Essay

エッセイ

ゆたかカレッジで得たもの

 

 木枯らしの吹く寒さの厳しい毎日、通勤途中、降り注ぐたっふりの朝日と、オレンジ色の夕日を見ることができる。一日の授業と学生対応で精一杯の日が積み重なっているが、その内容は想像していた以上に中身の濃いものである。

 

 ある日は、ひとりの学生が自分の将来に向けて真剣に悩み支援教員の元に来る。また別の日には、現在の自分に無力さを感じ、肩を落としていて動かない学生にそっと声をかける。精神的に不安定でいつも自分の心の揺れと戦っている若者、自分の二面性に悩まされ、もうひとりの自分の声を聞き思い悩む者。その思いはいつも様々だが、精一杯に今日を生きていることにおいては、どの学生も同じである。

 

 障害のある学生の支援をしているつもりだったが、気が付くと彼らに励まされ力をもらっている。そのことに気付いた時、早起きも通勤の苦労も冬の寒さも大したことではなくなっていた。必要とされる喜び、それに応えたいという自分の思いは、長い間忘れていた母となった時の決意や、自分の生まれてきた意味を考えることにも大きく繫がっている。

 

 ひとりの学生は、小さな行動においても確認が必要である。それができないと、ポツリ廊下で立ち止まってしまう。授業の際は常に支援教員の指示を侍っている。細やかな気配りが必要となる。少しずつ少しずつ成長している彼の成長を、忙しさの中で見落とさないよう継続的に行う授業が必要となる。その際は他の学生には変化球もいくつか用意し、各学生の成長もまた確認できるようにする。こんな作業の中で、自分の中に見守り育てる側の楽しみがムクムクと湧いてきているのだ。

 

 彼には、支援教員の名前を自分で発音することは難しいと思っていたのだが、ある日、笑顔の綺麗な若い支援教員の名前を、一日で覚えしっかりと発音することができた。いつも傍にいる支援教員たちは、ジェラシーを感じながらも大きな喜びを感じた日だった。

 

 それぞれの歩みにはそれぞれの歩幅があり、毎日の活動の中で注意深くその歩みを見守る。我慢強さと笑顔が必要条件である。ここだけは常にクリアできる私は、学生の中にいれば最強だと自分に言い聞かせる。

 

 今までパラパラに散らばっていた自身の人生のパズルが、今、綺麗に目標を持って繫がり、一枚の絵を描き始めている。今日も一日の終わりに学生たちと美しい夕日を見ている。

 

(KT)