Qualification acquisition support

各大学視察報告

レズリー大学

レズリー大学(図6)では1981年に、知的障害者教育のセクションを担うThreshold Programが確立した。そのプログラムを創設し今日まで中心的に管理・運営してきたのが、ArlynRoffman(アーリンロフマン)氏である。

当時は、全米でも知的障害者が大学に進学するという選択肢はまったくない時代だった。そこでレズリー大学では、知能指数が70〜95ほどの健常者よりわずかに低い人を対象とした大学受け入れプログラムに取り組んだ。

このプログラムは、年を追うごとに改良されているが、基本的な内容は現在も当時と同様である。このプログラムの主たる対象は知的障害者と発達障害者であるが、それ以外にもてんかんの発作がある人、聴覚障害者、身体障害者なども含まれている。レズリー大学には、教育年限を2年間とするプログラムに毎年24人の学生が入学している。

レズリー大学が、知的障害者を受け入れた最大の目的は、知的障害者に大学生活を体験する機会を提供することだった。

大学での教育プログラムの実施において、彼らには独自のスペシャルニーズがあるため、一般の大学生とは別のクラスを編成する「完全分離型」である。そこでの授業の内容は、主にお金の管理や調理、自分の自由時間を計画立案して楽しく過ごすなどライフスキル向上に関する学習や、就職のための就労スキルを身につけることである。

一般の大学生とクラスは違っても、キャンパスでさまざまな学生たちと学び交流することを重要な課題として取り組んできた。たとえば、ほかの学生たちといっしょにカフェテリアなどで食事をしたり、ジムに行っていっしょに運動をしたり、学内の演劇部やコーラス部に所属しいっしょの活動に参加したりするなどの交流が見られる。

このようなThreshold Programのいいところは、学生たちが自分と同じ境遇の友達をつくることができ、授業で自分と同じ境遇の学生たちの行動様式などを互いに学び合う機会があることである。

もう1つのメリットとして、教員が障害のある学生たちに対する教育方法などについての専門的な訓練を受けているため、指導が非常に上手なことがあげられる。このプログラムに参加する学生にとっては、彼らのニーズを理解している教員たちによって、彼らの今後の生活などに必要な授業を非常に綿密に受けられる利点がある。

一方大学にとっては、障害のある学生たちをキャンパス内に迎え入れ、障害者と健常者が互いに交流する場を提供することにより、社会的なつながりで人権教育やインクルーシブな社会の構成員として一般の学生たちを育成することができるメリットがある。

たとえば、健常の学生と知的障害のある学生とがキャンパス内で直接的にふれあうことで、「怖い」とか「近寄りがたい」「関わりたくない」などの偏見や差別意識が解消するとともに、障害がある人も自分たちと同じ人間なのだという認識を高めるのに役立っている。

また、実際に知的障害のある人と接する際の接し方についても学ぶ機会となっている。たとえば、相手の目を見て話す、できるだけ身振り手振りを使って話す、会話のきっかけ、話の始め方など、知的障害者とのコミュニケーションの取り方などについて体験的に学ぶ機会になっている。こうした体験的な学びは、将来の職業生活、社会生活においても、知的障害者と関わるときに役立っている。

また、Threshold Programでは、知的障害者に対する教育や支援に関する専門家であるメンター(指導員)がプログラムに位置づけられており、プログラムに所属している知的障害学生の状況を常に把握し、知的障害学生を担当する教員に適切な助言や指導を行っている。

メンターは、学生の大学卒業後も、彼らが地域社会に溶け込んで健常者たちとうまくコミュニケーションが取れているか、料理や通勤など大学で学んだライフスキルを生かしてアパートで問題なく生活ができているかなどについて状況を確認し、必要に応じてアフターケアを行っている。

このように、Threshold Programの特徴の1つは、大学卒業後の充実した社会生活の確立を想定して学んでいるということである。