--22参照)そのうち,不可能であることの参照)そのうち,不可能であることの理由として,「就労支援を中心としており,利用理由として,「就労支援を中心としており,利用対象者として想定していないため」が対象者として想定していないため」が88ヶ所,ヶ所,「強度行動障害に関する必要や支援技術,知識に不安があるため」が「強度行動障害に関する必要や支援技術,知識に不安があるため」が66ヶ所,「事業所の規ヶ所,「事業所の規模が大きくなく,対応困難であるため」が模が大きくなく,対応困難であるため」が66ヶ所,「その他」がヶ所,「その他」が66ヶ所という結果になってヶ所という結果になっている。(表いる。(表22--11参照)「その他」参照)「その他」の例としては,の例としては,「重複障害者へ「重複障害者への支援を中心との支援を中心とししており,利用ており,利用対象者として想定していないため」「施設利用者の多くが車椅子利用者であり,配慮を要す対象者として想定していないため」「施設利用者の多くが車椅子利用者であり,配慮を要するため」「聴覚言語障害者が主たる利用者であり,配慮を要するため」「施設構造上の問題」るため」「聴覚言語障害者が主たる利用者であり,配慮を要するため」「施設構造上の問題」などが挙げられている。などが挙げられている。 このアンケート結果は,現在,強度行動障害者を受け入れていない事業所については,このアンケート結果は,現在,強度行動障害者を受け入れていない事業所については,「受け入れる意思はあるが,たまたま利用希望がなかった」などという消極的理由ではな「受け入れる意思はあるが,たまたま利用希望がなかった」などという消極的理由ではなく,事業所側の主体性として,強度行動障害者以外の障害種別,障害特性の人を対象としく,事業所側の主体性として,強度行動障害者以外の障害種別,障害特性の人を対象とした事業所であるとか,事業所側に強度行動障害者を受け入れるだけの体制や力た事業所であるとか,事業所側に強度行動障害者を受け入れるだけの体制や力量が備わっ量が備わっていないからといったしっかりした現状認識に基づいて,積極的理由により受け入れていていないからといったしっかりした現状認識に基づいて,積極的理由により受け入れてい 表2-1 強度行動障害者を受け入れることが不可能であることの理由 就労支援を中心としており,利用対象者として想定していないため 8 強度行動障害に関する必要な支援技術,知識に不安があるため 6 事業所の規模が大きくなく,対応困難であるため 6 その他 6 図 図22--22 強度行動障害の受け入れは強度行動障害の受け入れは可能ですか。可能ですか。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 28 ないということを物語っている。 ないということを物語っている。 実際,障害者自立支援法上の就労移行支援事業所や就労継続B型事業所などの就労系事実際,障害者自立支援法上の就労移行支援事業所や就労継続B型事業所などの就労系事業所では,常時見守りと介護が必要な重度の行動障害をともなう知的障害者の受け入れは業所では,常時見守りと介護が必要な重度の行動障害をともなう知的障害者の受け入れは困難であろう。困難であろう。 一方,受け入れ不可能な理由が,「強度行動障害に関する必要な支援技術,知識に不安が一方,受け入れ不可能な理由が,「強度行動障害に関する必要な支援技術,知識に不安があるため」としている事業所については,こうした技術や知識が習得できる研修体制や現あるため」としている事業所については,こうした技術や知識が習得できる研修体制や現場へのスーパーバイズの体制の確立が実現すれば,今後受け入れ対象事業所になり得る可場へのスーパーバイズの体制の確立が実現すれば,今後受け入れ対象事業所になり得る可能性は十分にあるということになるだろう。能性は十分にあるということになるだろう。 「事業所の規模が大きくなく,対応困難であるため」と答えた事業所は,少ない職員体「事業所の規模が大きくなく,対応困難であるため」と答えた事業所は,少ない職員体制の中で,厳しい運営体制を強いられながら,何とか現場を回しているということであろ制の中で,厳しい運営体制を強いられながら,何とか現場を回しているということであろう。こうした事業所にとっては,マンツーマン体制,さらには利用者う。こうした事業所にとっては,マンツーマン体制,さらには利用者11人に人に対し,対し,22人な人ないしいし33人の見守りや直接支援が必要とされる強度行動障害者の受け入れは非常に難しいだ人の見守りや直接支援が必要とされる強度行動障害者の受け入れは非常に難しいだろうということは容易に予測できる。ろうということは容易に予測できる。 その他の理由の中で「施設構造上の問題」と答えている事業所がある。そこには,強度その他の理由の中で「施設構造上の問題」と答えている事業所がある。そこには,強度行動障害者には,刺激の少ない個室や,不安定になったときに駆け込むことのできるクー行動障害者には,刺激の少ない個室や,不安定になったときに駆け込むことのできるクールダウン室の設置などの環境的配慮が不可欠であることなどを考慮しての回答ではないかルダウン室の設置などの環境的配慮が不可欠であることなどを考慮しての回答ではないかと考えられる。と考えられる。 ( (33))行動障害者支援における高度な支援技術等の必要性行動障害者支援における高度な支援技術等の必要性 質問の質問の33項目目は,「強度行動障害者に対して項目目は,「強度行動障害者に対しては,他の知的障害者に対する支援と相対的に,は,他の知的障害者に対する支援と相対的に,高度な支援技術,専門的知識が必要と考えます高度な支援技術,専門的知識が必要と考えますか。」という内容である。これに対しては,「かか。」という内容である。これに対しては,「かなり高度な支援技術,専門的知識を要すると考なり高度な支援技術,専門的知識を要すると考える」と答えた事業所がえる」と答えた事業所が1414ヶ所(ヶ所(28%28%)で,「高)で,「高度な支援技術,専門的知識を要すると考える」度な支援技術,専門的知識を要すると考える」と答えた事業所がと答えた事業所が2020ヶ所(ヶ所(40%40%),「相応の支援),「相応の支援技術,専門的知識を要すると考える」と答えた技術,専門的知識を要すると考える」と答えた事業所が事業所が1616ヶ所(ヶ所(32%32%),「それほど高度な支援),「それほど高度な支援技術,専門的知識を要しないと考技術,専門的知識を要しないと考える」と答ええる」と答えた事業所はた事業所は00ヶ所(ヶ所(0%0%)であった。なお,無回)であった。なお,無回答が答が11ヶ所あった。(図ヶ所あった。(図22--33参照)参照) これらの結果からいえることは,既に強度行これらの結果からいえることは,既に強度行動障害者を受け入れている事業所も,未だ受け入れていない事業所も含め,ほぼすべての動障害者を受け入れている事業所も,未だ受け入れていない事業所も含め,ほぼすべての事業所が,強度行動障害者支援においては,一定程度以上の支援技術と専門的知識が不可事業所が,強度行動障害者支援においては,一定程度以上の支援技術と専門的知識が不可欠であるという点では共通した認識を持っているということである。欠であるという点では共通した認識を持っているということである。 ( (44))行動障害の軽減の可能性行動障害の軽減の可能性 図 図22--33 支援技術,専門的知識の支援技術,専門的知識の必要レベルは?必要レベルは? 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 29 次に次に,質問項目,質問項目44番目の「適切かつ継続的な番目の「適切かつ継続的な支援により,強度の行動障害を軽減することが支援により,強度の行動障害を軽減することが可能と考えますか。」に対する回答についてであ可能と考えますか。」に対する回答についてであるが,「かなりの軽減が可能と考える」がるが,「かなりの軽減が可能と考える」が5151ヶヶ所中所中1414ヶ所(ヶ所(27.5%27.5%),「いくらか軽減が可能と),「いくらか軽減が可能と考える」が考える」が2323ヶ所(ヶ所(45.1%45.1%),「一般的に,軽減),「一般的に,軽減することは著しく困難と考える」がすることは著しく困難と考える」が11ヶ所ヶ所((2.0%2.0%),「対象者の状況によって異なるため,),「対象者の状況によって異なるため,一概には言えない」が一概には言えない」が1313ヶ所(ヶ所(25.5%25.5%)である。)である。(図(図22--44参照)参照) このように,全体のこのように,全体の44分の分の33の事業所が,「適の事業所が,「適切かつ継続的支援」の有効性を指摘している。切かつ継続的支援」の有効性を指摘している。またこまたこの結果は,強度行動障害者支援における「適切な支援」を明らかにし,それを現場の結果は,強度行動障害者支援における「適切な支援」を明らかにし,それを現場に伝えることが極めて重要かつ喫緊の課題であることを示唆しているといえるだろう。に伝えることが極めて重要かつ喫緊の課題であることを示唆しているといえるだろう。 ( (55))行動障害者支援における事業所としての課題行動障害者支援における事業所としての課題 5 5番目の「強度行動障害者の支援を行うにあたって,事業所・施設における重要な課題番目の「強度行動障害者の支援を行うにあたって,事業所・施設における重要な課題はどのようなことと考えますか。(どのような課題が解決されれば,貴事業所・施設で強度はどのようなことと考えますか。(どのような課題が解決されれば,貴事業所・施設で強度行動障害者の受入れが可能となりますか。)」という質問に対する回答は以下のとおりであ行動障害者の受入れが可能となりますか。)」という質問に対する回答は以下のとおりである。る。 まず,「人件費,職員数(増員)の確保」を選択した事業所については, まず,「人件費,職員数(増員)の確保」を選択した事業所については,11位選択位選択2727事事業所(業所(54%54%),),22位選択位選択1212事業所,事業所,33位選択位選択55事業所,すなわち事業所,すなわち33位以内に選択したのは位以内に選択したのは4444事業所(事業所(88%88%)であった。次に,「支援技術,専門知識の習得」を選択した事業所は,)であった。次に,「支援技術,専門知識の習得」を選択した事業所は,11位位選択選択1212事業所(事業所(24%24%),),22位選択位選択2222事業所,事業所,33位選択位選択33事業所,事業所,33位以内に選択したのは合位以内に選択したのは合計計3737事業所(事業所(74%74%)であった。さらに,「他の利用者との兼ね合い」を選択した事業所につ)であった。さらに,「他の利用者との兼ね合い」を選択した事業所については,いては,11位選択位選択55事業所(事業所(10%10%),),22位選択位選択44位事業所,位事業所,33位選択位選択1212事業所,事業所,33位以内に位以内に選選択したのは合計択したのは合計2121事業(事業(42%42%)であった。「設備面の充実」を選択した事業所は,)であった。「設備面の充実」を選択した事業所は,11位選択位選択22事業所,事業所,22位選択位選択66事業所,事業所,33位選択位選択1212事業所で,合計事業所で,合計2020事業所(事業所(40%40%)であった。以)であった。以下,「事故発生のリスク」を下,「事故発生のリスク」を33位以内に選択したのが位以内に選択したのが1414事業所(事業所(28%28%),「支援員の心身のケ),「支援員の心身のケアに関する体制整備」アに関する体制整備」をを33位以内に選択した位以内に選択したのはのは77事業所(事業所(14%14%),),「地域の理解」を「地域の理解」を33位位以内に選択したのは以内に選択したのは55事業所(事業所(10%10%)であった。)であった。(表(表22--22参照)また,参照)また,その他(自由記載)にその他(自由記載)において記載された内容おいて記載された内容は,「日中一時,短期入は,「日中一時,短期入所の特性上,車両の利所の特性上,車両の利 表2-2 強度行動障害者支援における重要な課題
回答
1位 2位 3位 3位 以内 人件費,職員数(増員)の確保
27 12 5 44 支援技術,専門知識の習得
12 22 3 37 他の利用者との兼ね合い
5 4 12 21 設備面の充実
2 6 12 20 事故発生のリスク
2 5 7 14 支援員の心身のケアに関する体制整備
1 1 5 7 地域の理解
1 0 4 5 その他(自由記載)
4 図 図22--44 強度行動障害軽減の強度行動障害軽減の 可能性は? 可能性は? 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 30 用ができないとい 用ができないという点で活動の幅が限られている」,「行動援護事業所及び行動援護ヘルパう点で活動の幅が限られている」,「行動援護事業所及び行動援護ヘルパーが不足しており,ニーズに応えられていない。行動障害のある方々に精通した施設職員ーが不足しており,ニーズに応えられていない。行動障害のある方々に精通した施設職員等が行動援護事業に入る仕組み作りや,社会福祉法人の行動援護事業参入促進が必要では等が行動援護事業に入る仕組み作りや,社会福祉法人の行動援護事業参入促進が必要ではないか」などである。ないか」などである。 これらの結果からいえることは,強度行動障害者支援の状況改善のための最優先課題は, これらの結果からいえることは,強度行動障害者支援の状況改善のための最優先課題は,支援体制面の確立ための「人件費,職員数の増員確保」と,支援内容面の充実ための「支支援体制面の確立ための「人件費,職員数の増員確保」と,支援内容面の充実ための「支援技術,専門知識の習得」であるといえるだろう。援技術,専門知識の習得」であるといえるだろう。 ( (66))今後の行動障害者支援拡充のために重視すべきこと今後の行動障害者支援拡充のために重視すべきこと 66番目の番目の「今後,強度行動障害者支援を拡充していくうえで重要なことはどのようなこ「今後,強度行動障害者支援を拡充していくうえで重要なことはどのようなことと考えますか。」という質問に対しては,最も多かった回答が,「施設経営の支援(自立とと考えますか。」という質問に対しては,最も多かった回答が,「施設経営の支援(自立支支 援給付費の上乗せ)-人件費,職員数(増員)の確保」で, 援給付費の上乗せ)-人件費,職員数(増員)の確保」で,11位選択位選択2929ヶ所(ヶ所(58%58%),),22位位選択選択88ヶ所(ヶ所(16%16%),),33位選択位選択44ヶ所(ヶ所(8%8%),),33位以内選択合計位以内選択合計4141ヶ所(ヶ所(82%82%)であった。次)であった。次が,「支援技術の向上」で,が,「支援技術の向上」で,11位選択位選択88ヶ所(ヶ所(16%16%),),22位選択位選択1919ヶ所(ヶ所(38%38%),),33位選択位選択55ヶヶ所(所(10%10%)で,)で,33位以内選択合計位以内選択合計3232ヶ所(ヶ所(64%64%),),33番目が「アドバイザー体番目が「アドバイザー体制の整備(強度制の整備(強度行動障害者支援に関する専門職,助言者の確保)」で,行動障害者支援に関する専門職,助言者の確保)」で,11位選択位選択22ヶ所(ヶ所(4%4%),),22位選択位選択1010ヶ所(ヶ所(20%20%),),33位選択位選択1111ヶ所(ヶ所(22%22%),),33位以内選択合計位以内選択合計2323ヶ所(ヶ所(46%46%)であった。さらに)であった。さらに44番目が「施設経営の支援-設備面の充実」で,番目が「施設経営の支援-設備面の充実」で,11位選択位選択33ヶ所ヶ所6%6%),),22位選択位選択77ヶ所(ヶ所(14%14%),),33位選択位選択88ヶ所(ヶ所(16%16%),),33位以内選択合計位以内選択合計1818ヶ所(ヶ所(36%36%),),55番目が「事故発生のリスク管番目が「事故発生のリスク管理」で,理」で,11位選択位選択22ヶ所(ヶ所(4%4%),),22位選択位選択11ヶ所(ヶ所(2%2%),),33位選択位選択99ヶ所(ヶ所(18%18%),),33位以内選位以内選択合計択合計1212ヶ所(ヶ所(24%24%)であった。その他とし)であった。その他として,「全市的な取り組み意識の醸成」て,「全市的な取り組み意識の醸成」99ヶ所(ヶ所(18%18%),),「支援員の心身のケアに関する体制整備」「支援員の心身のケアに関する体制整備」66ヶ所(ヶ所(12%12%),「全市的な情報の共有化」),「全市的な情報の共有化」44ヶ所ヶ所((8%8%),「地域の理解」),「地域の理解」22ヶ所(ヶ所(4%4%)であった。(表)であった。(表22--33参照)参照) この結果から読み取れることは,まず,現状の障害者自立支援法上の自立支援給付の報この結果から読み取れることは,まず,現状の障害者自立支援法上の自立支援給付の報酬では,利用者の実情に応じた適切な職員配置ができないために,強度行動障害者支援へ酬では,利用者の実情に応じた適切な職員配置ができないために,強度行動障害者支援への積極的な取りの積極的な取り組みへの戸惑い組みへの戸惑いがあるというこがあるということである。また,とである。また,強度行動障害者強度行動障害者には,独自の設には,独自の設備整備が求めら備整備が求められており,それれており,それに対する費用面に対する費用面の助成も不可欠の助成も不可欠であるというこであるということである。また,とである。また,支援技術の向上支援技術の向上が求められておが求められてお 表2-3 強度行動障害者支援拡充のために重要なこと
回答
1位 2位 3位 3位 以内 1位 施設経営の支援(自立支援給付費の上乗せ)
29 8 4 41 2位 支援技術の向上
8 19 5 32 3位 アドバイザー体制の整備(強度行動障害者支援に関する専門職,助言者の確保)
2 10 11 23 4位 施設経営の支援(設備面の充実)
3 7 8 18 5位 事故発生のリスク
2 1 9 12 6位 全市的な取り組み意識の醸成
3 2 4 9 7位 支援員の心身のケアに関する体制整備
1 1 4 6 8位 全市的な情報の共有化
1 2 1 4 9位 地域の理解
1 0 1 2 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 31 り,そのためにも,専門家によるアドバイザー体制の整備が必要とされている。すなわち, り,そのためにも,専門家によるアドバイザー体制の整備が必要とされている。すなわち,強度行動障害者支援における,最大の課題は,人を配置するための人件費の捻強度行動障害者支援における,最大の課題は,人を配置するための人件費の捻出と,支援出と,支援現場における専門性の確保であるということがいえるだろう。現場における専門性の確保であるということがいえるだろう。 ( (77))行動障害者支援として優先的に取り組むべきこと行動障害者支援として優先的に取り組むべきこと 77番目の「強度行動障害に対する支援として,優先的に取り組むべきことはどのような番目の「強度行動障害に対する支援として,優先的に取り組むべきことはどのようなことだと考えますか」の質問に対しては,「日中活動事業所,通所施設における支援体制のことだと考えますか」の質問に対しては,「日中活動事業所,通所施設における支援体制の充実」が充実」が11位選択位選択77ヶ所,ヶ所,22位選択位選択1313ヶ所,ヶ所,33位選択位選択44ヶ所,ヶ所,33位以内選択合計位以内選択合計2424ヶ所(ヶ所(48%48%))で,最も多かった。次が「学齢期における特別支援教育や支援体制の充実」で,で,最も多かった。次が「学齢期における特別支援教育や支援体制の充実」で,11位選択位選択99ヶ所,ヶ所,22位選択位選択55ヶ所,ヶ所,33位選択位選択44ヶ所,ヶ所,33位以内選択合計位以内選択合計1818ヶ所(ヶ所(36%36%)であった。以下,)であった。以下,「在宅サービスにおける支援体制の充実」(「在宅サービスにおける支援体制の充実」(1616ヶ所,ヶ所,32%32%),「相談支援体制の充実」(同じ),「相談支援体制の充実」(同じくく1616ヶ所,ヶ所,32%32%),「入所施設における集団支援体制の充実」(),「入所施設における集団支援体制の充実」(1111ヶ所,ヶ所,22%22%),「就学前の支),「就学前の支援体制の充実」(援体制の充実」(1010ヶ所,ヶ所,20%20%),「ケアホームにおける小規模集団支援体制の充実」(),「ケアホームにおける小規模集団支援体制の充実」(99ヶ所,ヶ所,18%18%)となっている。「その他(自由記載)」を選択した回答では,「幼児期から適切な支援)となっている。「その他(自由記載)」を選択した回答では,「幼児期から適切な支援を行うことで強度行動障害は予防可能。予防的な支援の充実が早急に必要と思われる。」やを行うことで強度行動障害は予防可能。予防的な支援の充実が早急に必要と思われる。」や「本人支援と同時に家族支援の視点を今後さらに重視すべきと思われる。」,「民間施設では「本人支援と同時に家族支援の視点を今後さらに重視すべきと思われる。」,「民間施設では設備・費用に無理があるため,特に強度行動障害者支援には公的機関での支援が必設備・費用に無理があるため,特に強度行動障害者支援には公的機関での支援が必要と思要と思われる」などがあがっていた。(表われる」などがあがっていた。(表22--44参照)参照) 第第11位に日中活動支援事業所等における支援体制の充実が挙がっているのは,日中活動位に日中活動支援事業所等における支援体制の充実が挙がっているのは,日中活動事業所においては,支援員配置基準が極めて少ないため,支援現場は,ぎりぎりの職員体事業所においては,支援員配置基準が極めて少ないため,支援現場は,ぎりぎりの職員体制で日々支援を行っていることがその背景にあるからではないかと思われる。第制で日々支援を行っていることがその背景にあるからではないかと思われる。第22位,第位,第66位に挙がっている学齢期や就学前の支援の充実は,不適切な支援による二次障害として位に挙がっている学齢期や就学前の支援の充実は,不適切な支援による二次障害として強度行動障害を考えたとき,その予防的視点に立っての意見であると考えられる。さらに強度行動障害を考えたとき,その予防的視点に立っての意見であると考えられる。さらに第第33位に在宅サービスの充実が挙げられているのは,土日祝日等の日中活動が休みの日に,位に在宅サービスの充実が挙げられているのは,土日祝日等の日中活動が休みの日に,自宅で何もすることがないとスト自宅で何もすることがないとストレスがたまり,不安定な状況になることが多いため,行レスがたまり,不安定な状況になることが多いため,行動援護等のサービスが求められていることもその理由のひとつであると考えられるだろう。動援護等のサービスが求められていることもその理由のひとつであると考えられるだろう。 3 3 本節の小括本節の小括
福岡市内の障害者関係施設・事業所のうち利用者の中に強度行動障害者がいると答えた福岡市内の障害者関係施設・事業所のうち利用者の中に強度行動障害者がいると答えた 表2-4 強度行動障害者支援として優先的に取り組むべきこと
回答
1位 2位 3位 3位 以内 1位 日中活動支援事業所,通所施設における支援体制の充実
7 13 4 24 2位 学齢期における特別支援教育や支援体制の充実
9 5 4 18 3位 在宅サービスにおける支援体制の充実
2 3 11 16 4位 相談支援体制の充実
7 3 6 16 5位 入所施設における集団支援体制の充実
2 4 5 11 6位 就学前の支援体制の充実
6 3 1 10 7位 ケアホームにおける小規模集団支援体制の充実
2 4 3 9 8位 地域,社会全体に対する行動障害に関する理解を得る働きかけ
3 2 2 7 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 32 施設等が 施設等が5757%にのぼるというのは意外であった。社会福祉基礎構造改革の流れの中で,平%にのぼるというのは意外であった。社会福祉基礎構造改革の流れの中で,平成成1515年度より,それまでの措置費制度から支援費制度に変わった。このことは障害者福祉年度より,それまでの措置費制度から支援費制度に変わった。このことは障害者福祉現場に様々な変化をもたらしたが,とりわけ障害者と事業者が直接契約を結んで事業所を現場に様々な変化をもたらしたが,とりわけ障害者と事業者が直接契約を結んで事業所を利用するという契約制度の導入や,日中活動を第一種社会福祉事業から第二種社会福祉事利用するという契約制度の導入や,日中活動を第一種社会福祉事業から第二種社会福祉事業に転換させ,第二種社会福祉事業については,認可制度ではなく指定制度に変更したこ業に転換させ,第二種社会福祉事業については,認可制度ではなく指定制度に変更したことも大きい。それにより,事業者は,容易に事業を起こすことができるようになった。更とも大きい。それにより,事業者は,容易に事業を起こすことができるようになった。更に,措置制度においては,原則に,措置制度においては,原則として国・地方自治体または社会福祉法人のみしか社会福として国・地方自治体または社会福祉法人のみしか社会福祉事業をすることができないとされていたが,支援費制度においては,NPOなどの法人祉事業をすることができないとされていたが,支援費制度においては,NPOなどの法人格のある事業者であれば誰でも第二種社会福祉事業を営むことができるようになった。格のある事業者であれば誰でも第二種社会福祉事業を営むことができるようになった。 こうした制度の変化は,結果として事業所間のサービスの質の競争を誘発し,自事業所こうした制度の変化は,結果として事業所間のサービスの質の競争を誘発し,自事業所を利用する希望者についてはできる限り受け入れるようになった。そうした中,各事業所を利用する希望者についてはできる限り受け入れるようになった。そうした中,各事業所は,重度自閉症者などの受け入れに対しても積極的に取り組むようになっていったのであは,重度自閉症者などの受け入れに対しても積極的に取り組むようになっていったのであろう。ろう。 行動障害者支援においては,すべての事業所が行動障害者支援においては,すべての事業所が,支援技術や専門的知識の必要性を痛感,支援技術や専門的知識の必要性を痛感しているという結果であった。このことは,各事業所に行動障害者支援についての専門知しているという結果であった。このことは,各事業所に行動障害者支援についての専門知識をもったスーパーバイザーや指導者が不可欠であること,現場職員がより専門性や支援識をもったスーパーバイザーや指導者が不可欠であること,現場職員がより専門性や支援技術を高めるための研修システムの確立が急務であることを示唆している。技術を高めるための研修システムの確立が急務であることを示唆している。 また,行動障害者支援にあたって現場が最も求めているものは,人件費,職員数の増員また,行動障害者支援にあたって現場が最も求めているものは,人件費,職員数の増員確保である。そのためには,まず,職員基準配置数の増員,それにともなう報酬単価の増確保である。そのためには,まず,職員基準配置数の増員,それにともなう報酬単価の増額が不可欠である。額が不可欠である。

