Qualification acquisition support

各大学視察報告

ジョンディウェイカレッジ

ジョンディウェイカレッジは、イギリスのロンドン郊外にある3年制の私立大学である。19歳以上の学生たちが公立の高校まで勉強して、その後どうしようかというときにこの学校にやって来る。さまざまな障害学生が在籍しており、たとえば重度の自閉症の学生、身体的に歩くことができない学生など、障害種別と程度も多様である。

この大学には、3つのプログラムが用意されている。

1つ目のプログラムは、継続して教育を受けるGOFEクラスである。これは五感を高めるためのコースである。この大学に来る学生たちは、自分で選択する経験が希薄なまま成長してきているケースが多いため、このコースでは何事も自ら選択することに重きを置いている。

たとえば食事も、これまで周りの人から与えられた食事をただ食べるという環境にいた学生たちが、本当は何を食べたいのかに焦点をあて、彼らの意見を引き出しながら教育をしている。また音楽や音にしても、本当にそれが好きなのかを自ら考え選択するよう、学生たちの主体性を重視した教育をめざしている。

それらが、その後のその人の人生におけるすべてのコミュニケーションの基礎となると考えているのである。好きか嫌いかという自らの意思を表現する経験を重ねていくことによって、他者とのコミュニケーションが身につくようになっていくと考えている。

教員は学生たちに対し、子どもではなく1人の大人として接している。彼らが大人としての責任感をもてるよう、すべて大人という設定で教育をしている。

2つ目が、「ムービングオン」というプログラムである。このプログラムに参加しているのは、認知が高い学生たちである。そこでは、学習に対する自主性に焦点をあてた教育をしている。カリキュラムはすべて個々人に合わせており、同じものはない。

まず大学に来たときに本人、両親、ソーシャルワーカーの三者で面談を行い、3年後に自分をどこにもって行くのかというゴールを設定する。そのゴールが仕事なのか、企業研修なのか、それとも自分で料理ができるようになることなのかなど、それぞれ目標設定をしてから入学する。

そして3年後のゴールに行きつくために、4つのゴールセッティングをしている。それは自分の行動力、あるいは本を読むこと書くことや、自分の健康管理、自分の食べるものを料理するなどの4つの段階を経てゴールにたどり着く仕組みである。4つの段階のなかに更に小さなステップがある。1つひとつをクリアしていくことを教えるのが、ここの教員の役割である。

4つのゴール設定の内容は、長期的にゴールに向かうためのもの、表現に関するもの、各段階に応じたもの、各段階における細かな目的等に関するものであり、それぞれについて教員たちが教える。

各学生の担当教員は、個々人に応じてどのようにターゲット(目標)に届くようにするのか、プログラムを組んでいく。

3つ目のプログラムは、仕事へ行くまでの過程である。3年後のゴールがあり、それに向けて3段階に分けた細かい目標が組まれている。ここに入って3年後に仕事に就く、または企業研修をするということを目的としているコースである。

企業研修のコースでは学生がまったく1人になることはなく、常に誰かがサポートをする体制を取っている。仕事に行くときも、サポートする支援者が研修先の会社について行っている。

教員たちも、大学周辺の企業関係の人たちとの関係を密にして、学生たちが就職できるよう努力している。1回だけの訪問では忘れられてしまうため、何度も会社に出向いている。そうすると「1年後にいらっしゃい」と言われることもあるが、そんなときは必ず1年後に行って話をまとめている。何回もステップを踏みながら仕事にこぎつけている。

会社は障害がある人を受け入れたいと思っているが、「ちょっと怖い」とか、受け入れた経験がないため「どのように受け入れていいのかわからない」というところがある。そういうことについて、教員が会社に行って説明をしていく。そうして「何も心配することはない」と安心できるようにして、学生たちと会社をリンクさせているのである。

重度自閉症のクラスで横断歩道の渡り方の授業 重度自閉症のクラスで横断歩道の渡り方の授業

第2節 ジョンディウェイカレッジの目標達成度評価

イギリスにはオフィステッドという国の組織があり、その団体は定期的に学校のレベルチェックを行っている。その調査が2年前にあった。そのなかで受けたさまざまなアドバイスにもとづき改革を進めた結果、翌年の調査では「非常によく改善されていてすばらしい」との評価を得ることができた。

