《福祉コラムVol.8》軽度知的障害者とは?

2022.08.08

「軽度知的障害」という言葉を聞いたことがありますか。

知的障害の程度区分の中で、一番「軽度」と呼ばれるものになります。

まわりの皆さんと同じように、言葉でのコミュニケーションもできます。

日常生活も送ることができます。

しかし、抽象的な表現や内容に対しては理解が難しく、困難なことが多くあります。

この「軽度知的障害」についてどのような障害かをより詳しく説明していきます。

また、知的障害のある方でも受けられる福祉サポートについても紹介します。

軽度知的障害者とは?

発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数において、適応能力が正常またはやや遅れがある状態を示します。

(知的指数のことを「IQ」と言います。)

低い知能指数とは、IQが51〜70の水準にとどまることを示します。

軽度知的障害者の特徴について

軽度知的障害者には、言葉におけるコミュニケーションや日常的な生活が可能なことから気づかれにくいことが多いです。

一方で、抽象的な内容の認識に困難さがあります。

複雑な対人コミュニケーションや、学習面におけるつまずきに難しさを感じる障害とも言われています。

具体的な例

  • 支援によって、読字や金銭などの概念を理解できるため、買い物や家事なども1人でできる。
  • コミュニケーションはパターン化されていることが多く、他の人と比べると難しいことがある。
  • 記憶や計画、感情のコントロールなどが苦手。

軽度知的障害者の診断と判断基準について

知的障害と診断を受けるには、知的能力を示す知能指数(IQ)と日常生活への適応能力を総合的にみていきます。

これが、発達期と呼ばれる18歳以下に発症したかどうかで判断されます。

知的能力を表す知能指数(IQ)

知能指数を測るには、知能検査と呼ばれるもので測定されます。

この、知能検査で測定された知能指数が低ければ低いほど重症度が大きくなります。

知能検査でもっとも多く用いられるのは、ウェクスラー系知能検査です。

年齢によって受けるものの名称や、内容が変わっていきます。

  • 2歳6ヶ月から7歳3ヶ月の幼児用:「WPPSI」
  • 5歳0ヶ月から16歳11ヶ月までの児童用:「WISC」
  • 16歳0ヶ月から90歳11ヶ月までの成人用:「WAIS」

この知的検査で算出された知能指数が、約50から70までの人が軽度知的障害と判断されます。

しかし、これは判断材料の一つとなります。

知的検査のみでは判断されず、上記でも記した日常生活における適応能力と総合的にみて判断されます。

例えば、知能指数が70以下の場合でも適応能力が高いと判断されれば知的障害という判断はされない場合もあります。

適応能力

日常生活や、社会生活に必要な能力が他の同年齢の人に比べてどのくらい低いのかを基準にみていきます。

アメリカ精神医学会『DSM-5』において、適応能力は以下の3つがあると言われています。

  • 概念的領域:記憶、言語、読字、数量や時間などの理念を理解する能力
  • 社会的領域:対人コミュニケーションにおける能力
  • 実用的領域:金銭管理や食事の準備など日常生活における能力

この3つの能力の中で、適切な行動をとるために支援が必要だと判断されたことが1つでもあれば、適応能力が低い可能性があると言われています。

軽度知的障害者の方が利用できる福祉サービスについて

軽度知的障害と診断されても、日常生活をしやすくなるよう、サポートをしてくれる福祉サービスがあります。

また、仕事で困った時に相談できる支援機関についても紹介します。

療育手帳

療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において「知的障害がある」と判定された方に交付される手帳のことです。

等級は「重度」と「それ以外」に区別されています。

この等級は、自治体によってはさらに細分化されているところもあるので、詳しくは自治体のホームページなどをご確認ください。

療育手帳が発行されると、障害者雇用への応募が可能となります。

また、公共料金の割引や助成金制度、税金の軽減などが受けられる可能性もあります。

知的障害者更生相談所

18歳以上の知的障害のある人が、日常生活や仕事などの相談や職業判定、療育手帳の判定や交付を行なう場所です。

都道府県ごとに設置されているので、日常生活や仕事で困ったことがある場合、ここに相談してみると良いです。

成年後見制度

日常生活を送る上で、賃貸や売買といった法的行為が必要な場合もあります。

その時の判断能力に不安がある場合、成年後見制度というサポートがあり、内容がいくつか分かれています。

判断能力の程度に合わせて「補助人」「保佐人」「成年後見人」があります。

次は、知的障害のある方が就職の際に使える支援機関について紹介していきます。

ハローワーク

ハローワークには、障害のある方の就職を支援する窓口があります。

求人数や就職件数が多く、障害者雇用枠の求人を紹介してくれます。

ほかにも、障害のある方を対象にした就職や働き方に関する相談やカウンセリングも行なっています。

障害者就業・生活支援センター

障害のある方の就業面と、生活面の一体的な相談や支援を行なっている支援機関です。

就労移行支援事業所

一般企業への就労を目指す障害のある方に対して、求職から就職までの一連の過程をサポートします。

利用する人はこの事業所に通い、ビジネスマナーや職業トレーニングなどを行なったり、面接や履歴書対策などの就職活動のサポートを受けることができます。

就職後は、定着支援を受けることで就職した後のサポートを受けることも可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

軽度知的障害は、以下のことがわかりました。

  • 日常生活や言葉におけるコミュニケーションができる一方で、抽象的な内容の認識に困難さが見られます。
  • 知的障害と判断するには「知能指数」と「適応能力」の総合判断で決まります。
  • 「知能指数」はIQと呼ばれ、これを測るには知能検査を受けます。
  • 「適応能力」は日常生活や、社会生活に必要な能力が、同年齢の人に比べてどのくらい低いのかを基準にみていきます。
  • 軽度知的障害でも、受けられる福祉サポートは多くあります。特に「就労移行支援事業所」は、求職から就職、就職後のサポートが手厚いです。

軽度知的障害と言われる方は、本当にまわりからは何が自分たちと異なるのか分からないために、多くの困難に直面します。

しかし、誰かの支援があると自分でできることも増えていくのです。

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