第3節 平成18年実施の福岡市調査結果の考察

1 調査の 内容
平成 18 年 9 月,福岡市の外郭団体である社会福祉法人福岡市社会福祉事業団は,「強度 行動障害者の実態に関するアンケート調査」を実施した。福岡市では,強度行動障害者支 援に携わっている施設職員や市福祉課行政職員,福祉を専門とする大学教授などを構成メ ンバーとして,「福岡市強度行動障害者支援調査研究会」が設置されている。この調査は, その研究会における検討の基礎資料を得ることを目的として実施されたものである。 調査の対象は,①福岡市内の知的障害者施設 22 ヶ所,②福岡市が援護の実施者である知 的障害者が在籍されている市外の施設 84 ヶ所,③福岡市内の作業所 29 ヶ所,④福岡市内 のデイサービス事業者 6 ヶ所,⑤福岡市知的障害者地域生活支援センター 4 ヶ所,⑥福岡 市内の知的障害者養護学校高等部 4 ヶ所の合計 149 ヶ所である。 調査の方法は,原則として郵送配布,郵送回収により実施した。希望に応じ,一部電子 メールでの配布,回収を行った。 調査期間は,平成 18 年 6 月 9 日から同年 7 月 31 日までである。 有効回答数は,有効施設数 10 8 ヶ所で回答率 73 %,有効対象者数は 2,728 人である。 調査は,以下の方法により行われた。まず,「調査票 1 」に,当該施設・事業所に所属す る利用者で行動障害のある利用者をピックアップする。それらの人について,厚生省の「強 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 33 度行動障害判定基準表」に基づき,「自傷」「他傷」「こだわり」「物壊し」「睡眠乱れ」「食 度行動障害判定基準表」に基づき,「自傷」「他傷」「こだわり」「物壊し」「睡眠乱れ」「食事関係」「排泄関係」「多動」「騒がしさ」「パニック」「粗暴で恐怖感」の事関係」「排泄関係」「多動」「騒がしさ」「パニック」「粗暴で恐怖感」の1111項目について,項目について,その頻度に応じてその頻度に応じて11点,点,33点,点,55点を記載し,最後にその合計点数を記載する。点を記載し,最後にその合計点数を記載する。 「調査票「調査票22」では,「調査票」では,「調査票11」の合計点」の合計点数が数が1010点以上の利用者について対象者点以上の利用者について対象者11人に対人に対しし11枚ずつ「調査票枚ずつ「調査票22」に記載していく。設問」に記載していく。設問11では,「調査票では,「調査票11」の結果の転記をする。」の結果の転記をする。設問設問22では,その人の療育手帳区分,支援費程度区分,入所(通所)開始時期,通所の場では,その人の療育手帳区分,支援費程度区分,入所(通所)開始時期,通所の場合通所方法,投薬の状況,強度行動障害特別処遇事業を受けているか否かを記載する。設合通所方法,投薬の状況,強度行動障害特別処遇事業を受けているか否かを記載する。設問問33では,設問では,設問11で回答した行動障害ので回答した行動障害の1111項目の内容のうち,特に困難をきたしている行項目の内容のうち,特に困難をきたしている行動障害の内容と状況,経過を記載する。設問動障害の内容と状況,経過を記載する。設問44では,その対象者に対して取り組んだ,あでは,その対象者に対して取り組んだ,あるいは取り組んでいる支援方法や内容等について記載する。最後に,設るいは取り組んでいる支援方法や内容等について記載する。最後に,設問問55では,その対では,その対象者の状態の改善を図るための条件(どのような条件や状況のもとであれば改善ができた象者の状態の改善を図るための条件(どのような条件や状況のもとであれば改善ができたか,または改善できるか等)について具体的に記載する。か,または改善できるか等)について具体的に記載する。 2 2 調査結果の考察調査結果の考察 ( (11))福岡市が援護を実施している知的障害者における福岡市が援護を実施している知的障害者における行動障害の行動障害の実情実情 まず,調査対象①の福岡市内の知的障害者施設においては調査用紙配布先 まず,調査対象①の福岡市内の知的障害者施設においては調査用紙配布先2222ヶ所中ヶ所中2121ヶ所から回答があり,ヶ所から回答があり,934934人の在籍者全員を対象に調査を行った。それらについて「強度人の在籍者全員を対象に調査を行った。それらについて「強度行動障害判定基準表」に基づく合計点数は,行動障害判定基準表」に基づく合計点数は,00点点820820人,人,11~~44点点3737人,人,55~~99点点5050人,人,1010~~1919点点2424人,人,2020~~2929点点22人,人,3030点以上点以上11人であった。したがって,合計点数人であった。したがって,合計点数1010点以上点以上の強度行動障害者はの強度行動障害者は934934人中人中2727人で,全体の人で,全体の2.9%2.9%という結果であった。(図という結果であった。(図22--55参照)次参照)次に,調査対象②の福岡市が援護の実施者である知的障害者が在籍されている市外の施設にに,調査対象②の福岡市が援護の実施者である知的障害者が在籍されている市外の施設においては,おいては,8484ヶ所中ヶ所中6363の施設から回答があった。の施設から回答があった。6363施設の在籍者合計施設の在籍者合計3,7553,755人中人中451451人人について福岡市が援護の実施者となっている。そのうちについて福岡市が援護の実施者となっている。そのうち274274人は合計点数人は合計点数00点,点,11~~44点が点が6060人,人, 5 5~~99点が点が5757人,人,1010~~1919点が点が4141人,人,2020~~2929点が点が1717人,人,3030点以上が点以上が44人であり,人であり,1010点点以上の強度行動障害者は合計以上の強度行動障害者は合計6262人(人(13.7%13.7%)であった。調査対象③の福岡市内の作業所)であった。調査対象③の福岡市内の作業所2929ヶ所については,ヶ所については,1515ヶ所から回答があった。調査対象者ヶ所から回答があった。調査対象者208208人について,合計点数人について,合計点数00点が点が159159人,人,11~~44点が点が99人,人,55~~99点が点が2727人,人,1010~~1919点が点が1111人,人,2020~~2929点が点が22人,人,3030点以上点以上がが00人という結果であった。したがって,強度行動障害者の該当者数は,人という結果であった。したがって,強度行動障害者の該当者数は,208208人中人中1313人で人で6.3%6.3%であった。調査対象④の福岡市内のデイサービス事業者については,であった。調査対象④の福岡市内のデイサービス事業者については,66ヶ所中ヶ所中33ヶ所ヶ所から回答があった。調査対象者から回答があった。調査対象者5050人中,行動障害点数人中,行動障害点数00点が点が3636人,人,11~~44点が点が1010人,人,55~~99点が点が22人,人,1010~~1919点が点が22人,人,2020点以上が点以上が00人であった。したがって,強度行動障害者は人であった。したがって,強度行動障害者は22人(人(4.0%4.0%)であった。⑤の福岡市知的障害者地域生活支援センターについては)であった。⑤の福岡市知的障害者地域生活支援センターについては44ヶ所中ヶ所中44ヶ所から回答があった。調査対象者数ヶ所から回答があった。調査対象者数886886人に対し,行動障害点数人に対し,行動障害点数00点が点が862862人,人,11~~44点点がが11人,人,55~~99点が点が88人,人,1010~~1919点が点が1010人,人,2020~~2929点が点が11人,人,3030点以上が点以上が22人という結果人という結果であった。したがって,強度行動障害者はであった。したがって,強度行動障害者は1313人で人で1.5%1.5%であった。最後に,⑥の福岡市内であった。最後に,⑥の福岡市内の知的障害者養護学校高等部の知的障害者養護学校高等部44ヶ所中ヶ所中33ヶ所から回答があった。その結果ヶ所から回答があった。その結果は,対象者は,対象者199199人中,人中,00点が点が178178人,人,11~~44点が点が1212人,人,55~~99点が点が77人,人,1010~~1919点が点が11人,人,2020~~2929点が点が11人,人,3030点以上が点以上が00人であった。したがって強度行動障害者の数は人であった。したがって強度行動障害者の数は22人で全体の人で全体の1.0%1.0%という結果という結果であった。であった。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 34 以上の 以上の結果から,福岡市が援護を実施している知的障害者全体の結果から,福岡市が援護を実施している知的障害者全体の27282728人のうち,行動障人のうち,行動障害点数害点数00点を除く点を除く399399人に何らかの行動障害があり,その比率は,全体の人に何らかの行動障害があり,その比率は,全体の14.6%14.6%であるこであることが明らかになった。また,そのうち行動障害点数がとが明らかになった。また,そのうち行動障害点数が1010点以上の「強度行動障害者」は点以上の「強度行動障害者」は119119人,全体の人,全体の4.4%4.4%であることがわかった。すなわち約であることがわかった。すなわち約2323人に人に11人が強度行動障害者とい人が強度行動障害者ということである。(表うことである。(表22--55参照)参照) ( (22))KJKJ法を用いた行動障害者に対する支援の方法及び内容のカテゴリー分類法を用いた行動障害者に対する支援の方法及び内容のカテゴリー分類 支援の方法及び内容は,記述式で合計支援の方法及び内容は,記述式で合計137137の回答が得られた。それらの内容をの回答が得られた。それらの内容をKJKJ法によ法によ り分類した結果,以下のカテゴリーに分けることができた。大カテゴリーとして,「A.直 り分類した結果,以下のカテゴリーに分けることができた。大カテゴリーとして,「A.直接支援に関する内容」「B.支援アイテムに関する内容」「C.物理的環境に関する内容」接支援に関する内容」「B.支援アイテムに関する内容」「C.物理的環境に関する内容」「D.関係機関との連携に関する内容」の「D.関係機関との連携に関する内容」の44つに分けられた。つに分けられた。 大カテゴリーは,以下の中カテゴリーに分けられた。まず,「A.直接支援に関する内容」大カテゴリーは,以下の中カテゴリーに分けられた。まず,「A.直接支援に関する内容」は,「Aは,「A11.本人に対する直接的アプローチ」「A.本人に対する直接的アプローチ」「A22.職員の利用者への関わり方」「A.職員の利用者への関わり方」「A33.こ.こだわり行動への対応」「Aだわり行動への対応」「A44.職員と.職員としての視点」のしての視点」の44つである。次に,「B.支援アイテムつである。次に,「B.支援アイテムに関する内容」は,「Bに関する内容」は,「B11.スケジュール」「B.スケジュール」「B22.日中活動プログラム」「B.日中活動プログラム」「B33.わかりやす.わかりやすい情報提供」のい情報提供」の33つである。さらに,「C.物理的環境に関する内容」は,「Cつである。さらに,「C.物理的環境に関する内容」は,「C11.個人のス.個人のスペースの確保」「Cペースの確保」「C22.物理的環境設定」の.物理的環境設定」の22つである。最後に,「D.関係機関との連携につである。最後に,「D.関係機関との連携に関する内容」は,「D関する内容」は,「D11.関係機関との連携」「D.関係機関との連携」「D22.保護者との関わり」の.保護者との関わり」の22つである。つである。 これらの中カテゴリーは,さらに小カテゴリーに分けられる。「Aこれらの中カテゴリーは,さらに小カテゴリーに分けられる。「A11.本人に対する直接.本人に対する直接的アプローチ」は,「A的アプローチ」は,「A1(1).1(1).本人に対す本人に対する直接的アプローチ」と「Aる直接的アプローチ」と「A1(2)1(2).各種セラピー.各種セラピーの実施」のの実施」の22つである。「Aつである。「A22.職員の利用者への関わり方」は,「A.職員の利用者への関わり方」は,「A2(1)2(1).受容的対応」「A.受容的対応」「A2(2)2(2).こだわり行動の受容的対応」「A.こだわり行動の受容的対応」「A2(3)2(3).職員のマンツーマン対応」「A.職員のマンツーマン対応」「A2(4)2(4).常時の.常時の見守り」「A見守り」「A2(5)2(5).職員とのコミュニケーションを深める」の.職員とのコミュニケーションを深める」の55つである。「Aつである。「A33.こだわり.こだわり行動への対応」は,「A行動への対応」は,「A3(1)3(1).こだわりやパニック回避のための意図的な関わり」「A.こだわりやパニック回避のための意図的な関わり」「A3(2)3(2)..こだわり行動のルール化」のこだわり行動のルール化」の22つである。「Aつである。「A44.職員としての視点」は,「A.職員としての視点」は,「A4(1)4(1).職員間.職員間の対応方法のの対応方法の統一」「A統一」「A4(2)4(2).本人の行動を観察」「A.本人の行動を観察」「A4(3)4(3).行動観察による原因の追究」.行動観察による原因の追究」のの33つである。つである。 表2-5 福岡市援護対象者の行動障害判定点数 調査対象事業所 送付先 回答数 調査 対象者数 点数ごとの人数 強度行動 障害者 (施設) (施設) 0点 1~4 5~9 10~ 19 20~ 29 30~ 人数 割合 福岡市内の施設 22 21 934 820 37 50 24 2 1 27 2.9% 市外の施設 84 63 451 272 60 57 41 17 4 62 13.7% 福岡市内の作業所 29 15 208 159 9 27 10 3 0 13 6.3% 福岡市内のデイサービス 4 4 886 864 1 8 10 1 2 13 1.5% 福岡市内の支援センター 6 3 50 36 10 2 2 0 0 2 4.0% 福岡市内の養護学校高等部 4 3 199 178 12 7 1 1 0 2 1.0% 合 計 149 109 2728 2329 129 151 88 24 7 119 4.4% 割 合 85.4% 4.7% 5.5% 3.2% 0.9% 0.3% 4.4% 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 35 表2-6 支援の方法及び内容のカテゴリー分類 A.直接支援 A1.本人に対する直接的アプローチ A1(1)本人に対する直接的アプローチ A1(2)各種セラピーの実施 A2.職員の利用者への関わり方 A2(1)受容的対応 A2(2)こだわり行動の受容的対応 A2(3)職員のマンツーマン対応 A2(4)常時の見守り A2(5)職員とのコミュニケーションを深める A3.こだわり行動への対応 A3(1)こだわりやパニック回避のための意図的なかかわり A4.職員としての視点 A4(1)職員間の対応方法の統一 A4(2)本人の行動を観察 A4(3)行動観察による原因の追究 B.支援アイテム B1.スケジュール B1(1)個人に応じた1日のスケジュールを策定 B1(2)本人用の1日のスケジュールの提示 B1(3)生活のメリハリ作り B1(4)規則正しい生活の流れを促す B2.日中活動プログラム B2(1)個別的活動の導入 B2(2)本人の好きな活動の導入 B2(3)屋外活動の実施 B2(4)報酬の提供により意欲向上を図る B3.わかりやすい情報提供 B3(1)視覚的な情報提供 B3(2)個人に応じたコミュニケーションツールの活用 C.物理的環境 C1.個人スペースの確保 C1(1)個室を提供 C1(2)パニック時落ち着く空間に移動させる C1(3)他の利用者との接触を避ける C1(4)個室から徐々に集団活動へ C1(5)少人数でのユニット生活 C2.物理的環境設定 C2(1)事故防止・危険回避のための物理的環境 C2(2)問題行動をなくすための物理的環境設定 C2(3)居住空間の構造化 D.関係機関との連携 D1.関係機関との連携 D1(1)医師との連携 D1(2)関係機関との連携 D2.保護者とのかかわり D2(1)保護者・家族とのかかわりによる情緒の安定 D2(2)支援上の保護者との連携 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 36 次に,「B 次に,「B11.スケジュール」は,「B.スケジュール」は,「B1(1)1(1).個人に応じた一日のスケジュールを策定」「B.個人に応じた一日のスケジュールを策定」「B1(2)1(2).本人用の一日のスケジュールの提示」「B.本人用の一日のスケジュールの提示」「B1(3)1(3).生活のメリハリ作り」「B.生活のメリハリ作り」「B1(4)1(4).規.規則正しい生活の流れを促す」の則正しい生活の流れを促す」の44つである。「Bつである。「B22.日中活動プログラム」は,「B.日中活動プログラム」は,「B2(1)2(1).個.個 別的活動の導入」「B 別的活動の導入」「B2(2)2(2).本人の好きな活動の導入」「B.本人の好きな活動の導入」「B2(3)2(3).屋外活動の実施」「B.屋外活動の実施」「B2(4)2(4).. 報酬の提供により意欲向上を図る」の 報酬の提供により意欲向上を図る」の44つである。「Bつである。「B33.わかりやすい情報提供」は,「B.わかりやすい情報提供」は,「B3(1)3(1).視覚的な情報提供」「B.視覚的な情報提供」「B3(2)3(2).個人に応じたコ.個人に応じたコミュニケーションツールの活用」のミュニケーションツールの活用」の22つである。つである。 「C「C11.個人スペースの確保」は,「C.個人スペースの確保」は,「C1(1)1(1).個室を提供」「C.個室を提供」「C1(2)1(2).パニック時落ち着く.パニック時落ち着く空間に移動させる」「C空間に移動させる」「C1(3)1(3).他の利用者との接触を避ける」「C.他の利用者との接触を避ける」「C1(4)1(4).個室から徐々に集.個室から徐々に集団活動へ」「C団活動へ」「C1(5)1(5).少人数でのユニット生活」の.少人数でのユニット生活」の55つである。また,「Cつである。また,「C2.2.物理的環境設物理的環境設定」は,「C定」は,「C2(1)2(1).事故防止・危険回避のための物理的環境」「C.事故防止・危険回避のための物理的環境」「C2(2)2(2).問題行動をなくす.問題行動をなくすための物理的環境設定」「Cための物理的環境設定」「C2(3)2(3).居住空間の構造化」の.居住空間の構造化」の33つである。つである。 「D「D11.関係機関との連携」は,「D.関係機関との連携」は,「D1(1)1(1).医師との連携」「D.医師との連携」「D1(2)1(2).関係機関との連携」.関係機関との連携」のの22つである。また,「Dつである。また,「D22.保護者との関わり」は,「D.保護者との関わり」は,「D2(1)2(1).保護者・家族との関わりに.保護者・家族との関わりによる情緒の安定」「Dよる情緒の安定」「D2(2)2(2).支援上の保護者との連携」の.支援上の保護者との連携」の22つである。(表つである。(表22--66参照)参照) ( (33))行動障害者に対する直接支援の方法行動障害者に対する直接支援の方法 ①本人に対する直接的アプローチ ①本人に対する直接的アプローチ 本人に対する直接的アプローチの方法としては,「正面からの指示ではパニックになりや本人に対する直接的アプローチの方法としては,「正面からの指示ではパニックになりやすいため,距離を取り,簡潔な指示をする」とか,「男性では不安や警戒心が強いため,女すいため,距離を取り,簡潔な指示をする」とか,「男性では不安や警戒心が強いため,女性スタッフのみで対応している」などのように,利用者のストレスにつながらないような性スタッフのみで対応している」などのように,利用者のストレスにつながらないような対応を意識的に心がけていることがうかがえる。また,小動物や馬の飼育などのアニマル対応を意識的に心がけていることがうかがえる。また,小動物や馬の飼育などのアニマルセラピーを導入したり,感覚統合療法や音楽療法,水治療などの各種セラピーを導入してセラピーを導入したり,感覚統合療法や音楽療法,水治療などの各種セラピーを導入している事業所もみられた。いる事業所もみられた。 ②職員の利用者への関わり方 ②職員の利用者への関わり方 行動障害者に対して,行動障害者に対して,多くの多くの事業所で取り組まれている対事業所で取り組まれている対応方法は,受容的対応である。応方法は,受容的対応である。例えば,「可能な限り本人の要求にすぐに応える」「要求行動に対する対応を的確に行う」例えば,「可能な限り本人の要求にすぐに応える」「要求行動に対する対応を的確に行う」「強制的な場面導入は行わず,自ら要求し主体的になれる活動を保障している」などの回「強制的な場面導入は行わず,自ら要求し主体的になれる活動を保障している」などの回答が得られた。また,「食事場所は別室とし,食事が長時間に及んでも容認している」「本答が得られた。また,「食事場所は別室とし,食事が長時間に及んでも容認している」「本人が嫌がることについては早急にできる対応を行っている」など,本人が拒否する行動や人が嫌がることについては早急にできる対応を行っている」など,本人が拒否する行動や本人にとって嫌な行動を「わがまま」と捉えるのではなく,「本人のニーズに合っていない」本人にとって嫌な行動を「わがまま」と捉えるのではなく,「本人のニーズに合っていない」というように利用者の立場に立った理解をしていると捉えることができる。というように利用者の立場に立った理解をしていると捉えることができる。 また,行動障害の特徴のひとつとして頻回するこだわり行動に対しても,禁止や制限をまた,行動障害の特徴のひとつとして頻回するこだわり行動に対しても,禁止や制限をするのではなく,受容的対応しているという回答が多数得られている。例えば,「本人の好するのではなく,受容的対応しているという回答が多数得られている。例えば,「本人の好きな物。要求する物をできるだけ用意している」「本の物色のこだわりのある人に対して,きな物。要求する物をできるだけ用意している」「本の物色のこだわりのある人に対して,定期的に本を購入している」などである。また,「車へのこだわりに対して,満足して車が定期的に本を購入している」などである。また,「車へのこだわりに対して,満足して車が見られる場所と時間を確保し提供している」といったように,こだわりへの対応として,見られる場所と時間を確保し提供している」といったように,こだわりへの対応として,一定のルールを決めて受容しているという回答もみられた。また,「水へのこだわりに対し,一定のルールを決めて受容しているという回答もみられた。また,「水へのこだわりに対し,ぞうきん洗いの役割を持ぞうきん洗いの役割を持たせることで軽減を図っている」といったように,こだわりに積たせることで軽減を図っている」といったように,こだわりに積極的な意味づけを持たせているといった事例も報告されている。さらに,「拒食状態にある極的な意味づけを持たせているといった事例も報告されている。さらに,「拒食状態にある 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 37 人に対して,栄養補助食品を使用している」というように,こだわりへの受容と代替機能 人に対して,栄養補助食品を使用している」というように,こだわりへの受容と代替機能により対応しているケースもみられた。により対応しているケースもみられた。 さらに,多くの意見があがっていたのは,職員のマンツーマン対応である。「環境設定にさらに,多くの意見があがっていたのは,職員のマンツーマン対応である。「環境設定にも限界があり,ほぼ毎日一名の職員が付いている」「常時,側につき見守り,単独行動はさも限界があり,ほぼ毎日一名の職員が付いている」「常時,側につき見守り,単独行動はさせないようにしている」「集団で過ごす場合は,一名職員が付いている」などの回答がみらせないようにしている」「集団で過ごす場合は,一名職員が付いている」などの回答がみられた。とれた。とりわけ集団活動においては,行動障害のある人にとっては,刺激が強すぎるため,りわけ集団活動においては,行動障害のある人にとっては,刺激が強すぎるため,自傷や他害行為が頻発しやすくなるため,怪我や事故を予防するためといった目的もある自傷や他害行為が頻発しやすくなるため,怪我や事故を予防するためといった目的もあると考えられる。と考えられる。 また,「常時の見守り」についても多くの回答がみられた。例えば,「すぐに駆けつけらまた,「常時の見守り」についても多くの回答がみられた。例えば,「すぐに駆けつけられる程度の距離を置きながら,常に意識しながら見守っている」「ドア蹴りや物壊しがあるれる程度の距離を置きながら,常に意識しながら見守っている」「ドア蹴りや物壊しがあるため,常時見守り,その都度制止している」「異食行動があるため,外出時や作業時は特にため,常時見守り,その都度制止している」「異食行動があるため,外出時や作業時は特にしっかり見守っている」「多動の人に対しては,目配りや扉の確認など,飛び出しの防止にしっかり見守っている」「多動の人に対しては,目配りや扉の確認など,飛び出しの防止に努めている」「努めている」「盗食行為があるため,責を離した上で,常時見守っている」などの配慮が行盗食行為があるため,責を離した上で,常時見守っている」などの配慮が行われている。われている。 職員の利用者への関わり方として「職員とのコミュニケーションを深める」という意見職員の利用者への関わり方として「職員とのコミュニケーションを深める」という意見も挙がっている。例えば,「心理的援助として話を聞く場を作る」「職員との会話を楽しむも挙がっている。例えば,「心理的援助として話を聞く場を作る」「職員との会話を楽しむために職員室に入れる時間を定めている」「利用者の来所及び帰宅時に特定の職員が個別的ために職員室に入れる時間を定めている」「利用者の来所及び帰宅時に特定の職員が個別的に関わり,親和感を深めている」などの事例が紹介されている。に関わり,親和感を深めている」などの事例が紹介されている。 ③こだわり行動への対応 ③こだわり行動への対応 また,こだわりやパニック回避のための意図的な関わりとして,「職員が先に手を回し,また,こだわりやパニック回避のための意図的な関わりとして,「職員が先に手を回し,本人があきらめるよ本人があきらめるよう支援を行っている」や「帰省時にパニックになるため,帰省の予定う支援を行っている」や「帰省時にパニックになるため,帰省の予定は直前まで知らせない」などが報告されている。は直前まで知らせない」などが報告されている。 いくつかの施設では,こだわり行動の回避のために,こだわり行動のルール化の取り組いくつかの施設では,こだわり行動の回避のために,こだわり行動のルール化の取り組みを行っている。例えば,「出血するまで電気シェーバーを使うため,定期的にひげそりをみを行っている。例えば,「出血するまで電気シェーバーを使うため,定期的にひげそりを実施している」や,「コーヒーへの強いこだわりがあるため,毎食後,一杯のコーヒーを飲実施している」や,「コーヒーへの強いこだわりがあるため,毎食後,一杯のコーヒーを飲むようにして,それ以外の時は,コーヒーを鍵をして保管をしている」「服破りなどの行為むようにして,それ以外の時は,コーヒーを鍵をして保管をしている」「服破りなどの行為があるため,時間と場所を定めて広告破りを行っている」などが報告されている。があるため,時間と場所を定めて広告破りを行っている」などが報告されている。 ④職員としての視点 ④職員としての視点 職員としての視点では,まず,職員間の対応方法の統一がいくつかの施設から挙がって職員としての視点では,まず,職員間の対応方法の統一がいくつかの施設から挙がっている。例えば,「小さなことでも支援者全員の情報交換を行う」「対応方法の統一化を図る」いる。例えば,「小さなことでも支援者全員の情報交換を行う」「対応方法の統一化を図る」などが回答されている。などが回答されている。 また,本人の行動観察を重視している施設もある。例えば,「興奮する前の前兆を見逃さまた,本人の行動観察を重視している施設もある。例えば,「興奮する前の前兆を見逃さないようにする」「不安定になる前に,本人の訴えや悩みを聞いて,パニックを回避していないようにする」「不安定になる前に,本人の訴えや悩みを聞いて,パニックを回避している」などである。る」などである。 さらに,行動観察による原因の追及を行っているという報告もある。例えば,「十分な行さらに,行動観察による原因の追及を行っているという報告もある。例えば,「十分な行動の把握と原因の追究により,事前の配慮を動の把握と原因の追究により,事前の配慮を考える」「日常の行動観察から原因を検討して,考える」「日常の行動観察から原因を検討して,できる限り原因を取り除く」などである。できる限り原因を取り除く」などである。 ( (44))行動障害者支援における支援アイテム行動障害者支援における支援アイテム 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 38 ①スケジュール ①スケジュール 支援アイテムとして最も多く導入されているのが,スケジュールである。支援アイテムとして最も多く導入されているのが,スケジュールである。 まず,個人に応じて一日のスケジュールを策定しているという報告が挙がっている。例まず,個人に応じて一日のスケジュールを策定しているという報告が挙がっている。例えば,「許容的な対応で,一日のスケジュールをゆとりある内容にする」「行動の流れにこえば,「許容的な対応で,一日のスケジュールをゆとりある内容にする」「行動の流れにこだわりがあるため,本人の流れに沿った活動を提供している」「昼夜逆転しているため,本だわりがあるため,本人の流れに沿った活動を提供している」「昼夜逆転しているため,本人の生活リズムに合わせて登園できるようにしている」など人の生活リズムに合わせて登園できるようにしている」などが報告されている。が報告されている。 また,本人用の一日のスケジュールの提示という取り組みも行われている。具体的には,また,本人用の一日のスケジュールの提示という取り組みも行われている。具体的には,「一日の生活に見通しが持てるように,個別にスケジュール表を作成している」「本人用の「一日の生活に見通しが持てるように,個別にスケジュール表を作成している」「本人用のスケジュールカードを作成している」などである。また,「スケジュールを提示し,一日のスケジュールカードを作成している」などである。また,「スケジュールを提示し,一日の日課や楽しみを事前に知らせるようにしている」などにも活用されている。日課や楽しみを事前に知らせるようにしている」などにも活用されている。 生活のメリハリ作りとして,「同じ場面が続くとこだわりが取れないため,部屋割り等に生活のメリハリ作りとして,「同じ場面が続くとこだわりが取れないため,部屋割り等により状況や環境を変えている」という工夫や「日中と夜間を完全に分け,職住分離をしてより状況や環境を変えている」という工夫や「日中と夜間を完全に分け,職住分離をしている」などの回いる」などの回答が挙がっている。答が挙がっている。 一方では,個別的な柔軟性のあるスケジュール対応ではなく,規則正しい生活の流れを一方では,個別的な柔軟性のあるスケジュール対応ではなく,規則正しい生活の流れを促すために,「日課は他の利用者と同じように流れるよう,職員側で心がけている」という促すために,「日課は他の利用者と同じように流れるよう,職員側で心がけている」という施設もあった。施設もあった。 ②日中活動プログラム ②日中活動プログラム 日中活動プログラムに個別的活動の導入を行っている施設も多数みられた。例えば,「集日中活動プログラムに個別的活動の導入を行っている施設も多数みられた。例えば,「集団を拒否するため,定期的な外出など個別的な支援を行っている」「施設外で個別日中活動団を拒否するため,定期的な外出など個別的な支援を行っている」「施設外で個別日中活動を用意し,ボランティア等による生活支援を行っている」「個別対応にし,集団から切り離を用意し,ボランティア等による生活支援を行っている」「個別対応にし,集団から切り離してひとりで生活してもらっている」などが報告してひとりで生活してもらっている」などが報告されている。されている。 また,本人の好きな活動を導入しているという回答もみられた。例えば,「絵画などの好また,本人の好きな活動を導入しているという回答もみられた。例えば,「絵画などの好きな活動を通じて,気分を落ち着かせている」「気分転換のために,余暇物品の充実に努めきな活動を通じて,気分を落ち着かせている」「気分転換のために,余暇物品の充実に努めている」「課題や運動を設定し,何もしない時間を作らないようにしている」「自傷行為のている」「課題や運動を設定し,何もしない時間を作らないようにしている」「自傷行為のある人に対して,マッサージをしたり,別の刺激物を与えている」「ふりかけなど好きな食ある人に対して,マッサージをしたり,別の刺激物を与えている」「ふりかけなど好きな食べ物を用意している」などが挙がっている。べ物を用意している」などが挙がっている。 さらに,屋外活動の実施を積極的に導入している施設もみられた。例えば,「情緒の安定さらに,屋外活動の実施を積極的に導入している施設もみられた。例えば,「情緒の安定と気分転換を図るため,外出や散歩,ドライブ等を実施している」「粗暴な人に対して,他と気分転換を図るため,外出や散歩,ドライブ等を実施している」「粗暴な人に対して,他の利用者のけがを避けるため,園芸の作業を行うなど,屋内にいる時間を少なくしている」の利用者のけがを避けるため,園芸の作業を行うなど,屋内にいる時間を少なくしている」「睡眠障害の人に対して,日中の居眠りを防止するため,気分転換に散歩や屋外活動への「睡眠障害の人に対して,日中の居眠りを防止するため,気分転換に散歩や屋外活動への参加を促している」などの回答があった。参加を促している」などの回答があった。 その他,報酬の提供により意欲向上を図ることを目的として,「作業の数量に応じて帰省その他,報酬の提供により意欲向上を図ることを目的として,「作業の数量に応じて帰省時に工賃を渡すことで,作業に対する意欲を高めている」「きまりごと時に工賃を渡すことで,作業に対する意欲を高めている」「きまりごとが守れた場合に報酬が守れた場合に報酬を与えている」「毎日,工賃袋に一日分の工賃を入れ,動機付けとしている」などが挙がっを与えている」「毎日,工賃袋に一日分の工賃を入れ,動機付けとしている」などが挙がっている。ている。 ③わかりやすい情報提供 ③わかりやすい情報提供 わかりやすい情報提供として,「スケジュール等の説明や意思の伝達に,写真,絵カード,わかりやすい情報提供として,「スケジュール等の説明や意思の伝達に,写真,絵カード,具体物等を使用している」など,視覚的にわかりやすく情報を伝えているという報告があ具体物等を使用している」など,視覚的にわかりやすく情報を伝えているという報告があった。った。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 39 また,個人に応じたコミュニケーションツールの活用として,「音声言語の他,筆談でやまた,個人に応じたコミュニケーションツールの活用として,「音声言語の他,筆談でやりとりを行っている」「本人の持つジェスチャーサイン等が第三者にも伝わるように支援しりとりを行っている」「本人の持つジェスチャーサイン等が第三者にも伝わるように支援している」などの報告が挙がっている。ている」などの報告が挙がっている。 ( (55))行動障害者支援における物理的環境設定行動障害者支援における物理的環境設定 ①個人スペースの確保 ①個人スペースの確保 個人スペースの個人スペースの確保として最も多いのが,個室の提供である。例えば,「他傷行為のある確保として最も多いのが,個室の提供である。例えば,「他傷行為のある人に対して,個室を用意し,過ごしてもらっている」「本人が静かに過ごせる場所を確保し人に対して,個室を用意し,過ごしてもらっている」「本人が静かに過ごせる場所を確保している」「時間や場所を調整して,個別に落ち着いた雰囲気で食事が取れるようにしていている」「時間や場所を調整して,個別に落ち着いた雰囲気で食事が取れるようにしている」る」などである。などである。 また,パニック時に落ち着く空間に移動させるという報告も多くみられた。例えば,「パまた,パニック時に落ち着く空間に移動させるという報告も多くみられた。例えば,「パニックになった場合,静かな場所,広めの空間など,落ち着きやすい場所に移動して,落ニックになった場合,静かな場所,広めの空間など,落ち着きやすい場所に移動して,落ち着くまで静観する」「パニックになる寸前に,落ち着ける場所に移動し,話を聞き,落ちち着くまで静観する」「パニックになる寸前に,落ち着ける場所に移動し,話を聞き,落ち着くのを待つ」「タイムアウトできる部屋を準備している」などが挙がっている。着くのを待つ」「タイムアウトできる部屋を準備している」などが挙がっている。 さらに,他の利用者との接触をさけるために様々な取り組みを行っている。例えば,「他さらに,他の利用者との接触をさけるために様々な取り組みを行っている。例えば,「他傷行為のある人に対して,他の利用者との距離を置くようにしている」「個別のスケジュー傷行為のある人に対して,他の利用者との距離を置くようにしている」「個別のスケジュールを作り,ルを作り,苦手利用者との接触を避けている」「他傷されやすい人を本人に近づけない」「他苦手利用者との接触を避けている」「他傷されやすい人を本人に近づけない」「他の人との接触を少なくするなど,刺激を排除する方向で支援している」などが挙がっていの人との接触を少なくするなど,刺激を排除する方向で支援している」などが挙がっている。る。 個室から徐々に集団活動へと慣れさせていく取り組みも行われている。例えば,「集団が個室から徐々に集団活動へと慣れさせていく取り組みも行われている。例えば,「集団が苦手なため,個室で個別に課題を設定し,徐々に集団への参加を促している」とか,「個室苦手なため,個室で個別に課題を設定し,徐々に集団への参加を促している」とか,「個室でも個別支援から始め,TEACCHを主体として意思の疎通を行い,担当支援員に対すでも個別支援から始め,TEACCHを主体として意思の疎通を行い,担当支援員に対する不安感を取り除いた。その後,他の支援員との関わりの頻度や,個室から出る時間を増る不安感を取り除いた。その後,他の支援員との関わりの頻度や,個室から出る時間を増やしていった」などが報告されやしていった」などが報告されている。ている。 少人数でのユニット生活として,「少人数で過ごせる自立訓練棟での生活を行っている」少人数でのユニット生活として,「少人数で過ごせる自立訓練棟での生活を行っている」などの意見が挙がっている。などの意見が挙がっている。 ②物理的環境設定 ②物理的環境設定 まず,事故防止や危険回避のための物理的環境設定として,「こだわりによる離園の可能まず,事故防止や危険回避のための物理的環境設定として,「こだわりによる離園の可能性があることから,GPS発信器を常時装着している」「コンセントを壊すため,カバーで性があることから,GPS発信器を常時装着している」「コンセントを壊すため,カバーで覆っている」「ガラスへの頭突きがあるため,強化ガラスを使用している」「液体であれば覆っている」「ガラスへの頭突きがあるため,強化ガラスを使用している」「液体であれば洗剤等でも飲む異食に対して,誤飲しそうな物の管理を徹底している」「石などの異食行動洗剤等でも飲む異食に対して,誤飲しそうな物の管理を徹底している」「石などの異食行動があるため,中庭などの小石を取り除いている」「多動の人に対して,意図的な転倒もあるがあるため,中庭などの小石を取り除いている」「多動の人に対して,意図的な転倒もあるため,ヘッドギアをしている」などの回答が挙がっている。ため,ヘッドギアをしている」などの回答が挙がっている。 また,問題行動をなくすための物理的環境設定としまた,問題行動をなくすための物理的環境設定として,「服脱ぎがあるため,ボタン付きて,「服脱ぎがあるため,ボタン付きなど,脱ぎにくい服を準備している」「押し入れの物を出すこだわりに対して,押し入れになど,脱ぎにくい服を準備している」「押し入れの物を出すこだわりに対して,押し入れに鍵をつけている」「コップで尿を飲むため,本人のコップは預かり,トイレに持参できない鍵をつけている」「コップで尿を飲むため,本人のコップは預かり,トイレに持参できないようにしている」「物投げがあるため,居室には物を置かない」などが報告されている。ようにしている」「物投げがあるため,居室には物を置かない」などが報告されている。 さらに,居住空間の構造化として,「室内の構造化を行っている」「衝立で部屋の空間をさらに,居住空間の構造化として,「室内の構造化を行っている」「衝立で部屋の空間を仕切り,本人専用の作業・休憩スペースを確保している」などが挙がっている。仕切り,本人専用の作業・休憩スペースを確保している」などが挙がっている。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 40 ( (66))行動障害者支援における関係機関との連携行動障害者支援における関係機関との連携 ①関係機関との連携 ①関係機関との連携 関係機関係機関との連携としては,まず医師との連携について回答されている。例えば,「受診関との連携としては,まず医師との連携について回答されている。例えば,「受診時には,担当職員も同伴し,支援方法の助言をもらっている」「睡眠障害の人に対して,睡時には,担当職員も同伴し,支援方法の助言をもらっている」「睡眠障害の人に対して,睡眠状態と時間を記録し,主治医に渡し,薬の調整指示を受けている」などが挙がっている。眠状態と時間を記録し,主治医に渡し,薬の調整指示を受けている」などが挙がっている。 また,その他の関係機関との連携として,「対象者と関わりのある機関とサービス調整会また,その他の関係機関との連携として,「対象者と関わりのある機関とサービス調整会議を行い,関わり方や対応について定期的に協議している」「ケア会議を開催し,各関係者議を行い,関わり方や対応について定期的に協議している」「ケア会議を開催し,各関係者の役割分担を明確にするとともに,一貫した対応ができるようにした」などが報告されての役割分担を明確にするとともに,一貫した対応ができるようにした」などが報告されている。いる。 ②保護者との関わり ②保護者との関わり 保護者・家族との関わりによる情緒の安定を目指している取り組みが報告されている。保護者・家族との関わりによる情緒の安定を目指している取り組みが報告されている。例えば,「週末帰省を行い,精神安定を図っている」「保護者の協力で,定期的に外出する例えば,「週末帰省を行い,精神安定を図っている」「保護者の協力で,定期的に外出する機会を設けている」などが挙がっている。機会を設けている」などが挙がっている。 また,支援上の保護者との連携も行われている。例えば,「家庭訪問による職員との関係また,支援上の保護者との連携も行われている。例えば,「家庭訪問による職員との関係作りを行っている」「不穏の原因や行動の把握のため,保護者と連絡を取り合っている」「保作りを行っている」「不穏の原因や行動の把握のため,保護者と連絡を取り合っている」「保護者も交え,支援方法を協議し,薬物による精神安定剤の調整を行っている」などの意見護者も交え,支援方法を協議し,薬物による精神安定剤の調整を行っている」などの意見が聞かれた。が聞かれた。 3 3 本節の小括本節の小括 福岡市内の施設・事業所が,行動障害者支援においてどのような取り組みを行っている福岡市内の施設・事業所が,行動障害者支援においてどのような取り組みを行っているのかについて,KJ法を用いて分類していった。その結果,どの施設等も,支援方法につのかについて,KJ法を用いて分類していった。その結果,どの施設等も,支援方法について様々な積極的な取り組みを行っていることが明らかになった。直接支援場面においていて様々な積極的な取り組みを行っていることが明らかになった。直接支援場面においては,受容を基本とした対応が特徴的であった。また,スケジュールや視覚アイテム等を活は,受容を基本とした対応が特徴的であった。また,スケジュールや視覚アイテム等を活用した支援,物理的環境設定においては,個人スペースの確保等の意見が多く見られた。用した支援,物理的環境設定においては,個人スペースの確保等の意見が多く見られた。各施設とも,行動障害者を受け入れるにあたっては,おそらく報酬単価をはるかに超える各施設とも,行動障害者を受け入れるにあたっては,おそらく報酬単価をはるかに超えるコストをかけて,人材確保や設備環コストをかけて,人材確保や設備環境設定などをしていると考えられる。境設定などをしていると考えられる。

第4節 本章の まとめ

本章を通じて,行動障害をともなう重度自閉症者の問題は,限られた施設・事業所の問 題ではなく,今や,ほとんどの知的障害施設にとっての課題であることが明らかになった。 また,各施設は,それぞれ試行錯誤しながらも,重度自閉症者にとっての落ち着く環境と はどのようなものなのか,行動障害の軽減のために自分たちに何ができるのかを考え,様々 な取り組みを行っていた。 こうした内容について,福岡市の調査結果を元にKJ法を活用して,分類整理できたこ とは,各施設等において今後の取り組むべき視点が明らかになったという点で意義がある の ではないかと考える。

第 3 章 「強度行動障害者支援研究事業」事例の研究

第 1 節 事例検討を通じて明らかにすること

前章では,福岡市の実態調査結果を考察する中で,市内の各事業所の行動障害者支援の 取り組みについて傾向を探った。そこで,本章では,より具体的に現場で取り組まれてい る行動障害者支援の実情について日々の支援記録やケース会議の議事録等から明らかにし ていく。なお,そこでは,前章でカテゴライズした内容をふまえつつ,事例検討の中でア プローチ方法のポイントとして整理された,①利用者の受け入れ方法,②支援の基本的方 向性,③活動プログラム,④物理的環境の整備,⑤職員の意識づくりと支援技術の方法, ⑥情報の管理の 6 点について言及す る。

