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スタッフエッセイ

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エッセイ

涙をこらえて

 

 Mさんは周囲をぱっと明るくするような笑顔の持ち主で、誰もが認めるムードメーカーのひとりです。入学当初から学ぶ意欲に顔を輝かせ、授業中は自主的にメモをとり、帰宅後の復習を欠かさない姿勢には目をみはるものがあります。

 

 そんな彼女が授業の一環として漢字検定に取り組みました。大きな行事の合間を縫って、持ち前の前向きさでコツコツ取り組みを続けたMさん。合格への強い想いから試験直前にはみごとな集中力でメキメキ力を伸ばし、迎えた試駿当日、その顔には清々しい充実感が満ちていました。そして、さらに素晴らしかったのは、試験後も自主的に漢字の勉強を続けたこと。学ぶことの喜びにあふれた表情は眩しいほどでした。

 

 一方でMさんは、人一倍のやる気も影響し、上手くいかないことがあると、それを「間違ってしまった」と捉え、周囲を受け付けないほどの落ち込みを見せることがあり、入学当初は帰宅後に泣いて過ごすことも少なくなかったようです。

 

 しかし、さまざまな授業や行事を経るなかで、自ら意識的に気持ちを切り替える方法を身につけ、上手くいかないことも「それ自体は悪いことではない」「正解はひとつではない」ということを理解し、受け入れられるまでの成長を見せていました。

 

 そんなMさんの漢字検定の試験結果は、たった3点合格点に及ばす不合格。あれだけ頑張ったのだから落ち込みは相当なものと予想されました。

 

 迎えた結果発表の日。帰りのホームルームで合格者が発表されましたが、名前を呼ばれなかったMさんの表情は堅くこわばり、声をかけるのも憚られるほどでした。しかし、帰る準備を整えると、涙をこらえきゅっと口を結んで、ひとり黙々と日直の仕事をこなすMさん。自分の仕事を全うするなかでなんとか気持ちをコントロールしようとしているその背中に、彼女の成長がはつきりと感じられました。

 

 「頑張ったね」という声かけに背を向け、黙って下校したMさん。

 

 しかし翌朝、元気な挨拶とともに登校すると、いつも以上に明るい調子で話しかけ、彼女なりの方法で一生懸命「もう大丈夫」「昨日はごめんなさい」という気持ちを伝える優しさをみせてくれました。ご家庭からの連絡帳には、早速新しい漢字ドリルの購人を検討しているとの記述。「すごいなあMさん、抱きしめてキスしたくなっちゃう!」といったら、いやだーと笑って逃げられました。

 

(AY)

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