《福祉コラムVol. 40》知的障害児の療育方法とは?改善することはできる?

2022.11.03

知的障害児は知的発達の遅れがあることで、言葉や運動能力の遅れが見られるなど特別な支援が必要になります。

そのため、幼児期に専門機関で適切な療育を受けることは、子供の成長の大きな手助けになります。

では、療育とはどんな場所で、どんなことに目を向けて子供の支援をしてくれるのでしょうか。

そして、療育を通じてどんなことができるようになるのか、療育の効果や大切になる子供との接し方について解説していきます。

知的障害児の療育が行われる場所

知的障害児の療育は出来るだけ幼少期の早い段階から取り組むことが大切です。

早期に療育に取り組むことで、基本的な生活能力や社会性の習得を図り、自立と社会参加を促進出来ると言われています。

そんな療育は次のような場所で行われています。

・児童発達支援センター(0歳~6歳)

・放課後等デイサービス(小学生~高校生)

・保育所等訪問支援

・医療型児童発達支援

各市町村では知的障害児を早期に療育につなげるためにも、定期健診を行っています。

療育が必要だと判断する場合には、役所でサービス受給を受けて上記の福祉サービスを利用することができるようになります。

療育に通うことは、子供にとってはもちろんですが、親の支援の不安や心配を和らげる場としての機能も果たしてくれます。

知的障害児の療育の方法

知的障害児の療育には様々なアプローチ方法がありますが、遊びを中心として他の子と関わり、言葉や運動、そして社会性を身につけるプログラムが一般的です。

おもちゃや遊び道具を使って1人や先生と一緒に遊ぶところから、徐々に輪を広げて他のお友達と一緒に遊ぶ、その中で対人関係やコミュニケーションといった部分を学びます。

相手の気持ちを知ることや、自分の気持ちを伝えることも療育の中に含まれます。

基本的には、遊びの中にある「楽しさ」をベースとし、楽しくいろんなスキルを習得していくものです。

療育の現場によって、音楽、スポーツ、アートに特化した独自のプログラムを中心とした療育を行っている場所も多く、それぞれの興味や得意に応じて選択肢があるのが療育の面白さでもあります。

知的障害児に対する療育の効果とは

知的発達に遅れがあることで、日常生活に必要なスキルの習得に時間がかかったり、習得が困難な場合もあります。

しかし、継続的に療育を受けることで、少しずつ出来ることが増えていくことが期待されます。一歩ずつ出来ることを増やし、苦手なところの対処法を学んでいくことが療育の目的です。

例えば、知的障がいの特徴として感情のコントロールが苦手なケースが多く見られます。

療育の場でお友達や先生方との関わりの中で、感情を爆発させながら、先生方から適切な感情の処理の仕方を教えてもらうことができます。

それは療育場を離れた時の対人関係やコミュニケーション、社会性の基盤としてしっかり残っていくことが考えられます。

スキルの習得に時間がかかる分、早くから適切な場で療育を受けることによって得られる効果は大きいのです。

療育が必要な知的障害児との接し方

知的障害児との接し方にはいくつかのポイントがあります。

知的障害の特性により日常生活において様々な面で失敗や、周囲と比べてスキル的な部分で劣る部分が年々見えてくるようになります。

そんな中で、子供の自信や前向きに物事を学んでいこうとする姿勢を尊重し、その子のペースを尊重してあげることがとても重要です。

そのために必要な接し方として、次の3点があげられます。

分かりやすく伝える

言語コミュニケーション能力にも個人差がありますが、何か伝える時には「その子にとって分かりやすい方法」で伝えることが重要です。

短くて簡単な言葉を使って説明したり、場合によっては絵や写真を用いて伝えたほうが理解しやすいこともあります。

「この後は、ボールを使ってみんな遊んで、その次はお絵描きをして、時間が来たら片づけをしてからお昼ご飯を食べようね」

これでは、長くて見通しが持ちにくい文章ですよね。

「1番目はボール遊び」「2番目はお絵描き」「3番目にお弁当」

手順やスケジュールを例に挙げましたが、それ以外の場面でも、分かりやすく伝える工夫を凝らしてみるといいでしょう。

叱るのではなく、まずは受け止め認めてあげる

「なんでできないの」「そうじゃないでしょ」とつい声を荒げてしまったり、𠮟りつけてしまうこともあるはずです。時には誤りを正すために叱ることも大切かもしれません。

しかし、知的障害児は個人差はあるものの、物事を理解する認知の課題、社会性、コミュニケーション、手先の器用さや運動能力、様々な面で発達の遅れが生じます。

一度で覚えることが難しかったり、同じ失敗を繰り返してしまったりすることも1度や2度ではないかもしれません。

自分の怒りの感情がこみあげてくる気持ちを、スッと一呼吸置いて落ち着かせたうえで、「上手くいかなかったけど大丈夫だよ、一緒に頑張ろうね」と近くに寄り添い受け止めてあげることがとても大切です。

子供に安心感を与えることができ、その安心感の中で少しずつ成長していきます。

気になる行動には予防的な練習を行う

直してほしい行動、正さないといけない行動があらわれた時には「予防的な練習」が効果的です。

予防的な練習とは、事前に起こりうる場面を想定して正しい対処法を伝えて一緒に練習することです。

例えば、お友達の遊んでいるおもちゃで遊びたくなって、お友達からおもちゃを奪ってしまい喧嘩になってしまう場合で考えてみます。

「おもちゃの取り合いで喧嘩をすることは楽しいことかな?」

「2人とも嫌な気持ちだよね。」

「じゃあ、おもちゃを使いたい時は、僕にも貸して、って言ったら○○君も貸してくれると思うよ」

「1回練習してみよう」

実際に起こっている問題の対処法を事前に練習していくことで、少しずつ問題を解決していくことができます。

まとめ

知的障害児の療育は、知的障害による対人関係やコミュニケーション、社会性、運動能力といった苦手や発達の遅れにアプローチするものです。知的障害そのものを改善、治療するものではなく、早期から療育に取り組むことでその後の人生の困りごとを減らしていく基盤を築く取り組みです。

療育の効果は早期であるほうが良いとされ、幼少期より療育を受けることで親も安心して子供を育てていくことができます。

療育を受けられる事業所やサービスは多くあり、その場所によってプログラムの考え方や特化していることが異なるので、利用する際はその子になった場所や療育を選ぶといいでしょう。