第 2 節 研究事業の概要

1 はじめに-事業開始に至る経緯- 筆者の所属する社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会は, 1992 (平成 4 )年 4 月に知的障害者 通所授産施設「鞍手ゆたかの里」の開設を皮切りに, 2011 年 5 月 7 月現在,日中活動系 事業所 4 ヶ所,共同生活介護事業所(ケアホーム) 6 ヶ所,障害者支援センター 2 ヶ所, 老人デイサービスセンター 1 ヶ所,居宅介護事業所 1 ヶ所の 14 事業所を運営している。事 業所利用者は,約 140 名で,障害の程度は最重度から軽度まで様々である。その中でも, 当法人では,支援の最も困難な行動障害を伴う重度自閉症の人たちへの支援のあり方を模 索してきた。 筆者は, 1995 年, 1996 年, 1998 年と 3 度にわたって渡米し,アメリカの自閉症支援に ついての実践を学んだ。その中で,行動障害はその人が持って生まれたものではなく,適 切な環境設定や支援によって軽減,消滅することを確信した。そのポイントは,「快適な環 境」「本人主体」「科学的専門的支援」である。こうした仮説をもとに,法人では,それら の考え方を実践すべく, 20 03 年に全国的にも珍しい「小規模完全分離型入所更生施設」を 開設した。サンガーデン鞍手と命名されたこの施設は,ひとつの敷地の中に, 5 棟の建物 が林立し,そのうち 3 棟が 10 名定員の生活ホームになっており,食事,入浴,団らんな どの一連の生活をすべて,そのホーム内でできるような設備が設けられている。この施設 では,利用者の入所条件として,「行動障害」「睡眠障害」「無断外出」のうちいずれかの行 動問題がある人という基準を設けた。その結果, 30 名中 25 名が行動障害のある人たちで 占められ,施設開設当初は,常時,パニックや自傷行 為,他害行為,物壊し等が頻発して いた。しかしながら,少人数の暮らし,日課を決めない,できる限り規制や管理を排除し 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 42 た生活,手厚い職員配置,週末帰宅,退屈な時間を作らない配慮,行動障害の原因分析, た生活,手厚い職員配置,週末帰宅,退屈な時間を作らない配慮,行動障害の原因分析,利用者の人権を尊重した対応,職員間での支援方法の統一した対応などの取り組みにより,利用者の人権を尊重した対応,職員間での支援方法の統一した対応などの取り組みにより,多くの利用者は,約多くの利用者は,約11年で施設の中に自分の居場所を見出し,徐々に落ち着きを取り戻し,年で施設の中に自分の居場所を見出し,徐々に落ち着きを取り戻し,最も行動障害の激しかった利用者も約最も行動障害の激しかった利用者も約22年で平穏な生活を営むことができるようになった。年で平穏な生活を営むことができるようになった。この過程は,ドキュメンタリー映画「あした天気になる?」((有)ピースクリエこの過程は,ドキュメンタリー映画「あした天気になる?」((有)ピースクリエイト制作,イト制作,野口幸弘西南学院大学教授監修)でも紹介された。野口幸弘西南学院大学教授監修)でも紹介された。 こうした状況の中,法人では,激しい行動障害のある重度自閉症の人たちの居住の場の こうした状況の中,法人では,激しい行動障害のある重度自閉症の人たちの居住の場のニーズに応えるべく,ニーズに応えるべく,20092009年に,新たに強度行動障害者専用ケアホームを建設することと年に,新たに強度行動障害者専用ケアホームを建設することとなった。ホームを開設するにあたって,入所者が新しい生活環境に適応するまでには,極なった。ホームを開設するにあたって,入所者が新しい生活環境に適応するまでには,極めてきめ細かい支援体制が必要であるということで,このケアホーム事業は,福岡市障害めてきめ細かい支援体制が必要であるということで,このケアホーム事業は,福岡市障害福祉課と福岡市強度行動障害支援調査研究会と社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会の三者の全福祉課と福岡市強度行動障害支援調査研究会と社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会の三者の全面的な協力関係により進められることとなった。面的な協力関係により進められることとなった。 なお, なお,手厚い支援体制と高度な専門性に基づく適切な支援を進めて行くには,かなりの手厚い支援体制と高度な専門性に基づく適切な支援を進めて行くには,かなりの費用がかかる。そこで,日本財団に研究助成費を申請したところ,事業の意義や趣旨を理費用がかかる。そこで,日本財団に研究助成費を申請したところ,事業の意義や趣旨を理解され,助成金が配分されることが決まった。解され,助成金が配分されることが決まった。 こうして, こうして,20092009年年99月から月から20102010年年1111月までの月までの11年年33ヶ月間にわたって研究事業が行ヶ月間にわたって研究事業が行われた。われた。 2 2 研究事業の内容研究事業の内容 この研究事業ではこの研究事業では,鞍手ゆたか福祉会の法人内ケアホーム移行支援会議が,鞍手ゆたか福祉会の法人内ケアホーム移行支援会議が1616回,福岡回,福岡市強度行動障害支援調査研究会と合同で行われた移行支援会議が市強度行動障害支援調査研究会と合同で行われた移行支援会議が2121回開催された。この回開催された。この事業のプロジェクトメンバーは,プロジェク事業のプロジェクトメンバーは,プロジェクト代表兼スーパーバイザーの西南学院大学教ト代表兼スーパーバイザーの西南学院大学教授野口幸弘氏,スーパーバイザーとして,西南女学院短期大学講師の倉光晃子氏,福岡市授野口幸弘氏,スーパーバイザーとして,西南女学院短期大学講師の倉光晃子氏,福岡市障害福祉課より障害福祉課より22名,福岡市強度行動障害支援調査研究会メンバー名,福岡市強度行動障害支援調査研究会メンバー1717施設から施設から2929名,そ名,そして鞍手ゆたか福祉会職員して鞍手ゆたか福祉会職員2323名の合計名の合計5656名で進められた。名で進められた。 利用者が入所する前の会議におい 利用者が入所する前の会議においては,利用者のアセスメントを丁寧ては,利用者のアセスメントを丁寧に行い,受け入れ体制を慎重に協議に行い,受け入れ体制を慎重に協議しながら作り上げていった。また,しながら作り上げていった。また,利用者の入所後は,会議の中で,毎利用者の入所後は,会議の中で,毎回,現場から事業の進捗状況が報告回,現場から事業の進捗状況が報告され,それに対し様々な意見交換がされ,それに対し様々な意見交換が行われた。行われた。 なお,入所者の選定にあたっては,最も行動障害の激しい方を なお,入所者の選定にあたっては,最も行動障害の激しい方を66名選定した。まず,名選定した。まず,20092009年年1111月より,一人目の利用者A氏を受け入れた。宿泊は週月より,一人目の利用者A氏を受け入れた。宿泊は週22日からスタートし,日からスタートし,AA氏に氏に対し,夜間は対し,夜間は33名の支援者で対応し,深夜は名の支援者で対応し,深夜は22名の支援者が宿泊した。その後,徐々に宿名の支援者が宿泊した。その後,徐々に宿泊回数を増加し,泊回数を増加し,20102010年年11月からは週月からは週33日宿泊,同日宿泊,同33月からは週月からは週44日宿泊,日宿泊,55月からは週月からは週66日宿泊としていった。他の日宿泊としていった。他の55名についても同様に,段階的に宿泊回数を増やし,スムー名についても同様に,段階的に宿泊回数を増やし,スムーズにケアホームでの暮らしに慣れていけるよう配慮して進めていった。ズにケアホームでの暮らしに慣れていけるよう配慮して進めていった。 利用者の人たちは,入所後数ヵ月は,著しい環境の変化に戸惑い,不安定になり,自傷 利用者の人たちは,入所後数ヵ月は,著しい環境の変化に戸惑い,不安定になり,自傷や他害,こだわり行動などが見られ,夜間もや他害,こだわり行動などが見られ,夜間も22,,33時間程度しか睡眠がとれない状況が続時間程度しか睡眠がとれない状況が続 表 表33--11 プロジェクトメンバープロジェクトメンバー 1 1 大学教授( 大学教授(11名,スーパーバイザー)名,スーパーバイザー) 2 2 大学講師( 大学講師(11名,スーパーバイザー)名,スーパーバイザー) 3 3 行政職員( 行政職員(22名,福岡市障害福祉課)名,福岡市障害福祉課) 4 4 福岡市内施設職員( 福岡市内施設職員(1515事業所,事業所,2929名)名) 5 5 鞍手ゆたか福祉会職員( 鞍手ゆたか福祉会職員(66事業所,事業所,2323名)名) 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 43 いたが, いたが,20102010年年88月頃には概ね落ち着いた。そして,同年月頃には概ね落ち着いた。そして,同年1111月の移行支援会議において,月の移行支援会議において,参加者全員で参加者全員で11年間を振り返る中,一定の成果を確認し,ケアホームへの移行支援は無事年間を振り返る中,一定の成果を確認し,ケアホームへの移行支援は無事終了したことが確認され,本事業が終了した。終了したことが確認され,本事業が終了した。 3 3 入居者の入居者の入居時の状況入居時の状況 A氏の生活面における必要な介護・支援は,ADL全般において全介助または一部介助。A氏の生活面における必要な介護・支援は,ADL全般において全介助または一部介助。バランスが弱く,不器用なため転倒しやすい。排泄は,ズボン,パンツを下げる介助が必バランスが弱く,不器用なため転倒しやすい。排泄は,ズボン,パンツを下げる介助が必要である。排尿に時間がかかり,要である。排尿に時間がかかり,55分程度を要する。排便後の尻拭きは全介助。入浴,洗分程度を要する。排便後の尻拭きは全介助。入浴,洗面,歯磨きは全介助。自宅での入浴は,家族による洗身,洗髪の介助で対応している。更面,歯磨きは全介助。自宅での入浴は,家族による洗身,洗髪の介助で対応している。更衣は一部介助。上着は頭からかぶせると自衣は一部介助。上着は頭からかぶせると自分で着ることができる。パンツ,ズボン,靴下分で着ることができる。パンツ,ズボン,靴下は,介助により足先を通すと自分で引き上げて履くことができる。は,介助により足先を通すと自分で引き上げて履くことができる。 また,行動の特徴と行動障害の内容については,A氏は,人が大好きで,積極的に関わまた,行動の特徴と行動障害の内容については,A氏は,人が大好きで,積極的に関わりを持とうとする。相手の反応が良ければご機嫌になるが,相手から無視されたと感じたりを持とうとする。相手の反応が良ければご機嫌になるが,相手から無視されたと感じたときや,相手との別れ際,叱責されたと感じたときは,物壊しや物投げなどの破壊行動,ときや,相手との別れ際,叱責されたと感じたときは,物壊しや物投げなどの破壊行動,髪引っ張り,つかみかかり,噛みつき,蹴り等の他害行動がある。車や機械類が好きで触髪引っ張り,つかみかかり,噛みつき,蹴り等の他害行動がある。車や機械類が好きで触りたがる。適切な使い方がわからないため,壊してしまうことが多く,そのことをきっかりたがる。適切な使い方がわからないため,壊してしまうことが多く,そのことをきっかけにしてけにして破壊や他害に及ぶことがある。プライドが高く,失敗体験に過敏であるため,排破壊や他害に及ぶことがある。プライドが高く,失敗体験に過敏であるため,排泄の失敗や食べこぼしへの介入,自立活動の失敗などにおいて,自尊心を傷つけられたと泄の失敗や食べこぼしへの介入,自立活動の失敗などにおいて,自尊心を傷つけられたと感じたときは,他害や破壊行動がある。集団は好きだが,他者との関係で介入せざるを得感じたときは,他害や破壊行動がある。集団は好きだが,他者との関係で介入せざるを得ない場面が多くなるため,他害行動回避のため集団参加が困難である。ない場面が多くなるため,他害行動回避のため集団参加が困難である。 B氏の生活面における必要な介護,支援は,水飲み行動をあまりさせないような配慮がB氏の生活面における必要な介護,支援は,水飲み行動をあまりさせないような配慮が必要である。排泄は,大便後の拭き上げができないため介助が必要である。排泄後の手洗必要である。排泄は,大便後の拭き上げができないため介助が必要である。排泄後の手洗い時に水飲みや顔洗いがあるため,見守り声かけが必要であい時に水飲みや顔洗いがあるため,見守り声かけが必要である。小便時は,尿を自分のズる。小便時は,尿を自分のズボンにかけ,すぐに着替えをするという執着行動がある。食事の場面では,食べ終わったボンにかけ,すぐに着替えをするという執着行動がある。食事の場面では,食べ終わった後に箸を歯で細かくちぎることが習慣化している。早食いである。魚や肉は骨まで食べる後に箸を歯で細かくちぎることが習慣化している。早食いである。魚や肉は骨まで食べるため注意が必要である。起床や就寝のリズムができておらず,月に数回,寝ない日がある。ため注意が必要である。起床や就寝のリズムができておらず,月に数回,寝ない日がある。歯磨きは,仕上げ介助が必要である。更衣の場面では,新しい服のタグを食べるので注意歯磨きは,仕上げ介助が必要である。更衣の場面では,新しい服のタグを食べるので注意が必要である。好きな活動は,ハサミで広告紙や新聞紙を切る紙切りや雑誌を眺めることが必要である。好きな活動は,ハサミで広告紙や新聞紙を切る紙切りや雑誌を眺めることである。である。 行動の特徴と行動障害については,B氏は,自分の要求が通らないときや,制止行動の特徴と行動障害については,B氏は,自分の要求が通らないときや,制止されたされたとき,痛みなどの生理的不快のときに噛みつきがある。とき,痛みなどの生理的不快のときに噛みつきがある。 C氏の生活面における必要な介護・支援は,C氏は盲目のため,声かけを常に行い,そC氏の生活面における必要な介護・支援は,C氏は盲目のため,声かけを常に行い,その都度今の状況やこれからの予定の説明などをする必要がある。歩くときは,支援者の肩の都度今の状況やこれからの予定の説明などをする必要がある。歩くときは,支援者の肩に手を当てて移動する介助が必要である。排泄については,小便は自立,大便はペーパーに手を当てて移動する介助が必要である。排泄については,小便は自立,大便はペーパーを渡せば自分で拭くが,拭き上げの介助が必要である。箸を使用することは可能である。を渡せば自分で拭くが,拭き上げの介助が必要である。箸を使用することは可能である。目が見えないため,食器の位置を手添えで確認する介助が必要である。入浴,洗面,歯磨目が見えないため,食器の位置を手添えで確認する介助が必要である。入浴,洗面,歯磨きは,声かけにより自分で行うが,介助を要する。きは,声かけにより自分で行うが,介助を要する。 C氏C氏の行動の特徴と行動障害は,自傷行為があり,主に目を叩く。また,不安定なときの行動の特徴と行動障害は,自傷行為があり,主に目を叩く。また,不安定なときは,大声を出すなどがみられる。は,大声を出すなどがみられる。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

8年目にしてようやく内示《平成13年》

翌年の平成12年の小規模完全分離型施設の申請も却下されました。平成8年度から申請を始めて5連敗です。ある保護者からは、「図面が悪いんじゃないの?そんな奇をてらうような計画では、県や国は、通したくても通せないから、普通の箱形施設の計画で申請した方がいい」というご意見もいただきました。保護者にとっては、何よりも認可が下りることが一番大事なことで、計画内容はその次のことだと思います。なぜなら、いろいろ考えても、認可が下りなければそれは単なる絵に描いた餅になってしまうのですから。私は、その方の意見に、確かにそれは十分に考えられることだなあと思いながらも、ここで妥協したら後できっと後悔すると思い、次の年の平成13年度も完全分離型で申請しました。県のヒヤリングでは、夜の職員体制はどうするのかとか、これでは、箱型施設に比べたら建設費もかなり増えるがそのための自己資金は準備できるのか、入所者が3つの建物に分けると職員の数もかなり多く必要になるが、その人件費はどうするのかなどと根ほり葉ほり質問されました。しかし、それらの質問は、事前に予測していた質問どおりだったので、用意していた答えで県の担当者を納得させ、入所者の人権を守ることや当たり前の暮らしを第一に考えたらこのような間取りしか考えられないと主張しました。結局、県の担当者は、「すごくユニークでおもしろい計画ですね。このような形態の施設は県内には全くなく、全国的にも珍しいケースだと思いますが、これからの時代は、ノーマライゼーションの理念の下に普通の家庭のような暮らしが求められます。県としても、国にこれで行けるようにできる限り働きかけてみましょう。」と応援を約束してくれました。県の担当者によると、国のヒヤリングでも管理面についてかなり突っ込んだ質問を受けたそうです。そして、平成13年12月、ようやく国から、内示をいただきました。

第 3 節 研究事業(移行支援会議)の実施経過

た打合せ 10 5 月 第1回法人内移行支援会議 9 金 第2回法人内移行支援会議 19 日 第3回法人内移行支援会議 21 水 第4回法人内移行支援会議 A氏受入体制についての現状報告と協議 22 木 宿直職員の人事について協議 23 金 第5回法人内移行支援会議 26 月 第3回移行支援会議 29 木 第4回移行支援会議 11 2 月 A氏、サンガーデン5号館入所 10 火 福岡市障害福祉課職員、5号館見学に来訪 18 水 第6回法人内移行支援会議 D氏(入所予定者)の保護者サンガーデン見学 25 水 第5回移行支援会議 12 16 水 第7回法人内移行支援会議 23 水 第6回移行支援会議 25 金 第7回移行支援会議 2010 1 5 火 第8回移行支援会議 13 水 第8回法人内移行支援会議 19 火 第9回移行支援会議 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 45 2 22 月 第10回移行支援会議 25 木 第9回法人内移行支援会議 3 2 火 第11回移行支援会議 3 水 第10回法人内移行支援会議 30 火 第11回法人内移行支援会議 4 5 月 第12回移行支援会議 26 月 第12回法人内移行支援会議 5 13 木 第13回移行支援会議 26 水 第13回法人内移行支援会議 6 3 木 第14回移行支援会議 7 5 月 第14回法人内移行支援会議 15 木 第15回移行支援会議 26 月 5号館保護者・職員意見交換会 8 2 月 第15回法人内移行支援会議 16 月 第16回移行支援会議 9 1 水 第17回移行支援会議 3 金 5号館保護者・職員意見交換会 27 月 第16回法人内移行支援会議 10 4 月 第18回移行支援会議 15 金 第19回移行支援会議 11 1 月 第20回移行支援会議 8 月 第21回移行支援会議 11 木 5号館保護者・職員意見交換会

第 4 節 研究事業の経緯と成果

サンガーデン鞍手は、1棟10名定員です。10名の生活は、やはりまだまだノーマルとは言い難いです。できれば4名から7名程度の規模での生活が望ましいと考えています。そこで、1階2人部屋4室、2階個室3室のこれら7室をすべて個室にして、1棟7名での生活を単位としたいと考えています。そのためには、まずは、各棟4名ずつ、3棟合計12名を、施設との契約を継続した状態で、地域に無認可のグループホームを開設し、希望する人から地域生活に移行していただきたいと思います。
私たちは、「入所施設という制度の下でのグループホーム」として「サンガーデン鞍手」の建物を立ち上げました。私たちの最終的な目標は、「入所施設という制度の下での障害者地域生活支援センター」へと「サンガーデン鞍手」の機能を、変革していくことです。「サンガーデン鞍手」では、毎年10パーセントの入居者を、当事者が望んでいる地域でのあたりまえの生活に移行させていきたいと考えています。そして、最終的には、施設入所者をゼロにし、「入所施設という機能の解体」を目指してしていきたいと思っています。もちろん、「サンガーデン鞍手」は、今後、施設から地域生活へ移行する人々に対しては、十二分な支援体制を責任を持って担っていきます。