この学校の一番難しいところは、学生たち1人ひとりに合ったプログラムを組んでいるため、ほかの学校のように学生同士を比べてどう進んだかを判断しにくいところである。

そのため2年間かけてコンピューターのプログラムを開発し、個々人がどの程度目標に近づけたかを把握できるようにしている。スタート地点での目標に対して、それができているかどうかではなく、ゴールまでどのくらい進むことができたかという基準で学生たちの進展度を測っている。

それぞれ出発点が違う学生たちが、どこまでそれぞれの方向に進むことができたかを計測する。すなわち、成功か失敗かではなく、過程がどういうふうに進んで行ったかを見ることが重要なのである。

第3節 ジョンディウェイカレッジとの意見交換

ランチルーム ランチルーム

ジョンディウェイカレッジのリー教授(副校長)と、次のような一問一答を行った。

──学生は1クラスに何人か。また、障害の種別もさまざまということだが、たとえば学習障害(LD)と知的障害の人数がどのくらいいるのか。オープンして何年経っているのか。

学生は1クラスに6〜7人、多いクラスで8人いる。障害のレベルはだいたい似たような学生たちだ。6人の学生に対して先生が1人だが、6人がそれぞれ与えられたタスクをしているので、同じクラスで6人が別々のことをしていることになる。

たとえば料理であれば、スプーンでかき混ぜる人、レシピを読む人、切ったりする人と分かれている。6人それぞれが違う役割をしながら、1つの授業をしている。それぞれが自分の目標をもっているが、料理という1つの大きな枠組みのなかで能力に応じて取り組んでいる。

ここは2010年にオープンした。創立者は近くのスペシャルニーズのカレッジでマネージメントをしていたが、これではいけないということでここを特別に創設した。彼らに対する教育内容として、もっと違う内容や方法があるのではないかということでここを創立したのだ。

テストなどではなく、個人の特性や性格などに焦点をあてた教育をめざしている。日本も同じだと思うが、障害者にとっては賞状をもらうことなどが大切ではなく、料理など自分で何かができることが大切だと思う。

──3年で必ずここを出ていくのか。入学した時に目標を設定して3年後に卒業するとき、それが達成できなかった場合はどのように対応するのか。延長などがあるのか。

一応3年制だが、5年いる学生もいれば2年で終わる学生もいる。個々の学生の能力による。国からの援助があればもちろん5年でもいいが、何かの状況の変化でその援助が得られない場合は短縮せざるを得ない。学生が70人いるが、そのうちの1人だけは両親が学費を全額負担し、69人が国の援助を受けている。

マーケットで手伝いをしたり、国から土地を借りて野菜を育てたりできるシステムがある。そこで野菜づくりをしたり、近くのコミュニティに出かけたりしている。ここはみんなが集まる場所ということであって、学校の外でもいろいろな活動をしている。外で活動しながら必要に応じてここでも勉強をするということだ。

カリキュラムのゴールは3年先で設定するが、2年で辞めてしまう学生やほかの学校に移る学生については、ここでの進展度記録をすべて次の学校に渡している。3年でゴールできなかった場合は、さらに1〜2年いることもある。

──延長した場合は国から資金援助があるのか。

それが大きな問題の1つだ。国から毎年、援助を受けている学生の進展度をチェックしに来る。その学生がよくやっていればあと1年予算を出すこともあれば、逆にあまり進展が見られないと援助金がカットされ、学校を去らなければいけないケースもある。

そのほかに、この学校がその学生に合っているかという問題もある。どうしても合わない学生をここにずっと置いておくことも不幸なので、ほかに移っていく学生もいる。

イギリスは16歳で大人と見なされる。ここの学生たちは19歳以上なので大人だ。大人ということは選択の自由もある。いまいる学生たちは自分でここを選択して来ている。大学に行くなど、ほかに選択があればそちらに行くのもまったく自由だ。

──この学校で国の予算を管理するのか。それともそれぞれの家庭が国との契約をするのか。

国の援助金は家族にわたされ、その家族がどこに子どもを行かせるかを選択する。家族も援助金をどのように使用するのかを申請し、それを政府がチェックして判断している。

──重度の学生も自分たちで選択しているのか。

ここではデイサービスという形で重度の人を受け入れている。その人たちは70人の学生の数には含まれていない。

──その学生たちにも国から援助金が出るのか。

教育援助ではなく、生活介護の援助金が出る。

──その援助はずっと受けられるのか。

基本的には一生援助を受けられる。昔は5年に一度調査があり、5年ごとに更新していた。それが3年ごとになり、いまは2年ごとに更新申請をしている。

──申請を打ち切られることもあるのか。

非常に難しいところだが、ここに来て何かできるようになったかをチェックし、まったく進歩が見られなければ、ここに援助金を使うよりも、家庭を援助してそこでみてもらう方法を取ることがある。しかしそうなると、家族が働きに出られないというとても根深く難しい問題もある。

