《福祉コラムVol.28》医学的・法的な知的障害の定義とは?

2022.10.13

知的障害の方は、どのようにして手帳を取得されているのでしょうか。

多くの方が医者が診断を行い、そのまま手帳を取得できると考えている方が多いはず。

医者は、知的障害について幼少期から青年期に生じ、読字や書字、算数、論理的思考、知識や問題解決といった概念的領域、対人コミュニケーションや社会的判断、自己制御などの社会的領域、金銭管理などの実用的領域の3つの領域における知的機能と、適応機能の両方に困難が生じることでみられる障害であることを診断していきます。

しかし、医学的な知的障害の定義と法的な知的障害の定義があるのはご存知でしょうか。

この医学的な定義と、法的な定義によって診断方法から、手帳取得までが変わってきます。

この記事では、医学的な知的障害の定義と、法的な知的障害の定義について解説していきます。

医学的な知的障害の定義

医学的な基準による知的障害は、全般的知能による障害と日常の適応能力の障害によって特徴づけられます。

知的機能を知るために、知能検査を用いて判断されます。

平均から2標準偏差より低いことが1つの目安となります(IQでは65〜75)。

今までは、IQの基準が重視されていましたが、IQが必ずしも社会生活上の困難と結びつかない場合があることが分かりました。

そのため、現在の診断基準となるDSM-5において概念的領域、社会的領域、実用的領域における適応機能も重視されています。

  • 概念的領域

記憶、言語、読字、書字、数学的思考、問題解決、新規場面での判断など

  • 社会的領域

対人コミュニケーション、社会的な判断など

  • 実用的領域

セルフケア、金銭管理、行動管理など

適応機能は、少なくとも1つの領域での障害が著しく、適切な行動をとるために継続的な支援が必要である場合、診断基準を満たすものとされています。

知的障害の重症度も、上記であげている3つの領域の状態で「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4段階で決まります。

法的な知的障害の定義

法的な判断とは、療育手帳制度に基づいて判定を行います。

判定を行う機関は、児童相談所または知的障害者更生相談所などになります。

判定をされた後は、療育手帳が交付され、障害福祉サービスを受けられます。

療育手帳を判定する基準や、手帳の名称などは交付する自治体によって異なります。

また、この判定は定期的に行われます。

まとめ

知的障害についての医学的な定義と、法的な定義についてまとめていきます。

  • 知的障害とは、幼少期から青年期に生じ、読字や書字、算数、論理的思考、知識や問題解決といった概念的領域、対人コミュニケーションや社会的判断、自己制御などの社会的領域、金銭管理などの実用的領域の3つの領域における知的機能と、適応機能の両方に困難が生じることでみられる障害。
  • 医学的な定義では、医学的な基準による知的障害は、全般的知能による障害と日常の適応能力の障害によって特徴づけられる。知的機能を評価するには、知能検査を実施する。また適応機能についても、同様に検査を実施する。
  • 法的な定義は、療育手帳制度に基づいて交付する際の判定を行う。検査を行った上で必要と判定された場合、療育手帳が交付される。この判定は、定期的に行われる。

知的障害と言われても、医学的な判定をした上で法的にも別の機関で判定を受けて初めて障害福祉サービスを受けることができます。

医学的な定義と、法的な定義は似通っているところもありますが、医学的な面と法的な面では見ているところが異なるのかもしれません。