第 4 節 研究事業の経緯と成果

プロジェクトでは, 1 年あまりにおける移行支援会議において様々なことが議論された。 本節では,そこで出された意見,合意された内容,実践化された内容等について,支援の 視点ごとに報告していく。 1 利用者受け入れ方法 (1) 入居者の受け入れ時の対応 自閉症の人にとって,大きな生活環境の変化は,戸惑い,不安,恐怖感等をもたらし, そのことがパニックや自傷などの行動問題の引き金となることが多い。とりわけ,家庭や 他施設から新たな環境へ移るときは,本人の不安な気持ちに寄り添いながら,スモールス テップで移行していくことが求められる。そこで,ケアホームへの受け入れ時の対応方法 として以下の方針で臨むことにした。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 46 11.最終的にはケアホーム完全入居を目標とするが,いきなり週.最終的にはケアホーム完全入居を目標とするが,いきなり週66日,又は日,又は77日宿泊は日宿泊は著しい環境の変化にともないパニック生起が予測される。そこで,入居当初は週著しい環境の変化にともないパニック生起が予測される。そこで,入居当初は週22日日宿泊からスタートする。そうして,利用者が家が恋しくならず,サンガーデンが楽し宿泊からスタートする。そうして,利用者が家が恋しくならず,サンガーデンが楽しいと思えるまま帰宅することができるようにする。その後,約半年をかけて完全入居いと思えるまま帰宅することができるようにする。その後,約半年をかけて完全入居を目指し,スモールステップで宿泊回数を増加していく。を目指し,スモールステップで宿泊回数を増加していく。 22.サンガーデンを利用する週.サンガーデンを利用する週22日以外は,昼間は福岡市内の日中活動サービスを利用日以外は,昼間は福岡市内の日中活動サービスを利用し,夜間は自宅にて宿泊する。し,夜間は自宅にて宿泊する。 33.人刺激に過剰反応するA氏が週.人刺激に過剰反応するA氏が週22宿泊スタートとなった場合は,他の利用者の受け宿泊スタートとなった場合は,他の利用者の受け入れ時期もその日程をふまえて,同時宿泊にならないように配慮する。入れ時期もその日程をふまえて,同時宿泊にならないように配慮する。 44.最初は,週間リズムとともに,日中活動での生活.最初は,週間リズムとともに,日中活動での生活の流れを作る必要がある。の流れを作る必要がある。 55.日中活動やケアホーム生活を通じて,「また泊まりに行きたい」と思わせる好印象を.日中活動やケアホーム生活を通じて,「また泊まりに行きたい」と思わせる好印象を与えることが重要である。与えることが重要である。 66.本人にとって魅力ある泊まりにするには,「食べ物」「人」「道具」が重要で,過ごす.本人にとって魅力ある泊まりにするには,「食べ物」「人」「道具」が重要で,過ごす時間も長いので,例えば,焼き肉の料理,課題,余暇道具など楽しく時間を費やす活時間も長いので,例えば,焼き肉の料理,課題,余暇道具など楽しく時間を費やす活動を考える。動を考える。 (2) (2)A氏入居A氏入居33ヶ月目の対応ヶ月目の対応 A氏は,A氏は,1111月より入居し,月より入居し,22泊泊33日で進めてきたが,日常生活に逸脱行動やパニックも日で進めてきたが,日常生活に逸脱行動やパニックもあまり見られないため,あまり見られないため,11月より週月より週33泊泊44日で進めていくことになった。日で進めていくことになった。 また,A氏に対して,また,A氏に対して,支援者支援者11名体制だと,降車拒否が見られたら何も活動ができない名体制だと,降車拒否が見られたら何も活動ができないため,パニックを起こさないように配慮することが最優先となり,無難な活動に制限されため,パニックを起こさないように配慮することが最優先となり,無難な活動に制限されてくる。それでは,A氏のQOLを高めていくことができないため,A氏に対しては,最てくる。それでは,A氏のQOLを高めていくことができないため,A氏に対しては,最低低22名の支援者体制で対応することとした。名の支援者体制で対応することとした。 (3) (3)A氏入居A氏入居44ヶ月目ヶ月目以降以降の対応の対応 11月は,A氏は週月は,A氏は週33泊泊44日とした。A氏不在の日に日とした。A氏不在の日にBB氏,氏,CC氏が氏が11泊泊22日利用のため,日利用のため,宿泊が同日になることはなかったが,宿泊が同日になることはなかったが,22月以降は,月以降は,BB氏,氏,CC氏が,氏が,22泊泊33日に挑戦するた日に挑戦するため,め,33人が同時に宿泊する機会を初めて持つこととなる。そこ人が同時に宿泊する機会を初めて持つこととなる。そこで,その日は,サンガーデで,その日は,サンガーデン支援員ン支援員22名と,福岡市からの応援を利用者ごとに名と,福岡市からの応援を利用者ごとに11名ずつ宿泊することとした。名ずつ宿泊することとした。 また,A氏が他の人と一緒に宿泊することにより,入居者間のトラブルの危険性が想定また,A氏が他の人と一緒に宿泊することにより,入居者間のトラブルの危険性が想定される。そこで,トラブル回避の方法を検討することが課題として挙げられた。さらに,される。そこで,トラブル回避の方法を検討することが課題として挙げられた。さらに,A氏は,人は好きだが,人刺激に過敏のため,別れぎわに寂しさからストレスが生まれパA氏は,人は好きだが,人刺激に過敏のため,別れぎわに寂しさからストレスが生まれパニックの要因となる可能性があるため,配慮が必要であることが指摘された。ニックの要因となる可能性があるため,配慮が必要であることが指摘された。 A氏入居から,段階的に宿泊回数を増やし,かつ入居者受け入れを行っていった経緯はA氏入居から,段階的に宿泊回数を増やし,かつ入居者受け入れを行っていった経緯は以下のとおりである以下のとおりである。。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 47 2 2 支援の基本的方向性支援の基本的方向性 (1) (1)環境設定についての考え方環境設定についての考え方 自閉症の人は刺激過敏であり,そこから気に入った刺激に対してはこだわりを誘発し,自閉症の人は刺激過敏であり,そこから気に入った刺激に対してはこだわりを誘発し,一方,本人にとって不快な刺激に対しては,自傷や他害,パニック行動の要因となること一方,本人にとって不快な刺激に対しては,自傷や他害,パニック行動の要因となることをふまえ,居住場面での刺激の統制の是非について議論された。をふまえ,居住場面での刺激の統制の是非について議論された。 例えば,窓の外の車の往来やコンビニエンスストアの電照看板等が窓から見えるとどう例えば,窓の外の車の往来やコンビニエンスストアの電照看板等が窓から見えるとどうしてもそこに行きたくなったり,ホーム内のスイッチや非常灯の明かりなどの刺激物があしてもそこに行きたくなったり,ホーム内のスイッチや非常灯の明かりなどの刺激物があるとそれに執着する等の可能性を想定して,事前の環境設定をどうするかについて話し合るとそれに執着する等の可能性を想定して,事前の環境設定をどうするかについて話し合われた。われた。 このことに対し,パニックを制止するのは本このことに対し,パニックを制止するのは本人にとって負担が大きいため,スモールス人にとって負担が大きいため,スモールステップで低いハードルから踏んでいき,徐々に本人の環境を拡げていってはどうかというテップで低いハードルから踏んでいき,徐々に本人の環境を拡げていってはどうかという意見が出された。これは,具体的には,窓ガラスに目隠しシートを貼って外が見えないよ意見が出された。これは,具体的には,窓ガラスに目隠しシートを貼って外が見えないようにする等の刺激遮断を行い,本人が徐々に生活に慣れてきてから刺激遮断を減らしていうにする等の刺激遮断を行い,本人が徐々に生活に慣れてきてから刺激遮断を減らしていくということである。一方,逆の意見として,パニックや不穏な行動が起こっても,対応くということである。一方,逆の意見として,パニックや不穏な行動が起こっても,対応が可能なだけの人的資源体制が整うのであれば過重な刺激の制限は行わず,本人が希望すが可能なだけの人的資源体制が整うのであれば過重な刺激の制限は行わず,本人が希望するような環境設定を行ってもよいのではないかという意見も出された。るような環境設定を行ってもよいのではないかという意見も出された。 この件この件について,「刺激制御によりパニックを事前回避するという方法が理想的であるかについて,「刺激制御によりパニックを事前回避するという方法が理想的であるかどうかは疑問である。隔離や閉じ込めをしないというのが理念であるといっても,それをどうかは疑問である。隔離や閉じ込めをしないというのが理念であるといっても,それをしないで可能なのかどうかというのは支援者側の経験による。経験の上でやれる自信があしないで可能なのかどうかというのは支援者側の経験による。経験の上でやれる自信があればチャレンジしても良い。かつて,A氏は,地域住民に迷惑をかけたことで地域から排ればチャレンジしても良い。かつて,A氏は,地域住民に迷惑をかけたことで地域から排除された経緯がある。そのため,現在,隔離的,環境制御的な支援をせざるを得なくなっ除された経緯がある。そのため,現在,隔離的,環境制御的な支援をせざるを得なくなっている。方法論の発想がないから閉じ込めてしまっているのかもしれない。いろいろなこている。方法論の発想がないから閉じ込めてしまっているのかもしれない。いろいろなことにトライしてほしいし,トライしなけれとにトライしてほしいし,トライしなければ,本人の生活の質は高まらないのではないか」ば,本人の生活の質は高まらないのではないか」との意見が出された。との意見が出された。 意見交換の結果,スモールステップで行くべきか,職員支援体制が手厚いうちに刺激に意見交換の結果,スモールステップで行くべきか,職員支援体制が手厚いうちに刺激に慣れるのがいいのか,本人の状況を観察しながら判断していくこととなった。慣れるのがいいのか,本人の状況を観察しながら判断していくこととなった。 (2) (2)日中活動の内容日中活動の内容 表 表33--33 入居者の宿泊回数入居者の宿泊回数 年 年 月月 A氏 A氏 B氏 B氏 C氏 C氏 D氏 D氏 E氏 E氏 F氏 F氏 2009 2009年年1111月月 週 週22日宿泊日宿泊 2009 2009年年1212月月 週 週22日宿泊日宿泊 2010 2010年年11月月 週 週33日宿泊日宿泊 週 週11日宿泊日宿泊 週 週11日宿泊日宿泊 2010 2010年年22月月 週 週33日宿泊日宿泊 週 週22日宿泊日宿泊 週 週22日宿泊日宿泊 週 週11日宿泊日宿泊 2010 2010年年33月月 週 週33日宿泊日宿泊 週 週33日宿泊日宿泊 週 週33日宿泊日宿泊 週 週22日宿泊日宿泊 週 週11日宿泊日宿泊 2010 2010年年44月月 週 週55日宿泊日宿泊 週 週66日宿泊日宿泊 週 週66日宿泊日宿泊 週 週55日宿泊日宿泊 週 週55日宿泊日宿泊 週 週11日宿泊日宿泊 2010 2010年年55月月 週 週66日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週66日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週44日宿泊日宿泊 2010 2010年年66月月 週 週66日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週66日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 週 週77日宿泊日宿泊 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 48 強度行動障害者の人たちは集団参加が困難であるため,日中活動は,個別の場所で個別強度行動障害者の人たちは集団参加が困難であるため,日中活動は,個別の場所で個別の対応を行うこととなる。ひとつの活動に対する持続時間はの対応を行うこととなる。ひとつの活動に対する持続時間は11分から分から55分程度で,それ以分程度で,それ以上長くなるとパニック行動を誘発するため,課題活動(形分け,箸入れ,型はめ,ケース上長くなるとパニック行動を誘発するため,課題活動(形分け,箸入れ,型はめ,ケース入れ,缶つぶし,ボールペン組み立て等)は入れ,缶つぶし,ボールペン組み立て等)は11日に最大日に最大1010分程度で設定している。した分程度で設定している。したがって,その他の時間は,本人の好きな活動(紙ちぎり,ペットボトルボーリング等)やがって,その他の時間は,本人の好きな活動(紙ちぎり,ペットボトルボーリング等)やドライブが主な活動となっている。支援者は,本人が不穏になることを避けるためと,自ドライブが主な活動となっている。支援者は,本人が不穏になることを避けるためと,自宅からケアホームや日中活動に来るのを拒否しないようにするために,活動のあらゆる場宅からケアホームや日中活動に来るのを拒否しないようにするために,活動のあらゆる場面で,利用者が喜ぶよう大げさに褒めたり,拍手したりして,本人の満足感を高める支援面で,利用者が喜ぶよう大げさに褒めたり,拍手したりして,本人の満足感を高める支援を行った。を行った。 ここれらのことについて,基本的にはドライブばかりは好ましくない。支援者が足りず支れらのことについて,基本的にはドライブばかりは好ましくない。支援者が足りず支援体制が整わないのであればやむを得ないが,ドライブだけでは活動は深まらない。ドラ援体制が整わないのであればやむを得ないが,ドライブだけでは活動は深まらない。ドライブ以外の活動を増やすことで,ちやほやする必要もなくなるかもしれないし,支援の負イブ以外の活動を増やすことで,ちやほやする必要もなくなるかもしれないし,支援の負担も軽減されるかもしれない。盛り上げてばかりではなく,距離感を持って接して,けじ担も軽減されるかもしれない。盛り上げてばかりではなく,距離感を持って接して,けじめを伝えることも大切である。ご本人が鞍手の活動を嫌ってしまっては始まらないからそめを伝えることも大切である。ご本人が鞍手の活動を嫌ってしまっては始まらないからそのように行った部分もあるだろうが,今後は改善が必要であるとの意見が出された。また,のように行った部分もあるだろうが,今後は改善が必要であるとの意見が出された。また,A氏は,かつてハンガーシール剥がしA氏は,かつてハンガーシール剥がしなどの簡易作業を行っていたこともあり,受注作業などの簡易作業を行っていたこともあり,受注作業をやってからドライブに出発するなどに取り組んでほしいとの意見が出された。をやってからドライブに出発するなどに取り組んでほしいとの意見が出された。 また,今後については,施設の敷地内であれば,いろいろなことにチャレンジしてもい また,今後については,施設の敷地内であれば,いろいろなことにチャレンジしてもいいと思う。ただ,第三者への他害だけは避けなければならない。それを起こしてしまうといと思う。ただ,第三者への他害だけは避けなければならない。それを起こしてしまうといよいよ隔離しなければなくなるとの話があった。いよいよ隔離しなければなくなるとの話があった。 (3) (3)夜間活動の内容夜間活動の内容 ケアホームの現場支援者から,夕食や入浴が終わってから就寝時間までの間,本人が退ケアホームの現場支援者から,夕食や入浴が終わってから就寝時間までの間,本人が退屈しないように風船バレーやペットボトルボーリングなどを行っているとの報告が出され屈しないように風船バレーやペットボトルボーリングなどを行っているとの報告が出されたた。このことについて,何もすることがない時間に無理に活動を入れなくても良い。支援。このことについて,何もすることがない時間に無理に活動を入れなくても良い。支援者と関わらなくても済む時間も必要であり,じっくりと関わる時間とひとりで過ごす時間者と関わらなくても済む時間も必要であり,じっくりと関わる時間とひとりで過ごす時間とのメリハリが大切である。ずっと何かに誘うのは,本人にとっても支援者にとっても苦とのメリハリが大切である。ずっと何かに誘うのは,本人にとっても支援者にとっても苦痛となるから,本人に見通しを提供することが大切であるとの意見が聞かれた。痛となるから,本人に見通しを提供することが大切であるとの意見が聞かれた。 (4) (4)場面や支援者での統一した支援場面や支援者での統一した支援 日々の生活の中での共通した場面において,複数の支援者が異なる対応をすると入居者日々の生活の中での共通した場面において,複数の支援者が異なる対応をすると入居者が混乱するため,統一した対応をすることが大切であるとの意見が出された。例えば,寝が混乱するため,統一した対応をすることが大切であるとの意見が出された。例えば,寝るることを伝えた後は,リビングの電気を消す。その都度,統一した対応をすることで本人ことを伝えた後は,リビングの電気を消す。その都度,統一した対応をすることで本人が理解をしていくことになる。また,水中毒のある利用者に対しては,水飲みへの対応にが理解をしていくことになる。また,水中毒のある利用者に対しては,水飲みへの対応について,日中支援者と夜間支援者との間で対応方法を統一する必要がある。トイレ時の介ついて,日中支援者と夜間支援者との間で対応方法を統一する必要がある。トイレ時の介助等が支援員間でバラバラでは良くない。話し合って統一して行わなければならないなど助等が支援員間でバラバラでは良くない。話し合って統一して行わなければならないなどである。である。 また,宿泊専門職員また,宿泊専門職員33人は,考え方が同じでなければならず,違ったらまずい。考え方人は,考え方が同じでなければならず,違ったらまずい。考え方の違いによって利用者が崩れることはよくある話しである。サンガーデンのケアホーム全の違いによって利用者が崩れることはよくある話しである。サンガーデンのケアホーム全体の支援者間でやっている体の支援者間でやっていることの意思統一のために支援者間の協議の場を設けることが必ことの意思統一のために支援者間の協議の場を設けることが必要であるとの意見が出された。要であるとの意見が出された。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 49 (5) (5)日中支援者と夜間支援者との連携日中支援者と夜間支援者との連携 移行支援会議には,毎回,日中支援者と夜間支援者が出席しているが,利用者に対する移行支援会議には,毎回,日中支援者と夜間支援者が出席しているが,利用者に対する現場での対応方法について双方が十分に意思統一していないところがあり,このことにつ現場での対応方法について双方が十分に意思統一していないところがあり,このことについて指摘があった。「一番問題なのは日中支援員と夜間支援員との情報交流の問題である。いて指摘があった。「一番問題なのは日中支援員と夜間支援員との情報交流の問題である。それぞれ,利用者が新しい暮らしに慣れるよう一生懸命に頑張っており,相手と連携を取それぞれ,利用者が新しい暮らしに慣れるよう一生懸命に頑張っており,相手と連携を取る余裕がないこともあり,双方に乖離が出てきている。それによって一る余裕がないこともあり,双方に乖離が出てきている。それによって一番影響を受けるの番影響を受けるのは利用者であり,そこが大きな課題となっている。日中支援のは利用者であり,そこが大きな課題となっている。日中支援の44人と夜間支援の人と夜間支援の33人が分人が分かれているともろい。かれているともろい。77人全員で人全員で11グループとして関わることで,全体の結束が非常に強グループとして関わることで,全体の結束が非常に強くなる。」くなる。」 このことを受けて,日中支援員と夜間支援員との定期的な意見交換の場を設定することこのことを受けて,日中支援員と夜間支援員との定期的な意見交換の場を設定することとなった。となった。 (6) (6)「問題行動」への対応「問題行動」への対応 B氏は,トイレへのこだわりが強く,活動中はB氏は,トイレへのこだわりが強く,活動中は1010分おきにトイレに駆け込んでいる。分おきにトイレに駆け込んでいる。しかし,散歩中は排尿がない。このことについて出された意見は,このことは,活動の見しかし,散歩中は排尿がない。このことについて出された意見は,このことは,活動の見通しの重要性を示している。トイレに行くこと自体に多くの意味が含まれている。例えば,通しの重要性を示している。トイレに行くこと自体に多くの意味が含まれている。例えば,「暇つぶし」「活動不明瞭」「刺激がないための自己刺激」「場面の切り替え要求」などが考「暇つぶし」「活動不明瞭」「刺激がないための自己刺激」「場面の切り替え要求」などが考えられるということである。えられるということである。 特異行動に対しては,その行動自体に目を向けてやめさせるというのではなく,その行 特異行動に対しては,その行動自体に目を向けてやめさせるというのではなく,その行動が何を目的として行われているのか,何が原因と考えられるのかを明らかにしなければ動が何を目的として行われているのか,何が原因と考えられるのかを明らかにしなければならない。ならない。 3 3 活動プログラム活動プログラム ( (11))日中活日中活動のポイント動のポイント A氏の日中活動プログラムの策定にあたって,いくつかの方針を策定した。まず,A氏A氏の日中活動プログラムの策定にあたって,いくつかの方針を策定した。まず,A氏はいろいろな刺激に反応しやすいため,新しい環境に慣れるまでは,ケアホームのリビンはいろいろな刺激に反応しやすいため,新しい環境に慣れるまでは,ケアホームのリビングで個別対応ベースの活動を通じて支援者との信頼関係を構築していくことや新しい環境グで個別対応ベースの活動を通じて支援者との信頼関係を構築していくことや新しい環境に慣れることを最優先することが確認された。また,日中の活動内容については,以前,に慣れることを最優先することが確認された。また,日中の活動内容については,以前,利用していた日中活動事業所で行っていた活動を現場レベルで独自にアレンジして実施す利用していた日中活動事業所で行っていた活動を現場レベルで独自にアレンジして実施すること,本人の特性や好みをふまえて活動を計画することが申し合わされた。支援体制にること,本人の特性や好みをふまえて活動を計画することが申し合わされた。支援体制については,日中活動ついては,日中活動はは22人体制で対応することとした。その他の申し合わせ事項として,人体制で対応することとした。その他の申し合わせ事項として,日中の活動で身体を動かさないと眠れない場合もあるため,体力消耗などとのバランスも日中の活動で身体を動かさないと眠れない場合もあるため,体力消耗などとのバランスも考慮しつつ適度に身体を動かす活動を取り入れることや,A氏は,レクリェーション活動考慮しつつ適度に身体を動かす活動を取り入れることや,A氏は,レクリェーション活動に飽きやすいため,複数のプログラムを用意しておき,常に飽きさせないよう配慮するこに飽きやすいため,複数のプログラムを用意しておき,常に飽きさせないよう配慮することなどが確認された。となどが確認された。 ( (22))ドライブや降車拒否への対応ドライブや降車拒否への対応 A氏がドライブで自動車に乗車するときは,A氏の意思と異なる支援者が乗車すると不A氏がドライブで自動車に乗車するときは,A氏の意思と異なる支援者が乗車すると不安定になるため,一緒に乗車する支援者はA氏が選択すること,どうしてもそれ安定になるため,一緒に乗車する支援者はA氏が選択すること,どうしてもそれが困難なが困難な 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 50 場合は,違うことに気を紛らわせるなどして気持ちをうまく切り替える配慮が必要である 場合は,違うことに気を紛らわせるなどして気持ちをうまく切り替える配慮が必要であることが確認された。また,戸外では人やお店などを狙っていることがあるため要注意であことが確認された。また,戸外では人やお店などを狙っていることがあるため要注意であることが指摘された。ることが指摘された。 公園などドライブの行き先では降車拒否が多いため,本人は野球が好きなので,バット公園などドライブの行き先では降車拒否が多いため,本人は野球が好きなので,バットを見せて降車の声かけをするなどの配慮が必要である。納得できないときに降ろすと逸脱を見せて降車の声かけをするなどの配慮が必要である。納得できないときに降ろすと逸脱しパニック等を誘発しやすいとの意見が出された。しパニック等を誘発しやすいとの意見が出された。 また,物理的手段として,居室から車への移乗は,居室の掃き出し窓にワゴン車を横付また,物理的手段として,居室から車への移乗は,居室の掃き出し窓にワゴン車を横付けし動線を塞いで乗車させることが有効であると話された。けし動線を塞いで乗車させることが有効であると話された。 ( (33))散歩・ウォーキングでの対応散歩・ウォーキングでの対応 B氏は,ジュースの自動販売機やコンビニエンスストアにこだわりを持っている。したB氏は,ジュースの自動販売機やコンビニエンスストアにこだわりを持っている。したがって散歩コースを選定する際は配慮が必要であるとの意がって散歩コースを選定する際は配慮が必要であるとの意見が出された。また,散歩コー見が出された。また,散歩コースのレパートリーを増やし,店のないコースは散歩,店のあるコースは買い物など,目的スのレパートリーを増やし,店のないコースは散歩,店のあるコースは買い物など,目的に応じたコース選択をすることが合意された。に応じたコース選択をすることが合意された。 ( (44))課題への対応課題への対応 課題への取り組みの動機付けのために,「課題をやり遂げたら何かの報酬がもらえる」と課題への取り組みの動機付けのために,「課題をやり遂げたら何かの報酬がもらえる」という流れを作ると見通しが持てる。強化子としてはお菓子が効果が大きいという意見が出いう流れを作ると見通しが持てる。強化子としてはお菓子が効果が大きいという意見が出された。また,課題の内容については,将来の趣味の活動などにつなげられる内容が好まされた。また,課題の内容については,将来の趣味の活動などにつなげられる内容が好ましいとの意見が出た。また,B氏の紙ちぎりへのこだわりについて,「B氏の紙ちぎりは,しいとの意見が出た。また,B氏の紙ちぎりへのこだわりについて,「B氏の紙ちぎりは,課題なのか,レ課題なのか,レクリェーションなのか不明確である。課題として行っている場面とレクリクリェーションなのか不明確である。課題として行っている場面とレクリェーションとして行っている場面を分け,本人にも理解できるように構造化すべきであるェーションとして行っている場面を分け,本人にも理解できるように構造化すべきであるという意見が出された。という意見が出された。 ( (55))コミュニケーションの取り方コミュニケーションの取り方 利用者とのコミュニケーションの取り方としていくつかの意見が出された。視覚支援に利用者とのコミュニケーションの取り方としていくつかの意見が出された。視覚支援に関しては,写真の活動カードの導入には,見通しが何もないという不安を解消する目的が関しては,写真の活動カードの導入には,見通しが何もないという不安を解消する目的がある。「次にこれがある」という学習を進めることが大事である。先の見通しが持てないかある。「次にこれがある」という学習を進めることが大事である。先の見通しが持てないから人に依存してきたという可能性もある。コミュニケーション機能の代替として写真提示ら人に依存してきたという可能性もある。コミュニケーション機能の代替として写真提示などは導入した方が良い。また,声かけだけではなく,文字で情報を伝える等指示方法をなどは導入した方が良い。また,声かけだけではなく,文字で情報を伝える等指示方法を考慮すべきであるなどの意見が出された。考慮すべきであるなどの意見が出された。 また本人観察の重要性について,C氏は自分で何かをしているときの声出しまた本人観察の重要性について,C氏は自分で何かをしているときの声出しと,誰かにと,誰かに何かを求めるときの声出しが異なる。声の大きさや顔の向きなどで判断が可能である。ま何かを求めるときの声出しが異なる。声の大きさや顔の向きなどで判断が可能である。また,声出しに対して,構い過ぎるのは好ましくない。状況とバランスを見極めることが必た,声出しに対して,構い過ぎるのは好ましくない。状況とバランスを見極めることが必要であり,その対応が適切にできていないときに便失禁にいたることがあるなどの意見が要であり,その対応が適切にできていないときに便失禁にいたることがあるなどの意見が出された。出された。 さらに,声かけの仕方について,声かけが煩雑だったり,過剰だったりすることは好まさらに,声かけの仕方について,声かけが煩雑だったり,過剰だったりすることは好ましくない。支援者がとても疲れていて,声かけが乱暴なときは,つかみかかりが多く見らしくない。支援者がとても疲れていて,声かけが乱暴なときは,つかみかかりが多く見られる。したがって,笑顔で,相手にストレスや威圧感を与えないような対応をしなければれる。したがって,笑顔で,相手にストレスや威圧感を与えないような対応をしなければならない。ならない。抑圧的な声かけも良くないなどの意見が出された。抑圧的な声かけも良くないなどの意見が出された。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 51 ( (66))夜間活動のポイント夜間活動のポイント 退屈な時間を作らないことが重要だとして,日中活動終了後から夕食までの間は,ドラ退屈な時間を作らないことが重要だとして,日中活動終了後から夕食までの間は,ドライブなどにより楽しい時間を提供することが大切である。また,環境の変化や寂しさによイブなどにより楽しい時間を提供することが大切である。また,環境の変化や寂しさにより,夕食後不安定になる場合は,できるだけ親密な関わりをすることが望ましいのではなり,夕食後不安定になる場合は,できるだけ親密な関わりをすることが望ましいのではないかとの意見が出された。一方,本人からの求めがない限り,支援者からの過度な関わりいかとの意見が出された。一方,本人からの求めがない限り,支援者からの過度な関わりを避け,つかず離れずの一定の距離感を保って接した方がよいとの意見も聞かれた。を避け,つかず離れずの一定の距離感を保って接した方がよいとの意見も聞かれた。 日課については,起床時間,就寝時間は日課については,起床時間,就寝時間は,本人の生活の流れを尊重し,支援者側からの,本人の生活の流れを尊重し,支援者側からの指示は避けた方が良いという意見も出された。指示は避けた方が良いという意見も出された。 ( (77))対応ノウハウの習得対応ノウハウの習得 A氏は,言葉を発することができないため,手話のサインで支援者とコミュニケーショA氏は,言葉を発することができないため,手話のサインで支援者とコミュニケーションを取るのが楽しみである。A氏の出す手話のサインに支援者が期待どおりに受け答えをンを取るのが楽しみである。A氏の出す手話のサインに支援者が期待どおりに受け答えをしなければ不穏になるため,A氏に関わる全支援者がA氏のサインに対する返し方を覚えしなければ不穏になるため,A氏に関わる全支援者がA氏のサインに対する返し方を覚えておく必要がある。そこで,A氏のサインについて,誰かにしているのをビデオ撮影して,ておく必要がある。そこで,A氏のサインについて,誰かにしているのをビデオ撮影して,支援者にレクチャーしていくこととした。支援者にレクチャーしていくこととした。 ( (88))食事支援の方法食事支援の方法 食事支援の食事支援の方法について,以下のことが話し合われた。方法について,以下のことが話し合われた。 A氏が以前利用していた施設では,午前 A氏が以前利用していた施設では,午前1111時に昼食を喫食していたため,時に昼食を喫食していたため,1212時の喫食時の喫食では空腹になるため,新しい生活リズムに慣れるまでの一定期間,午前の活動の途中でちでは空腹になるため,新しい生活リズムに慣れるまでの一定期間,午前の活動の途中でちょっとした間食を提供する。夕食時間は,これまでの家庭での時間帯をふまえ,本人が空ょっとした間食を提供する。夕食時間は,これまでの家庭での時間帯をふまえ,本人が空腹感を感じることのないように配慮する。食べこぼしなどに介入するとかんしゃくになる腹感を感じることのないように配慮する。食べこぼしなどに介入するとかんしゃくになることがあるため,声かけは慎重に行い,威圧感のないように配慮する。B氏は食事の前にことがあるため,声かけは慎重に行い,威圧感のないように配慮する。B氏は食事の前に箸を折る行為があるため,当面は,割り箸を使用する。また,食器は,食べや箸を折る行為があるため,当面は,割り箸を使用する。また,食器は,食べやすいものをすいものを使用する。使用する。 ( (99))排泄支援の方法排泄支援の方法 排泄支援についての協議は,以下のとおりである。 排泄支援についての協議は,以下のとおりである。 A氏は,アセスメントによると自宅以外では排便をしない。失便からパニックに発展す A氏は,アセスメントによると自宅以外では排便をしない。失便からパニックに発展する可能性がある。そこで,トイレ誘導は時間排泄で行い,できるだけ排泄をするように促る可能性がある。そこで,トイレ誘導は時間排泄で行い,できるだけ排泄をするように促すが,どうしても本人が拒否する場合は無理強いせず,当面は,自宅において行っていたすが,どうしても本人が拒否する場合は無理強いせず,当面は,自宅において行っていただくようにする。だくようにする。 ( (1010))余暇時間の支援余暇時間の支援 支援者がつきっきりでいる必要はなく,基本的にはゆったりと過ごすことでよい。好き 支援者がつきっきりでいる必要はなく,基本的にはゆったりと過ごすことでよい。好きなテレビ番組はのどかな旅番組。コマーシャルをカットして編集したビデオテープを母親なテレビ番組はのどかな旅番組。コマーシャルをカットして編集したビデオテープを母親が用意している。それを倍速で見るのが好き。また,学校時代の文化祭の劇で本が用意している。それを倍速で見るのが好き。また,学校時代の文化祭の劇で本人が映っ人が映っている映像なら長時間興味をもって観るなどの情報が確認された。ている映像なら長時間興味をもって観るなどの情報が確認された。 4 4 物理的環境の整備物理的環境の整備 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 52 ( (11))刺激の抑制のための環境整備刺激の抑制のための環境整備 A氏については,利用者の人刺激を軽減するために,日中活動は,施設の敷地外で活動 A氏については,利用者の人刺激を軽減するために,日中活動は,施設の敷地外で活動する。また,ホームから他のホームなどが見えるため,窓に遮断シールによる目隠しを設する。また,ホームから他のホームなどが見えるため,窓に遮断シールによる目隠しを設置する。本人が環境に慣れて行くにしたがって,徐々に外していく。脱衣室の窓を開ける置する。本人が環境に慣れて行くにしたがって,徐々に外していく。脱衣室の窓を開けると外が見えるため,窓に鍵をつけるなどを確認した。と外が見えるため,窓に鍵をつけるなどを確認した。 ( (22))事故防止のための環境整備事故防止のための環境整備 パニックで窓ガラスを割ったとき,破片が飛び散って怪我をしないよう,窓はすべて強 パニックで窓ガラスを割ったとき,破片が飛び散って怪我をしないよう,窓はすべて強化ガラスとし,飛散防止用粘着シートを貼る。ホーム外への飛び出しを防止するため,各化ガラスとし,飛散防止用粘着シートを貼る。ホーム外への飛び出しを防止するため,各出入り口や掃き出し窓には,鍵付き出入り口や掃き出し窓には,鍵付きクレセント錠を取り付け,鍵なしでは開けられないよクレセント錠を取り付け,鍵なしでは開けられないようにする。玄関のドアの鍵が,内側がサムターンになっているため,開けられないようにうにする。玄関のドアの鍵が,内側がサムターンになっているため,開けられないように内外ともシリンダー錠にする。浴室の鍵がもろく,引っ張ると開いてしまうため,丈夫な内外ともシリンダー錠にする。浴室の鍵がもろく,引っ張ると開いてしまうため,丈夫なものに交換する。大柄な利用者が多いため,トイレの洋式便器を大きいものにするなどのものに交換する。大柄な利用者が多いため,トイレの洋式便器を大きいものにするなどの意見が出された。意見が出された。 ( (33))行動障害軽減のための環境整備行動障害軽減のための環境整備 台所の中には冷蔵庫があるため触りたがる。そこで入り口扉に鍵をつける。行って開け 台所の中には冷蔵庫があるため触りたがる。そこで入り口扉に鍵をつける。行って開けようとしても開かなければ制止する必要がない。それによりかんしゃく行動を回避するこようとしても開かなければ制止する必要がない。それによりかんしゃく行動を回避することができるとができる。破壊防止のため,固定電話はリビングに設置せず,宿直室内に。破壊防止のため,固定電話はリビングに設置せず,宿直室内に11台のみとす台のみとする。また,消火器は見えないところに隠す。悪戯防止のために,リビングの火災報知器はる。また,消火器は見えないところに隠す。悪戯防止のために,リビングの火災報知器は非常ベルのボタンが押せないようにカバーを付ける。リビングのテーブル等の家具は,か非常ベルのボタンが押せないようにカバーを付ける。リビングのテーブル等の家具は,かんしゃく行動の際にひっくり返すのを防ぐために,壁に寄せる。また,クローゼットに鍵んしゃく行動の際にひっくり返すのを防ぐために,壁に寄せる。また,クローゼットに鍵を設置する。食事器具は,危険性の低いものを使用するなどの意見が確認された。を設置する。食事器具は,危険性の低いものを使用するなどの意見が確認された。 ( (44))空間認知のための環境整備空間認知のための環境整備 課題活動の構造化のために,作業机,椅子は,リビングルームにパーテイションで間仕 課題活動の構造化のために,作業机,椅子は,リビングルームにパーテイションで間仕切って配置する切って配置する。レクリェーションスペースも構造化して,リビングルームに設置するな。レクリェーションスペースも構造化して,リビングルームに設置するなどの意見が出された。どの意見が出された。 ( (55))こだわり行動抑制のための環境整備こだわり行動抑制のための環境整備 B氏は,水飲みのこだわりと水中毒があるため,使用しない水道は止めておく。また, B氏は,水飲みのこだわりと水中毒があるため,使用しない水道は止めておく。また,B氏は,トイレに行くと手洗い場で顔を洗い,口を付け,ズボンを上げないといった行動B氏は,トイレに行くと手洗い場で顔を洗い,口を付け,ズボンを上げないといった行動が目立つ。そこで,トイレ内の水道を止めて外の水道を使用することとした。が目立つ。そこで,トイレ内の水道を止めて外の水道を使用することとした。 ( (66))他の利用者とのトラブル防止のための環境整備他の利用者とのトラブル防止のための環境整備 C氏は声を出すタイプだから,受け入れ前に,他の利用者と交わらない動線を作るなど, C氏は声を出すタイプだから,受け入れ前に,他の利用者と交わらない動線を作るなど,環境配慮が必要である環境配慮が必要であるとの意見が出された。との意見が出された。 ( (77))ドライブの車内等の環境整備ドライブの車内等の環境整備 車内でのパニックによる事故防止のため,車の窓ガラスにフィルムを貼る。車の前席と 車内でのパニックによる事故防止のため,車の窓ガラスにフィルムを貼る。車の前席と後席の間に間仕切りを設置したワゴン車で移動する。間仕切りは,アクリルボードだと声後席の間に間仕切りを設置したワゴン車で移動する。間仕切りは,アクリルボードだと声 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 53 が聞こえにくく,光に反射して本人の顔が見えにくいため金網による間仕切りを設置する が聞こえにくく,光に反射して本人の顔が見えにくいため金網による間仕切りを設置することとした。また,車の整備においては,チャイルドロックとトイレ等に横付けできるよこととした。また,車の整備においては,チャイルドロックとトイレ等に横付けできるようスライドドアが必須条件である。ドライブ活動中の立ち寄り場所として,人の来ないトうスライドドアが必須条件である。ドライブ活動中の立ち寄り場所として,人の来ないトイレ,人気のない公園を探しておくなど,社会資源のリサーチをしておくべき等の意見がイレ,人気のない公園を探しておくなど,社会資源のリサーチをしておくべき等の意見が出された。出された。 5 5 職員の意識づくりと支援技術の向上職員の意識づくりと支援技術の向上 ( (11))職員研修プログラム職員研修プログラム 支援者のスキルを上げていくために,専門家によるレクチャーの機会を作る。また,支支援者のスキルを上げていくために,専門家によるレクチャーの機会を作る。また,支援者は,県内の自閉症専門施設に現場研修に入る。夜間支援員は,鞍手ゆたか福祉会の自援者は,県内の自閉症専門施設に現場研修に入る。夜間支援員は,鞍手ゆたか福祉会の自閉症支援を中心とした日中活動事業所に入って研修することなどが決まり,順次具体化し閉症支援を中心とした日中活動事業所に入って研修することなどが決まり,順次具体化していった。ていった。 ( (22))強度行動障害処遇体制に伴う職員研修計画の実施強度行動障害処遇体制に伴う職員研修計画の実施 鞍手ゆたか福祉会の直接支援職員を対象に,計画的に研修を実施する。なお,講師は,鞍手ゆたか福祉会の直接支援職員を対象に,計画的に研修を実施する。なお,講師は,サンガーデン発達障害研究室の室長が担当する。研修の目的は以下のとおりである。サンガーデン発達障害研究室の室長が担当する。研修の目的は以下のとおりである。 ①各利用者の特性,支援状況を把握し,支援に臨む①各利用者の特性,支援状況を把握し,支援に臨むイメージを持つ。イメージを持つ。 ②強度行動障害処遇体制の支援に臨む意識を自覚する。②強度行動障害処遇体制の支援に臨む意識を自覚する。 ③強度行動障害処遇支援に必要な知識,スキルを獲得する。③強度行動障害処遇支援に必要な知識,スキルを獲得する。 ④法人内の支援の質の向上,他施設との差別化を図る。④法人内の支援の質の向上,他施設との差別化を図る。 研修内容は,以下のとおりである。研修内容は,以下のとおりである。 ①法人外研修(期間:①法人外研修(期間:33日間~日間~11週間以上)週間以上) ②法人内研修(概ね月②法人内研修(概ね月11回)回) 法人内研修では,「強度行動障害の行動理解の手立て」「効果的な支援方法」「支援ツール法人内研修では,「強度行動障害の行動理解の手立て」「効果的な支援方法」「支援ツールや作業課題の作成」「記録方法」「効率的な情報伝達方法」などについて学ぶ。や作業課題の作成」「記録方法」「効率的な情報伝達方法」などについて学ぶ。 6 6 情報の管理情報の管理 ( (11))関係者への情報の周知システムの形成関係者への情報の周知システムの形成 情報の周知について出され合意された意見は,以下のとおりである。情報の周知について出され合意された意見は,以下のとおりである。 ①移行支援会議などで話された内容を,誰が責任をもって関係者に周知させるのかを ①移行支援会議などで話された内容を,誰が責任をもって関係者に周知させるのかを明確にすること。明確にすること。 ②移行支援会議の議事録を各管理者に発信し,管理者が所属メンバーに配布すること。 ②移行支援会議の議事録を各管理者に発信し,管理者が所属メンバーに配布すること。 ③細かい情報は,日々の朝礼の場などで提示すること。 ③細かい情報は,日々の朝礼の場などで提示すること。 ④事業所の職員に情報が回り,各職員が情報を飲み込めるよう文書でしっかり確認し ④事業所の職員に情報が回り,各職員が情報を飲み込めるよう文書でしっかり確認してもらうこと。てもらうこと。 ⑤情報が流れないと,職員間の温度差が起きる。そうなるとついて行けない職員が出 ⑤情報が流れないと,職員間の温度差が起きる。そうなるとついて行けない職員が出てくるため,詳しく,わかりやすく,うまい情報伝達の方法を取ること。てくるため,詳しく,わかりやすく,うまい情報伝達の方法を取ること。 ⑥ちょっとした支援のズレなどが放置状態になって,わからないまま進んでいくこと ⑥ちょっとした支援のズレなどが放置状態になって,わからないまま進んでいくことが一番問題である。ミスしても良いから,うまく支援していくために支援記録で必が一番問題である。ミスしても良いから,うまく支援していくために支援記録で必 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 54 ず報告すること。支援記録は,メールで,即日関係者に送信すること。 ず報告すること。支援記録は,メールで,即日関係者に送信すること。 ⑦保護者に不信感を持たれないためにも,報告が必要である。幹部及び現場の職員と ⑦保護者に不信感を持たれないためにも,報告が必要である。幹部及び現場の職員と保護者との面談を定期的に行い,今後の方向性やニーズの確認を行っていくこと。保護者との面談を定期的に行い,今後の方向性やニーズの確認を行っていくこと。 ( (22))情報交換,協議機会の設定情報交換,協議機会の設定 情報交換について情報交換について出され合意された意見は以下のとおりである。出され合意された意見は以下のとおりである。 ①情報が集中する理事長と現場支援者とが,メールだけではなく,直接対話できる機 ①情報が集中する理事長と現場支援者とが,メールだけではなく,直接対話できる機会を設けること。会を設けること。 ②週 ②週11回程度,理事長と現場の代表が情報交換をすること。回程度,理事長と現場の代表が情報交換をすること。 ③移行支援会議の議事録の内容について,各事業所であがった意見,提案,問題につ ③移行支援会議の議事録の内容について,各事業所であがった意見,提案,問題について,各管理者がまとめて資料作成を行うこと。いて,各管理者がまとめて資料作成を行うこと。 ④法人内移行支援会議は,移行支援会議の ④法人内移行支援会議は,移行支援会議の11週間前に実施する。週間前に実施する。 ⑤移行支援会議では,夕方から朝までの利用者の様子を撮影したビデオ映像をもとに ⑤移行支援会議では,夕方から朝までの利用者の様子を撮影したビデオ映像をもとに協議する協議する。各人の意見の相違について,現実の映像を見ながら支援を検討すること。各人の意見の相違について,現実の映像を見ながら支援を検討することが重要である。が重要である。 ⑥現場の支援者がリアルタイムに相談できる体制が必要である。そのためには, ⑥現場の支援者がリアルタイムに相談できる体制が必要である。そのためには,2424時時間メール連絡できるようにしなければならない。間メール連絡できるようにしなければならない。

第 5 節 本章の まとめ

「強度行動障害者支援研究事業」には,毎月実施されるプロジェクトメンバー全員が一 堂に会して行われる「移行支援会議」と,移行支援会議の事前打ち合わせ会議として法人 職員だけで行われる「法人内移行支援会議」とがあり,毎回活発な議論が展開された。そ の中で,現場の課題を克服するために様々な意見やアイデアが提案された。そこでは,強 度行動障害者支援の専門家や応用行動分析学に精通したスーパーバーザーの存在がとても 大きかった。 最初の利用者が入所する 2 ヶ月前より研究事業が始まり,十分な議論により本人のアセ スメントを踏まえて 受入体制を整えていった。その後も,スモールステップで少しずつ新 しい環境に慣れていくように利用日数を増やしていった。また,日中活動と夜間支援との 連携も重視され,常に相互で意見交換や引き継ぎを行いながら実践を進めていった。それ らにより,利用者の人たちは,ほとんどパニックや不穏行動を起こすことなく生活を確立 していくことができた。支援者たちは,入所時は,ある程度のパニック行動や他害,物壊 しなどが発生することを想定していたにもかかわらず,そうした行動がほとんど見られな かったことに驚きと衝撃を受けた。強度行動障害という ものは,適切な環境設定などのア プローチを行うことで,ほとんど軽減されることを身をもって確信することができたので ある。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

第 4 章 先進的実践の調査-社会福祉法人はるにれの里の 実践-

第1節 先進的実践訪問調査の内容

筆者は,本研究を行うにあたり,行動障害者支援の領域で先進的に実践に取り組んでい るいくつかの施設・事業所を訪問した。 1 GHA GROUP HOME FOR AUTISTIC )(アメリカノースカロライナ州 訪問 ひとつは, 2010 年 8 月 4 日から 11 日までの 1 週間滞在したアメリカノースカロライナ州 ア ルバマーレ市の非営利組織 GHA GROUPHOMEFORAUTISTIC )である。そ こは,ノースカロライナ大学 TEACCH 部が指 導を行っている TEACCH プログラムを導入し て,行動障害者の人たちのグループホームを運 営している。 GHA は 広大な敷地( 39 エーカー 47700 坪 東京ドーム 3 3 個分)を所有しており その中に 4 棟のグループホームを建ててい る 。そのうち 1 棟が強度行動障害者用のグルー プホームで ある 。この敷地内に住む利用者は 17 人。日中活動に参加している利用者は 22 人。 5 名が入居者以外の方々で ある 。この方達を支援するスタッフが 65 人。ゆったりとし た環境は 利用者の人たちの心を和ませ る 。他の 3 つのグループホームとかなり離れたと ころに立地しているホームには 強度行動障害を持つ方が 2 人で暮らしてい る 。 (図 4 1 そこでは, 問題行動を問題行動としない様々な環境的配慮がなされてい る 。例えば マ ジックテープで留められたカーテン 。利用者が引っ張りたい時には いつでも引っ張 る こと ができる 。 投げられないように 床に固定したソファ 。触れないように アクリル板に覆われ たテレビ。 いくらでも壁にクレヨンで落書きのできる 黒板になっている部屋の壁 などであ る 。 GHA のスタッフの話の中に以下のような言葉があった。「 行動を変えようとするので はなく 環境からストレスを排除することによって 自然と行動問題は減っていく。その 根底には 一人ひとりを個人として見ること その人の人権を尊重することがある。 」 まさ に我が意を得たりという 印象 で あった 。 2 社会福祉法人はるにれの里(北海道札幌市)訪問 次に見学した施 設は, 2011 年 6 月 6 日に訪問した北海道札幌市の「はるにれの里」で 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 56 ある。 ある。社会福祉法人はるにれの里は社会福祉法人はるにれの里は,,自閉症者に特化した支援を行っており自閉症者に特化した支援を行っており,,入所施設入所施設22ヶ所ヶ所,,通所事業所通所事業所1212ヶ所ヶ所,,児童デイサービス児童デイサービス22ヶ所ヶ所,,居宅介護事業所居宅介護事業所22ヶ所ヶ所,,相談支援相談支援センターセンター44ヶ所ヶ所,,地域活動支援センター地域活動支援センター11ヶ所ヶ所,,ケアホームケアホーム2288ヶ所を運営している大規模ヶ所を運営している大規模法人で法人であるある。利用者の数は。利用者の数は400400名を超えており名を超えており,,ほとんどのほとんどの利用者利用者が障害程度区分がが障害程度区分が55ままたはたは66でで,,ケアホーム入居者の平均区分はケアホーム入居者の平均区分は,,55..66となっているとなっている。まず。まず,,法人の概要説明法人の概要説明,,「ゆい」の施設見学と「ゆい」周辺のケアホームを数ヶ所見学「ゆい」の施設見学と「ゆい」周辺のケアホームを数ヶ所見学,,その後その後,,生活介護事業所生活介護事業所「さりゅう」見学「さりゅう」見学,,それからそれから,,石狩市内の地域生活支援事業所「ゆうゆう」見学石狩市内の地域生活支援事業所「ゆうゆう」見学,,その近その近辺のケアホームを数ヶ所見学辺のケアホームを数ヶ所見学,,その後その後,,多機能型事業所「ふれあいきのこ村」見学多機能型事業所「ふれあいきのこ村」見学,,そしそしてて,,最後に「はるにれの里法人本部」にお伺いし最後に「はるにれの里法人本部」にお伺いし,,意見交換をした。意見交換をした。見学に対応してくだ見学に対応してくださったさったKK常務の話の内容は常務の話の内容は,,とても共感できる内容でとても共感できる内容であったあった。。特に印象に特に印象に残った残った内容は以内容は以下のとおりである。①下のとおりである。①支援の専門性と環境設定により支援の専門性と環境設定により,,自閉症者の自閉症者の9595%は地域で暮らすこ%は地域で暮らすことが可能とが可能であるである。。②行動障害者全②行動障害者全体のうち体のうち55%の難治性行動障害の人たちは%の難治性行動障害の人たちは,,地域移行が地域移行が難しい人たち難しい人たちであるである。。③③自閉症者のケアホームの定員の理想は自閉症者のケアホームの定員の理想は44名名であるである。。④④ケアホームケアホーム生活者の土日の余暇の充実のためには生活者の土日の余暇の充実のためには,,「行動援護」と「地域活動センター」が不可欠「行動援護」と「地域活動センター」が不可欠であであるる。。⑤⑤TEACCHTEACCHとの出会いがあったからこそとの出会いがあったからこそ,,自閉症者の地域移行にとりくむことがで自閉症者の地域移行にとりくむことができた。きた。⑥⑥変化を嫌う自閉症者にとっては変化を嫌う自閉症者にとっては,,ケアホーム支援者は固定がよい。ケアホーム支援者は固定がよい。⑦⑦ケアホームケアホームスタッフが日中支援に入ったりスタッフが日中支援に入ったり,,日中支援者がケアホームに宿泊するなど日中支援者がケアホームに宿泊するなど,,すべての職員すべての職員が昼と夜の両方の利用者の状況を把握する必要がある。が昼と夜の両方の利用者の状況を把握する必要がある。⑧⑧支援の支援の44本柱は本柱は,,「人」「時間」「人」「時間」「専門性」「医療」である。「専門性」「医療」である。⑨⑨成人期の行動障害を生み出さないためには成人期の行動障害を生み出さないためには,,幼児期幼児期,,学齢期学齢期の適切な母子支援が不可欠の適切な母子支援が不可欠であるである。。⑩⑩かなり障害の重たい人でも支援によって就労は可能かなり障害の重たい人でも支援によって就労は可能であるである。。⑪⑪自閉症の重い人ほど自閉症の重い人ほど,,入所施設での集団生活は辛い。入所施設での集団生活は辛い。⑫⑫自閉症者の感覚過敏と自閉症者の感覚過敏と感覚過鈍をしっかりと認識して支援にあたること。感覚過鈍をしっかりと認識して支援にあたること。⑬⑬入所施設で入所施設で1010年かけてできなかっ年かけてできなかったことがたことが,,ケアホームだとケアホームだと,,いとも簡単にできたりすることがある。いとも簡単にできたりすることがある。⑭⑭少人数の暮らしは少人数の暮らしは,,構造化がしやす構造化がしやすくく,,ひとりひとりがよく見える。ひとりひとりがよく見える。⑮⑮地域生活を実現するためには地域生活を実現するためには,,年金プ年金プラス工賃で生活できるようにラス工賃で生活できるように,,授産収益を上げ授産収益を上げ,,工賃をたくさん支給することが不可欠工賃をたくさん支給することが不可欠でであるある。。⑯⑯自閉症者各自の特性を理解した環境設定こそ自閉症者各自の特性を理解した環境設定こそ,,自閉症の人にとってのバリアフリ自閉症の人にとってのバリアフリーである。ーである。⑰⑰適切な支援と環境設定のためには適切な支援と環境設定のためには,,職員のアセスメント能力が一番の決め手職員のアセスメント能力が一番の決め手であるである。。⑱⑱法人内研修を充実させること法人内研修を充実させることが不可欠であるが不可欠である。。 3 3 「萩の杜」(大阪府高槻市)訪問「萩の杜」(大阪府高槻市)訪問 次に見学をした施設は, 次に見学をした施設は,20112011年年66月月88日に訪問した大阪府高槻市の障害者支援施設「萩日に訪問した大阪府高槻市の障害者支援施設「萩の杜」である。このの杜」である。この法人は法人は,,「地域に生きる」をテーマに「地域に生きる」をテーマに,,重度自閉症の方や行動障害のあ重度自閉症の方や行動障害のある方などの支援を中心に取り組まれておりる方などの支援を中心に取り組まれており,,利用者の約利用者の約66割が自閉症の方割が自閉症の方とのことである。とのことである。「萩の杜」は,約「萩の杜」は,約1212年前に開設した入所施設で,利用者年前に開設した入所施設で,利用者はは,,44つのユニットに分かれて生つのユニットに分かれて生活してい活しているる。ここ数年は。ここ数年は,,利用者が利用者が3030代後半から代後半から4040代を迎え代を迎え,,最近は最近は,,重度化や高齢化重度化や高齢化,,医療的支援に重点を置いた支援を進めている医療的支援に重点を置いた支援を進めているとのことであるとのことである。現在。現在,,来春開設に向けて来春開設に向けて,,最重度・自閉症の方々を対象としたケアホームの設立準備を進め最重度・自閉症の方々を対象としたケアホームの設立準備を進めている。ている。66名から名から77名の名の33つのユニットで構成されたホームはつのユニットで構成されたホームは,,さらにさらに,,22名と名と44名名,,33名と名と44名に分かれており名に分かれており,,できる限り少人数での生活を目指しているとのことでできる限り少人数での生活を目指しているとのことであったあった。各ユニットには。各ユニットには,,浴室が浴室が22ヶ所ずつありヶ所ずつあり,,利用者の生活の利便性を大切にしているとのことで利用者の生活の利便性を大切にしているとのことであるある。また。また,,身障者対身障者対応の浴室やスヌーズレンルームなども作るとのことで応の浴室やスヌーズレンルームなども作るとのことであるある。施設長は。施設長は,,これからの入所施これからの入所施 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 57 設のあり方のひとつとして 設のあり方のひとつとして,,「有期限・有目的」の重要性について語られてい「有期限・有目的」の重要性について語られていた。これは,た。これは,「「札幌市札幌市自閉症自閉症発達発達支援センターゆい」も導入しているもので支援センターゆい」も導入しているもので,,施設入所契約時に施設入所契約時に,,保護保護者と「この施設の利用期間は者と「この施設の利用期間は33年間です。私たちは年間です。私たちは,,そのその33年間で年間で,,利用者の方が地域生利用者の方が地域生活ができるように支援していくと共に活ができるように支援していくと共に,,地域の中に地域の中に,,ケアホームを開設しますのでケアホームを開設しますので,,そこそこに移っていただきます」という確約をするものでに移っていただきます」という確約をするものであるある。これによって。これによって,,保護者も職員も保護者も職員も,,入所後入所後33年間年間,,必死になって移行準備をすることにな必死になって移行準備をすることになるる。。こうした通過施設としての位置こうした通過施設としての位置付けが必要ではないかと話されてい付けが必要ではないかと話されていた。またた。また,,施設からすぐに地域のケアホームに移るの施設からすぐに地域のケアホームに移るのではなくではなく,,施設に籍を残したままで施設に籍を残したままで,,地域内の自活訓練地域内の自活訓練棟のようなサテライトホームで一棟のようなサテライトホームで一定期間地域生活の模擬的体定期間地域生活の模擬的体験をしてから,移行することが望ましいのではないかと話され験をしてから,移行することが望ましいのではないかと話されていていた。その他た。その他,,人材育成人材育成ににも積極的に取り組も積極的に取り組んでいるとのことであったんでいるとのことであった。。 4 4 「ステップ広場ガル」(滋賀県大津市)訪問「ステップ広場ガル」(滋賀県大津市)訪問 次に見学した施設は, 次に見学した施設は,20112011年年66月月99日に訪問した滋賀県大津市の「ステップ広場ガル」日に訪問した滋賀県大津市の「ステップ広場ガル」である。である。ガルの特徴はガルの特徴は,,①完全個室①完全個室,,②小集団ユニット②小集団ユニット,,③日中活動と暮らしの分離③日中活動と暮らしの分離,,④④手厚い職員配置手厚い職員配置であるである。ガルの利用者の平均区分は。ガルの利用者の平均区分は5.65.6。全体の約。全体の約70%70%がが区分区分66,,25%25%がが区分区分55,,残りの残りの5%5%が区分が区分44でで,,1313年前に開設した当初は年前に開設した当初は,,職員に生傷が絶えず職員に生傷が絶えず,,自傷自傷,,他害他害,,パニック等でパニック等で,,壮絶な状況だったとのことで壮絶な状況だったとのことであるある。しかし。しかし,,数年で落ち着き数年で落ち着き,,今で今ではは,,ほとんど行動ほとんど行動障害障害は見られないは見られないということであるということである。強度行動。強度行動障害者障害者支援の基本は支援の基本は,,「利「利用者に寄り添うこと用者に寄り添うこと,,共感すること」「行動障碍に対する見極め・受容・介入」と共感すること」「行動障碍に対する見極め・受容・介入」と語られて語られていたいた。。 5 5 「京北やまぐにの郷」(京都市)訪問「京北やまぐにの郷」(京都市)訪問 次に見学した施設は, 次に見学した施設は,20112011年年66月月1010日に訪問した京都市の「京北やまぐにの郷」であ日に訪問した京都市の「京北やまぐにの郷」である。る。こちらの施設はこちらの施設は,,自閉症親の会の運動により平成元年に開設され自閉症親の会の運動により平成元年に開設され,,利用者の約利用者の約88割が割が自閉自閉症の方症の方とのことだとのことだ。利用者の平均区分も概ね。利用者の平均区分も概ね5.35.3ということでということで,,大半の方が最重度大半の方が最重度知知的障害者である的障害者である。施設は。施設は,,約約1010名単位の名単位の44つのユニットに分かれて食事や入浴つのユニットに分かれて食事や入浴,,団らん団らんなどが行われていなどが行われているる。また。また,,場所もスタッフも職住分離がされてい場所もスタッフも職住分離がされているる。利用者の平均年齢。利用者の平均年齢がが4040歳を越え歳を越え,,高齢化や重度化の課題が大きくなりつつあり高齢化や重度化の課題が大きくなりつつあり,,保護者の方と共に保護者の方と共に,,成年成年後見制度の勉強会などにも積極的に取り組んでいるとのことで後見制度の勉強会などにも積極的に取り組んでいるとのことであったあった。支援においては。支援においては,,食事や活動など様々な場面において自己選択・自己決定の機会を設けたり食事や活動など様々な場面において自己選択・自己決定の機会を設けたり,,パーソナルスパーソナルスペースを確保するなどの個別の対応を心がけているペースを確保するなどの個別の対応を心がけているとのことであるとのことである。今後は。今後は,,利用者の高利用者の高齢化に対応できる施設のバリアフリー化や高齢者対応型ケアホームの建設が法人の課題と齢化に対応できる施設のバリアフリー化や高齢者対応型ケアホームの建設が法人の課題となっておりなっており,,将来検討委員会を立ち上げ検討し進めていくとのこと将来検討委員会を立ち上げ検討し進めていくとのことだだ。地域との交流も盛。地域との交流も盛んに行われておりんに行われており,今後の展開が益々楽しみだと感じ,今後の展開が益々楽しみだと感じた。た。 筆者は国内外のこれらの先進的実践を視察見学したが,本章では,それらの中でも,強 筆者は国内外のこれらの先進的実践を視察見学したが,本章では,それらの中でも,強度行動障害者のケアホーム実践に最も先駆的に取り組んでいると判度行動障害者のケアホーム実践に最も先駆的に取り組んでいると判断した北海道のはるに断した北海道のはるにれの里の実践について検討する。れの里の実践について検討する。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