だから、この学校に来た人たちに関して進歩が見られないときは、家庭に返すよりもなるべくほかの施設(重度専門の施設)に移るようにしている。「大人になったらできるだけ家に引きこもらず社会と接点をもつこと」を自分たちのポリシーとして取り組んでいる。

──この学校のような場所はほかにもたくさんあるか。

あることはあるが、この学校はすごくユニークだと自負している。校長とリー副校長だけでいろいろなことが決められる。だから、学生のためによいと思えばすぐに行動に移せる。

組織が大きくなればなるほどマネージメントの層が厚くなり、決定権がとても遠くなる。そうした意味でここの学校は非常にユニークだと思う。

──入学希望者、入学試験の種類や合格率について。

基本的に希望者はできるだけ全員受け入れるようにしている。たまに受け入れられない学生がいる。それは、非常に暴力的な学生や普通の学校に行ける学生の場合で、この2つのタイプは断っている。

──定員は何人か。

建物が小さいので70人が限度だ。希望者が増えたら建物を増やす方向で考えている。そのための新しい場所を探している。もっと大きなところで運営していけるよう国と交渉していく予定だ。障害者用に建てられ、車イスでも通れるような特別な建物に移ることを考えている。

──学校の建設に補助金などはあるか。

2010年に始めたときはすべて個人の資産だった。教育を継続しているので、現在は政府もだんだん理解するようになった。これまでの実績を前面に出してもっと支援を受けられるよう、国に対して働きかけるつもりだ。

──就職率はどのくらいか。職種はどのようなものか。

数は多くない。仕事に行っても、常にサポートする人間が必要となる。国からの援助金がないと、その人たちの給料が払えないからだ。1人だけで仕事ができる学生はいないので、非常に厳しい状況だ。保守党が政権を取っていることも関係する。保守党は生活援助金には非常に厳しい。

卒業した学生は主に庭師、コーヒーショップの裏方、ショップなどで働いている。1人だけ、普通のフルタイムの仕事でオフィスに就職した学生がいる。その学生にもサポートする人がついて見守りをしている。自閉症の学生だが非常にインテリジェントな人だ。自分を取り巻く環境のなかで自分ではできない部分があるので、いつもサポートが必要になっている。

──スタッフの人数はどのくらいか。職種・資格はどうなっているか。

リーさんは高校で10年間ドラマや美術などを教えていた。ここには教育免許をもった先生が5人いる。重度の学生が来るデイセンターで働いているのが3人。サポートワーカーをしていた人が非常に優れていて、グループリーダーに昇格してデイセンターの担当をしてもらっている。

スタッフは全部で35人。そのうちサポートワーカーが20人くらい。社会福祉関係に何らかの接点がある人、介護の経験がある人、職業訓練の資格がある人などが働いている。スタッフのなかには障害がある人もいる。

スタッフに対しても学生と同じように個人に焦点をあて、みんな1人ひとり大切なのだというポリシーのもとに雇用している。

──イギリスでは高校を卒業した知的障害者のうち、卒業後も高等教育を受けているのはどのくらいの比率か。

数的にはわからない。政府は、イギリス全土において18歳以上で仕事をしていない人は何らかの教育機関に所属しているのが理想という立場だが、現実はほど遠い状況だ。

──ロンドンではどうか。

数はよくわからない。この学校は少人数で、もっている個性に合わせてプログラムを進めていくのが特徴だ。リーさんの想像だが、どこにも行き場がなくて家庭に返されている学生はだいたい40%くらいでないか。ロンドンといっても広いので、数についてハッキリとしたことは言えない。

──ここを利用している人たちは高校までどういう教育を受けていたか。

イギリスの政府は発達段階を8段階に分けている。1段階は新生児と同じような知的レベルで、それが8段階まである。8段階になると5歳程度の知的レベルということになる。

この学校で一番高い学生が8段階だ。だいたい5〜6レベルの学生がこの学校に通って来ているので、個人に焦点を合わせて取り組んでいる。1〜8のレベルの次にエントリーレベルがある。会社で働いている自閉症の人はエントリーレベル1の学生だ。全部で11段階に分かれている。