《福祉コラムVol.26》知的障害とは?その認定の時期についても詳しく解説!

2022.10.11

知的障害と一概に言っても、人によってその程度や症状は様々ですよね。

知的障害者の方にはどういった特徴があり、また、いつどのように判断されるのでしょうか。

この記事では、

・知的障害の特徴にはどのようなものがあるか

・知的障害と診断を受けるまでの流れやその基準

についてまとめていきたいと思います。

知的障害の特徴について

知的障害は、医療機関や地域によって異なりますが、一般的に「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。

では、それぞれの特徴を見てみましょう。

軽度

・読み書きや計算、金銭の管理、計画立てて物事を遂行したり優先順位をつけたりといったことが苦手

・コミュニケーションや会話、言語の発達がゆっくりで、パターン化されていたり、気持ちや行動のコントロールの苦手さが見られる。

・身の回りのことは自分でできることが多く、家事や子育て、健康管理や金銭管理なども支援があればうまくできることが多い。

中度

・成人でも、学習技能は小学校程度の水準にとどまっていることが多い。

・幼児期の早い段階から言葉の遅れが見られ、就学後も学習についていくことが困難である。

・身の回りのことは適切な支援や教育があればできるようになる。

重度

・発達の初期から、運動面、言語面の発達の遅れに気付きやすい。

・文字や数量、時間や金銭などの概念を理解することが難しい。

・食事や身支度、入浴など、日常生活の様々な場面で支援や見守りが必要。

・コミュニケーションでは、単語や身振り、絵カード等を使った日常的な簡単な会話のみ可能。

最重度

・言語、運動面の発達に著しい遅れが見られ、生活面のかなり多くの場面で支援を必要とする。

・重い身体障害やてんかん発作などを伴う場合がある。

・言葉の発達はなく、単語での要求や簡単な身振りを使ったコミュニケーションは限定された場面であれば可能な場合がある。

・1人での食事、衣服の着脱、便意を伝えることが難しい。

知的障害の診断と判断基準について

知的障害は症状の重さによっては幼い頃から兆候が見られることがあります。

子供の発達で気になることがある場合は、家族だけで悩まず、専門機関に相談することが大切です。

基本的には保健センターや子育て支援センター等に相談するか、小児科や児童精神科、小児神経科などを受診します。

診断にあたっては、どの検査をどこまで行うかは子供の症状によって変わります。

・診察所見(日常生活での本人の様子や保護者の訴え)

・行動観察

・知能検査

・発達検査

などを実施し、知的機能適応機能の両方の側面から総合的に判断します。

知的機能は知能検査により評価されます。概ね「IQ(知能指数)70未満」が知的障害があると判断されます。

適応機能とは、日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を測る指数のことです。

IQ(知能指数)の値だけでは知的障害と判断せず、日常生活や社会生活に支障がないか、どの程度適応して自立して生活することができるかを総合的に評価します。

ここで用いられるのが、主にアメリカ精神医学界の「DSM-5」と世界支援機構WHOの「ICD-10」です。日常生活の適応機能は、次の3つの領域で評価します。

1.概念的領域:記憶・言語・読字書字・数学的思考・問題解決・新規場面での判断など

2.社会的領域:他者の思考・感情・および体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技能、社会的な判断など

3.実用的領域:セルフケア、仕事の責任、金銭管理、行動の自己管理など

3つの領域のうち少なくとも1つの領域での障害が著しく、適切な行動をとるために継続的な支援が必要である場合に診断基準を満たすとされています。

これと併せて「田中ビネー式知能検査」「新版K式発達検査」「ウェクスラー式知能検査」、適応能力検査等も年齢や状況に応じて実施することがあります。

知的障害の診断を受けると、診断名や医師の所見を記した診断書をもらうことができます。

この診断書をもって療育手帳や障害者手帳を申請することができます。

知的障害の認定時期について

知的障害の診断は、成長過程の発達基準との差を見るため、基本的に0歳ではできません。

判明する時期は人により異なりますが、1歳半検診、3歳児検診、5歳児または就学前検診でわかる場合が多いです。

それぞれの時期に、発達の遅れがないか判断する目安となる項目の例を見てみましょう。

1歳半ごろ

・意味のある言葉を2語以上話すか

・物の名前を理解して指差しできるか

・自分の名前に反応して振り向くか

・「おもちゃ持ってきて」等の指示に応じられるか

3歳ごろ

・自分の年齢・氏名をきちんと言えるか

・「ママ、ごはん」等の二語分を話すか

・頻繁に質問をするか

5歳ごろ (就学前)

・じゃんけんなどの遊びのルールを理解できているか

・数を数えられるか

・「大きい・小さい」の比較ができるか

また、軽度の知的障害者では就学前にはなんとなく周りについていったり、指示を理解できたりして、障害があることに気が付かない場合もあります。

しかし、小学校に通うようになると

・勉強についていけない

・日常の行動に時間がかかる

・学校での不敵応

・対人関係がうまく築けない

・自分なりの独特な手順がある

などの困難が生じてきて、知的障害に気付くということが多いようです。

まとめ

以上のことから、知的障害の認定時期や診断については

・知的障害には症状の程度により「軽度」「中等度」「重度」「最重度」の4つに分けられる

・知的障害の判断基準は「知的機能」と「適応機能」を評価し判断する

・知的障害は1歳半、3歳児、就学前の検診や学齢期に気付く場合が多い。

ということがわかりました。

軽度の知的障害の場合、本人や周りも気付かないまま大人になるケースもあります。子供の様子に目をむけ、なるべく早く気付いてあげることで、本人の困難を乗り越える方法を専門家と一緒に考え、よりよい環境をつくってあげることができます。