第 2 節 はるにれの里調査の概要

1 調査の目的 この訪問調査では 福岡 市 内の知的障害者福祉事業所実態調査の結果をふまえ そこ での問題をより鮮明にするために ,強度行動障害者の地域生活支援に積極的に取り組んで いる 事業所を訪問し そこで取り組まれている専門的な支援方法や環境的配慮のあり方等 について見学並びに聞き取り調査を行うことにした 。もとより,それぞれの事業所はその 地 域性や歴史的経緯 行政の違いなどの特殊性 個別性があ る 。そうした違いを大切にす るこ と も含めて 相互に比較検討を行うことにより強度行動障害者の地域生活支援モデル を明らかにすることに役立てたいと考えて企画したもので ある 。 筆者が社会福祉法人 はるにれの里 (以下「はるにれの里」とする)に関心を持った動機 は,行動障害を持つ自閉症者の地域生活支援に積極的に取り組んでいることを知ったこと である。はるにれの里は,現在, 28 ヶ所のケアホームを運営しており,そこでの入居者 117 人のうち,約 8 割が重度の自閉症であるという。一般に行動障害をともなう重度の自 閉症者が地域の住宅街の中で暮 らすことは,非常にリスクが大きく,容易ではないことで あると考えられている。 筆者は,平成 22 年 6 月にはるにれの里を訪問し,常務理事の木村昭一氏や各事業所の 管理者などに,様々なインタビュー調査を行うとともに,実際に,いくつかのケアホーム や施設,作業所などを見学した。そこで,様々なことを見聞きする中で,筆者が感心した ことは,支援面,運営面,経営面のすべてを包括的にプログラムとマネジメントされた, 自閉症者支援における見事なトータルシステムの構築であった。本章では,それらの内容 について考察する。 2 調査の内容 はるにれの里の視察訪問 は ,平成 23 年 6 月 6 日(月)に行った。当日は,午前 10 時に 札幌市自閉症者自立支援センターゆいに伺った。まず,木村理事より,法人の沿革や事業 概要についてお話を伺い,その後,ゆいの施設見学を行い,その後 ゆいの施設見学とゆい 周辺のケアホームを数ヶ所見学 その後 生活介護事業所さりゅう見学 ,午後は 石狩市 内の地域生活支援事業所ゆうゆう の 見学 その近辺のケアホームを数ヶ所見学 そ の後, 多機能型事業所 ふれあいきのこ村見学 そして 最後にはるにれの里法人本部に て, 2 時 間ほど 意見交換をした。 聞き取り 調査の内容は以下のとおりである。 1 .要支援者の状況と支援体制の概要 2 .直接支援に関して ( 利用者への基本的な関わり方 ( 行動問題への対応方法 (3)TEACCH など各種支援技術の導入状況 ( マンツーマン対応等の支援体制 ( 行動観察や職員間の対応方法の統一 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 59 また,事業所の概要書(事業目的,設立経緯,利用定員,職員数,立地条件,日課や活 また,事業所の概要書(事業目的,設立経緯,利用定員,職員数,立地条件,日課や活動内容など)事業報告書(年報),各種研修会な動内容など)事業報告書(年報),各種研修会などで発表した実践報告(レポート)などのどで発表した実践報告(レポート)などの関係資料をいただいた。関係資料をいただいた。 さらに,見学に際しては,写真撮影並びに当日の聞き取り調査の際の録音の許可をいた さらに,見学に際しては,写真撮影並びに当日の聞き取り調査の際の録音の許可をいただき,撮影及び音声録音を行った。だき,撮影及び音声録音を行った。 なお なお,聞き取り,聞き取り調査調査を開始する前に,この調査は,を開始する前に,この調査は,日本福祉大学大学院の研究倫理ガイ日本福祉大学大学院の研究倫理ガイドラインに準拠するドラインに準拠すること,こと,入手したデータは研究目的以外には一切使用せず入手したデータは研究目的以外には一切使用せず,,論文や報告論文や報告書等を作成する際には書等を作成する際には,,プライバシーを侵害することのないよう十分留意をプライバシーを侵害することのないよう十分留意をすることを口することを口頭ならびに文書にて説明をして,了承をいただいた頭ならびに文書にて説明をして,了承をいただいた。。

第 3 節 はるにれの里の 歴史

はるにれの里 が自閉症児者の地域生活実践に積極的に取り組んできた背景と原動力を明 らかにするには,まずその歴史を知る必要があるだろう。そこで,本項では,はるにれの 里が現在に至るまでの歴史的経緯について述べる。 1 自閉症児施設の開設に向けた親たちの運動(昭和 42 年~昭和 57 年) はるにれの里の前史は昭和 42 年にスタートする。この時期,自閉症の子を持つ親たち 10 人が,北海道情緒障害児父母の会の設立の運動を起こし,同年,全道から 30 人の親た ちが集まり結成された。その会が目指したものは,「教育の保障~就学猶予の撤廃」と「専 門の治療施設の設置」であった。この会による札幌市への陳情運動を通じて,昭和 48 年 に,市 立札幌病院静療院に児童精神科医療施設が設置された。さらに 昭和 54 年 北海 3 .支援アイテムに関して ( 日中活動プログラムの内容 ( 地域との交流の活動の状況 ( 個別の 1 日の活動スケジュールの状況 ( 個別の意思疎通(コミュニケーション)の方法 4 .物理的環境の整備に関して ( 個人スペースの確保の状況 ( 事故防止・危険回避のための物理的環境の整備の状況 ( 行動問題をなくすための物理的環境設定の状況 ( 居住空間・活動空間の構造化の状況 5 .関係機関との連携に関して ( 医師との連携の状況 ( 地域の者会資源との連携の状況 ( 保護者との連携の状況 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 60 道上磯郡に 道上磯郡に,,第二種自閉症児施設(福祉型)第二種自閉症児施設(福祉型)55))として第二おしま学園が設置された。として第二おしま学園が設置された。さらさらに,その後,自閉症児をもつ親たちの長い年月をかけた運動によって,昭和に,その後,自閉症児をもつ親たちの長い年月をかけた運動によって,昭和5757年,日本年,日本で最初の第一種自閉症児施設(で最初の第一種自閉症児施設(医療型)として札幌市立のぞみ学園が開設された。医療型)として札幌市立のぞみ学園が開設された。 2 2 厚田はまなす園の開設への取り組み(昭和厚田はまなす園の開設への取り組み(昭和5858年~昭和年~昭和6262年)年) しかし,のぞみ学園建設運動に関わった人たちの子どもはすでに児童施設に入所できる しかし,のぞみ学園建設運動に関わった人たちの子どもはすでに児童施設に入所できる年齢を過ぎてしまっており入所できなかった人たちも多くいた。さらに,開設後まもなく年齢を過ぎてしまっており入所できなかった人たちも多くいた。さらに,開設後まもなくのぞみ学園の入所者にも加齢問題が発生して,成人施設建設運動が始まり,札幌自閉症児のぞみ学園の入所者にも加齢問題が発生して,成人施設建設運動が始まり,札幌自閉症児者親の会(ポプラの会)が中心となって社会福祉法人はるにれの里設立準備委員会を結成者親の会(ポプラの会)が中心となって社会福祉法人はるにれの里設立準備委員会を結成し,行政に対する陳情活動などが進められた。それらの結果,厚田村(現在は石狩市厚田し,行政に対する陳情活動などが進められた。それらの結果,厚田村(現在は石狩市厚田区)関係者の協力を得ることができ,厚田村議会で建設用地区)関係者の協力を得ることができ,厚田村議会で建設用地1.21.2ヘクタールの無償貸与とヘクタールの無償貸与と建設資金のうちの建設資金のうちの11億億22千万円の債務負担が決議された。さらに日本自転車振興会の施設千万円の債務負担が決議された。さらに日本自転車振興会の施設整備費整備費11億億22千万円の補助が決定し,厚生省より「社会福祉法人はるにれの里」が認可さ千万円の補助が決定し,厚生省より「社会福祉法人はるにれの里」が認可された。こうした経過を経て,昭和れた。こうした経過を経て,昭和6262年年44月,多くの関係者の熱い思いが込められた「厚月,多くの関係者の熱い思いが込められた「厚田はまなす園」が開設した。田はまなす園」が開設した。 3 3 厚田はなます園の実践~混乱から支援体制確立へ~(昭和厚田はなます園の実践~混乱から支援体制確立へ~(昭和6262年~平成年~平成99年)年) 厚田はまなす園は,定員 厚田はまなす園は,定員4040人の知的障害者入所厚生施設としてスタートしたが,その人の知的障害者入所厚生施設としてスタートしたが,その開設の開設の経緯から,入所者の約半数はのぞみ学園の加齢児であり,その多くは強度行動障害経緯から,入所者の約半数はのぞみ学園の加齢児であり,その多くは強度行動障害児であった。開設から平成児であった。開設から平成33年までの年までの55年間は,入所者も新しい環境に移ることにより不年間は,入所者も新しい環境に移ることにより不安定になり,支援者もその多くが自閉症支援に対して未経験の人たちばかりであるため,安定になり,支援者もその多くが自閉症支援に対して未経験の人たちばかりであるため,施設の中は,常に,自傷行為,他害行動,パニック行動などで悲惨を極めた。特に利用者施設の中は,常に,自傷行為,他害行動,パニック行動などで悲惨を極めた。特に利用者に対する支援者の対応方法も,絶対的受容から厳しいしつけ指導まで様々で,一貫性のなに対する支援者の対応方法も,絶対的受容から厳しいしつけ指導まで様々で,一貫性のない対応が横行していたという。利用者はますます混乱し,事故が多発し,職員間のチームい対応が横行していたという。利用者はますます混乱し,事故が多発し,職員間のチームワワークも乱れークも乱れ,,施設長や課長等の幹部職員施設長や課長等の幹部職員も含め退職者が相次いだ。も含め退職者が相次いだ。56)) こうした混乱した状態を如何にして立て直すかについて法人内部で検討する中で打ち出 こうした混乱した状態を如何にして立て直すかについて法人内部で検討する中で打ち出された基本方針がされた基本方針が,,①一貫性のある支援とチームワークの確立①一貫性のある支援とチームワークの確立,,②人権を守る思想の徹底②人権を守る思想の徹底,,③地域とのつながりの強化③地域とのつながりの強化,,④在宅支援への足がかりの確立である。④在宅支援への足がかりの確立である。57))こうした方針に基づき施設運営を改革していく中で,入居者の徐々に落ち着きを取り戻していった。 さらに平成8年,はまなす園は定員を40名から60名に増員増設している。その増改築工事において,施設の居住環境の抜本的な改修と,障害特性に配慮した構造的支援を導入した。その結果,利用者の示す様々な不適応行動の改善の糸口が見つかり,行動障害が軽減していった。また同時期,国事業である強度行動障害特別処遇事業を受託することにより,心理療法を担当する職員の配置が実現した。このことは,施設処遇における専門的支 55))自閉症児施設とは,児童福祉法に基づく知的障害児施設のひとつであり,自閉症と診断された児童を入所させて,必要な治療や訓練などを行う施設である。自閉症児施設には,病院に入院する必要があり,医療的ケアを必要とする児童を入所させる第一種自閉症児施設(医療型)と,入院の必要がなく,医療的ケアを必要としない児童を入所させる第二種自閉症児施設(福祉型)の二種類がある。自閉症児施設では,綿密な発達診断を続けながら,医療及びその他の技術からの多面的な援助を行い,障害児の全体的な発達を目指している。第一種自閉症児施設(医療型)は全国に5ヶ所,第二種自閉症児施設(福祉型)が全国に2ヶ所ある。 56))木村昭一・菊池道雄(2010)「強度行動障がいを示す人たちの自立に向けた取り組み-地域のケアホームへの移行の実践から-」自閉症スペクトラム研究VOL.8,9-16 57))社会福祉法人はるにれの里パンフレット「私たちのあゆみ」 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 61 援導入の契機となった。 4 4 厚田はまなす園の実践~地域生活移行の取り組み~(平成厚田はまなす園の実践~地域生活移行の取り組み~(平成1010年~現在)年~現在) 厚田はまなす園が,重度の自閉症者や強度行動障害者の地域生活移行に本格的に取り組 厚田はまなす園が,重度の自閉症者や強度行動障害者の地域生活移行に本格的に取り組み始めたのは,平成み始めたのは,平成1010年度からである。そのきっかけとなったのは,年度からである。そのきっかけとなったのは,44人の重度自閉症者人の重度自閉症者の存在である。そのの存在である。その44人は,強度行動障害者と判定され,在宅ではまなす園への入所を待人は,強度行動障害者と判定され,在宅ではまなす園への入所を待っていた。そうした中,次第に家族への他害がエスカレートしていき,まさに家庭崩壊寸っていた。そうした中,次第に家族への他害がエスカレートしていき,まさに家庭崩壊寸前まで追い詰められていた。そのことを知ったはまなす園は,見切り発車で札幌地域に前まで追い詰められていた。そのことを知ったはまなす園は,見切り発車で札幌地域に44人のためのグループホームを開設し,支援を始めた。幸い,彼らのアセスメントは厚田は人のためのグループホームを開設し,支援を始めた。幸い,彼らのアセスメントは厚田はまなす園のショートスティを利用しまなす園のショートスティを利用したときに実施していたため,支援のツールはある程度たときに実施していたため,支援のツールはある程度把握できていた。しかしながら,支援スタッフは絶対的に不足しており,開設当初は,保把握できていた。しかしながら,支援スタッフは絶対的に不足しており,開設当初は,保護者や職員ボランティアの導入で何とか切り抜けていった。ところが,開設後護者や職員ボランティアの導入で何とか切り抜けていった。ところが,開設後11年後の彼年後の彼らの落ち着きには目を見張るものがあり,施設職員など関係者の多くが強度行動障害者のらの落ち着きには目を見張るものがあり,施設職員など関係者の多くが強度行動障害者のグループホーム生活について,これならいけると確信を持ったのである。こうした実践経グループホーム生活について,これならいけると確信を持ったのである。こうした実践経験に押され,はまなす園における行動障害者の本格的な地域生活移行が始まったのである。験に押され,はまなす園における行動障害者の本格的な地域生活移行が始まったのである。この実践に学んだ「障害が重くてもこの実践に学んだ「障害が重くても地域地域での生活を」という考えは,での生活を」という考えは,その後も変わらず,その後も変わらず,法人の基本理念となっている。法人の基本理念となっている。 このことをきっかけに,はまなす園は,入所者の地域生活移行に積極的に取り組み始め このことをきっかけに,はまなす園は,入所者の地域生活移行に積極的に取り組み始めた。その後,はまなす園の入所者は,平成た。その後,はまなす園の入所者は,平成2222年度までに石狩市厚田区を中心に,年度までに石狩市厚田区を中心に,5353人が人が1212ヶ所のケアホームへ移行している。これらの大半は,強度行動障害判定の点数ヶ所のケアホームへ移行している。これらの大半は,強度行動障害判定の点数1010点以点以上である。多くの自閉症者については,今も何らかの行動障害を起こしつつも,支援員ら上である。多くの自閉症者については,今も何らかの行動障害を起こしつつも,支援員らの適切な支援とサポート体制によって地域生活を無事に過ごすことができている。また,の適切な支援とサポート体制によって地域生活を無事に過ごすことができている。また,職員が危惧していた無断外出もほとんどなく,地域住民に対する本人職員が危惧していた無断外出もほとんどなく,地域住民に対する本人の非社会性からくるの非社会性からくる違和感や,大声やこだわり等によるある種の迷惑行動も大事に至らず,住民の反発はほと違和感や,大声やこだわり等によるある種の迷惑行動も大事に至らず,住民の反発はほとんどゼロに等しいという。んどゼロに等しいという。58)) 入所者の地域生活移行を進めていく中で,はまなす園の定員は,当初の 入所者の地域生活移行を進めていく中で,はまなす園の定員は,当初の6060人から平成人から平成2020年度には年度には5252人,さらに平成人,さらに平成2222年度には年度には4242人まで減少している。人まで減少している。 5 5 札幌市自閉症者自立支援センターゆいの開設~地域生活支援システムの確札幌市自閉症者自立支援センターゆいの開設~地域生活支援システムの確立~(平成立~(平成1717年~現在)年~現在) 札幌市 札幌市自閉症児立支援センターゆいは,平成自閉症児立支援センターゆいは,平成1717年年1111月に知的障害者入所更生施設とし月に知的障害者入所更生施設として開設された定員て開設された定員3030名の施設である。平成名の施設である。平成2323年年44月月11日より,障害者自立支援法に基づ日より,障害者自立支援法に基づく施設入所支援事業に移行している。設置主体は札幌市で,指定管理制度により社会福祉く施設入所支援事業に移行している。設置主体は札幌市で,指定管理制度により社会福祉法人はるにれの里が運営を受託している。法人はるにれの里が運営を受託している。 ゆいは,法人内において,重度自閉症者の地域生活移行を中心的に牽引している。ゆい ゆいは,法人内において,重度自閉症者の地域生活移行を中心的に牽引している。ゆいは入所施設であるが,考え方の基本には,常に利用者の暮らしの延長線上に地域生活を展は入所施設であるが,考え方の基本には,常に利用者の暮らしの延長線上に地域生活を展望している。このことについて真鍋は,「センターの施設利用は有期限有目的として,行動望している。このことについて真鍋は,「センターの施設利用は有期限有目的として,行動上の問題の上の問題の軽減軽減と自立のための支援方法を総と自立のための支援方法を総合的かつ専門的に多くの人の知恵を結集して合的かつ専門的に多くの人の知恵を結集して 58))はるにれの里20周年記念誌(2007) 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 62 提供することを担うが,その支援は地域へと引き継がなければならない」 提供することを担うが,その支援は地域へと引き継がなければならない」59))と指摘していと指摘している。る。 ゆいを中核とした札幌市での自閉症者や行動障害者の地域生活支援システムは,はまな ゆいを中核とした札幌市での自閉症者や行動障害者の地域生活支援システムは,はまなす園の地域生活移行実践をみごとに体系化したものである。ゆいの利用対象者は,自閉症す園の地域生活移行実践をみごとに体系化したものである。ゆいの利用対象者は,自閉症者と周辺の発達障害者である。また,ゆいの最大の特徴は,利用期間が者と周辺の発達障害者である。また,ゆいの最大の特徴は,利用期間が33年間で,その後年間で,その後は地域生活に移行するという有期限有目的であるということである。ゆいの機能や運営のは地域生活に移行するという有期限有目的であるということである。ゆいの機能や運営の特徴は以下のとおりである。特徴は以下のとおりである。 まず まず,,特徴として以下の特徴として以下の77点を掲げている。点を掲げている。60))①自閉症を中心とした周辺の発達障害の①自閉症を中心とした周辺の発達障害の人たちに特化した支援を展開しています。②生活環境は人たちに特化した支援を展開しています。②生活環境は,,66人単位のユニットケア人単位のユニットケア,,③個③個別支別支援計画に基づき最長援計画に基づき最長33年内の計画で地域の暮らしを目指します。④医療型施設を利用年内の計画で地域の暮らしを目指します。④医療型施設を利用してしている自閉症の人の福祉型支援への移行を応援します。いる自閉症の人の福祉型支援への移行を応援します。⑤自閉症の人たちが地域で充実⑤自閉症の人たちが地域で充実した暮らしが送れるようバックアップします。⑥二次障害である行動障害の軽減を図りました暮らしが送れるようバックアップします。⑥二次障害である行動障害の軽減を図ります。⑦ひとりひとりがもっている能力を発揮できる環境づくりをします。す。⑦ひとりひとりがもっている能力を発揮できる環境づくりをします。 また,支援のポイントとして,①自閉症の特性や発達 また,支援のポイントとして,①自閉症の特性や発達的な状態像にあわせて支援環境を的な状態像にあわせて支援環境を整えます。②ご本人を人生の主人公として支援の内容を組み立てることを優先します。③整えます。②ご本人を人生の主人公として支援の内容を組み立てることを優先します。③興味や関心,得意なところを生かせるよう活動を組み立てます。④もっている力を引き出興味や関心,得意なところを生かせるよう活動を組み立てます。④もっている力を引き出し自立性を高める支援を行います。⑤介助や介護の必要なところは,丁寧に一貫して支えし自立性を高める支援を行います。⑤介助や介護の必要なところは,丁寧に一貫して支えます。⑥ひとりひとりのコミュニケーションの力にあわせて表現の手立てを用意します,ます。⑥ひとりひとりのコミュニケーションの力にあわせて表現の手立てを用意します,のの66項目を掲げている。項目を掲げている。61)) そして,職員の姿勢として,「障害が重く,自分自身の思いをうまく表現できなくても, そして,職員の姿勢として,「障害が重く,自分自身の思いをうまく表現できなくても,地域で普通に暮らしをしたいと多くの自閉症の人たちは願地域で普通に暮らしをしたいと多くの自閉症の人たちは願っています。その思いを実現さっています。その思いを実現させることができるように支えることが私たちの仕事と考えています。ご家族と協働関係をせることができるように支えることが私たちの仕事と考えています。ご家族と協働関係を築き,地域の様々な人たちの理解と協力を得ながら,自閉症の人が地域社会の中で,その築き,地域の様々な人たちの理解と協力を得ながら,自閉症の人が地域社会の中で,その人らしく生き,期待することを実現させながら充実した時間を過ごすことができるよう寄人らしく生き,期待することを実現させながら充実した時間を過ごすことができるよう寄り添っていきます。」としている。り添っていきます。」としている。62)) すなわち,ゆいの掲げる基本的視点は,自閉症者及び発達障害者各自の意思の尊重を基 すなわち,ゆいの掲げる基本的視点は,自閉症者及び発達障害者各自の意思の尊重を基本とし,自閉症という障害特性を踏まえた支援を提供するとともに支援環境を整備すると本とし,自閉症という障害特性を踏まえた支援を提供するとともに支援環境を整備するということである。また,ゆいの最大の特徴として先いうことである。また,ゆいの最大の特徴として先にも触れた有期限有目的については,にも触れた有期限有目的については,どのような強度行動障害のある人も地域の中で暮らすことが可能であるという確固としたどのような強度行動障害のある人も地域の中で暮らすことが可能であるという確固とした確信がなければ打ち出せない内容である。入所時における保護者とのこのような契約は,確信がなければ打ち出せない内容である。入所時における保護者とのこのような契約は,保護者側よりも,むしろ施設側,支援者側にとっての行動の担保となるからである。その保護者側よりも,むしろ施設側,支援者側にとっての行動の担保となるからである。その点では,保護者と利用契約を締結する管理者だけではなく,地域生活移行に実際に取り組点では,保護者と利用契約を締結する管理者だけではなく,地域生活移行に実際に取り組んでいくことになる現場の支援員との合意形成や意思統一が不可欠である。んでいくことになる現場の支援員との合意形成や意思統一が不可欠である。 ちなみにゆいは,定員 ちなみにゆいは,定員3030名に対し,平成名に対し,平成2323年年55月現在で月現在で2323名が地域生活移行を果た名が地域生活移行を果たしているしている。ゆいを中核として,はるにれの里が取り組んでいる地域生活支援・地域移行支。ゆいを中核として,はるにれの里が取り組んでいる地域生活支援・地域移行支援システムについての詳細は,この後に述べることにする。援システムについての詳細は,この後に述べることにする。 59))真鍋龍司(2009)「強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行」発達障害研究第31巻第5号P385 60))社会福祉法人はるにれの里ホームページ(http://www.harunire.or.jp)2011.7.17閲覧 61))前掲:社会福祉法人はるにれの里ホームページ 62))前掲:社会福祉法人はるにれの里ホームページ 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

