《福祉コラムVol.34》知的障害は治る?治療や能力を伸ばす接し方について解説!
2022.10.25
発達期まで発症した知的機能の障害によって、認知能力や生活能力が一般的な水準と比較して遅れをとっている状態を、知的障害と定義します。
ただ物事を理解して考えるといったIQの低下のみならず、生きていくうえで大切な適応機能の障害や、自立生活を困難とするような障害が存在しています。
知的障害は発症原因の特定が難しいこともあり、障害が現れるタイミングや障害の重症度、症状も人それぞれであるため、個人に合わせた接し方や支援が求められる障害です。
近年は、知的障害者に対しての療育支援や入所施設も増えてきてはいるものの、支援自体はまだまだ不足しているのが現状です。
そこで今回は、知的障害が治るのかどうかということについて解説するとともに、障害の治療と療育について紹介していきます。
知的障害は治る?
知的障害者の基礎にある障害そのものを治すということは現代では難しいこととなります。
しかし適切な対応をしない場合は、知的障害による影響で症状が悪化したり、自立した生活が大きく遠のくケースもあるため、正しい環境下で療育を進めていくことで適応機能や生活能力は向上する可能性は十分あると考えられています。
また、子供のころに早期発見となった際には、適切な療育環境で生活をすることで長期的に見て障害が大きく改善する可能性が高いでしょう。
知的障害の予防方法
知的障害における一部の病的要因については、食事や薬物といった一般的な治療方法で発症を防げる場合があります。
一方で知的障害の発症原因の8割が不明と言われていることからも、事前の予防というものは難しく、現代の医学では完璧に予防するような方法は確立されていません。
完治する可能性
知的障害を完治することは現代医学では難しいとされています。
したがって完璧に障害を取り除くことが重要なのではなく、どのように付き合って生活し、どのような環境で対応していくかを考えることが大切です。
早期発見と適切な環境下での生活、できる限り困難を減らした上で個人としての能力を伸ばしていくことが、自立した社会生活を可能とします。
知的障害の治療のタイミングは?
知的障害の治療のタイミングというものは決まったものがなく、年齢や症状、重症度といった要素に応じて異なります。
また、ダウン症や自閉スペクトラム症などの合併症も治療のタイミングに影響を与える要素となります。
そのため、いつから始めるという基準は存在していませんが、身内だけでは対処できない症状や生活上の困りごとが出現する前に専門機関に相談して、できるだけ早期に治療をスタートすることが良いでしょう。
知的障害を根本から完治させる方法はないため、治療完了の判断も難しいものではありますが、早い年齢で治療や療育を始めることで対人能力や言語・運動能力、社会生活能力が向上し、将来的にも素晴らしい生活を送れる可能性が高くなります。
知的障害の治療法と療育方法について
知的障害者の能力向上においては発達支援などの療育が、非常に重要であると考えられています。
この療育というのは、障害を持つ子どもが将来的に自立した生活を送れるようにするための支援のひとつであり、児童福祉法に定められている公的に効果があるものとなります。
療育の特長としては、様々な障害やバックグラウンドを持つ子どもたちの特性や能力に応じて、幅広いサポートを実施するという点になります。
施設として確立されているということもあるため、療育を受けることができる施設に入るためには、専門とする病院を受診してから、各自治体で発行される受給者証を保持している必要があります。
療育が必要となる子どもは、服を着替えたり、トイレに行くといった、基本的な生活能力が欠けている場合があるため、日常生活に必要な各種能力を身に着けていくことで、どのような環境でも自立していけるように支援を行っていきます。
また、社会性やコミュニケーション能力といった対人的な能力が遅れていることが多いため、集団生活内で円滑なコミュニケーションが取れるようになることも、療育で重要となる部分です。
自立した生活能力と対人能力の向上により自己肯定感が高まるというのも大きな効果であり、療育によってできることが増えるに連れて、自信と自己肯定感が高まっていくでしょう。
知的障害の療育方法
療育は、発達に遅れが見られる知的障害を持つ子どもに対して、専門的な教育プログラムに則ったトレーニング、支援を行うというものになります。
所属した施設や障害のレベルによって異なるものの、具体的な療育方法としては、以下が挙げられます。
- 遊びを通した子ども間交流による、言語・運動・社会性の発達プログラム
- 食事・トイレ・着替えなどの生活トレーニング
- ひとりひとりに合わせた教育プログラム
- 知的障害の治療・検査(診療所が併設された施設のみ)
- 保護者向け相談会、家庭内トレーニング紹介、生活アドバイス
知的障害が重症ではない子どもの場合には、子供も親も他人と比較して自信を失ったり、精神的不安定に陥ってしまう場合もあります。
療育施設では、子どもへのあらゆる療育方法はもちろんのこと保護者の不安に寄り添った面もあるため、療育の時間を楽しいと感じる方も多く、早期の療育というのものは子ども本人以外の親や親戚にとっても大きな効果を発揮していると言えるでしょう。
薬物治療の可能性
ダウン症などの知的障害の原因になり得る症状に対しては、現在多くの研究が進められています。
2013年にはダウン症による知的能力を改善するための薬物投与による臨床試験が日本で始まったことからも、薬物治療は今後普及していくことが考えられます。
現時点では知的障害を根本から取り除く薬物治療はありませんが、将来的には効果が認められる方法として普及していくこととなるでしょう。
まとめ
知的障害を完全に治すことは難しいというものの、障害を持ちながらも社会生活を営んでいる方々は大勢存在しています。
療育や治療については早期に対応することが重要であるため、将来を見据えた迅速な行動が大切です。
今後も療育施設の重要性は増えていくことが考えられることからも、障害を持っていようとも一般的な自立した生活を送ることが当然の時代が近づいていると言えるでしょう。
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