《福祉コラムVol.4》知的障害者の運動と体力

2022.08.03

知的障害は、記憶、言語、思考といった知的機能の発達の遅れがある障害です。しかし、知的障害のある人には、発達の遅れだけではなく、運動能力の遅れもある人が多く、肥満の割合が多いと言われています。今回は、 

  • 知的障害のある人の運動能力や体力に健常者との違いはあるのか?
  • 高齢になると体力や運動能力にどのような影響が出るのか?
  • 職業への影響はあるのか?
  •   

といったことお話しします。

知的障害者の体力や運動能力

まず、知的障害者の発育には健常者との違いがあるのでしょうか。

身長・体重といった体格面においては、ダウン症は早熟ですが、十分に発達しないケースが多くあります。しかし、知的障害児や自閉症スペクトラムにおいては体格は遅れることなく発達することが多いです。

知的障害のある人は、運動の理解が難しかったり、運動に対する意欲が低かったりすることから、子どもの頃に運動能力が伸びにくいということがあります。

普段、外を走り回ったりして自由に遊んでいる子どもでも、走り幅跳びやボール投げなど、課題としての運動場面では競技の意味やルールが理解しづらかったり、競争する意欲がもちにくかったりして、本来持っているはずの運動能力を発揮しにくいのです。

知的障害のある人には肥満の割合が多いと言われていますが、その原因には、間食が多いことや運動量が少ないことが関わっているようです。

スポーツ庁の「障害者スポーツ推進プロジェクト」では、日本人の成人の週1日以上のスポーツ実施率は53.6%で、知的障害者は23.9%でした。意欲的に普段から運動を行うのが難しいため、肥満になる確率が高くなるということでしょう。

では、知的障害者が年齢を重ねていくと、体力や運動能力にどのような変化が出てくるのでしょうか?

知的障害者が高齢になると体力や運動能力にはどのような差がでるのか

知的障害者は健常者と比べて全体的に体力が低く、加齢に伴う体力低下の程度も大きくなってきます。

福祉施設等で継続的な運動に参加している人は、肥満や生活習慣病のリスクが減りますが、特に、全身持久力、筋力、平衡機能等の低下は加齢による影響を受けるところが大きいようです。

また、知的障害者の中でも女性と男性によって運動機能の低下の程度に差があるようです。中高年になると、男性の方が身体機能の低下が大きくなることが分かっています。

知的障害者の体力や運動能力と職業について

知的障害者の方の職業で最も多いのは製造業です。続いて卸売業・小売業、医療・福祉、サービス業などです。

職業についている知的障害者の方の19.8%が正社員で、そのうちの65.5%が週30時間以上勤務しています。

知的障害のある18歳以上の方で、企業就労が困難な方が通所して簡単な作業などの職業を行いながら生活する場所を就労継続支援B型事業所といいます。ここでは、その事業所の利用者の実態に合わせて様々な作業内容がありますが、農作業、部品加工、手工芸、簡単な調理、パンや菓子などの製造・販売、データ入力などがあります。

業務の中で、重いものを運ぶことや、細かい作業をすることもあるので、体力や運動能力の低下は職業内容に大きく影響してくると言えます。

健常者の場合、50歳以降に体力・筋肉量ともに急激に低下しますが、知的障害者の場合は、40代以降に作業能力の低下が明らかになってくることが分かっています。持久力が低下してくると、疲れやすくなったり、集中が続かなくなったりといったことが起こります。長時間の作業や立ち作業が難しくなってきます。

まとめ

以上のことから、知的障害者の運動能力や体力に関しては、

  • 運動に対する理解の困難さや意欲のもちにくさから、運動能力が育ちにくい。
  • 健常者と比べて、体力が低く、加齢に伴う体力や運動能力の低下も大きい。
  • 職業においても加齢による筋力や持久力の低下により困難になってくる。
  •  

ということです。

子どもの頃から、定期的に運動することを習慣づけたり、食生活に気を配ることが大事ですね。また、障害者福祉サービス事業所によっては、体力トレーニングを定期的に行なっているところもあります。日々体を動かし、体力や運動能力の低下を少しでも遅らせることができるよう、留意したいですね。

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