第 4 節 はるにれの里の法人概要

1 はるにれの里の基本理念 (1) 「 はるにれの里」という名称に込められた思い 「社会福祉法人 はるにれの里 」の名称は,はるにれの木にちなんで法人創設者により命 名された。はるにれは北海道を代表する巨樹であり,とりわけ観光名所の木として有名な 十勝平野の大平原にある豊頃町のはるにれの木は,高さ 30 メートル,樹齢 100 年にもな っている。北海道の長く厳しい冬を百回以上も乗り越えてきたはるにれの木は,春から夏 にかけて青々とした葉の扇形の樹形の美しさは見る 人に感動を与えている。(図 4 2 法人創設者たちは,はるにれの木のたくましさと 純朴で孤独な美しさが社会福祉法人はるにれの里の 事業理念に相通ずるものがあると考え命名した。ま た,自閉症をはじめとした重度障害者の地域で暮ら したいという彼らの人間としての叫び声に耳を傾け ようとする法人にとって,はるにれの木は大変勇気 づけれられるものなのである。 63 (2) はるにれの里の理念 はるにれの里の法人パンフレットによると,法人の事業運営理念として以下の 5 点が掲 げられている。①重度自閉症および重度知的障害を初めとした発達障害児者に特化した多 様な機能を持つ事業運営,②いかなる重度障害者も最終ゴールを地域での自律生活とし, それを支える事業展開,③家族を支え,家族に支えられる事業展開,④はたらく 職員のや りがいを支える事業運営,⑤情報の公開,外部評価の導入による地域に開かれた事業運営, である。 これらの理念に掲げられた内容で,他の多くの社会福祉法人と比較して極めて特徴的な ことは,対象者を発達障害者に特化していることと,すべての対象者に例外なく,最終ゴ ールを地域での自律生活としているところであろう。こうした理念は,法人設立 25 年間 の中での様々な苦難とその克服という実践の歴史の過程で磨きあげられ,確立してきたも のであろう。 また,はるにれの里の中心となる考え方として,ゆいの施設長真鍋は,「私たちの中心と なる考え方は,障害が重たくても,施設ではなく地域で暮らす,そして地域の暮らしがよ り充実したものとなるよう支えるシステムを構築すること。自閉症の人たちと同じ時間を 共有しながら,その生きづらさを理解し,地域社会の中のバリアーを低くしていくことに あります」と述べている。 63 はるにれの里20周年記念誌(2007)「発刊にあたって」(はるにれの里理事長佐藤勝彦) 図 4 2 十勝平野のはるにれの木 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 64 2 2 はるにれの里の支援の基本「はるにれの里の支援の基本「TEACCHTEACCHプログラム」プログラム」 はるにれの里の支援の基本は, はるにれの里の支援の基本は,TEACCHTEACCHプログラムである。木村は,インタビュー調プログラムである。木村は,インタビュー調査の中で,「私は,査の中で,「私は,TEACCHTEACCHとの出会いがなかったら,地域移行はしなかったね。しなかとの出会いがなかったら,地域移行はしなかったね。しなかったというより,できなかったというより,できなかったね。無理だね。構造的支援がすべてだね。ていうか,このったね。無理だね。構造的支援がすべてだね。ていうか,この人たちは,やはり支援の専門性と環境調整だよ。そういうふうに思ったらね,本当に目か人たちは,やはり支援の専門性と環境調整だよ。そういうふうに思ったらね,本当に目から鱗の支援がどんどん出てきたよね。職員のアイデアもすごかったし,やっぱりら鱗の支援がどんどん出てきたよね。職員のアイデアもすごかったし,やっぱりTEACCHTEACCHを勉強した人間が育ってきたからね,そうすると変わったね。自閉症いらっしゃいになっを勉強した人間が育ってきたからね,そうすると変わったね。自閉症いらっしゃいになったね。だから,徹底的にたね。だから,徹底的にTEACCHTEACCHのスキルを持った職員を育てないとだめだね。私ひとのスキルを持った職員を育てないとだめだね。私ひとりじゃ作れなかったね」と語っている。りじゃ作れなかったね」と語っている。 以下に, 以下に,TEACCHTEACCHの概略について,はるにれの里のホームページの概略について,はるにれの里のホームページ64))から引用する。から引用する。 「 「TEATEACCHCCHとは,とは,TTreatmentreatment andand educationeducation ofof autisticautistic andand relatedrelated communicationcommunication handicappedhandicapped childrenchildrenのそれぞれの頭文字をとった造語で,のそれぞれの頭文字をとった造語で,『『自閉症及び関連するコミュ自閉症及び関連するコミュニケーション障害をもつ子どもたちのための治療と教育ニケーション障害をもつ子どもたちのための治療と教育』』という意味です。という意味です。TEACCHTEACCHああるいはるいはTEACCHTEACCHプログラムと呼ぶ場合は,アメリカ・ノースカロライナ州立大学を基盤プログラムと呼ぶ場合は,アメリカ・ノースカロライナ州立大学を基盤に実践されている,自閉症の方々やそのご家族,支援者を対象にした包括的なプログラムに実践されている,自閉症の方々やそのご家族,支援者を対象にした包括的なプログラムのことを指します。社会福祉法人はるにれの里では,のことを指します。社会福祉法人はるにれの里では,TEACCHTEACCHの理念とアイデアから多の理念とアイデアから多くのことを学び,支援のあり方や事業展開において,たくさんのヒントを得ています。私くのことを学び,支援のあり方や事業展開において,たくさんのヒントを得ています。私たちが,たちが,TEACCHTEACCHから学び,大切にしているその考え方について,ご紹介したいと思いから学び,大切にしているその考え方について,ご紹介したいと思います。ます。 <1> <1> 自閉症の特性を正しく理解しようと努力すること自閉症の特性を正しく理解しようと努力すること 診断名が同じであっても,一人一人は違った個性をもっています。そ 診断名が同じであっても,一人一人は違った個性をもっています。それを私たちは真摯れを私たちは真摯に見つめ,その方の得意なことや好きなことを探り,支援に生かそうと考えています。に見つめ,その方の得意なことや好きなことを探り,支援に生かそうと考えています。そそして,自閉症とは何かという学びを続けることもきわめてして,自閉症とは何かという学びを続けることもきわめて重要です。謙虚な気持ちを忘れ重要です。謙虚な気持ちを忘れてはならないからです。てはならないからです。私たちは,自閉症を理解することと,その方のもつ個性を理解す私たちは,自閉症を理解することと,その方のもつ個性を理解する営みを常に続けていかなくてはならないと考えています。る営みを常に続けていかなくてはならないと考えています。 <2> <2> ご家族との協働ご家族との協働 私たち法人の事業展開は,ご家族との協働による部分も非常に大きく,ご家族の思いを 私たち法人の事業展開は,ご家族との協働による部分も非常に大きく,ご家族の思いを大切にしながら,今後も前進していきたいと考えています。大切にしながら,今後も前進していきたいと考えています。多くのご家族に支えられなが多くのご家族に支えられながら,私たちの法人はら,私たちの法人は歩みを続けてきました。その感謝の気持ちを忘れることなく,一歩一歩みを続けてきました。その感謝の気持ちを忘れることなく,一歩一歩,その歩みを続けていきます。歩,その歩みを続けていきます。 <3> <3> 構造化された指導の利用構造化された指導の利用 その方のもっている力を最大限に発揮していくためには,その方の得意なことや好きな その方のもっている力を最大限に発揮していくためには,その方の得意なことや好きなことを生かし,同時に苦手なことへの配慮が必要です。構造化の意味はそこにあるのではことを生かし,同時に苦手なことへの配慮が必要です。構造化の意味はそこにあるのではないでしょうか。一人一人の特性に合わせた構造化を進めていくために,日々の実践を振ないでしょうか。一人一人の特性に合わせた構造化を進めていくために,日々の実践を振り返る気持ちを常に忘れずにいたいと思います。り返る気持ちを常に忘れずにいたいと思います。 <4> <4> 多面的かつ全体的にその方をみつめていくこと多面的かつ全体的にその方をみつめていくこと はるにれの里にはさまざまな事業所があり,さまざまな職種や立場の人間が働いていま はるにれの里にはさまざまな事業所があり,さまざまな職種や立場の人間が働いています。そうした機能を生かし,ひとつの見方にかたまることなく,いろいろな知恵を寄せ集す。そうした機能を生かし,ひとつの見方にかたまることなく,いろいろな知恵を寄せ集めて支援を考えていきたいと思います。一人一人の職員がゼネラリストになることを願いめて支援を考えていきたいと思います。一人一人の職員がゼネラリストになることを願い 64))はるにれの里ホームページ(はるにれの里ホームページ(http://www.harunire.or.jp/teacch.htmlhttp://www.harunire.or.jp/teacch.html))20112011..88..77閲覧閲覧 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 65 ながらも,すぐにそうなるのは難しいかもしれません。しかし,法人全体がひとつのチー ながらも,すぐにそうなるのは難しいかもしれません。しかし,法人全体がひとつのチームとしてゼネラリストになることは可能です。ムとしてゼネラリストになることは可能です。 <5> <5> その人らしく地域で生きるためのサービスの展開その人らしく地域で生きるためのサービスの展開 自閉症は治るとか治すとかいうものではありません。その人らしく,地域の中で生きて 自閉症は治るとか治すとかいうものではありません。その人らしく,地域の中で生きていくことが人生の目いくことが人生の目的であり,そのために必要な長期の支援プログラムを提供していくの的であり,そのために必要な長期の支援プログラムを提供していくのが支援者の務めです。が支援者の務めです。はるにれの里では,利用者の方々がケアホームで生活する地域移行はるにれの里では,利用者の方々がケアホームで生活する地域移行を積極的に進めています。それは,地域の中で無理なく生きていきながら,その方なりにを積極的に進めています。それは,地域の中で無理なく生きていきながら,その方なりに人生の質を向上させていってほしいという願いからの取り組みであり,現在入所されてい人生の質を向上させていってほしいという願いからの取り組みであり,現在入所されているとしても,もともとは地域で暮らしていた方々なのだから,地域の生活に戻るのが自然るとしても,もともとは地域で暮らしていた方々なのだから,地域の生活に戻るのが自然なことなのではないかという思いからの取り組みです。その人らしく地域で生きるためのなことなのではないかという思いからの取り組みです。その人らしく地域で生きるためのサービスをより充実させていけるように努力していきたサービスをより充実させていけるように努力していきたいと思っています。」いと思っています。」 3 3 はるにれの里の平成はるにれの里の平成2323年度重点課題年度重点課題 はるにれの里では,平成 はるにれの里では,平成2323年度の重点課題として「年度の重点課題として「11.堺氏の捜索活動とサービスの安.堺氏の捜索活動とサービスの安全対策の強化」「全対策の強化」「22.新規ケアホームの整備と地域住民の理解の取り組み」「.新規ケアホームの整備と地域住民の理解の取り組み」「33.入所施設の.入所施設の当直業務の改善とケアホームケア職員の業務改善」「当直業務の改善とケアホームケア職員の業務改善」「44.人材養成のための取り組み」「.人材養成のための取り組み」「55..生活介護事業所の増設」の生活介護事業所の増設」の55点を掲げているが,そのうち以下の点を掲げているが,そのうち以下の22点について紹介する。点について紹介する。 (1) (1)新規ケアホームの整備と地域住民の理解の取り組み新規ケアホームの整備と地域住民の理解の取り組み 平成 平成2323年年33月,法人が運営するケアホームは月,法人が運営するケアホームは2828ヶ所で,合計ヶ所で,合計118118人の自閉症をはじめ人の自閉症をはじめとした重度の障害者の地域生活を支えている。第一に,はまなす園,ゆいからの地域生活とした重度の障害者の地域生活を支えている。第一に,はまなす園,ゆいからの地域生活移行については,引き続き受け皿としてのケアホームを整備していかなければならない。移行については,引き続き受け皿としてのケアホームを整備していかなければならない。とりわけ,長い間はまなす園で暮らし続けてきた利用者にとっては,地域生活移行は長年とりわけ,長い間はまなす園で暮らし続けてきた利用者にとっては,地域生活移行は長年の悲願であり,今年度もの悲願であり,今年度も1010名の移行を行うとともに,ゆい利用者の受け皿として,オー名の移行を行うとともに,ゆい利用者の受け皿として,オーナーからの借用方式で北区エリアに整備していく。整備にあたっての地域住民の理解促進ナーからの借用方式で北区エリアに整備していく。整備にあたっての地域住民の理解促進のための住民説明会の開催の是非については,のための住民説明会の開催の是非については,慎重に取り扱う。すなわち「住民の理解が慎重に取り扱う。すなわち「住民の理解が得られてから暮らしを開始する」のではなく「ともに暮らし続けることにより理解が深ま得られてから暮らしを開始する」のではなく「ともに暮らし続けることにより理解が深まる」という考え方に転換する。る」という考え方に転換する。 (2) (2)人材養成のための取り組み人材養成のための取り組み 今日学生をはじめ,多くの専門職を求めている人たちはネット上の情報で動いているこ 今日学生をはじめ,多くの専門職を求めている人たちはネット上の情報で動いていることは明らかである。当法人のホームページをはじめ民間の人材情報紹介会社などのホームとは明らかである。当法人のホームページをはじめ民間の人材情報紹介会社などのホームページを利用して職員募集を重視していく。また,法人に入職してページを利用して職員募集を重視していく。また,法人に入職して33年目ぐらいに多くの年目ぐらいに多くの職員は自分の職業,職場選択に疑問を持ち,自分の業務に自信を失う時期とされている。職員は自分の職業,職場選択に疑問を持ち,自分の業務に自信を失う時期とされている。こうした時期こうした時期に職員のモチベーションを高め,スキルアップのための道外研修賞金付きのに職員のモチベーションを高め,スキルアップのための道外研修賞金付きの論文発表会を開催する。勤務年数が進んでいる職員については,幹部候補の養成も含め,論文発表会を開催する。勤務年数が進んでいる職員については,幹部候補の養成も含め,法人外研修への参加とともに,積極的な実践発表を勧める。また,法人として海外研修費法人外研修への参加とともに,積極的な実践発表を勧める。また,法人として海外研修費の一部を助成する。の一部を助成する。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 66 4 4 はるにれの里の事業所一覧はるにれの里の事業所一覧 平成 平成2323年年55月現在,月現在,社会福祉法人はるにれの里が社会福祉法人はるにれの里が運営している事業所は以下のとおり運営している事業所は以下のとおりである。(表である。(表44--11)札幌市,石狩市及びその近郊の主に自閉症児者,発達障害者を対象に約)札幌市,石狩市及びその近郊の主に自閉症児者,発達障害者を対象に約400400人の障害者に対する支援を行っている。人の障害者に対する支援を行っている。 表4-1 社会福祉法人はるにれの里が運営する事業所 事業種別 事業所名 定員 所在 1 障害者支援施設・生活介護・短期入所 厚田はまなす園 入所52 通所40 石狩市 2 障害者支援施設・生活介護・生活訓練・短期入所 札幌市自閉症者自立 支援センターゆい 入所30 通所15 札幌市 3 地域生活トレーニングホーム こもれび 入居4 石狩市 4 地域生活トレーニングホーム りれい 入居4 札幌市 5 生活介護事業所 レラ・もうらい 通所20 石狩市 6 生活介護事業所 ほしのみ 通所19 札幌市 7 生活介護事業所(従たる事業所) ぱいえ 通所9 札幌市 8 生活介護事業所(従たる事業所) あらいぶ 通所11 石狩市 9 生活介護事業所 さりゅう 通所14 札幌市 10 生活介護事業所(従たる事業所) ウエス作業館ゆらり 通所6 札幌市 11 就労継続B型・生活介護・短期入所 ふれあいきのこ村 通所40 石狩市 12 就労継続B型・生活介護・生活訓練 ワークセンターポロレ 通所36 石狩市 13 就労移行支援事業 あるば 通所20 石狩市 14 札幌市障害者協働事業 東米里菌床センター 通所10 札幌市 15 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ203 入居6 石狩市 16 共同生活介護事業所(ケアホーム) 厚田はまなす荘 入居4 石狩市 17 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ201 入居4 石狩市 18 共同生活介護事業所(ケアホーム) ひまわり 入居4 石狩市 19 共同生活介護事業所(ケアホーム) 白樺202 入居6 石狩市 20 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ205 入居5 石狩市 21 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ207 入居4 石狩市 22 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ208 入居4 石狩市 23 共同生活介護事業所(ケアホーム) やすらぎ209 入居5 石狩市 24 共同生活介護事業所(ケアホーム) あしり 入居4 札幌市 25 共同生活介護事業所(ケアホーム) たんぽぽの家 入居4 札幌市 26 共同生活介護事業所(ケアホーム) ふりっぱー 入居4 札幌市 27 共同生活介護事業所(ケアホーム) ようよう 入居4 札幌市 28 共同生活介護事業所(ケアホーム) はばたき 入居4 札幌市 29 共同生活介護事業所(ケアホーム) 石狩はまなす荘 入居4 石狩市 30 共同生活介護事業所(ケアホーム) いるか 入居4 石狩市 31 共同生活介護事業所(ケアホーム) こすもす 入居5 石狩市 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 67 5 5 各事業所の方針各事業所の方針 上記に 上記に掲げた事業所にはそれぞれ運営方針や年度の重点事項が公表されているが,ここ掲げた事業所にはそれぞれ運営方針や年度の重点事項が公表されているが,ここでは,本研究に関連の深い事業所の方針について確認する。では,本研究に関連の深い事業所の方針について確認する。 (1) (1)障害者支援施設「厚田はまなす園」障害者支援施設「厚田はまなす園」 厚田 厚田はまなす園は,自閉症を初めとした重度知的障害者の利用施設であり,利用者に対はまなす園は,自閉症を初めとした重度知的障害者の利用施設であり,利用者に対して人権の尊重と最大限の個別的な配慮のもとに,日々の利用者の豊かな暮らしの実現として人権の尊重と最大限の個別的な配慮のもとに,日々の利用者の豊かな暮らしの実現と入所施設厚田はまなす園の定員削減を視野に置き,地域社会での「自律」した生活移行に入所施設厚田はまなす園の定員削減を視野に置き,地域社会での「自律」した生活移行に向けた援助をしていく。向けた援助をしていく。 (2) (2)札幌市自閉症者自立支援センターゆい札幌市自閉症者自立支援センターゆい 豊かな暮らしを 豊かな暮らしを実現するための援助と居住環境の整備に努めるとともに,有期限で地域実現するための援助と居住環境の整備に努めるとともに,有期限で地域生活移行に向けた援助を行う。また,自閉症を初めとする生活全般にわたり不適応行動を生活移行に向けた援助を行う。また,自閉症を初めとする生活全般にわたり不適応行動を示す人に対する個別援助プログラムに基づく専門的な支援を行う。示す人に対する個別援助プログラムに基づく専門的な支援を行う。 (3) (3)共同生活介護事業所(ケアホーム)共同生活介護事業所(ケアホーム) 生活の 生活の質を高め,豊かな暮らしを支援する。そのために余暇活動の充実や安心,安全の質を高め,豊かな暮らしを支援する。そのために余暇活動の充実や安心,安全の地域生活を支援するとともに,より徹底した個別に配慮された支援を目指す。また,地域地域生活を支援するとともに,より徹底した個別に配慮された支援を目指す。また,地域住民との日常的な交流を目指す。さらに,ケア職員の定着など支援の安定した仕組みを作住民との日常的な交流を目指す。さらに,ケア職員の定着など支援の安定した仕組みを作るとともに,密室のサービスるとともに,密室のサービスであることをふまえ,日常的な第三者の評価を導入する。であることをふまえ,日常的な第三者の評価を導入する。 6 6 はるにれの里が運営するケアホームの概要はるにれの里が運営するケアホームの概要 平成 平成2323年年55月現在月現在,,はるにれの里ははるにれの里は,,2828ヶ所のケアホームを運営している。各ホームヶ所のケアホームを運営している。各ホームのの定員は定員は33人から人から66人であり,男性用ホームが人であり,男性用ホームが2020ヶ所,女性用ホームがヶ所,女性用ホームが88ヶ所である。ヶ所である。 32 共同生活介護事業所(ケアホーム) まあむ 入居4 石狩市 33 共同生活介護事業所(ケアホーム) らいふ 入居4 札幌市 34 共同生活介護事業所(ケアホーム) ほしの窓 入居4 札幌市 35 共同生活介護事業所(ケアホーム) ほしの空 入居4 札幌市 36 共同生活介護事業所(ケアホーム) 飛雁里 入居4 札幌市 37 地域活動支援センター えみな 10以上 石狩市 38 児童デイサービス さんりんしゃ 1日10 札幌市 39 児童デイサービス ぱれっと 1人10 石狩市 40 居宅介護・行動援護 ぽけっと 石狩市 41 居宅介護・行動援護 ゆうゆう 石狩市 42 札幌市自閉症・発達障害支援センー おがる 札幌市 43 札幌市障害者相談支援 ぽらりす・なっつ 札幌市 44 石狩圏域障害者就業・生活支援センター のいける 石狩市 45 石狩市障害者総合相談支援センター ぷろっぷ 石狩市 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 68 区分6 区分67171人人61%61% 区分5 区分52525人人21%21% 区分4 区分41616人人14%14% 区分3 区分344人人3%3% 区分2 区分211人人1%1% 入居者の障害程度 入居者の障害程度区分は区分は,,区分区分66がが117117人人中中7171人(人(6060..77%%)),,区分区分55がが2525人名(人名(2121..44%%)),,区分区分44がが1616人(人(1313..77%%)),,区区分分33がが44人人((3.4%3.4%),区分),区分22がが11人(人(0.8%0.8%)である。)である。(図(図44--33参照)参照) また,各ホームの入居定員は, また,各ホームの入居定員は,33人が人が33ヶ所,ヶ所,4 4 人が人が1919ヶ所ヶ所,,55人が人が44ヶ所ヶ所,,66人人がが22ヶ所である。ヶ所である。各ホーム入居者の平均障各ホーム入居者の平均障害程度区分は,害程度区分は,3.03.0からから6.06.0であり,平均であり,平均区分区分5.05.0からから6.06.0が,が,2323ホームで,全体のホームで,全体の82%82%を占めている。また,利用者の区分がを占めている。また,利用者の区分が66の人だけで構成されているケアホームがの人だけで構成されているケアホームが77ヶ所ある。なおそれらのホームはすべて定員ヶ所ある。なおそれらのホームはすべて定員44人以下となっている。人以下となっている。(表(表44--22参照)参照) 表4-2 ケアホーム障害程度区分一覧 ケアホーム名 入居 者数 障害程度区分(人) 平均 区分 6 5 4 3 2 1 1 ホームA 4 4 6.0 2 ホームB 4 4 6.0 3 ホームC 4 4 6.0 4 ホームD 4 4 6.0 5 ホームE 4 4 6.0 6 ホームF 4 4 6.0 7 ホームG 4 4 6.0 8 ホームH 5 4 1 5.8 9 ホームI 5 4 1 5.8 10 ホームJ 5 4 1 5.8 11 ホームK 4 3 1 5.8 12 ホームL 4 3 1 5.8 13 ホームM 6 4 2 5.7 14 ホームN 4 2 2 5.5 15 ホームO 4 2 2 5.5 16 ホームP 4 3 1 5.5 17 ホームQ 4 2 2 5.5 18 ホームR 3 1 2 5.3 19 ホームS 3 2 1 5.3 20 ホームT 3 2 1 5.3 21 ホームU 4 2 1 1 5.3 22 ホームV 6 3 1 2 5.2 23 ホームW 4 1 2 1 5.0 24 ホームX 4 1 1 2 4.8 図 図44--33 入居者の障害程度区分入居者の障害程度区分 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 69 物件の種別は,新築物件が 物件の種別は,新築物件が1212ヶ所(ヶ所(42.8%42.8%),中古購入物件が),中古購入物件が1010ヶ所(ヶ所(35.7%35.7%),賃貸),賃貸物件が物件が66ヶ所(ヶ所(21.5%21.5%)となっている。具体的には法人による借り上げた借家住宅,民間)となっている。具体的には法人による借り上げた借家住宅,民間補助金により購入した住宅,法人が購入し改築した中古住宅,保護者が共同購入し改築し補助金により購入した住宅,法人が購入し改築した中古住宅,保護者が共同購入し改築した住宅,保護者が共同出資した新築住宅,保護者会で借り上げた借家住宅である。一般にた住宅,保護者が共同出資した新築住宅,保護者会で借り上げた借家住宅である。一般にケアホーム,グループホームは賃貸物件が多い中,はるにれの里では,賃貸物件は全体のケアホーム,グループホームは賃貸物件が多い中,はるにれの里では,賃貸物件は全体のわずかわずか55分の分の11で,それ以外は,法人所有または複数の保護者の共有というのは特徴的でで,それ以外は,法人所有または複数の保護者の共有というのは特徴的である。なお,運営形態については,法人が主体となった運営と,保護者会が主体となったある。なお,運営形態については,法人が主体となった運営と,保護者会が主体となった運営の運営の22種類がある。保護者会が主体となった運営では,種類がある。保護者会が主体となった運営では,物件の取得をはじめ,利用者の物件の取得をはじめ,利用者の年金管理,事業費会計(家賃,水道光熱費,食事代,日用品費,小遣い等)についても保年金管理,事業費会計(家賃,水道光熱費,食事代,日用品費,小遣い等)についても保護者会が管理運営している。なお,世話人や生活支援員等の雇用や配置,具体的なサービ護者会が管理運営している。なお,世話人や生活支援員等の雇用や配置,具体的なサービス提供については,法人が行っている。ス提供については,法人が行っている。

第 5 節 はるにれの里の行動障害者支援に対する基本的な考え方

1 支援の基本的な考え方 はるにれの里 の支援に対する基本的な考え方は,「強度行動障害を伴う自閉症の方がなぜ そのような生き難さを抱えることになったのかを考え寄り添いながら,本人の生き難さ, 困り感などを自閉症の特性と本人の状態(背景)を科学的にかつ専門的に評価しながら支 援を進めていく」 65 としている。 2 行動障害の捉え方 (1) 氷山モデル はるにれの里では,問題行動について「氷山モデル」という考え方をしている。自閉症 療育の第一人者である佐々木正美氏の文献をもとに「氷山モデル」の考え方を紹介する。 「氷山モデル」では,問題行動を氷山に例える。氷山は,その大部分が海面下に隠れて いる。この隠れた部分が,原因となる部分で,海上に出ている一部分が,問題行動として 表に表れる行動であるとしている。海上に出ている部分を小さくしようと思ったら,隠れ た大部分を小さくしていかなければならない。問題行動を減らしていこうとする場合,隠 れた原因の部分を無くしていかないと,解決しないということである。海上に出ている部 65 社会福祉法人北摂杉の子会 2010 「強度行動障害を持つ自閉症者の地域移行を支える GH ・ CH ,および入所施設 の機能の在り方に関する先進事例研究」厚生労働省平成 21 年度障害者保健福祉推進事業 25 ホームY 4 3 1 4.8 26 ホームZ 4 2 1 1 4.3 27 ホームα 5 4 1 3.8 28 ホームβ 4 1 2 1 3.0 合計人数 117 71 25 16 4 1 0 5.4 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 70 分が,表に現れて 分が,表に現れている問題行動いる問題行動でである。例えば,ある。例えば,人を叩く人を叩く,,つばを吐くつばを吐く,,物を投げるなど物を投げるなどである。一方,海面下に隠れている部分が,である。一方,海面下に隠れている部分が,原因となる部分で原因となる部分で,,コミュニケーションが取コミュニケーションが取れないれない,,要求が伝わらない要求が伝わらない,,嫌な事を拒否できない嫌な事を拒否できない,,何を言われているのかわからない何を言われているのかわからない,,見通しが持てない見通しが持てない,,今していることが,いったいいつまで続くのかわからない今していることが,いったいいつまで続くのかわからない,,いつにないつになったら,好きなこと(物)が手に入るのかわからないったら,好きなこと(物)が手に入るのかわからないなどであるなどである。。また,幼児期,学齢期また,幼児期,学齢期のの誤学習誤学習や,や,感覚過敏など感覚過敏なども含まれる。も含まれる。自閉症は認知(物事を知覚し,記憶し,思考し,自閉症は認知(物事を知覚し,記憶し,思考し,計画する能力)障害で計画する能力)障害であるある。入ってきた情報を処理するシステムに障。入ってきた情報を処理するシステムに障害があるということ害があるということでであるあるからから,,その障害のあるシステムで処理した結果その障害のあるシステムで処理した結果,,適切な行動が出来なかったり適切な行動が出来なかったり,,問問題が生じたりする題が生じたりするのであるのである。。そこで,問題行動に対する対応において重要なことは,氷山そこで,問題行動に対する対応において重要なことは,氷山の海面下の部分,すなわち原因となることは何かを考えることである。の海面下の部分,すなわち原因となることは何かを考えることである。いろいろと困ったいろいろと困った行動をするという場合行動をするという場合,,いったい何が原因でその問題行動を起こすのかを考えいったい何が原因でその問題行動を起こすのかを考える。そして,る。そして,それぞれの問題行動に優先順位を付けそれぞれの問題行動に優先順位を付けるのであるるのである。その優先順位の高いものから一つずつ。その優先順位の高いものから一つずつ行動の分析行動の分析をするをする。。「「いつ(時間)いつ(時間)」「」「どこで(場所)どこで(場所)」「」「何のときに(活動)何のときに(活動)」「本人,」「本人,周囲周囲のの直前直前の様子」「の様子」「原因の推測(なぜ本人はそうしたか)原因の推測(なぜ本人はそうしたか)」」ということを記録していということを記録していくく。その記。その記録から,原因となるものが何なのかを考え録から,原因となるものが何なのかを考えるる。そして,原因がわかれば,その原因に対し。そして,原因がわかれば,その原因に対して丁寧にアプローチしていて丁寧にアプローチしていくのである。くのである。66)) ゆいの ゆいの施設長真鍋龍司は,行動障害の発生理由を以下のように位置づけている。すなわ施設長真鍋龍司は,行動障害の発生理由を以下のように位置づけている。すなわち,「自閉症の人たちは,周りの環境から様々な意味を見つけだすことが苦手という脳のつち,「自閉症の人たちは,周りの環境から様々な意味を見つけだすことが苦手という脳のつくりをしている。そのために,通常の教育方法では適切に発達を促すことができず,ご本くりをしている。そのために,通常の教育方法では適切に発達を促すことができず,ご本人が多くの困り感を抱えて,行動障害という形で表現することになる」人が多くの困り感を抱えて,行動障害という形で表現することになる」67))99))と説明していと説明している。また,同氏は,「行動障害は,自閉症の人の視点で見るならば,『このようにしか表現る。また,同氏は,「行動障害は,自閉症の人の視点で見るならば,『このようにしか表現せざるを得なかった』ということである。」せざるを得なかった』ということである。」68))と述べている。と述べている。 (2) (2)氷山モデルの支援事例氷山モデルの支援事例 ケアホームの支援員掛端は, ケアホームの支援員掛端は,20102010年度の「はるにれの里実践発表コンクール」において,年度の「はるにれの里実践発表コンクール」において,不適応行動に対する捉え方を「後手の支援」から「氷山モデルに対するアプローチ方法」不適応行動に対する捉え方を「後手の支援」から「氷山モデルに対するアプローチ方法」に変えたことによって,利用者の不適応行動が嘘のように激減し,最終的にほぼ消失したに変えたことによって,利用者の不適応行動が嘘のように激減し,最終的にほぼ消失したことを以下のように報告している。「長年の本氏に対する支援方法は,まず何が何でことを以下のように報告している。「長年の本氏に対する支援方法は,まず何が何でも目をも目を叩く自傷行為を行わせないことに,支援員はエネルギーを注いでいた。つまり,自傷箇所叩く自傷行為を行わせないことに,支援員はエネルギーを注いでいた。つまり,自傷箇所が目(すでに左目が失明)ということもあってか,自閉症支援のセオリーである表座モデが目(すでに左目が失明)ということもあってか,自閉症支援のセオリーである表座モデルに対するアプローチ方法をすっかり忘れてしまっていた。いつしか,表出されるさまざルに対するアプローチ方法をすっかり忘れてしまっていた。いつしか,表出されるさまざまな不適応行動のみに対応する言わば“後手の支援”ばかりを繰り返し行っていた。本来まな不適応行動のみに対応する言わば“後手の支援”ばかりを繰り返し行っていた。本来ならば,なぜこうした目を叩く自傷行為等の「不適応な行動を起こさざるを得ないのか」ならば,なぜこうした目を叩く自傷行為等の「不適応な行動を起こさざるを得ないのか」といった,その目的と機能を本氏に寄り添った視点から,我々支援者こそが理解する必要といった,その目的と機能を本氏に寄り添った視点から,我々支援者こそが理解する必要があったであろう。そこで,があったであろう。そこで,不適応行動が最も多く表出される余暇時間に焦点を絞りアプ不適応行動が最も多く表出される余暇時間に焦点を絞りアプローチを開始することにした。それも,本氏の視点に立って,氷山の先っぽ周辺に位置すローチを開始することにした。それも,本氏の視点に立って,氷山の先っぽ周辺に位置する行動だけに目を奪われることなく,氷山の沈んで見えない部分を支援者がしっかりと捉る行動だけに目を奪われることなく,氷山の沈んで見えない部分を支援者がしっかりと捉 66))佐々木正美佐々木正美(1993)(1993)「自閉症療育ハンドブック-「自閉症療育ハンドブック-TEACCHTEACCHプログラムに学ぶ-」学研プログラムに学ぶ-」学研 67))真鍋龍司「指定管理 札幌市自閉症者自立支援センターゆい概説」プレゼンテーション資料 68))真鍋龍司「強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行」(2009)発達障害研究第31巻5号P384 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 71 えた上で,必要だったアプローチを展開していくことにした。」具体的な支援方法としては, えた上で,必要だったアプローチを展開していくことにした。」具体的な支援方法としては,「居室内におけるほぼ無構造な音楽を聴く余暇プログラム」から,「抜本的な環境のリセッ「居室内におけるほぼ無構造な音楽を聴く余暇プログラム」から,「抜本的な環境のリセットが可能なナイトウォーキングという外出余暇プログラム」に変更した。また,伝えなけトが可能なナイトウォーキングという外出余暇プログラム」に変更した。また,伝えなければならないればならない66つの情報「①どこで,②いつ,③何を,④つの情報「①どこで,②いつ,③何を,④いつまで,⑤どのように,⑥次いつまで,⑤どのように,⑥次に」をわかりやすく伝えたのである。こうした取り組みを継続した結果,「長年の間,連日に」をわかりやすく伝えたのである。こうした取り組みを継続した結果,「長年の間,連日連夜繰り広げられていた不適応行動のオンパレードが嘘のように激減し,その後ほぼ消失連夜繰り広げられていた不適応行動のオンパレードが嘘のように激減し,その後ほぼ消失していった」のである。このことについて,担当支援員の掛端は次のように総括している。していった」のである。このことについて,担当支援員の掛端は次のように総括している。「基本に忠実かつ,本氏の特性に配慮した極めてシンプルな内容へと余暇プログラムを変「基本に忠実かつ,本氏の特性に配慮した極めてシンプルな内容へと余暇プログラムを変更したことにより,それまで我々支援者が余暇時間中の誤った対応により『強化』してし更したことにより,それまで我々支援者が余暇時間中の誤った対応により『強化』してしまったさまざまな“誤学習”をリセットすることができた。それも,誤学習がすり込まれまったさまざまな“誤学習”をリセットすることができた。それも,誤学習がすり込まれていったケアホーム内からケアホーム外に活動の場所を移すことによって,導入期にかかていったケアホーム内からケアホーム外に活動の場所を移すことによって,導入期にかかる心理・精神的な負荷を最小限に抑えることも可能となった。」と語り,最後に,「このケる心理・精神的な負荷を最小限に抑えることも可能となった。」と語り,最後に,「このケースにより見えてきたことは,いかなる激しい不適応行動に対峙する場合においても,支ースにより見えてきたことは,いかなる激しい不適応行動に対峙する場合においても,支援者は自閉症支援の基本的アプローチ方法を忘れてはいけないということである。つまり,援者は自閉症支援の基本的アプローチ方法を忘れてはいけないということである。つまり,せざるを得ない行動だけに着目した支援を展開し続けるのではなく,同時にあるいは将来せざるを得ない行動だけに着目した支援を展開し続けるのではなく,同時にあるいは将来的に,“不適応な行動を起こさなくても的に,“不適応な行動を起こさなくてもOKOKな環境”を整えてあげることに我々支援者はな環境”を整えてあげることに我々支援者はエネルギーを注いでいかなけれエネルギーを注いでいかなければならない」と結んでいる。ばならない」と結んでいる。69)) 3 3 入所施設の限界とケアホーム生活の意義入所施設の限界とケアホーム生活の意義 (1) (1)入所施設の問題点と限界性入所施設の問題点と限界性 法人常務理事の木村昭一らは,入所施設の限界について,「当法人の入所施設においても, 法人常務理事の木村昭一らは,入所施設の限界について,「当法人の入所施設においても,彼らの行動特性に配慮した構造的な支援を行いながら,重度自閉症者の地域生活移行を進彼らの行動特性に配慮した構造的な支援を行いながら,重度自閉症者の地域生活移行を進めてきた。そこで見いだされた結論のひとつが,入所施設という環境があまりにも彼らにめてきた。そこで見いだされた結論のひとつが,入所施設という環境があまりにも彼らに合わないということである」と述べている。また,その理由として,「施設という多様な空合わないということである」と述べている。また,その理由として,「施設という多様な空間による刺激,集団生活での多くの対人的な刺激,集団プログラムによる制約など,自閉間による刺激,集団生活での多くの対人的な刺激,集団プログラムによる制約など,自閉症者にとって苦手な生活状況が多くなっているからである」としている。さらに,入所施症者にとって苦手な生活状況が多くなっているからである」としている。さらに,入所施設の問題点として,「障害特性設の問題点として,「障害特性に最大限配慮することを目的としながらも,構造化そのものに最大限配慮することを目的としながらも,構造化そのものが自己目的化されやすい。乱暴な言い方をすれば,本人のための構造化ではなく,職員のが自己目的化されやすい。乱暴な言い方をすれば,本人のための構造化ではなく,職員のための構造化になりやすい」ということを指摘している。ための構造化になりやすい」ということを指摘している。 一方,入所施設の状況について職員サイドから木村は,以下の問題点を指摘している。 一方,入所施設の状況について職員サイドから木村は,以下の問題点を指摘している。すなわち,「ときとして,揺れ動く職員集団の中では,一貫性のない支援に陥る場合すらあすなわち,「ときとして,揺れ動く職員集団の中では,一貫性のない支援に陥る場合すらある。そして,職員は多数いても,それぞれの職員は常に多くの利用者に対して支援の目をる。そして,職員は多数いても,それぞれの職員は常に多くの利用者に対して支援の目を注がねばならず,一人ひとりの利用者の個別性にどこまで細かくかかわっていけるか疑問注がねばならず,一人ひとりの利用者の個別性にどこまで細かくかかわっていけるか疑問であである」と。そして,「自閉症者にとっての集団生活が前提となる入所施設での長期にわたる」と。そして,「自閉症者にとっての集団生活が前提となる入所施設での長期にわたる生活は,職員集団の療育の専門性が保障されていたとしても,その実践効果には限界がる生活は,職員集団の療育の専門性が保障されていたとしても,その実践効果には限界があると思う」と結論づけている。あると思う」と結論づけている。70)) 69))掛端亮二郎掛端亮二郎((20102010))「不適応行動に対するアプローチ」社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール資料集「不適応行動に対するアプローチ」社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール資料集 70))木村昭一・菊池道雄(2010):前掲書PP12-13 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 72 (2) (2)ケアホーム生活の意義ケアホーム生活の意義 真鍋は,自閉症者にとってのユニットによる少人数の暮らしの意味合いについて以下の 真鍋は,自閉症者にとってのユニットによる少人数の暮らしの意味合いについて以下のように述べている。「自閉症の人は,様々な刺激(音や見えるもの等)に対し,不必要な刺ように述べている。「自閉症の人は,様々な刺激(音や見えるもの等)に対し,不必要な刺激を自動的に制御することがうまくできない。結果として,一度に多くの刺激を取り入れ激を自動的に制御することがうまくできない。結果として,一度に多くの刺激を取り入れてしまい,不安を感じたり,混乱したりしてしまうてしまい,不安を感じたり,混乱したりしてしまう。一般的な施設では,多くの人たちが。一般的な施設では,多くの人たちが集団生活をしていて,この人刺激に日々翻弄されて苦しんでいるのである。特に,人刺激集団生活をしていて,この人刺激に日々翻弄されて苦しんでいるのである。特に,人刺激を制限できるという意味でのユニット(少人数の暮らし)は,自閉症の人にとっては,優を制限できるという意味でのユニット(少人数の暮らし)は,自閉症の人にとっては,優しい環境と言えるのである」しい環境と言えるのである」71))としている。としている。 平成 平成1717年,法人は,構造改革特区における「小規模サテライト型入所施設北海道特区」年,法人は,構造改革特区における「小規模サテライト型入所施設北海道特区」事業の認定を得た。それにより,グループホーム生活を目指し,入所籍のまま少人数で地事業の認定を得た。それにより,グループホーム生活を目指し,入所籍のまま少人数で地域生活を行うことが可能となった。域生活を行うことが可能となった。44人の自閉症の人たちが,支援を受けながら地域の一人の自閉症の人たちが,支援を受けながら地域の一軒家で生活をすると,入所施設生活軒家で生活をすると,入所施設生活中に見られた行動障害も軽減され,いかに少人数での中に見られた行動障害も軽減され,いかに少人数での生活が重要かを改めて実感させられたのである。このことを木村は,「グループホーム白樺生活が重要かを改めて実感させられたのである。このことを木村は,「グループホーム白樺202202は法人として初めて重度自閉症の人を入居させるということで,職員の同居スペースは法人として初めて重度自閉症の人を入居させるということで,職員の同居スペースをつくり,をつくり,2424時間支援をするとして時間をかけて親御さんを説得してスタートしました。時間支援をするとして時間をかけて親御さんを説得してスタートしました。障害は重いが働く力のある人たちの地域生活が始まったのです。彼らは決して入所施設に障害は重いが働く力のある人たちの地域生活が始まったのです。彼らは決して入所施設にいる必要がないことを証明することになるのです」と語っている。いる必要がないことを証明することになるのです」と語っている。72)) さらに,ゆいの業務課長の佐藤は,少人数で暮らすことのメリットについて, さらに,ゆいの業務課長の佐藤は,少人数で暮らすことのメリットについて,以下の以下の44点を指摘している。第一に「環境調整の配慮がしやすい」,第二に「夜間約点を指摘している。第一に「環境調整の配慮がしやすい」,第二に「夜間約2020人を一人で人を一人で対応する入所施設に比べて,一人ひとりに目が行き届く」,第三に「利用者の困り感が軽減対応する入所施設に比べて,一人ひとりに目が行き届く」,第三に「利用者の困り感が軽減され,不適応行動が減少する」,第四に「家庭での利用者の行動上の問題が減ったり,言語され,不適応行動が減少する」,第四に「家庭での利用者の行動上の問題が減ったり,言語のなかった人が『お母さん』と呼びかけるようになったり,帰省から戻る際『戻りたくなのなかった人が『お母さん』と呼びかけるようになったり,帰省から戻る際『戻りたくない』という要求が見られなくなったなどにより保護者から『ケアホームに移って良かった』い』という要求が見られなくなったなどにより保護者から『ケアホームに移って良かった』と感じてもらえる声が多く聞かれる」などである。と感じてもらえる声が多く聞かれる」などである。 これらの経験を通じて,はまなす園は,入所施設であ これらの経験を通じて,はまなす園は,入所施設であるが目標を地域生活に置き,そのるが目標を地域生活に置き,そのためのトレーニングを行う通過施設としての機能を重視している。行動障害の関係で地域ためのトレーニングを行う通過施設としての機能を重視している。行動障害の関係で地域生活が難しいのではと思われる利用者もいるが,「障害の重い人こそ少人数での地域生活が生活が難しいのではと思われる利用者もいるが,「障害の重い人こそ少人数での地域生活が望ましい」という考えのもとで,支援を展開しているのである。望ましい」という考えのもとで,支援を展開しているのである。73))

