私の人生を変えた「車椅子の青春」という一冊の本との出会い
高校時代に筋ジストロフィーを持つ子どもや青年たちの詩集「車椅子の青春」という本を読み、障がいを持ちながらも夢と希望を持って前向きに生きている障がい者の姿に感銘を受け、福祉の道に進みました。福祉大学卒業後、指導員を経て「どんな重度の人も受け入れる」という想いのもと社会福祉法人「鞍手ゆたか福祉会」を設立。そして知的障がいを持って生まれた娘の卒業後の進路について考えたことをきっかけに「福祉型カレッジ」の事業を思いつきました。知的障がいを持つ娘は支援学校を経て18歳から福祉サービス事業所を利用しています。今では楽しい社会生活を送っている娘ですが、支援学校卒業時は「まだこの子が社会にでるには早いのではないか、留年させた方がいいのではないか」と妻と共に悩みました。
18歳という輝かしい時期をさらに輝かせるための学びの場を
健常者でも18歳という年齢はまだ社会に出て行くには未熟な年齢です。強い意志がないと職場の人間関係のトラブルやミスで心が折れてしまうこともあるでしょう。なぜ、知的障がい者には18歳以降学ぶ場がないのか、知的障がいがあるからこそ社会に出るまでに身につけなくてはいけないことがあるのではないか。知的障がいのある娘にもっと学ぶ機会を、そして若い今しか体験できない青春を味わって欲しい、そんな親の気持ちから2012年に「ゆたかカレッジ」を設立しました。
「学ぶことを諦める世の中から選択できる世の中へ」
2006年に国連で採択された「障害者権利条約」には知的障害者にも大学や短大、専門学校などの高等教育の権利が保障されているにも関わらず、健常者が高校を卒業して大学などに進学する人が70.7%であるのに対し、日本における知的障害者の高校卒業後の進学率はわずか0.7%です。知的障害者にも高校卒業後に「学ぶ」という選択肢があるべきだと思います。
「知的障害の若者に学ぶ機会と青春を」
18歳から4年間、適切な教育を通じた学びの機会を提供することにより多くの人たちは一億総活躍社会の一翼を担う存在になり得ます。今後も障害者法定雇用率はますます上がるに違いありません。そのときに社会の期待や要請に応えるべく、しっかりと青年期に学び成長し、会社の戦力に、そして社会貢献者として育つ機会と時間が不可欠になります。それこそがまさに、ゆたかカレッジの大きな目的です。青年期の貴重な学びの機会を通じて、彼らが社会のなかで自らの個性や能力を十二分に発揮しながら、自信と誇りをもって幸せな社会生活を送っていける社会を構築していきたいと願っています。
一人でも多くの障がいを持つ若者が幸せに生きるために私たちができることとは
福岡キャンパスからスタートした「ゆたかカレッジ」ですが、私たちの取り組みに賛同いただいた多数の保護者方の要請で、拠点を増やしこの最長4年間の「福祉型カレッジ」の輪は全国に広まりつつあります。今後は既存の大学のキャンパスを生かしカレッジの授業を行なうなど、さらに門戸が開かれた教育の場が提供できるのが私たちの目標です。そして一人でも多く障がいを持たれた方が幸せに暮らしていくための支援をスタッフ一丸となって取り組んでいきます。
1960年福岡県北九州市生まれ。1983年日本福祉大学社会福祉学部卒業。入所施設指導員として7年間勤務の後、1991年社会福祉法人「鞍手ゆたか福祉会」設立。2009年より同法人理事長。2012年日本福祉大学大学院社会福祉学修士課程修了。2018年株式会社ゆたかカレッジ設立、同社代表取締役社長。社会福祉士、精神保健福祉士
ma.hasegawa@yutakacollege.com