《福祉コラムVol.24》最重度知的障害とは?特徴や判断基準、利用できる福祉サービスについて解説

2022.10.06

知的障害には、症状の程度によって「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4段階に分けられます。

ここでは、

・最重度知的障害の方にはどのような特徴があるのか

・最重度知的障害はどのような基準で判断されるのか

・最重度知的障害の方はどのような福祉サービスを受けられるのか

についてまとめてみたいと思います。

最重度知的障害とは?

最重度知的障害とは、知的障害者の中でも最も障害の程度が重い知的障害のことを指します。

平成17年の厚生労働省の調査によると、療育手帳を所持している知的障害者のうち、最重度知的障害者の割合は全体の8.9 %となっています。

最重度知的障害者の特徴について

では、最重度知的障害者の方には具体的にどのような様子や困難さがあるのでしょうか。

最重度知的障害者の方には発語が少ない方が多く、会話や身振りを使ったコミュニケーションは、非常に限られた範囲であれば理解できることが多いようです。

適切な支援や教育を受けることで、身振りや絵カードなどのコミュニケーション手段を使って思いを伝えたり、他人と意思の疎通を行うことができます。

衣服の着脱などの身の回りの処理を行うことは難しく、食事場面でも見守りや介助が必要です。

排泄面でも、便意を自分から伝えることが難しい場合があります。

また、周りの支援者を区別して認識することが難しい場合もあります。

また、ほとんどの人に何らかの器質的な病因が見られます。てんかんや視覚、聴覚の障害、重度の神経障害や身体障害がある場合が多くあります。

最重度知的障害者の方の診断と判断基準について

■小さい人形は、ビーズやパーツなどを組み合わせて作成し、自身で着色したものです。

知的障害は、知能検査で概ねIQ(知能指数)70未満という「知的機能」と、「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会適応性などを測る指数と併せて診断されます。

知的水準と日常生活能力水準を見て「軽度」「中度」「重度」「最重度」の程度別判定を行います。

<程度別判定の導き方>

(参考画像引用:厚生労働省)

最重度知的障害とは、IQ(知能指数)が20未満の場合はすべての人が当てはまりますが、IQ35未満でも日常生活能力水準が(a)の場合は最重度知的障害と判定されます。

知的機能が低いだけではなく、その人が日常生活に困難があり、自立した生活がいかに難しいかというところが重要なポイントとなっています。

最重度知的障害者の方が利用できる福祉サービスについて

最重度知的障害の方は、生活する上で多くの支援が必要だということが分かりましたが、受けられる支援や福祉サービスにはどのようなものがあるのでしょうか。

療育手帳

療育手帳は、知的障害のある人に交付される障害者手帳です。療育手帳があると、知的障害であることの証明になり、様々な障害福祉サービスを受けることができます。サービスの内容や取得の方法は、各自治体によって異なるので、相談窓口に問い合わせるなどして、事前に調べておくとよいでしょう。

知的障害者更生相談所

ここでは、18歳以上の知的障害のある人やその家族からの、日常生活や医療、就労、各種手当や施設の利用などについて専門家に相談することができます。療育手帳の判定や交付もここで実施しています。

障害者虐待防止センター・人権相談所

知的障害のある人が、生活する上で差別や虐待など、人権侵害を受けた場合に相談できる場所です。

障害者虐待防止センターは、障害のある人に対する虐待についての相談や通報を受けつけています。

全国の市町村や都道府県に設置されています。

人権相談所は法務省の人権擁護機関が開設しており、生活する上で差別など、人権侵害を受けた場合に相談することができます。

法務局や地方法務局などに窓口が開設されているほか、電話やインターネットでも相談することができます。

特別障害者手当

特別障害者手当とは、精神や身体に重度の障害があり、日常生活において常に特別な介護を必要な人を対象に、国から支給される手当のことです。

成年後見人制度

成年後見人制度とは、知的障害・精神障害などによって、財産の管理や契約手続き、費用の支払いを決めることが難しい方のために、家庭裁判所が選任した支援者がサポートをしてくれる制度です。

障害年金

障害年金は障害や病気で生活や仕事が難しくなった場合に、経済的支援を受けられるものです。

知的障害者の場合は、障害の状態によって障害年金の等級や支給額が異なります。

「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービス

障害福祉サービスとは、「障害者総合支援法」という法律に基づき提供される障害を持った方向けのサービスの総称です。身体障害や知的障害、精神障害を持った人のほか、難病患者や障害児などを対象としています。

生活能力や仕事のスキルを身に付けるための「訓練等給付」と日常生活をサポートするための「介護給付」の2種類に大別されます。

(参考画像引用:厚生労働省)

この中でも、「重度訪問介護」や「重度障害者等包括支援」などは特に重度の障害のある方を対象にしたものです。

例えば重度の身体障害と知的障害を併せ持っており、日常生活のあらゆる場面で介護が必要な方の自宅に出向き支援を行います。

ただし、利用できる障害福祉サービスの内容は、「障害支援区分」により異なります。

「障害支援区分」とはその人に必要な障害福祉サービスの度合いのことで、主治医の意見書や市区町村の審査などにより決定されます。

まとめ

以上のことから、

・最重度知的障害は、知的障害者の中でも最も障害の程度が重い場合を指し、日常生活のあらゆる場面で支援が必要である。

・最重度知的障害は、「知的機能」と「適応機能」により判断され、主にIQ20未満で診断される。

・最重度知的障害のある人が受けられる支援や福祉サービスには、障害の状態によるが「重度訪問介護」や「重度障害者等包括支援」などがある。

ということが分かりました。

最重度知的障害のある方は、会話や日常動作など様々な場面で支援が必要であるほか、器質的な病気のある方も多いです。困ったことがあったらすぐにそれぞれの自治体や相談窓口に相談し、適切な支援やサービスを受け、本人や家族の負担をなるべく少なく過ごせることが大切ですね。