第 6 節 はるにれの里が運営するケアホームの特徴

1 物理的環境整備における特徴 (1) 自閉症のこだわり特性に配慮した環境整備 はるにれの里では,自閉症の情報の多さからくる混乱をできる限り回避することを目的 71 真鍋:前掲プレゼンテーション資料 72 はるにれの里20周年記念誌(2007)P36 73 記念誌:前掲書P24 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 73 として,利用者が活動や生活をするあらゆる空間において,様々な建物・設備等のハード として,利用者が活動や生活をするあらゆる空間において,様々な建物・設備等のハードウェアの工夫をしている。例えば,水や食べ物にこだわりがある自閉症者の生活環境では,ウェアの工夫をしている。例えば,水や食べ物にこだわりがある自閉症者の生活環境では,洗面所や冷蔵庫が容易に視界に入らないように,目隠しや仕切りを設置している。洗面所や冷蔵庫が容易に視界に入らないように,目隠しや仕切りを設置している。74))また,また,自閉症の特性として細部の模様に注意を奪われてしまうことがあるため,壁や天井につい自閉症の特性として細部の模様に注意を奪われてしまうことがあるため,壁や天井については,できるだけ模様の入っていないシンプルな色合いを選ぶようにしている。また,浴ては,できるだけ模様の入っていないシンプルな色合いを選ぶようにしている。また,浴室や洗面所の鏡については,室や洗面所の鏡については,常に鏡を見ることに執着するなど,特別な反応を示す自閉症常に鏡を見ることに執着するなど,特別な反応を示す自閉症者がいるため,その場合は,あえて取り付けないか,直接見えないようにカバーかけをす者がいるため,その場合は,あえて取り付けないか,直接見えないようにカバーかけをする等の配慮をしている。部屋の照明のスイッチが気になって常にオンオフの操作を繰り返る等の配慮をしている。部屋の照明のスイッチが気になって常にオンオフの操作を繰り返す人がいる場合は,人感センサー式のものを導入することにより解決を図っている。また,す人がいる場合は,人感センサー式のものを導入することにより解決を図っている。また,エアコンや換気関係のスイッチに対するこだわりのある人がいる場合は,中央コントローエアコンや換気関係のスイッチに対するこだわりのある人がいる場合は,中央コントロール盤を設置して,支援者の部屋で一括管理という方法をとっているところもある。ル盤を設置して,支援者の部屋で一括管理という方法をとっているところもある。75)) (2) (2)ひとつの空間にひとつの役割を持たせるひとつの空間にひとつの役割を持たせる また,浴室,脱衣所,洗面所,洗濯場がすべて同じ部屋にあると,利用者は刺激や情報 また,浴室,脱衣所,洗面所,洗濯場がすべて同じ部屋にあると,利用者は刺激や情報量の多さに混乱するため,あえてそれぞれを独立した部屋にして,ひとつの空間にひとつ量の多さに混乱するため,あえてそれぞれを独立した部屋にして,ひとつの空間にひとつの役割を意識できるように配慮している。の役割を意識できるように配慮している。76)) (3) (3)怪我や事故等の怪我や事故等の安全対策に配慮した設備の導入安全対策に配慮した設備の導入 自閉症の人が暮らす場でも最も避けなければならないことのひとつが火災ややけどなど 自閉症の人が暮らす場でも最も避けなければならないことのひとつが火災ややけどなどの火によるトラブルである。そこで,暖房機器の石油やガスを使用したストーブは避け,の火によるトラブルである。そこで,暖房機器の石油やガスを使用したストーブは避け,オール電化の暖房機器を使用している。寒い北海道特有の暖房器具オール電化の暖房機器を使用している。寒い北海道特有の暖房器具としてセントラルヒーとしてセントラルヒーティングを使用しているホームでは,パネルヒーターなどは,壁にしっかりと固定していティングを使用しているホームでは,パネルヒーターなどは,壁にしっかりと固定している。また,自傷行為があり,激しく床や壁に頭部を打ち付けたり,素手で強く叩く人の場る。また,自傷行為があり,激しく床や壁に頭部を打ち付けたり,素手で強く叩く人の場合,あまり壁の強度を高めるとダメージが大きくなり受傷してしまう。そこで,壁の強度合,あまり壁の強度を高めるとダメージが大きくなり受傷してしまう。そこで,壁の強度はほどほどにしている。また,居室も窓ガラスは,強化ガラスを使用し,さらに表面にアはほどほどにしている。また,居室も窓ガラスは,強化ガラスを使用し,さらに表面にアクリル板の貼り付け加工を行い,転倒やパニック時の怪我防止のためにより安全性の高いクリル板の貼り付け加工を行い,転倒やパニック時の怪我防止のためにより安全性の高い材質を用いている。材質を用いている。77)) (4) (4)破壊行動の回避を目的とした環境作り破壊行動の回避を目的とした環境作り 利用者の中には,食事中 利用者の中には,食事中に突然不穏になってテーブルをひっくり返したり,茶碗を壁にに突然不穏になってテーブルをひっくり返したり,茶碗を壁に投げつける人もいる。そうした人たちが暮らすホームでは,テーブルは重厚で重いものを投げつける人もいる。そうした人たちが暮らすホームでは,テーブルは重厚で重いものを設置している。設置している。 2 2 運営方法における特徴運営方法における特徴 (1) (1)ケアホーム入居者の選定条件ケアホーム入居者の選定条件 ケアホーム入居者の選定にあたっては,はるにれの里では,行動障害がすべて改善した ケアホーム入居者の選定にあたっては,はるにれの里では,行動障害がすべて改善した 74))本郷和章「行動障害を伴う自閉症者の地域生活支援~ケアホームでの取り組みから~」プレゼンテーション資料本郷和章「行動障害を伴う自閉症者の地域生活支援~ケアホームでの取り組みから~」プレゼンテーション資料 75))真鍋:前掲書真鍋:前掲書PP.394PP.394~~PP.396PP.396 76))本郷:本郷:前掲プレゼンテーション資料前掲プレゼンテーション資料 77))真鍋:前掲書真鍋:前掲書PP..393393 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 74 から地域への移行を進めるという考え方はとられていない。木村は,基本的な考え方は, から地域への移行を進めるという考え方はとられていない。木村は,基本的な考え方は,行動障害が行動障害が100%100%改善してから地域移行を目指すのではなく,改善のための支援は地域に改善してから地域移行を目指すのではなく,改善のための支援は地域に出てから本格的にはじめると説明している。出てから本格的にはじめると説明している。78))また,真鍋は,期間限定をして,ある程度また,真鍋は,期間限定をして,ある程度行動上の問題の行動上の問題の軽減軽減を図ることができたならば,残りの課題は,地域の暮らしの中で,そを図ることができたならば,残りの課題は,地域の暮らしの中で,その人の長い人生の中での人の長い人生の中で軽減軽減を図っていけばよいと考えているということである。なお,「あを図っていけばよいと考えているということである。なお,「ある程度」というのは,自閉症利用者がスケジュールや視覚的な手がかりを使いこなせるよる程度」というのは,自閉症利用者がスケジュールや視覚的な手がかりを使いこなせるようになって,日常的なことであれば見通しをもって過ごすことができ,たとえ混乱したとうになって,日常的なことであれば見通しをもって過ごすことができ,たとえ混乱したとしても,しても,11人の支援者が対応し,軌道修正した人の支援者が対応し,軌道修正した内容を理解して,内容を理解して,3030分以内程度で自己統制分以内程度で自己統制を図ることができることなどをひとつの目安としているということである。を図ることができることなどをひとつの目安としているということである。79)) (2) (2)ケアホーム開設場所の立地条件ケアホーム開設場所の立地条件 真鍋は,ケアホーム開設場所の立地のポイントとして,以下の 真鍋は,ケアホーム開設場所の立地のポイントとして,以下の1010点を挙げている。①点を挙げている。①障害者への理解度の高い地域,②公園に近いこと,③隣家とある程度の距離の確保,④公障害者への理解度の高い地域,②公園に近いこと,③隣家とある程度の距離の確保,④公的施設の隣接,⑤コンビニや大型商業施設の近く,⑥公共交通機関の利便性,⑦車的施設の隣接,⑤コンビニや大型商業施設の近く,⑥公共交通機関の利便性,⑦車33台の台の駐車スペース,⑧刺激に敏感な自閉症者には郊外型,⑨近くに医療機関があること,⑩バ駐車スペース,⑧刺激に敏感な自閉症者には郊外型,⑨近くに医療機関があること,⑩バックアップ事業との距離が遠すぎないこと。ックアップ事業との距離が遠すぎないこと。 これらすべての条件を満たす場所を確保することは非常に困難である。したがって,筆 これらすべての条件を満たす場所を確保することは非常に困難である。したがって,筆者は,とりわけ,③隣家とのある程度の距離の確保と⑧刺激に敏感な自閉症者には郊外型者は,とりわけ,③隣家とのある程度の距離の確保と⑧刺激に敏感な自閉症者には郊外型のの22点が重要であると考える。点が重要であると考える。 ③と⑧の重要性について,真鍋は以下のように説明している。③については,隣の家と ③と⑧の重要性について,真鍋は以下のように説明している。③については,隣の家とある程度の距離があったほうがよい。それは,声の問題がある。機嫌よく高揚して大きなある程度の距離があったほうがよい。それは,声の問題がある。機嫌よく高揚して大きな声を出す,音声チックがあり,甲高い声を出し続ける,声を出す,音声チックがあり,甲高い声を出し続ける,エコラリアエコラリアや壁を叩くなどの行動や壁を叩くなどの行動時に生じる音によって近隣とのトラブルを避けるという意味がある。また⑧については,時に生じる音によって近隣とのトラブルを避けるという意味がある。また⑧については,ケアケアホーム周辺にあまりにも自閉症の人の興味や関心,要求の対象となるものが視覚的にホーム周辺にあまりにも自閉症の人の興味や関心,要求の対象となるものが視覚的にも氾濫していることで,日常の生活が成り立たないほどに注意が向いてしまい,自己統制も氾濫していることで,日常の生活が成り立たないほどに注意が向いてしまい,自己統制を図ることが難しくなる事例や,女性,子どもに強い関心を持っていて,衝動的な行動やを図ることが難しくなる事例や,女性,子どもに強い関心を持っていて,衝動的な行動や反社会的な行動へと発展する要素を制限することが必要な事例については郊外型とすべき反社会的な行動へと発展する要素を制限することが必要な事例については郊外型とすべきであるとしている。であるとしている。 (3) (3)多様な多様なケアホーム物件の取得方法ケアホーム物件の取得方法 はるにれの里では,ケアホームの建物は基本的に はるにれの里では,ケアホームの建物は基本的に5LDK5LDKの一戸建て住宅が好ましいと考えの一戸建て住宅が好ましいと考えている。個室ている。個室44室を入居者の部屋とし,室を入居者の部屋とし,11室を支援者の寝室として活用するためである。室を支援者の寝室として活用するためである。 物件の取得方法は,①賃貸物件を借りる,② 物件の取得方法は,①賃貸物件を借りる,②中古中古物件を購入する,③新築するの選択肢物件を購入する,③新築するの選択肢から,本人の経済的な状況や家族の子どもに対する援助がどの程度可能なのか等を勘案しから,本人の経済的な状況や家族の子どもに対する援助がどの程度可能なのか等を勘案しながら決定している。はるにれの里が運営するながら決定している。はるにれの里が運営する2828ヶ所のケアホームの取得形態はヶ所のケアホームの取得形態は極めて多極めて多様でありその内容は様でありその内容は以下のとおりである。以下のとおりである。80)) ①賃貸物件を借りる方法の ①賃貸物件を借りる方法の実実例例 78))木村木村らら((20102010)):前掲書:前掲書P.10P.10 79))真鍋真鍋((20092009)):前掲書:前掲書PP..388388 80))本郷本郷:前掲書:前掲書 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 75 ・法人が借り上げた・法人が借り上げた ・利用す・利用する保護者会が借り上げたる保護者会が借り上げた ・結婚した本人等が借り上げた・結婚した本人等が借り上げた ・アパートでの単身生活のために本人自身が借り上げた・アパートでの単身生活のために本人自身が借り上げた ・法人により家主に発注して新築住宅を造ってもらい借り上げた・法人により家主に発注して新築住宅を造ってもらい借り上げた ②中古物件を購入する方法の実例 ②中古物件を購入する方法の実例 ・保護者が共同購入して改修した・保護者が共同購入して改修した ・法人が直接購入して改修した・法人が直接購入して改修した ・利用者本人等で購入した・利用者本人等で購入した ③新築する方法の実例 ③新築する方法の実例 ・民間補助金により新築した・民間補助金により新築した ・保護者の共同出資により新築した・保護者の共同出資により新築した このように,ケアホームの物件取得にあたっては,保護者との話し合いを重ねながら多 このように,ケアホームの物件取得にあたっては,保護者との話し合いを重ねながら多様な選択肢の中から当該利用者・保護者にとって最も様な選択肢の中から当該利用者・保護者にとって最も相応しい方法を選択しているのであ相応しい方法を選択しているのである。る。 (4) (4)ケアホームの運営形態ケアホームの運営形態 ケアホームの運営形態は大きく分けてふたつの方法で行われている。ほとんどのケアホ ケアホームの運営形態は大きく分けてふたつの方法で行われている。ほとんどのケアホームは,社会福祉法人はるにれの里が運営主体となって運営をしているが,ームは,社会福祉法人はるにれの里が運営主体となって運営をしているが,33ヶ所のケアヶ所のケアホームについてはホームについてはホームホーム保護者会が運営主体保護者会が運営主体ととなっている。なっている。そこでは,ケアホーム物件のそこでは,ケアホーム物件の取得を保護者会が行い,入居後の生活においても,利用者の年金を保護者会が管理し,家取得を保護者会が行い,入居後の生活においても,利用者の年金を保護者会が管理し,家賃,水光熱費,食事代,日用品代,お小遣い等の会計管理も保護者会が行っている。賃,水光熱費,食事代,日用品代,お小遣い等の会計管理も保護者会が行っている。 ( (55))地域生活移行に向けたサテライト型施設地域生活移行に向けたサテライト型施設の活用の活用 平成 平成1717年度,はるにれの里は,自閉症者にとって入所施設での生活は,他者による刺年度,はるにれの里は,自閉症者にとって入所施設での生活は,他者による刺激の多さや集団ということでの生活の制約があるため,北海道特区事業による「サテライ激の多さや集団ということでの生活の制約があるため,北海道特区事業による「サテライト型入所施設」の整備を行い,地域生活のトレーニングを開始した。ここでは,ト型入所施設」の整備を行い,地域生活のトレーニングを開始した。ここでは,44名の自名の自閉症の人が,入所施設「厚田はまなす園」閉症の人が,入所施設「厚田はまなす園」に籍を置いたままで,ケアホーム生活への移行に籍を置いたままで,ケアホーム生活への移行に向けてに向けて22年間という期間限定で構造化等自閉症に特化した支援を受けている。平成年間という期間限定で構造化等自閉症に特化した支援を受けている。平成2323年年66月現在,月現在,44ヶ所のサテライト施設でヶ所のサテライト施設で2020名が地域生活のトレーニングを行っている。名が地域生活のトレーニングを行っている。 ① ①サテライト型入所施設とは何かサテライト型入所施設とは何か 国は,平成 国は,平成1717年年33月月2828日,第日,第77回構造改革特別区域計画において,北海道が申請した回構造改革特別区域計画において,北海道が申請した「小規模サテライト型障害者入所施設北海道特区」を認定した。「小規模サテライト型障害者入所施設北海道特区」を認定した。 認定された特区の概要は,「身体・知的障害者入所施設について,地域移行を希望してい 認定された特区の概要は,「身体・知的障害者入所施設について,地域移行を希望しているが直ちには移行できない者を対象として,現行定員の範囲内で,本体施設とは別に,市るが直ちには移行できない者を対象として,現行定員の範囲内で,本体施設とは別に,市街地に設置した小規模施設による運営を可能とする。このことにより,地域の実情に応じ街地に設置した小規模施設による運営を可能とする。このことにより,地域の実情に応じた取り組みの選択肢を増やし,入所施設利用者の地域生活への移行を促進するとともに,た取り組みの選択肢を増やし,入所施設利用者の地域生活への移行を促進するとともに,入所施設の機能を地域生活支援へ転換することを目指す」とし,サテライト型入所施設の入所施設の機能を地域生活支援へ転換することを目指す」とし,サテライト型入所施設の 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 76 イメージを以下のように表現している。(図 イメージを以下のように表現している。(図44--44参照)参照)81)) ② ②サテライト型入所施設サテライト型入所施設特区申請の背景特区申請の背景 真鍋は,サテライト型入所施設発想の経緯について次のように説明している。 真鍋は,サテライト型入所施設発想の経緯について次のように説明している。 「私たちは,彼らが本当に今置かれている暮らしが良いと考えているとは思えないので 「私たちは,彼らが本当に今置かれている暮らしが良いと考えているとは思えないのである。その確かめをする環境を地域の中に作った。それは,入所籍のままで,地域の生活ある。その確かめをする環境を地域の中に作った。それは,入所籍のままで,地域の生活体験ができる体験ができる5LDK5LDKの一軒家で,実際にの一軒家で,実際に11年間そこで支援付きの暮らしをしてみて,最終年間そこで支援付きの暮らしをしてみて,最終的に本人が施設を利用するのか,このまま地域で暮らすのかを判断する機会とした。また,的に本人が施設を利用するのか,このまま地域で暮らすのかを判断する機会とした。また,もうひとつの目的は,家族が強度の行動障害をもっていて子どもの頃から大変な子育てをもうひとつの目的は,家族が強度の行動障害をもっていて子どもの頃から大変な子育てを経験してきて,ようやくたどり着いた入所経験してきて,ようやくたどり着いた入所施設であるにもかかわらず,地域の暮らしを目施設であるにもかかわらず,地域の暮らしを目指すという支援者側の理念を受け入れる精神的な余裕をもてないというところにあった。指すという支援者側の理念を受け入れる精神的な余裕をもてないというところにあった。家族の心情や思いは理解でき尊重しながら,家族はこのように思っていても,子どもはど家族の心情や思いは理解でき尊重しながら,家族はこのように思っていても,子どもはどうなのか,説明するよりも,家族にその目で暮らしの様子をみてもらうことによって,子うなのか,説明するよりも,家族にその目で暮らしの様子をみてもらうことによって,子の思いが伝わると考えた。」の思いが伝わると考えた。」82)) ③ ③サテライト型入所施設サテライト型入所施設利用によりスムーズに地域移行した事例利用によりスムーズに地域移行した事例 実際に,サテライト型入所施設を利用することにより強度行動障害者を持つ重度自閉症 実際に,サテライト型入所施設を利用することにより強度行動障害者を持つ重度自閉症者が入所施設からサテライト施設,さらにケアホームへと暮ら者が入所施設からサテライト施設,さらにケアホームへと暮らしの場が移行していった事しの場が移行していった事例を紹介する。例を紹介する。 入所時より職員,他利用者への頭突きなどの他害,あご叩き,唇の皮や手の皮を剥ぐな 入所時より職員,他利用者への頭突きなどの他害,あご叩き,唇の皮や手の皮を剥ぐなどの自傷等があり強度行動障害判定点数どの自傷等があり強度行動障害判定点数2727点の点のAA氏は,平成氏は,平成1717年にサテライト施設を利年にサテライト施設を利 81))北海道庁ホームページ「北海道内の構造改革特区認定状況」北海道庁ホームページ「北海道内の構造改革特区認定状況」20112011..88..77閲覧閲覧 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/050328/dai7/001.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/050328/dai7/001.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/050328/dai7/001toke.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/050328/dai7/001toke.pdf 82))真鍋真鍋((20092009)):前掲書:前掲書PP..387387 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 77 用することとなった。家族には,小集団生活によるメリットとして,刺激の減少,生活の 用することとなった。家族には,小集団生活によるメリットとして,刺激の減少,生活の組み立てやすさ,一人ひとりに目が届きやすい環境などについて説明し,入所施設からサ組み立てやすさ,一人ひとりに目が届きやすい環境などについて説明し,入所施設からサテライト施設への移動を提案し同意を得た。実際に,サテライト施設に移ってからは,生テライト施設への移動を提案し同意を得た。実際に,サテライト施設に移ってからは,生活場面の構造化,余暇場面におけるガイドヘルパーの導入による外出や社会資源活場面の構造化,余暇場面におけるガイドヘルパーの導入による外出や社会資源の積極的の積極的な活用などの取り組みを通じて,職員はな活用などの取り組みを通じて,職員はAA氏の調子が悪いときに手を貸す程度で,生活を氏の調子が悪いときに手を貸す程度で,生活を送る上での促し場面はほぼ消失した。また,外出時には,入所施設生活時には見られなか送る上での促し場面はほぼ消失した。また,外出時には,入所施設生活時には見られなかった良い表情が見られるようになった。サテライト施設利用中,こうしたった良い表情が見られるようになった。サテライト施設利用中,こうしたAA氏の日々の生氏の日々の生活の様子や変化を家族に説明を数回行った。一生入所施設で暮らすしかないとわが子の将活の様子や変化を家族に説明を数回行った。一生入所施設で暮らすしかないとわが子の将来生活を描いていた家族であったが,サテライト施設でのわが子の様子を見聞きして,次来生活を描いていた家族であったが,サテライト施設でのわが子の様子を見聞きして,次第に地域生活への可能性と見通しに確信が持てるようになっていった。その後,職員と家第に地域生活への可能性と見通しに確信が持てるようになっていった。その後,職員と家族は,ケアホーム生活に向族は,ケアホーム生活に向けた物件の視察,改修の内容の検討を協議し,施設側からは,けた物件の視察,改修の内容の検討を協議し,施設側からは,支援体制の説明や生活費等の説明を行い,協働してケアホーム生活への移行を実現した。支援体制の説明や生活費等の説明を行い,協働してケアホーム生活への移行を実現した。 入所施設からサテライト施設,そしてケアホームへ生活へと 入所施設からサテライト施設,そしてケアホームへ生活へとAA氏の移行に携わった職員氏の移行に携わった職員は,移行するにしたがってのは,移行するにしたがってのAA氏の変遷を見ていく中で,個別化された日課に個別化され氏の変遷を見ていく中で,個別化された日課に個別化された対応,さらに個別化された環境など,オーダーメイドの支援こそが重度自閉症者にとった対応,さらに個別化された環境など,オーダーメイドの支援こそが重度自閉症者にとって理想的な環境作りであると総括している。て理想的な環境作りであると総括している。83)))) ( (66))有期限有期限,有目的の,有目的の入所施設「ゆい」における地域生活移行のための取り組み入所施設「ゆい」における地域生活移行のための取り組み はるにれ はるにれの里では,サテライト型入所施設の取り組みと並行して平成の里では,サテライト型入所施設の取り組みと並行して平成1717年年1111月に「幌月に「幌市自閉症者自立支援センターゆい」を開設した。このセンターは,知的障害者入所施設,市自閉症者自立支援センターゆい」を開設した。このセンターは,知的障害者入所施設,生活介護事業,自立訓練事業(生活訓練),発達障害支援センター事業,短期入所事業の生活介護事業,自立訓練事業(生活訓練),発達障害支援センター事業,短期入所事業の55つの機能を有している。つの機能を有している。 2 2階建ての階建ての11階部分が定員階部分が定員3030名の入所施設となっている。生活エリアは名の入所施設となっている。生活エリアは55つのユニッつのユニットに分かれており,トに分かれており,11ユニットはユニットは66名の全室個室となっている。名の全室個室となっている。 ゆいの運営において特筆すべき事項は,入所施設において,利用期間を最長 ゆいの運営において特筆すべき事項は,入所施設において,利用期間を最長33年間とし年間として,その間に計画的に地域のケアホームて,その間に計画的に地域のケアホーム生活生活の移行に向けて支援者と家族が協働して支援の移行に向けて支援者と家族が協働して支援を行っているということである。一般的にを行っているということである。一般的に知的障害者の親にとっての知的障害者の親にとっての入所施設の位置付け入所施設の位置付けは,「親亡き後の終の棲家」は,「親亡き後の終の棲家」であるである。。しかしながら,「ゆい」では,施設利用申込時に,施しかしながら,「ゆい」では,施設利用申込時に,施設利用期間を「最長設利用期間を「最長33年間」,利用目的を「地域生活移行」ということについて保護者と年間」,利用目的を「地域生活移行」ということについて保護者と合意形成を行っているのである。真鍋は,このことによって「施設の本来的な機能や役割合意形成を行っているのである。真鍋は,このことによって「施設の本来的な機能や役割を明確にすることができ,家族と共を明確にすることができ,家族と共通の具体的な目的をもって,計画的に意味ある通の具体的な目的をもって,計画的に意味ある33年を年を支えていくことができる」支えていくことができる」84))と指摘している。と指摘している。 「ゆい」での 「ゆい」での33年間の支援の流れは年間の支援の流れは概ね概ね以下のとおりである。以下のとおりである。 ① ①11年目年目 ・多角的・総合的な評価・多角的・総合的な評価 ・行動障害の背景分析・行動障害の背景分析 ・自閉症という特別なニーズに対する理解と対応・自閉症という特別なニーズに対する理解と対応 ・支援方法の確立・支援方法の確立 83))厚田はまなす園「強度行動障害を持つ利用者の地域生活移行~事例をとおして」厚田はまなす園「強度行動障害を持つ利用者の地域生活移行~事例をとおして」 84))真鍋真鍋((20092009)):前掲書:前掲書PP..386386 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 78 ・精神科医との連携による抗精神科薬の調整・精神科医との連携による抗精神科薬の調整 ・・生きがい支援生きがい支援 ・できる力を生かす活動環境の整備・できる力を生かす活動環境の整備 ・家族向け研修会とケアホーム見学会の実施・家族向け研修会とケアホーム見学会の実施 ② ②22年目年目 ・より地域を活用した余暇活動の拡大・より地域を活用した余暇活動の拡大 ・個々のバリアフリー環境の調整・個々のバリアフリー環境の調整 ・一人ひとりに応じた生産的活動への参加に向けた環境づくり・一人ひとりに応じた生産的活動への参加に向けた環境づくり ・家族と地域生活の具体的な計画づくりの協議・家族と地域生活の具体的な計画づくりの協議 ③ ③33年目年目 ・地域の暮らしをシミュレーションした日課の組み立て・地域の暮らしをシミュレーションした日課の組み立て ・地域移行対象者の選定・地域移行対象者の選定 ・地域移行対象者家族グループの結成・地域移行対象者家族グループの結成 ・サテライト施設を利用した地域生活体験・サテライト施設を利用した地域生活体験 とりわけ,入所 とりわけ,入所11年目の初期の個別支援計画策定に向けたアセスメント調査年目の初期の個別支援計画策定に向けたアセスメント調査においてにおいては,は,発達検査や教育診断検査などの標準化された評価と発達検査や教育診断検査などの標準化された評価と,支援者による,支援者による日常の行動観察などの日常の行動観察などの情報に情報に基づき大変丁寧に行われている。基づき大変丁寧に行われている。 ( (77))保護者との連携保護者との連携 はるにれの里では,家族との連携を重視している。職員は,親との共同により,初めて はるにれの里では,家族との連携を重視している。職員は,親との共同により,初めて地域に生きるということが可能になると考えている。そこで,毎月地域に生きるということが可能になると考えている。そこで,毎月11回,保護者と職員で,回,保護者と職員で,の勉強会,意見交換会,ケアホームなど地域での暮らしの見学会などを実施し,保護者のの勉強会,意見交換会,ケアホームなど地域での暮らしの見学会などを実施し,保護者の理解,施設側と保護者との共通の考え方のもとで地域移行を進めていっている。理解,施設側と保護者との共通の考え方のもとで地域移行を進めていっている。85)) ふれあいきのこ村保護者会会長 ふれあいきのこ村保護者会会長は,「当初は,障害を持った子どもたちが地域に出て生活は,「当初は,障害を持った子どもたちが地域に出て生活できるだろうかという心配と,反面少しでも普通の暮らしに近づくことを期待して園長やできるだろうかという心配と,反面少しでも普通の暮らしに近づくことを期待して園長や担当職員と話し合いを重ね,最終的に子どもたちの将来にプラスになることを信じて賛同担当職員と話し合いを重ね,最終的に子どもたちの将来にプラスになることを信じて賛同した次第です。今では日中きのこ村に働きに行き,きのこの生産に汗を流し,休日には介した次第です。今では日中きのこ村に働きに行き,きのこの生産に汗を流し,休日には介護職員と余暇を楽しんでいるようであり大変感謝しています」護職員と余暇を楽しんでいるようであり大変感謝しています」86))と述べているように,はと述べているように,はるにれの里では,施設側と保護者との意見交換や施設側からの情報提供を積極的に行うこるにれの里では,施設側と保護者との意見交換や施設側からの情報提供を積極的に行うことで,相互の共通理解や共通目標を構築している。とで,相互の共通理解や共通目標を構築している。 3 3 人的環境設定及び人材育成における特徴人的環境設定及び人材育成における特徴 (1) (1)ケアホーム生活に対する支援システムケアホーム生活に対する支援システム ① ①支援の支援の体制体制 はるにれの里が運営するケアホームは,ほとんどの利用者が障害の重い人たちであるた はるにれの里が運営するケアホームは,ほとんどの利用者が障害の重い人たちであるた 85))社会福祉法人北摂杉の子会社会福祉法人北摂杉の子会((20102010)):前掲書:前掲書P.7P.7 86))はるにれの里20周年記念誌(2007):前掲書P.8 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 79 め,各ケアホームで夜間支援体制をとっている。各ケアホームに関わっている職員の職種 め,各ケアホームで夜間支援体制をとっている。各ケアホームに関わっている職員の職種と人数は以下のとおりである。と人数は以下のとおりである。 ・生活支援員:入居者に対する直接支援を行い,各ホームに ・生活支援員:入居者に対する直接支援を行い,各ホームに11~~22名配置名配置 ・ホームスタッフ:食事作りや掃除等,間接支援を行い,各ホームに ・ホームスタッフ:食事作りや掃除等,間接支援を行い,各ホームに33名程度配置名程度配置 ・地域支援コーディネーター:ケアホームのエリアごとに各地区専任を ・地域支援コーディネーター:ケアホームのエリアごとに各地区専任を11名配置名配置 ・生活支援員の休み代替要員:代替スタッフとして, ・生活支援員の休み代替要員:代替スタッフとして,22名程度配置名程度配置 ・居宅介護事業職員:ガイドヘルパー等,複数名配置 ・居宅介護事業職員:ガイドヘルパー等,複数名配置 ② ②地域支援コーディネーターの役割地域支援コーディネーターの役割 はるにれの里のケアホーム支援体制の中で特徴的な点は,ケアホームの はるにれの里のケアホーム支援体制の中で特徴的な点は,ケアホームの33つのエリア(札つのエリア(札幌西エリア,札幌東北エリア,石狩エリア)にそれぞれ専任の「地域支援コーディネータ幌西エリア,札幌東北エリア,石狩エリア)にそれぞれ専任の「地域支援コーディネーター」を配置しているところであろう。ー」を配置しているところであろう。 地域支援コーディネーターには,大きく四つの役割が与えられている。一番目に,入居 地域支援コーディネーターには,大きく四つの役割が与えられている。一番目に,入居者の生活全般のコ者の生活全般のコーディネートを行うことである。「くつろぐ」「自分でおこなう」をキーーディネートを行うことである。「くつろぐ」「自分でおこなう」をキーワードに,その人らしい暮らしをどのように支えるかという視点を中心に据えている。ワードに,その人らしい暮らしをどのように支えるかという視点を中心に据えている。 第二に,通所事業所や就労先などの日中活動との連携を図っていくことや,余暇の提供 第二に,通所事業所や就労先などの日中活動との連携を図っていくことや,余暇の提供として,資源の活用や開拓,ヘルパーなどの利用良性も行っている。第三に,ケアホームとして,資源の活用や開拓,ヘルパーなどの利用良性も行っている。第三に,ケアホーム運営支援である。ホームでの仕事は,孤立化しがちであることから,チームでの支援を構運営支援である。ホームでの仕事は,孤立化しがちであることから,チームでの支援を構築するようにしている。また,入居者と保護者,職員,関係機関との調整,さらに物件の築するようにしている。また,入居者と保護者,職員,関係機関との調整,さらに物件の維持管理なども行っている。第四に,開設支援である維持管理なども行っている。第四に,開設支援である。エリア内の物件情報の収集,自閉。エリア内の物件情報の収集,自閉症特性に合わせたハード整備,入居者のメンバリング,地域生活に向けた保護者学習会の症特性に合わせたハード整備,入居者のメンバリング,地域生活に向けた保護者学習会の企画開催などを行っている。企画開催などを行っている。 (2) (2)人材の育成人材の育成 ① ①TEACCHTEACCHプログラムとの出会いプログラムとの出会い 平成 平成88年頃,法人は,自閉症支援のあり方として年頃,法人は,自閉症支援のあり方としてTEACCHTEACCHプログラムを本格的に導入プログラムを本格的に導入した。した。TEACCHTEACCHプログラムの思想と理念は自閉症の特性への理解,構造化等職員の支援プログラムの思想と理念は自閉症の特性への理解,構造化等職員の支援への考え方を大きく変えたのである。職員は,への考え方を大きく変えたのである。職員は,TEACCHTEACCHプログラムの思想と理念を学ぶプログラムの思想と理念を学ぶため,勉強会の開催,研修会やトレーニングセミナーに積極的に参加し,法人ため,勉強会の開催,研修会やトレーニングセミナーに積極的に参加し,法人ははTEACCHTEACCH発祥の地であるアメリカのノースカロライナ州に職員を視察研修に派遣した。また,国内発祥の地であるアメリカのノースカロライナ州に職員を視察研修に派遣した。また,国内の自閉症支援専門家の助言指導をいただき,支援内容の向上を図っていった。の自閉症支援専門家の助言指導をいただき,支援内容の向上を図っていった。TEACCHTEACCHプログラムを参考にした取り組みを行うことで行動障害の激しかった利用者も徐々に落ちプログラムを参考にした取り組みを行うことで行動障害の激しかった利用者も徐々に落ち着いた生活が送れるようになっていったのである。また,施設内だけではなく,自閉症に着いた生活が送れるようになっていったのである。また,施設内だけではなく,自閉症に関する研究会「自閉症援助技術研究会」の運営にも関わり,講演会の企画や実践報告会な関する研究会「自閉症援助技術研究会」の運営にも関わり,講演会の企画や実践報告会などを行い,他施設,教育関係者や家族の方たちとともによりよい自閉症の支援のあり方にどを行い,他施設,教育関係者や家族の方たちとともによりよい自閉症の支援のあり方について研鑽を重ねついて研鑽を重ねている。ている。87)) また,はるにれの里では,職員に対する研修体制がとても充実している。研修の企画また,はるにれの里では,職員に対する研修体制がとても充実している。研修の企画運営を中心的に担っているのは,法人内の一組織である「札幌市自閉症・発達障害支援セ運営を中心的に担っているのは,法人内の一組織である「札幌市自閉症・発達障害支援セ 87))はるにれの里20周年記念誌(2007):前掲書P23 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 80 ンターおがる」である。ここでは,職員だけではなく,保護者向け,当事者向けの研修会 ンターおがる」である。ここでは,職員だけではなく,保護者向け,当事者向けの研修会も開催している。も開催している。 ② ②「札幌市自閉症・発達障害支援センターおがる」による研修「札幌市自閉症・発達障害支援センターおがる」による研修 おがるが, おがるが,主催する平成主催する平成2323年度の年間研修スケジュール年度の年間研修スケジュールは以下のとおりであるは以下のとおりである A A))支援者向け(基礎編・入門編)支援者向け(基礎編・入門編) 1 1 6 6月月2222日(日(14:3014:30~~16:3016:30)) ASD ASD(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅰ(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅰ (自閉症入門) (自閉症入門) 2 2 9 9月月 77日(日(14:3014:30~)~) ASD ASD(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅱ(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅱ (幼児期における療育の考え方やポイント) (幼児期における療育の考え方やポイント) 3 3 10 10月月11日(日(14:0014:00~~17:0017:00)) 疑似体験プログラム 疑似体験プログラム 4 4 11 11月月44日(日(14:3014:30~)~) ASD ASD(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅲ(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅲ (学齢期の子どもたちへの理解を広げるために) (学齢期の子どもたちへの理解を広げるために) 5 5 2 2月月11日(日(14:3014:30~)~) ASD ASD(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅳ(自閉症スペクトラム障害)研修会Ⅳ (成人期における諸問題) (成人期における諸問題) B B))支援者向け(支援者向け(実践検討編実践検討編)) 1 1 5 5月月1414日日 実践報告会(各分野における支援の実践報告 実践報告会(各分野における支援の実践報告 2 2 8 8月月1919日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 居宅事業所向け勉強会Ⅰ 居宅事業所向け勉強会Ⅰ 3 3 9 9月月33・・44日日 メジボブ教授をお招きしての自閉症セミナー メジボブ教授をお招きしての自閉症セミナー 4 4 9 9月月1515日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 就労移行支援事業所向け勉強会Ⅰ 就労移行支援事業所向け勉強会Ⅰ 5 5 10 10月月44日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 居宅事業所向け勉強会Ⅱ 居宅事業所向け勉強会Ⅱ 6 6 12 12月月22日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 居宅事業所向け勉強会Ⅲ 居宅事業所向け勉強会Ⅲ 7 7 12 12月月1414日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 就労移行支援事業所向け勉強会Ⅱ 就労移行支援事業所向け勉強会Ⅱ 8 8 1 1月月1414日(日(9:009:00~~16:0016:00)) 幼児・学齢期支援者のための自閉症講座 幼児・学齢期支援者のための自閉症講座 9 9 2 2月月99日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 有志による勉強会Ⅰ 有志による勉強会Ⅰ (様々なジャンルの支援者が集まっての事例検討会) (様々なジャンルの支援者が集まっての事例検討会) 10 10 2 2月月2323日(日(19:0019:00~~21:0021:00)) 有志による勉強会Ⅱ 有志による勉強会Ⅱ (様々なジャンルの支援者が集まっての事例検討会) (様々なジャンルの支援者が集まっての事例検討会) C C))支援者向け(支援者向け(実技編実技編)) 1 1 7 7月月1616~~1818日日 自閉症実践セミナー 自閉症実践セミナー 2 2 12 12月月1010日(日(9:009:00~~16:0016:00)) よかセミナー よかセミナー D D)保護者)保護者向け(基礎編・入門編)向け(基礎編・入門編) 1 1 6 6月月77・・1414・・2121・・2828日日 ( (10:0010:00~~12:0012:00)) 第 第2020期保護者学習会期保護者学習会 2 2 9 9月月66・・1313・・2020・・2727日日 ( (10:0010:00~~12:0012:00)) 第 第2121期保護者学習会期保護者学習会 3 3 10 10月月1616日(日(9:309:30~~16:3016:30)) 第 第2222期保護者学習会期保護者学習会 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 81 E E)保護者)保護者向け(向け(実践検討編実践検討編)) 1 1 11 11月月1818日(日(10:0010:00~~12:0012:00)) 保護者学習会 保護者学習会OBOB実践発表会実践発表会 F F)当事者向け)当事者向け 1 1 6 6月月2525日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅰ「得意と苦手談義」 成人座談会Ⅰ「得意と苦手談義」 2 2 7 7月月2323日(日(10:0010:00~~12:0012:00)) 当事者講師によるカルチャー講座Ⅰ 当事者講師によるカルチャー講座Ⅰ 3 3 7 7月月3030日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅱ「友達談義」 成人座談会Ⅱ「友達談義」 4 4 8 8月月2020日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅲ「恋愛談義」 成人座談会Ⅲ「恋愛談義」 5 5 10 10月月1515日(日(10:0010:00~~12:0012:00)) 当事者講師によるカルチャー講座Ⅱ 当事者講師によるカルチャー講座Ⅱ 6 6 10 10月月2929日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅳ「職業談義」 成人座談会Ⅳ「職業談義」 7 7 11 11月月1919日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅴ「趣味談義」 成人座談会Ⅴ「趣味談義」 8 8 1 1月月2828日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅵ「障害談義」 成人座談会Ⅵ「障害談義」 9 9 2 2月月2525日(日(9:309:30~~11:3011:30)) 成人座談会Ⅶ「人生談義」 成人座談会Ⅶ「人生談義」 ③「自閉症援助技術研究会」による研修 ③「自閉症援助技術研究会」による研修 おがるが事務局をつとめる おがるが事務局をつとめる自閉症への援助技術を高めるための研究団体自閉症への援助技術を高めるための研究団体「「自閉症援助技自閉症援助技術研究会術研究会」では,毎年藤女子大学(札幌市)と共催で研修会を行っている。平成」では,毎年藤女子大学(札幌市)と共催で研修会を行っている。平成2121年度年度の講座内容は以下のとおりである。の講座内容は以下のとおりである。 1 1 5 5月月88日日 「 「TEACCHTEACCHよもやま話~見続けてきたよもやま話~見続けてきたTEACCHTEACCH」」 (講師:重松加世子-通訳者) (講師:重松加世子-通訳者) 2 2 7 7月月2727日日 「学齢期の教育で大切にしたいこと」 「学齢期の教育で大切にしたいこと」 (講師:諏訪利明氏-海老名市わかば園園長) (講師:諏訪利明氏-海老名市わかば園園長) 3 3 10 10月月2323日日 「自閉症児・者のコミュニケーション~その基本となる考え方とさまざ 「自閉症児・者のコミュニケーション~その基本となる考え方とさまざまなアイデア」(講師:坂井聡氏-香川大学教育学部特別支援教育講座)まなアイデア」(講師:坂井聡氏-香川大学教育学部特別支援教育講座) 4 4 11 11月月77日日 「自閉症の方々への就労支援~各ライフステージで意識しておきたい 「自閉症の方々への就労支援~各ライフステージで意識しておきたいこと」(講師:梅永雄二氏-宇都宮大学教育学部)こと」(講師:梅永雄二氏-宇都宮大学教育学部) 5 5 12 12月月1818日日 「高齢者の方々の支援と構造化~自閉症の方々の老後を考えるヒント」 「高齢者の方々の支援と構造化~自閉症の方々の老後を考えるヒント」 (講師:井伊暢美氏-大分県立看護科学大学専門看護学講座) (講師:井伊暢美氏-大分県立看護科学大学専門看護学講座) 6 6 2 2月月2424日日 「成人期の発達障害の方々への医療~トロイカ病院での取り組みから 「成人期の発達障害の方々への医療~トロイカ病院での取り組みから見えてくること」(講師:阿部一九氏-札幌トロイカ病院医療部長)見えてくること」(講師:阿部一九氏-札幌トロイカ病院医療部長) ④ ④「社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール」「社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール」の開催の開催 はるにれの里では,毎年,「社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール」を開催して はるにれの里では,毎年,「社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール」を開催している。コンクールは,「いる。コンクールは,「33年以下職員の部」と「年以下職員の部」と「44年以上職員の部」を設け,応募を募り,年以上職員の部」を設け,応募を募り,「書類審査」の予選を通過した発表が「プレゼン審査」の本選に出場する。「書類審査」の予選を通過した発表が「プレゼン審査」の本選に出場する。 2010 2010年度は,年度は,77名の職員が応募し,全員が予選を通過し本選に臨んだ。各発表のタイト名の職員が応募し,全員が予選を通過し本選に臨んだ。各発表のタイトルは以下のとルは以下のとおりである。おりである。 『不適応行動に対するアプローチ~ 『不適応行動に対するアプローチ~YY氏における誤学習の改善過程から見えてきたもの氏における誤学習の改善過程から見えてきたもの 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 82 ~』(ケアホーム支援員) ~』(ケアホーム支援員) 『ケース会議で支える!~間接支援の実践~』(児童デイ支援員) 『ケース会議で支える!~間接支援の実践~』(児童デイ支援員) 『 『AAさんのコミュニケーション支援について』(児童デイ支援員)さんのコミュニケーション支援について』(児童デイ支援員) 『家庭支援について~ 『家庭支援について~SS君の事例を通じての考察~』(児童デイ支援員)君の事例を通じての考察~』(児童デイ支援員) 『グループ活動の取り組みについて』(児童デイ支援員) 『グループ活動の取り組みについて』(児童デイ支援員) 『無制限に本を買ってしまう 『無制限に本を買ってしまうSS氏へのアプローチ』(ケアホーム支援員)氏へのアプローチ』(ケアホーム支援員) 『就労継続支援事業所と連携した取り組みについて』(支援センター相談員) 『就労継続支援事業所と連携した取り組みについて』(支援センター相談員)

