《福祉コラムVol.38》知的障害の治療薬はある?治すことはできるの?様々解説!

2022.11.01

知的障害はどういった病気で、治療法はあるのでしょうか?

今回は、

  • 知的障害の治療薬はあるのか
  • 知的障害にはどのような治療が効果的か
  • 知的障害のある人が薬物療法を行うのはどのような場合か

といったことをまとめていきたいと思います。

知的障害の治療薬はある?

残念ながら現時点では、知的障害そのものを治す薬はありません。

知的障害における治療法は、適切な「療育」と「環境の調整」です。

この2つを早期から並行して行うことにより、知的障害者の長期的な予後は改善するとされています。

知的障害の治療法とは?

療育

療育とは「発達支援」とも言いますが、障害のある子どもやその可能性のある子どもに対し、それぞれの発達の状態や特性に応じて、今の困りごとの解決と、将来の自立と社会参加を目指し支援をすることです。

知的障害のある子どもは、食事、更衣、入浴、排泄などの身辺自立が難しいことや、社会的な働きかけに対して反応性が乏しい、かんしゃくが多い、周囲について行けない等の特徴があります。

そういった日常生活の中の困難を少しでも和らげるために訓練したり、支援ツールを使ったりしてできることを増やしていきます。

環境の調整

知的障害のある人が、その人の良さを伸ばしながら生活上の困難や障害特性を軽減していけるよう、環境を整えることも重要です。

そのため、個々の特性や知的水準に合った学習環境や行政的な補助サービスを活用しましょう。

知的障害のある子どもは、就学後、数の概念の理解や読み書きにも困難が生じるため、本人の特性や学習課題に応じて学習する環境を調整することが重要です。

場合によっては、普通学級ではなく、通級学級や特別支援学校などをはじめとする教育環境に身を移してあげることも必要になります。

また、学校卒業後は障害者枠での特別雇用、作業所や就労移行施設、デイサービス等を利用し、自立を促しながら社会との接点を持ち続けることができます。

就労以外にも高等学校や専門学校等への進学、特別支援学校高等部への進学など進路は多様にあります。

様々な支援やサービスを有効的に利用しながら、知的障害者やその家族が安心して生活できる環境を整えていきましょう。

専門機関への相談

知的障害のある人に適切な「療育」「環境の調整」を行うために、専門機関への相談も欠かせません。

医療や福祉、教育など様々な分野の専門家と連携しながら治療を進めていくことが大切です。

また、知的障害のある人は、コミュニケーションや対人関係の難しさから、生活の中でストレスを抱えることが多くあります。

そのため、うつ病や適応障害、不安障害といった精神疾患を発症することがあります。

さらには、周囲と自分を比べて自信をなくしたり、自分のことを理解してもらえなかったり、怒られることが多いといったことなどから、他者への暴力、暴言、反抗的な態度などがあらわれることもあります。

このような状態を「二次障害」といいます。

こういった場合も家庭だけで抱え込まずに、医師や心理士等の専門家に相談しましょう。

地域の子育て支援センターや児童発達支援センター、児童相談所などでも、子どものことや子育てについて、気軽に相談ができます。

必要があれば医療機関や療育施設などの専門家を紹介してくれます。

場合によっては、カウンセリングを行うことも効果的です。

症状に対しては薬物療法が適応される場合も

知的障害そのものの治療薬はないと言いましたが、合併症や二次障害のために薬物療法を用いる場合があります。

てんかん

てんかんとは、突然意識を失って反応がなくなるなどのてんかん発作を繰り返す脳の病気で、知的障害の合併症として多くあります。

てんかん発作がある場合には、抗てんかん薬を使用します。

睡眠障害

よく眠れない、寝つきが悪い、早朝に目が覚める、睡眠のリズムが狂うなどの睡眠障害があらわれる場合には、睡眠薬(睡眠導入剤)を使用することがあります。

双極性障害

気分の不安定さが見られ、学習活動や日常活動に集中できないなど双極性障害のような症状が見られる場合には、気分安定薬を使用することがあります。

注意欠如・多動症

合併症としてADHD(注意欠陥多動性障害)がある場合や、その傾向があり不注意や衝動性が高い場合にADHD治療薬を使用することがあります。

易興奮性

興奮状態が頻繁に起こったり、パニックや攻撃的行動が激しい場合などに非定型抗精神病薬などを使用する場合があります。

不安障害

不安が強く精神的に安定しにくい場合などに抗不安薬を使用することがあります。

うつ症状・強迫性障害

強迫性障害とは、本人の意思に反して頭に浮かんでしまって払い除けられない考えがあったり、ある行為をしないではいられないことがあったりして、何度も同じ行為や確認を繰り返してしまい、日常生活に支障をきたす状態のことです。

このような場合やうつ症状があらわれる場合には抗うつ薬を使用することがあります。

まとめ

以上、知的障害の治療法と薬物療法を行う場合についてまとめてみました。

  • 知的障害そのものに対する治療薬はない
  • 知的障害の治療には「療育」と「環境の調整」が行われる
  • 知的障害の合併症や二次障害に対しては薬物療法を行う場合がある

ということがわかりました。

早期に適切な治療を開始し、知的障害のある方がその人らしく日常生活を送れるよう、また、その家族が安心して過ごせるようにしたいですね。