Qualification acquisition support
マウントロイヤル大学は1910年に創立され、その後1966年にコミュニティカレッジとして承認された。2009年に4年制大学になっている。
学生数は約15,000人で、短期大学や専門学校なども併設し、取得可能なさまざまな資格コースも充実している。コミュニティカレッジとして培ってきた教育背景があるため、小規模クラスでの学びやすい環境が設定されているのが特徴である。
マウントロイヤル大学では2016年現在、8人の知的障害学生が学んでいる。彼らの何人かは重度の障害で、マンツーマンの支援を必要とする。
学生たちに必要とされる支援の内容やその度合いは、複合的な要素を考慮して大学が判断している。支援の必要性を判断するものとして、州政府が発行する障害者手帳がある。公的に支援が必要であることが明確化されると、大学は支援スタッフを雇用することができる。
障害学生支援プログラムで学んでいる8人の学生のほかに、人間関係を形成することが苦手な学生など発達障害のある学生は何百人と入学している。これらの学生は大学に入ると、障害を理由にほかの学生と区別されることはまったくない。
このプログラムを利用する学生数は、これまで4人から6人、さらに8人と年々増えてきている。これは、1つの大学のなかで障害学生の人数を増やすという1つの選択である。
しかしインクルージョンアルバータは別の方向、すなわち少人数の障害学生を受け入れる大学の数を増やすという方向を指向している。受け入れる大学を増やすと、いろいろな学科を履修できるようになる。それは障害学生の学びの選択肢が広がるということであり、学生たちの興味、個性に合わせた受け入れが可能になるということを意味する。
障害学生の受け入れ人数についてはまだまだ試験的なものであり、マウントロイヤル大学では今後、8人を16人に増やす案を検討している。しかし、学生数を増やすことで障害学生が彼らだけのグループを形成してしまう可能性がある。そうなると一般学生との関わりが薄くなってしまうだろう。そこで現在のところは、少しずつ数を増やしながら慎重に活動を行い、これらの可能性も視野に入れて状況を見極めている段階である。
このことは非常に重要なポイントといえる。現在、いろいろな教育機関が学生たちを分けて考える傾向にあり、一般学生と障害学生の交流を設ける際に、似たような人たちが集まってしまう傾向がある。そうさせないためのデリケートなサポートをどのように行っていくのかは、インクルーシブアルバータにとっても重要な問題であると考えている。
マウントロイヤル大学にて
マウントロイヤル大学にて
この大学の障害学生支援プログラムに所属しているジョブさんは、大学生活について次のように述べている。 「大学で経験したさまざまな活動は最高に楽しい。ありがたいことにほかの一般学生といっしょに学ぶ機会が与えられました。大学からの支援については、1年目はサポートが多く必要でしたが、2年目からはさほどサポートは必要ではなくなったと感じています。
今後の目標は、教授陣からの学術的なサポートがある機関に進むことです。それに向けて、教育機関の事務スタッフと話し合いをすることができます。スタッフといっしょに宿題をしたり、学習の理解度を確認したりしながら進めています。これらはいまのところ週2回で、1回当たり1時間から2時間程度、ミーティングルームで行っています。ここではいつでも専属のスタッフからのサポートを受けることができます。卒業後については、まだはっきり決めていませんが中小企業に就職したいと思います」
また、ジョブさんを指導する支援教員は、卒業後に向けた就労支援について次のように述べている。 「卒業後の進路支援については個人ファイルを作成し、そこに4年間でジョブさんが学んできたことや身につけてきたことを記載しているので、それを活用しながら彼といっしょに就労先を訪問するなどしています。私たちの大学では、これまでかなり長い年数就労支援を行ってきたノウハウの蓄積もあるため、毎年70〜80%の障害学生が一般企業に就職しています」
また別の支援教員ミチさんは、日頃の知的障害学生の支援について次のように述べている。 「私は企業に出向いて、一般社会で障害者と関わるスタッフの教育を担当しています。また大学では、インクルーシブプログラムをサポートしています。
当大学では一般学生と障害学生に同じ教育を提供するというデモンストレーションが成功しています。私たちはすばらしい支援をインクルージョンアルバータから得ています。また、大学内の理解とサポートもあります。各学部長からのサポートや医療に関わる学生からのサポートもあります。
しかしながら最初の頃は、学術的な部分でのインクルーシブな取り組みは困難でした。しかし、知的障害学生への支援はやがて一般の学生への支援にも広がっていきました。結果として一連の取り組みは一般学生にとってもすばらしい経験となったのです。
一方、教授たちについても、教育において知的障害学生に対して十分に注意をはらい、習熟度を確かめながら授業を進めるようになっていきました」
ここでは障害学生それぞれに対して、スタッフとともにどのようなコースが必要かを見極め、専属スタッフが派遣される。必要であればプログラムを修正することも可能である。そのことにより、コース内容や授業内容について、障害学生と一般学生が同様の学びの成果を得られるようにしているのである。
クラスのなかでの一般学生と障害学生との関係は徐々に変化しており、それぞれに得るものがある。たとえば、最初はいっしょに宿題をするだけの関わりだったのが、次第に週末の外出をいっしょに楽しむようになる。
このような障害学生の社会生活の広がりの変化は、一般学生たちのやりがいにつながる。プログラムは障害学生たちの経験だけでなく、サポートする側の一般学生にとっても価値あるものとなっているのである。