第 7 節 本章の まとめ

はるにれの里のケアホームは、入居者の人権尊重、本人主体と徹底したハード面、ソフ ト面の構造化を導入することにより、入居者に対し、質の高い落ち着いた生活を実現して い る 。訪問時にご案内してくださった常務理事の K 氏は、自閉症者にとっての入所施設つ いて、「当法人の入所施設においても、彼らの行動特性に配慮した構造的な支援を行いなが ら、重度自閉症者の地域生活移行を進めてきた。そこで見いだされた結論のひとつが、入 所施設とい う環境があまりにも彼らに合わないということで ある 」と述べてい る 。また、 その理由として、「施設という多様な空間による刺激、集団生活での多くの対人的な刺激、 集団プログラムによる制約など、自閉症者にとって苦手な生活状況が多くなっているから で ある 」と語ってい る 。また、「ときとして、揺れ動く職員集団の中では、一貫性のない支 援に陥る場合すらあ る 。そして、職員は多数いても、それぞれの職員は常に多くの利用者 に対して支援の目を注がねばならず、一人ひとりの利用者の個別性にどこまで細かくかか わっていけるか疑問で ある 」と語り、同氏は、「自閉症者にとっての集団生活が前提となる 入所施設での長期にわたる生活は、たとえ職員集団の療育の専門性が保障されていたとし ても、その実践効果には限界があると思う」と結論づけてい る 。はるにれの里では、入所 施設の中で、集団生活に適応できず行動障害が頻発する人からケアホームに移行させるこ とで、みるみるうちに行動障害が減少していっ たという実践的経験から重度自閉症者のケ アホーム移行を進めてき た。「自閉症、行動障害があるから地域生活は難しいのではないか」 という考え方が一般的 だ が、はるにれの里の実践は、そ うした発想の転換が必要ではない のか、「自閉症、行動障害があるから施設生活は難しいのではないか」ということを示唆し ているように 筆者 は感じ た。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

終章 本研究のまとめ(結論)と今後の課題

第 1 節 本研究のまとめ(結論)

1 各章の振り返り 筆者は,激しい行動障害を持つ知的障害者が,ケアホームを活用し,穏やかに,かつ高 い生活の質を保って地域の中で生活するには,どのような支援や環境的配慮が求められる のかについて,先行研究の検討,知的障害者福祉サービス事業所の実態調査分析 ,筆者が 所属する法人の強度行動障害者支援研究事業の事例研究 ,先進的実践の現地調査を行った。 まず,第 1 章の先行研究検討の中で明らかになったことは,行動障害を持つ知的障害者 に対する支援の目的は,単なる行動障害の軽減,除去ではなく,当事者のより高いQOL の実現を目指しながらあたり前 に暮らしていくことを支援することであるということであ る。また,そのための方策として,対象者に対する直接支援だけではなく,対象者をとり まく環境に対しても働きかけていくことも視野に入れて取り組むことの重要性が明らかに なった。 次に,第 2 章の福岡市の福祉サービス事業所実態調査の結果分析から明らかになったこ とは, 57% の知的障害者福祉サービス事業所に強度行動障害者が在籍しており,それらの すべての事業所が,行動障害支援にあたっては高度な支援技術や専門的知識が不可欠であ ると考えているということである。このことは,支援 現場にとって強度行動障害者支援が 極めて大きな問題として位置づけられていることを物語っているといえる。また,行動障 害者支援における事業所の課題として,最も多かった回答は,「人件費,職員数(増員)の 確保」という制度的問題であった。次に多かった回答が,「支援技術,専門知識の習得」で あった。すなわち,行動障害者支援において最も重要なことは,人(支援者)の問題であ るということである。支援に必要な人数が確保され,なおかつその支援者は,支援技術や 専門知識を習得していることが求められているのである。 また,行動障害者を受 け入れている各事業所では,直接支援の方法,支援アイテムの工 夫,物理的環境の設定,関係機関との連携等において,様々な取り組みを行っていること が明らかになった。行動障害者支援においては,こうした特別の配慮が極めて重要な意味 を持っているのである。 第 3 章の鞍手ゆたか福祉会「強度行動障害者支援研究事業」の事例研究では, 家庭や他 施設,特別支援学校等から新たに入所することとなるケアホームにおいて, 環境の変化に 過敏に反応する自閉症の特性を考慮し, 最初の受け入れ時の対応をとりわけ重視して,受 入体制を整えてきた。そこでは段 階的に宿泊数を増やしていく,手厚い支援体制を取るな どの配慮が導入された。 また,複数の支援者間で支援の基本的考え方や支援方法等を統一 することを大切にし,利用者の混乱を未然に防止する体制が取られた。さらに,活動時の 配慮点などについて各利用者の障害特性や嗜好等に基づき環境設定を行った。また,職員 の資質向上のための研修プログラムを組み研修を実施した。これらの周到な準備をしなが ら事業を進めていく中で,利用者はほとんど大きなパニックや行動障害を起こすことなく 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 84 生活をすることができたのである。 生活をすることができたのである。 第 第44章の章のはるにれの里の調査結はるにれの里の調査結果から明らかになったことは,いかに障害程度区分判定果から明らかになったことは,いかに障害程度区分判定が重度の人であっても,適切な環境設定や運営上の仕組み作り,職員の人材育成システムが重度の人であっても,適切な環境設定や運営上の仕組み作り,職員の人材育成システムの確立によって,地域の中のケアホームで生活することは可能であるということである。の確立によって,地域の中のケアホームで生活することは可能であるということである。はるにれの里の調査結果から,サテライト型入所施設を活用した地域生活移行体験の実施はるにれの里の調査結果から,サテライト型入所施設を活用した地域生活移行体験の実施やケアホーム生活を間接的に支援する地域支援コーディネーターの配置など,独自の取りやケアホーム生活を間接的に支援する地域支援コーディネーターの配置など,独自の取り組みが行動障害者のケアホーム生活を支えていることが明らかになった。組みが行動障害者のケアホーム生活を支えていることが明らかになった。 そこで,以上の調査研究活動を踏まえ,再度,微視的アプローチと巨視的アプロそこで,以上の調査研究活動を踏まえ,再度,微視的アプローチと巨視的アプローチのーチの統合とはいかなるものかについて検討していく。統合とはいかなるものかについて検討していく。 2 2 微視的アプローチに関するまとめ微視的アプローチに関するまとめ まず,微視的アプローチ,すなわち利用者本人に対する直接的アプローチのあり方につまず,微視的アプローチ,すなわち利用者本人に対する直接的アプローチのあり方については,いては,福岡市のアンケート結果では,利用者のストレスにつながらないような対応を心福岡市のアンケート結果では,利用者のストレスにつながらないような対応を心がけていること,アニマルセラピーや感覚統合療法,音楽療法,水治療などの各種セラピがけていること,アニマルセラピーや感覚統合療法,音楽療法,水治療などの各種セラピーが導入されていることなどが明らかになった。ーが導入されていることなどが明らかになった。また,職員の利用者への関わり方として,また,職員の利用者への関わり方として,多くの施設で,受容的対応や常時の見守り,職員のマンツーマン対応等が行われているこ多くの施設で,受容的対応や常時の見守り,職員のマンツーマン対応等が行われていることが明らかになった。とが明らかになった。一方,強度行動障害者支援研究事業においても,同様に受容的対応一方,強度行動障害者支援研究事業においても,同様に受容的対応の重要性が指摘された。また,支援アイテムの利用としては,スケジュールの提示,本人の重要性が指摘された。また,支援アイテムの利用としては,スケジュールの提示,本人好きな日中活動プログラムの導入好きな日中活動プログラムの導入,屋外活動の積極的取り入れなどが福岡市,研究事業,,屋外活動の積極的取り入れなどが福岡市,研究事業,はるにれの里において行われていた。したがって,微視的アプローチについての実践につはるにれの里において行われていた。したがって,微視的アプローチについての実践については,それぞれ自閉症の特性に配慮した支援方法が行われていることが明らかになった。いては,それぞれ自閉症の特性に配慮した支援方法が行われていることが明らかになった。 3 3 巨視的アプローチに関するまとめ巨視的アプローチに関するまとめ (1) (1)巨視的アプローチとしての巨視的アプローチとしてのケアホーム開設ケアホーム開設時の取り組み時の取り組み 次に,巨視的アプローチの視点から各事業所の取り組みを見ていく。ケアホームを開設次に,巨視的アプローチの視点から各事業所の取り組みを見ていく。ケアホームを開設にあたっての取り組みにおいて印象的であったことは,第一に,はるにれの里のケアホーにあたっての取り組みにおいて印象的であったことは,第一に,はるにれの里のケアホーム開設場所の立地条件についてである。はるにれの里では,ケアホームを開設するにあたム開設場所の立地条件についてである。はるにれの里では,ケアホームを開設するにあたっては,適当な物件さえ見つかれば開設場所がどこでもよいということではなく,いくつっては,適当な物件さえ見つかれば開設場所がどこでもよいということではなく,いくつかの基準を設け,その基準に基づき当該物件が適切かどうか,言い換えれば成功見込みがかの基準を設け,その基準に基づき当該物件が適切かどうか,言い換えれば成功見込みが高いかどうかを事前にアセスメントするということである。高いかどうかを事前にアセスメントするということである。施設建設反対運動などの施設施設建設反対運動などの施設コンフリクトの問題があちこちで聞コンフリクトの問題があちこちで聞かれる中,このことは,極めて重要な視点であるといかれる中,このことは,極めて重要な視点であるといえるのではないだろうか。えるのではないだろうか。 第二に,はるにれの里の入居者の選定条件についてである。ここで重要なことは,ケア 第二に,はるにれの里の入居者の選定条件についてである。ここで重要なことは,ケアホーム移行に向けて,「パニックが起こらなくなるまではケアホームに行けない」といったホーム移行に向けて,「パニックが起こらなくなるまではケアホームに行けない」といった条件を設定しないということである。本人の可能性と適切な支援技術を駆使することによ条件を設定しないということである。本人の可能性と適切な支援技術を駆使することにより,現場のり,現場の問題は現場で考え克服していこうという考え方である。問題は現場で考え克服していこうという考え方である。 第三に, 第三に,ケアホームの開設にあたっての物件の取得方法ケアホームの開設にあたっての物件の取得方法についてである。そこでは,についてである。そこでは,入入居予定利用者の保護者と居予定利用者の保護者と施設側とで十分に話し合いをしながら,施設側とで十分に話し合いをしながら,新築,中古物件購入,賃新築,中古物件購入,賃貸等多様な選択肢の中から選択するということである。また,ホームの運営方法において貸等多様な選択肢の中から選択するということである。また,ホームの運営方法においても,必ず施設が運営主体となるということではなく,ホーム保護者会が運営するなど,柔も,必ず施設が運営主体となるということではなく,ホーム保護者会が運営するなど,柔 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 85 軟な対応が望まれる。ここで重要なことは,利用者の安心で幸せな暮らしを実現するため 軟な対応が望まれる。ここで重要なことは,利用者の安心で幸せな暮らしを実現するためにはどのような方法が最適なのかについて,施設側と保護者側とが十分に話し合えるためにはどのような方法が最適なのかについて,施設側と保護者側とが十分に話し合えるための日常的な関係作りであるといえるだろう。の日常的な関係作りであるといえるだろう。 第四に, 第四に,施設に施設に籍籍をを置いたまま地域生活を試行的に体験するサテライト型施設の活用に置いたまま地域生活を試行的に体験するサテライト型施設の活用についてである。これは,万一,地域生活がうまく行かなついてである。これは,万一,地域生活がうまく行かなかった時に暮らしの場を失うといかった時に暮らしの場を失うというリスクを避けるためにも大きな意味がある。また,地域生活というものにイメージを持うリスクを避けるためにも大きな意味がある。また,地域生活というものにイメージを持つことが困難である利用者にとっても,体験を通じてイメージを持ち,そこでの楽しさやつことが困難である利用者にとっても,体験を通じてイメージを持ち,そこでの楽しさや大変さなどを一定期間経験するというのは,本人の地域生活へのモチベーションのアップ大変さなどを一定期間経験するというのは,本人の地域生活へのモチベーションのアップにも寄与することとなるであろう。一方,利用者の保護者・家族にとっても,わが子の地にも寄与することとなるであろう。一方,利用者の保護者・家族にとっても,わが子の地域生活への不安の解消のためにも意義がある域生活への不安の解消のためにも意義があると考えられると考えられる。。 第五に 第五に,支援研究事業で取り組まれた入居時の段階的受け入れについてである。自宅や,支援研究事業で取り組まれた入居時の段階的受け入れについてである。自宅や他施設,病院等から,ある日突他施設,病院等から,ある日突然別の暮らしの場に移るのではなく,新しい生活環境を少然別の暮らしの場に移るのではなく,新しい生活環境を少しずつ取り入れ,スモールステップで新生活に慣れていくよう配慮することである。しずつ取り入れ,スモールステップで新生活に慣れていくよう配慮することである。 (2) (2)巨視的アプローチとしての物理的環境設定巨視的アプローチとしての物理的環境設定 福岡市の調査によると,物理的環境設定は,行動障害者を受け入れている事業所で数多福岡市の調査によると,物理的環境設定は,行動障害者を受け入れている事業所で数多く取り組まれている。具体的には,個人スペースの確保,事故防止・危険回避のための環く取り組まれている。具体的には,個人スペースの確保,事故防止・危険回避のための環境設定などである。また,支援研究事業においても,境設定などである。また,支援研究事業においても,様々な物理的環境設定が試みられた。様々な物理的環境設定が試みられた。それらの内容は,それらの内容は,刺激抑制刺激抑制,,事故防止事故防止,,行動障害軽減行動障害軽減,,空間認知空間認知,,こだわり行動抑制こだわり行動抑制,,他他利用者とのトラブル防止のため利用者とのトラブル防止のためなどそれぞれの目的に応じた取り組みが行われているなどそれぞれの目的に応じた取り組みが行われている。。一一方,はるにれの里では,自閉症のこだわり特性に配慮した環境設定や怪我や事故等の安全方,はるにれの里では,自閉症のこだわり特性に配慮した環境設定や怪我や事故等の安全対策に配慮した設備の導入,破壊行動の回避を目的とした環境設定などに取り組まれてい対策に配慮した設備の導入,破壊行動の回避を目的とした環境設定などに取り組まれていた。た。 これらの調査研究の結果としていえることは,激しい行動障害のある知的障害者支援にこれらの調査研究の結果としていえることは,激しい行動障害のある知的障害者支援における物理的環境設定の重要性である。とりわけ個人スペースの確保やひとつの空間にひおける物理的環境設定の重要性である。とりわけ個人スペースの確保やひとつの空間にひとつの役割を持たせるなどの取り組みは,行動障害者には不可欠な対応であるといえるだとつの役割を持たせるなどの取り組みは,行動障害者には不可欠な対応であるといえるだろう。ろう。 ( (33))巨視的ア巨視的アプローチとしてのプローチとしての人的人的環境設定環境設定 3つの調査研究で共通して強調されていることのひとつは,支援者の支援技術や専門性3つの調査研究で共通して強調されていることのひとつは,支援者の支援技術や専門性の習得の重要性である。そこで,支援者のスキルアップのために,各事業所では,積極的の習得の重要性である。そこで,支援者のスキルアップのために,各事業所では,積極的に研修を企画実施している。とりわけ,はるにれの里では,法人内に職員研修を企画運営に研修を企画実施している。とりわけ,はるにれの里では,法人内に職員研修を企画運営する機関があり,初級職から中級職,幹部まで,キャリアや能力別に,毎年,計画的に研する機関があり,初級職から中級職,幹部まで,キャリアや能力別に,毎年,計画的に研修を実施している。一方,臨床心理士等の専門職を法人独自で確保することが難しい多く修を実施している。一方,臨床心理士等の専門職を法人独自で確保することが難しい多くの事業所では,なかなか計画的かつ体系的な研修システムを構築することが困難な状況がの事業所では,なかなか計画的かつ体系的な研修システムを構築することが困難な状況があある。そのため,福岡市の調査では,アドバイザー体制の整備(強度行動障害者支援に関る。そのため,福岡市の調査では,アドバイザー体制の整備(強度行動障害者支援に関する専門職,助言者の確保)が今後の課題として第する専門職,助言者の確保)が今後の課題として第33位に挙がっている。位に挙がっている。今後は,施設間今後は,施設間ネットワークを活用して,複数法人が共同で研修システムを構築する等の取り組みが求めネットワークを活用して,複数法人が共同で研修システムを構築する等の取り組みが求められるであろう。られるであろう。 一方,はるにれの里において導入されている「地域支援コーディネータ-」の配置は,一方,はるにれの里において導入されている「地域支援コーディネータ-」の配置は,ひとつひとつのケアホームの職員数がひとつひとつのケアホームの職員数が11名から名から33名という極めて小規模な事業所であるた名という極めて小規模な事業所であるた 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 86 め,職員が孤立化を余儀なくされ,悩みや困難をひとりで抱え込みがちという職場特性を め,職員が孤立化を余儀なくされ,悩みや困難をひとりで抱え込みがちという職場特性を克服する上でとても良い取り組みであると考えられる。ケアホームの現場支援者をしっか克服する上でとても良い取り組みであると考えられる。ケアホームの現場支援者をしっかりと支え,法人組織全体でケアホームを運営していると思えるような運営体制の確立が不りと支え,法人組織全体でケアホームを運営していると思えるような運営体制の確立が不可欠である。可欠である。

第 2 節 今後の課題

本研究では,強度行動障害者が,ひとりの人として,地域の中で,当たり前に暮らすた めには,どのような支援が必要かつ適切であるかについて検討してきた。文献,調査 ,研 究事業 ,施設見学の中で明らかになったことは,現在,多くの福祉サービス事業所が行動 障害者を受け入れており,それぞれの事業所において,様々な試行錯誤を繰り返しながら も,利用者に寄り添い,彼らの安心できる生活,穏やかな暮らしの実現のために日々奮闘 しているという事実である。 しかしながら,行動障害者を受け入れるには,より手厚い支援者体制,環境整備等が不 可欠であ る。障害者自立支援法が施行され,強度行動障害者特別支援事業は姿を消した。 したがって,事業所が強度行動障害者を受け入れたとしても,特別な 報酬を受け取ること はない。それでも,福祉現場は,地域にそうしたニーズがあれば,法人内の自助努力によ り,彼らを積極的に受け入れている。わが国の現状においては,こうした各法人の地道な 努力が行動障害者の暮らしを下支えしているのである。 本研究では,各事業所が,行動障害者を受け入れるにあたって,どの程度の職員加配を 行い,それにともなう報酬と人件費等を支出しているかといった収支バランス については 言及していない。とはいえ,福岡市の調査結果にも明らかなように,支援現場の事業所が 最も必要としているのは,報酬の増額,職員の加配である。 去る平成 23 年 8 月 31 日の毎日新聞には,次のような記事が掲載されていた。 「 内閣府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は 30 日、現行の障害者自立支援法 を廃止して新たに作る障害者総合福祉法案のたたき台を、提言の形でまとめた。障害者福 祉予算を倍増し、経済協力開発機構( OECD )加盟国の平均水準に引き上げることを当面 の課題に掲げるなど、サービスの大幅な底上げを求めてい る。厚生労働省は来年の通常国 会に同法案を提出し、 13 年 8 月までの施行を目指すが、財源にメドはついておらず、提言 がどこまで法案に反映されるかは不透明だ。 (中略 課題に挙げた予算の増額に関しては、 対国内総生産比( 07 年)で OECD 加盟国平均並みを確保するには現行の約 2 倍、約 2 兆 2051 億円を要するとの試算を示し、「負担面も合わせ総合的に検討する」と記した。 」 この記事に示すように,わが国の障害者福祉予算は, OECD 加盟国の平均水準の 2 分の 1 である。いかにわが国の障害者福祉が貧困であるかは明らかである。せめて, O ECD 加 盟国並みに引き上げることが実現すれば,行動障害者のみならず,あらゆる障害者の人た ちの生活の質が向上するに違いない。総合福祉部会の提言が政策に反映されることを強く 望む。 本研究は,主に事業者や支援者側の視点から,行動障害者支援をいかに進めるべきかに 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 87 ついて検討した。本来は, ついて検討した。本来は,支援が,支援が,彼らの満足度や生活の質の彼らの満足度や生活の質の高まりにどれほど貢献して高まりにどれほど貢献しているのかについて,当事者自身にも視点をあてているのかについて,当事者自身にも視点をあてて検証するべきであるが,時間の制約等に検証するべきであるが,時間の制約等によりより本研究ではそこまで行うことができなかった。その点では,本研究は,行動障害者の本研究ではそこまで行うことができなかった。その点では,本研究は,行動障害者の支援の方法につい支援の方法についての仮説の域を出ないといえるだろう。当事者への検証は,今後の課題ての仮説の域を出ないといえるだろう。当事者への検証は,今後の課題である。である。 また,本研究を通じて,行動障害者支援においての様々なアイデアや取り組みについてまた,本研究を通じて,行動障害者支援においての様々なアイデアや取り組みについて学ぶことができた。ここで学んだことを自らの現場に持ち帰り,検証することで,さらな学ぶことができた。ここで学んだことを自らの現場に持ち帰り,検証することで,さらなる知見を見いだすこともあるだろう。そのことを今後の課題としたい。る知見を見いだすこともあるだろう。そのことを今後の課題としたい。

謝 辞

本論文を執筆するにあたって,多くの方々のご指導ご協力をいただきました。 まず,札幌市の「社会福祉法人はるにれの里」の皆様,高槻市の「萩の杜」の皆様,大 津市の「ステップ広場ガル」の皆様,京都市の「京北やまぐにの郷」の皆様には施設を見 学させていただき,お忙しい中を様々なご説明をいただき,大変お世話になりました。お かげさまで様々な研究への示唆をいただくことができました。 また,西南学院大学教授野口幸弘先生はじめ,福岡市強度行動障害支援調査研究会の皆 様には,行動障害者支援のあり方について,毎回夜遅くまで議論をし,彼らにとって生き やすい環境作りとは何かについて共に考え共に実践する中で,様 々な学びや気づきをいた だきました。 そして,日本福祉大学大学院大泉ゼミの皆様には,研究への示唆をいただいたり,励ま しをいただいたり,大変お世話になりました。共に修士論文の完成に挑むゼミ友の存在は 私にとって論文執筆の大きな支えと原動力になりました。 最後に,日本福祉大学大学院社会福祉学研究科の大泉溥先生には,「理論とは実践者のみ に許される言葉である」というお言葉をいただき,研究とは何か,私たちは誰のために何 のために研究をするのかについて深く学ばさせていただきました。また,修士論文の執筆 にあたっては,大変きめ細かく丁寧なご指導を賜りました。先生の導きにより何とか論文 を完成させることができました。 論文執筆にあたりご指導,ご協力いただきました皆様に,心より感謝申し上げます。 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2

引用文献 ・参考文献

・櫻井淳 ( 知的障害者の地域生活を支える取り組みについての研究 日本福祉大学大学院社会福祉 学専攻修士論文 ・森正次 ( 愛知県心身障害者コロニーにおける「地域移行」とその知的障害者の生活実態 日本福 祉大学大学院社会福祉学専攻修士論文 ・森正次 ( 日本福祉大学社会福祉学会.福祉研究 第 101 号 ( pp.55 64 ・小澤温他 ( よくわかる障害者福祉 p.28 ・障害者福祉研究会編 ( ICF国際生活機能分類-国際障害分類改定版- 中央法規出版 ・上田敏 ( ICFの理解と援助 pp.15 28 ・赤塚俊治 ( 新・知的障害者福祉論序説 中央法規出版 p.43 ・財団法人日本知的障害者福祉協会編 ( 障害福祉の基礎用語-知的障害を中心に p.55 ・小林重雄他 ( 自閉性障害の理解と援助 コレール社 pp.26 29 ・管修 ( 行動障害とその取り扱いについて 財団法人日本精神薄弱者愛護協会 ・石井哲夫 ( 強度行動障害の処遇に関する研究 厚 生省心身障害研究(平成 4 年研究報告書) ・財団法人日本知的障害者福祉協会編 ( 行動障害の基礎知識 p.16 ・小林隆児 ( 行動障害と国際診断分類 自閉症と行動障害 岩崎学術出版社 pp.2 3 ・肥後祥治 ( 行動障害の類型 行動障害の理解と援助 コレール社 pp.23 24 ・小林隆児 ( 自閉症と行動障害 p.5 ・飯田雅子他 ( 強度行動障害児(者)の行動改善および処遇のあり方に関する研究 行動障害児(者) 研究会 財団法人キリン記念財団助成研究報告書 ・大塚晃 ( 強度行動障害の定義について 厚生労働科学研究 強度行動障害の評価尺度と支援手法 に関する研究 平成 21 年度 総括・分担研究報告書 p.11 ・山口和彦 ( 行動援護の展開 財団法人日本知的障害者福祉協会 行動援護ハンドブック p.72 ・厚生省児童家庭局長通知 ( 精神薄弱者地域生活援助事業の実施について (平成元年 5 月 29 日児 発第 397 号) ・厚生省児童家庭局長通知 ( 知的障害者援護施設等入所者の地域生活等への移行の促進につい て ・厚生省児童家庭局障害福祉課長通知 ( 知的障害者地域生活援助事 業(グループホーム)における バックアップ施設の要件緩和について (平成 7 年 10 月 2 日児障第 48 号) ・高林秀明 ( 「 強度行動障害」の研究と地域生活保障の課題 障害者問題研究第 33 巻第 1 号 ,pp.27 35 ・野口幸弘 ( 激しい行動障害のある人の地域生活を保障するために考えるべき要因.特殊教育学研 究 ,42(2),pp.167 172 ・真鍋龍司 ( 強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行.発達障害研究第 31 巻第 5 号 ,pp.384 399 ・松端克文 ( 「強度行動障害」児・者の居住施設処遇に関する考察-事例研究を中心として-.九 州・大谷研究紀要 23,pp.23 41 ・林章 ( 知的障害をもつ人々にとっての生活の豊かさと施設の意味.建築雑誌 Vol.110 1995 年 3 月号 ,pp.35 36 ・下山真衣・園山繁樹 ( 行動障害に対する行動論的アプローチの発展と今後の課題-行動障害の 軽 第一次提出 長谷川正人『自閉症等激しい行動障害のある知的障害者ケアホームに関する研究』 提出日 2011/12/2 90 減 減から生活全般の改善へ-.特殊教育学研究から生活全般の改善へ-.特殊教育学研究,43(1),pp.9,43(1),pp.9--2020 ・園山繁樹・野口幸弘他(訳) ・園山繁樹・野口幸弘他(訳)(2001)(2001) 挑戦的行動の先行子操作-問題行動への新しい援助アプローチ.挑戦的行動の先行子操作-問題行動への新しい援助アプローチ.二瓶社,二瓶社,p.p.33--2626 ・西野知子 ・西野知子(2006)(2006) 強度行動障害への対応と課題.金城学院大学論集人文科学編第強度行動障害への対応と課題.金城学院大学論集人文科学編第22巻第巻第22号号,pp.51,pp.51--5757 ・知花弘吉・貝戸裕子 ・知花弘吉・貝戸裕子(2004)(2004) 自閉症者の行動障害と生活空間に関する研究.近畿大学理工学部研究報告自閉症者の行動障害と生活空間に関する研究.近畿大学理工学部研究報告40,pp.8340,pp.83--9090 ・信原和典 ・信原和典他他(2010)(2010) 成人施設における強度行動障害を有する方を対象とした支援結果について成人施設における強度行動障害を有する方を対象とした支援結果について ・京俊介 ・京俊介(2010)(2010) 障害者福祉におけるコンサルテーションの役割に関する一考察-地域で生活をする強度障害者福祉におけるコンサルテーションの役割に関する一考察-地域で生活をする強度行動障害のある人の支援を通じて-.島根大学社会福祉論集第行動障害のある人の支援を通じて-.島根大学社会福祉論集第33号号,pp.26,pp.26--4444 ・山崎日出明 ・山崎日出明他他(1996)(1996) すぎのき寮強度行動障害研究すぎのき寮強度行動障害研究,pp.33,pp.33--5252 ・樋口幸雄 ・樋口幸雄(2009)(2009) 知的障害者入所施設の新体系移行をめぐって.月刊ノーマライゼーション知的障害者入所施設の新体系移行をめぐって.月刊ノーマライゼーション20092009年年66月号月号 ・定藤丈弘 ・定藤丈弘(1997)(1997) カリフォルニア州のグループホームは今.月刊ノーマライゼーカリフォルニア州のグループホームは今.月刊ノーマライゼーションション19971997年年55月月号号,pp.36,pp.36--4141 ・木村昭一・菊池道雄 ・木村昭一・菊池道雄(2010)(2010) 強度行動障がいを示す人たちの自立に向けた取り組み-地域のケアホーム強度行動障がいを示す人たちの自立に向けた取り組み-地域のケアホームへの移行の実践から-への移行の実践から-..自閉症スペクトラム研究自閉症スペクトラム研究Vol.8,9Vol.8,9--1616 ・社会福祉法人はるにれの里パンフレット「私たちのあゆみ」 ・社会福祉法人はるにれの里パンフレット「私たちのあゆみ」 ・社会福祉法人はるにれの里 ・社会福祉法人はるにれの里2020周年記念誌周年記念誌(2007)(2007) ・真鍋龍司 ・真鍋龍司(2009)(2009) 強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行..発達障害研究第発達障害研究第3131巻第巻第55号号p385p385 ・社会福祉法人北摂杉の子会 ・社会福祉法人北摂杉の子会(2010)(2010) 強度行動障害を持つ自閉症者の地域移行を支えるG強度行動障害を持つ自閉症者の地域移行を支えるGH・CH,およH・CH,および入所施設の機能の在り方に関する先進事例研究び入所施設の機能の在り方に関する先進事例研究..厚生労働省平成厚生労働省平成2121年度障害者保健福祉推進事業年度障害者保健福祉推進事業 ・佐々木正美 ・佐々木正美(1993)(1993) 自閉症療育ハンドブック-TEACCHプログラムに学ぶ-自閉症療育ハンドブック-TEACCHプログラムに学ぶ-..学研学研 ・真鍋龍司 ・真鍋龍司 指定管理札幌市自閉症者自立支援センターゆい概説指定管理札幌市自閉症者自立支援センターゆい概説..プレゼンテーション資料プレゼンテーション資料 ・真鍋龍司 ・真鍋龍司(2009)(2009) 強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行強度の行動障害を伴う自閉症の人たちの地域移行..発達障害研究第発達障害研究第3131巻巻55号号p384p384 ・掛端亮二郎 ・掛端亮二郎(2010)(2010) 不適応行動に対するアプローチ不適応行動に対するアプローチ..社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール資社会福祉法人はるにれの里実践発表コンクール資料集料集 ・本郷和章 ・本郷和章 行動障害を行動障害を伴う自閉症者の地域生活支援~ケアホームでの取り組みから~伴う自閉症者の地域生活支援~ケアホームでの取り組みから~..プレゼンテーシプレゼンテーション資料ョン資料 ・厚田はまなす園 ・厚田はまなす園 強度行動障害を持つ利用者の地域生活移行~事例をとおして強度行動障害を持つ利用者の地域生活移行~事例をとおして

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