《福祉コラムVol.52》自立訓練法ってどんな法律?対象者や内容について詳しく解説!

2022.11.28

自立訓練法は指定障害福祉サービスの一つで、障害者向けの支援制度や法律があるのをご存じですか?障害があると引っ越しや就職など自立して生活するのはなかなか大変ですよね。それ以前に入浴や掃除といった日常的な行動も難しいという場合もあるでしょう。しかし自立に向けた支援や訓練を受けることが可能です。この記事では自立訓練法や障害を持った人が受けられる制度について解説します。

自立訓練法とは

自立訓練法とはどのようなものなのでしょうか?この項目では自立訓練法について説明します。

指定障害福祉サービスの一種

自立訓練法は指定障害福祉サービスの一種です。身体的・精神的に障害のある人が、自立して生活を送れるように支援・訓練するもので、全国の福祉事業所で受けられます。具体的には自立訓練というもので、プログラム内容は利用者と事業所によって異なるのが特徴です。これらは「障害者総合支援法」という法律・制度に基づいて行われています。

障害者総合支援法とは

「障害者総合支援法」は上記で説明したとおり、障害者が社会生活・日常生活を自分の力で行っていけるように支援する法律です。自立訓練以外にも介護給付や就労支援、医療支援などさまざまなものが含まれています。この法律は令和3年に改正・施行されました。自立訓練は、そのなかの第4章・第51条から第5章・61条に当てはまります。

そして障害者総合支援法の対象者は、障害のある児童(発達障害も含む)・18歳以上の障害者・難病指定患者です。

自立訓練は生活訓練とも呼ばれている

全国にある福祉施設(自立訓練事業所)では障害者の自立訓練が行われています。自立訓練は「生活訓練」とも呼ばれており、これは食事や排泄など生活全般の自立支援です。また自立訓練には「機能訓練」と「宿泊型自立訓練」もあります。機能訓練は生活をするうえでの身体の訓練に特化したもので、宿泊型は施設まで通所できない利用者向けのものです。

以前は障害の種類によって受けられる訓練が違いましたが、平成30年4月からその区別がなくなりました。

自立訓練法の対象者や受ける手順

さまざまな障害を持った人たちが、自立訓練法(自立訓練)を受けるにはどうすればいいのでしょうか?また制度の対象者に制限はあるのかについてもみていきましょう。

自立訓練法の対象者

対象となるのは日常生活を自立して生活するための能力・支援が必要な人です。障害の内容によって生活訓練、機能訓練、宿泊型と分かれます。簡単にまとめると、支援が必要な人のなかでも以下の条件に当てはまっている人が対象です。

  • 通院を終えている人、もしくは症状が安定している人
  • すでに特別支援学校を卒業済みの人

これらは厚生労働省の障害福祉サービスの概要にて指定されています。また支援制度を受けるには、各市町村で「受給者証(障害福祉サービス受給者証)」を交付してもらわなければいけません。

加えて、このサービスを利用する場合は利用料も必要です。負担する金額は、それぞれの年齢や所得状況などによって違ってきます(上限あり)。この金額は前年度の収入額によって変動するため、場合によっては安く利用できたりすることもあるようです。

自立訓練法が受けられる事業所

施設は全国各地にあります。令和2年4月の国保連合会のデータによると、生活訓練の事業所数は1,172ヵ所、機能訓練は167ヵ所、宿泊型は234ヵ所です。利用者は生活訓練が12,463人、機能訓練が2,045人、宿泊型が3,239人と、圧倒的に生活訓練を利用する人で占めていることが分かります。

自立訓練法を受ける手順

サービスを受ける手順は以下のとおりです。

  1. 利用したい事業所を選ぶ
  2. 各市町村で受給者証の申請をする
  3. 契約手続きをする

まずは登録したい事業所を決めましょう。事業所の調べ方はネットか福祉関係の窓口です。現在はホームページがある施設も多いので、ネットから探すのもおすすめです。自立訓練事業所の情報を集めたサイトなどを活用すれば、スムーズに探せるかと思います。または市の福祉窓口などへ行って、利用できる所はないか問い合わせてみてもいいでしょう。自分の住んでいる地域や置かれている状況に合わせて判断しましょう。

次に事業所では、契約する前に体験や見学ができます。どの訓練を受けるにしても、利用できる期間は1年から3年です。基本は2年までですが、延長手続きをして申請が通ればもう1年追加できます。見学や体験をすれば、実際に通える場所にあるかどうか、スタッフの雰囲気や施設の様子などがわかるため、不安を減らして契約・利用ができるでしょう。

そして市に受給者証を申請し、申請がおりたらいよいよ事業所と契約して利用開始です。なお、申請がおりるまでは数カ月かかります。早く利用したいときは注意しましょう。

自立訓練法のプログラム内容

実際にどんな訓練をするのか、やっていけるのか?はとても気になりますよね。ここではプログラム内容について説明します。

受ける事業所によって内容が異なる

事業所によって行っているプログラム内容は異なるため、自分の受けたいプログラムがあるかの確認は必要です。また、障害の内容や程度も人それぞれなため、日々のプログラム計画はスタッフと相談して決めることになります。たとえば、金銭管理などが苦手な人なら金銭を扱う訓練が計画内容に多く取り入れられたりするでしょう。

健常者であれば当たり前にできることでも、障害を持っていれば難しいことも多いです。しかし自立して生きていくには、サポートがあったとしてもできることは自分でもしなければいけません。これらを時間をかけて訓練、そしてスタッフはサポートしていくことになります。

そのため、専門のスタッフが一人ひとりに合わせて計画を組み、また何か状況が変われば計画内容も変更されます。時間はかかりますが、確実に自立した生活に向けて進んでいけるでしょう。

代表的なプログラム内容

代表的なプログラム内容は次のとおりです。

  • 日常生活に関わること
  • 社会生活に関すること
  • 自分自身のこと
  • 就労や地域にまつわること

日常生活に関わることでは、普段私たちが行っている料理を作ったりお風呂に入ったりといった行動の訓練や支援を行います。人によっては、食事やお風呂はできるけど整理整頓がうまくできないなど、できること・できないことがバラバラです。これらも利用者に合わせて何を訓練・支援していくかが決まっていきます。

社会生活に関することはおもに、他者との関わり方やバスや電車の乗り方、公共施設の利用の仕方などについてです。地域ごとのマナーや一般的な社会ルールについての理解を深めるといったことも必要になってくるでしょう。

自分自身のことは自分の持っている障害についての理解を深めたり、それを他者へ適切に説明したりといったことができるようにするものです。

就労や地域については働くために必要な活動のアドバイスをもらったり引っ越しを考えているならそれに対しての支援などが受けられます。

まとめ

自立訓練法は福祉支援サービスの一つで、障害者向けの障害者総合支援法があります。これは障害者の人権を守り自立へ向けて支援していく制度です。そのなかに自立訓練があり、自立して社会生活を送るための支援や訓練が行われています。自立訓練は各事業所で受けることが可能です。プラン内容は一人ひとりにあったものに計画されます。障害があっても仕事をしたり一人の人間として生活をしていくためにさまざまなサポートがあるので、利用したことがない人は一度利用してみてはいかがでしょうか。