《福祉コラムVol.27》知的障害者の性被害。未然に防ぐための予防策を解説
2022.10.12
知的障害者の性被害が、多く起こっていることをご存知でしょうか。
多く起こっているにもかかわらず、事件化されておらず世間的にも知られていないのです。
それは、法律による壁と知的障害者ならではの特性につけこまれたことによるものだったのです。
知的障害者の特性とは、幼児期から青年期に概念的領域、社会的領域、実用的領域の3つの領域における知的機能と、適応機能の両方において明らかな制約がみられる特徴のことをいいます。
この記事では、知的障害者がなぜ性被害に遭いやすいのかについてや、性被害に遭わないために未然に防ぐ方法についてをまとめていきます。
知的障害者が性被害に遭いやすい現実
知的障害者は、性被害に遭いやすいです。
それには、この理由があるのではないかと考えられます。
- 強く断ることが難しい
- 寂しさが異性へと向いてしまう
- 適切な距離感がとれない
- 危険な行動を予知することが難しい
- 悪いことかどうか判断が難しい
一つひとつみていきましょう。
強く断ることが難しい
知的障害などを持つ女性の中には「断ることはいけないと思う」「断ったら相手に申し訳ない/悪い」などを感じる方が多いです。
その理由は、自分から断ることは良くないと言った自己肯定感の低さであったり、その人との関係性が問題なのです。
特に相手が支援者だと、信頼していることもあり断るのは良くないと感じたり、逆に何か違和感を感じても断るという考えにまで至らない場合もあります。
寂しさが異性へと向いてしまう
知的障害を持つ人たちは、誰かと会話をしてみたいと思っていたり、コミュニケーションを取りたいと感じています。
しかし、コミュニケーションがなかなか難しいことから仲良くしたくても特に同性の人たちからその特性上、距離をとられてしまうことがあります。
その寂しさから、異性の誘いにすぐに応じてしまうことでそのまま性被害に遭う場合もあります。
適切な距離感がとれない
知的障害がある人は、その人と仲良くしたいという強い気持ちから、人との距離感がわからないことがあります。
そのため、ボディタッチをしてみたり距離が近いなどの相手に勘違いをさせてしまうケースがあります。
危険な誘いを予知することが難しい
知的障害を持つ人は、定型発達と呼ばれる人たちよりも危機感を感じることが難しいです。
そのため、危険な誘いに応じてしまい、性被害に遭うことがあります。
悪いことがどうか判断が難しい
知的障害を持つ人たちは、言葉で言われたことをそのまま字面通りに受け取ってしまいがちです。
言葉通りに受け取るため、騙されやすく性被害に遭いがちになります。
知的障害があると、善悪の判断が難しくわからないまま性暴力を受けてしまいます。
本人は怖かったことや何があったかをうまく伝えることが困難です。
そのため被害を訴えることが難しく、長期にわたり何度も繰り返されることもあります。
他にも知的障害者による性被害のニュースは、NHKでも取り上げられています。
このニュースでは、性被害を事実認定されたにもかかわらず不起訴となりました。
これは法律における壁により、不起訴となったのです。
知的障害者は、実年齢と精神年齢が異なります。
しかし、法律は障害者に適用した内容ではないこともあり不起訴となりました。
詳しくは以下のニュースをご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic045.html
このニュースは、性被害をなくしたい、自分のような被害者を出したくないと思った知的障害を持つ被害者が奮闘したのです。
その結果、起訴に持ち込み有罪判決を勝ち取ることができた事例です。
上記のニュースでも、少し取り上げられていましたがより詳細に書かれた内容が以下になります。
知的障害者が性被害を未然に防ぐためには
知的障害者は、そのことを悪いことなのかどうか判断することが難しいです。
まわりに助けを求めたり、相談することも難しいため性被害が見過ごされてしまうことが多いです。
そのために性被害を防ぐ、早期に気付くための対策が大切となります。
ここでは、知的障害児などにお伝えしている対策について紹介していきます。
プライベートゾーンについて教える
昨今の教育では、幼児期のうちに性について教えたり一緒に考えていくことが重要と考えられてきています。
そのひとつとして伝えていることが、プライベートゾーンです。
プライベートゾーンとは、男女の体における性に関わる大切な場所のことです。
そのプライベートゾーンに該当する場所が「水着で隠れる場所」と「口」と言われています。
知的障害児に教えるときは、「水着で隠れる部分と口がプライベートゾーンだよ」と伝えるとわかりやすいです。
プライベートゾーンを伝えていく上で、大切なポイントがあります。
- プライベートゾーンは大切な場所であること
- プライベートゾーンは他人に見せたりさわらせたりしてはいけないこと
- プライベートゾーンを他人に触られそうになったら「いや」と断ること
- 他人にさわられたら大人に相談すること
- 自分も他人のプライベートゾーンをさわってはいけないこと
などを繰り返し伝えていきます。
視覚的にもわかってもらうために、絵本を使ってみたりぬりえを通して伝えていくのもよいです。
また、プライベートゾーンを伝えていく上で「きたない場所」「いやらしいところ」などのネガティブな表現はよくないです。
プライベートゾーンについて教える理由はしっかりと伝えましょう。
「自分の体の大切な場所」であること、それは他人には見せてはいけないし、触らせてもいけないことを繰り返し伝えます。
万が一、プライベートゾーンを見られたまたは触られた場合は必ず大人に伝えることを教えましょう。
知的障害児は、友だちやまわりから間違った性に関する知識を得てしまうことがあり、それを正しいことと認識することがあります。
間違った性に関する知識から、正しい知識にするために必ず「大人との約束を守り、相談すること」を守ってもらうようにしましょう。
最後に、これは知的障害を持つ特に女性の方に必要なことです。
早い段階から、かかりつけの産婦人科医を見つけることです。
信頼でき、理解がある産婦人科医を見つけ、相談しやすい環境と関係を作ることが大切です。
何かあった場合も相談でき、性被害に対してすぐに対応してもらえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
知的障害者の性被害についてわかりやすくまとめていきます。
- 知的障害とは幼児期から青年期に概念的領域、社会的領域、実用的領域の3つの領域における知的機能と、適応機能の両方において明らかな制約がみられる特徴を持つ障害。
- 知的障害者が性被害に遭いやすい理由として「強く断ることが難しい」「寂しさが異性へと向いてしまう」「適切な距離感がとれない」「危険な行動を予知することが難しい」「悪いことかどうか判断が難しい」があげられる。
- 知的障害者が性被害に遭うことを未然に防ぐためには、プライベートゾーンがあることを伝えていくこと。このプライベートゾーンは「大切であること」「みさせたり触らせたりしないこと」「触られそうになったらいやだ!と伝えること」「触られたら大人に相談すること」「自分も他人のプライベートを触ってはいけないこと」を繰り返し伝える。
知的障害者の性被害は、本当に多くあり犯罪として扱われないことも多くあります。
知的障害者自身も、性被害に遭わないためにこのプライベートゾーンに関する教育を受けることはとても大切になります。
知的障害児として、紹介しましたが知的障害者にもしっかり伝えていくことが重要となります。
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