《福祉コラムVol.41》発達障害と知的障害に違いはあるのかそれぞれの特徴についても解説!
2022.11.04
発達障害と知的障害は、同じ障害として認識されてしまうことも少なくありません。
時代の変化とともに、障害の名称が変わったり、新たな障害名として世の中に認知されたりと、混乱してしまうのも仕方がないことでもあります。
実際に、発達障害と知的障害は違いがあり、異なる障害として存在します。
では、実際に発達障害と知的障害とはどのような障害として定義され、それぞれの特徴や違いがあるのか解説していきます。
知的障害と発達障害の違いは?
発達障害と知的障害の違いは「知的発達に遅れがあるかどうか」によるものです。
2つの障害は明確に別々の障害として分類され、それぞれの特徴や違いがあります。しかし、分類上異なるというだけであって、広い意味での「精神障害」と括られて説明をされることもあります。これが、二つの障害の違いを混乱させる要因でもあります。
また、発達障害でありながら知的障害も併発している場合や、その逆の場合もあるため、それぞれの違いについて混同しやすいことも事実です。
ここでは発達障害と知的障害の定義に触れながら、その違いを明確に示していきます。
発達障害の定義
発達障害について、発達障害者支援法では次の通りに定義されています。
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」
脳機能の障害とあるように、先天的な生まれつきの障害であることも発達障害を知る上では大切な要素になります。
定義の通り、発達障害は大きく次の3つに分類されています。
- 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)
- 学習障害
- 注意欠陥多動性障害
これらは、3つの中でも併発する場合もあり、障害の診断をするのが難しいと言われています。それぞれの障害の特徴については後ほど詳しく解説していきます。
知的障害の定義
知的障害は次の通りに定義されています。
「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」
知的障害は、その判断基準として「知能検査によるIQの算出」「日常生活能力の水準値」この二つを基準に、「知的障害の程度の基準化」が行われます。
そして、知的水準と日常生活能力水準によって、「最重度-重度-中度-軽度」の4段階に分類されます。
発達障がいには知的発達による障害であることが明記されていないことから、二つの障害の根本の違いが分かるかと思います。
発達障害の特徴
発達障害が大きく3つに分類されることが分かりました。発達障害の理解を深めるためには3つの障害についてのそれぞれの特徴や違いについても整理することが大切です。一つずつ見ていきましょう。
広汎性発達障害の特徴
広汎性発達障害は、対人関係やコミュニケーションにおける困難さ、強いこだわりのある行動などが見られる症状をまとめた総称です。
特徴としては次のような困難さが考えられています。
社会性や対人関係の困難
- 一方的な関わりを求めてしまい上手く対人関係を気づくことが難しい
- 集団の中で協調性をもって行動することが難しい
コミュニケーションの困難
- 悪気がなくても相手に不快な思いをさせてしまう言動をとってしまうことがある
- オブラートに包んだり、言葉の行間を感じ取ったコミュニケーションが難しい
強いこだわりや想像性の困難
- その場の空気を読むことが難しい
- 先の見通しを想像することが難しい
- 決まったパターンや行動に対する強いこだわりがある
学習障害の特徴
学習障害は、日常の「話す」「聞く」のコミュニケーションは問題ないが、「読む」「書く」「計算する」が極端に苦手な障害です。
それぞれ、読字障害、書字障害、算数障害に分類されています。
例えば、次のような症状があげられます。
- 文字一つ一つは認識できるが文章としてスムーズに読むことができない
- 文字の複雑な形を認識してバランスよく書くことができない
- 簡単な計算が解けない、文章問題で何を問われているか分からない
知的障がいとは別の障がいであるため、周囲から理解されることが難しい障がいのひとつです。
注意欠陥多動性障害の特徴
注意欠陥多動性障害は、注意力がなくじっとしていられない、思いつくままに行動してしまうといったいくつかの特徴がある障害です。
例えば次のような症状があげられます
- 忘れ物がなくならない、すぐにものをなくしてしまう
- 集中が続かずにミスを繰り返してしまう
- 人の話をじっと聞くことができない
特徴の傾向によって、不注意が優勢とされる症状と多動・衝動性が優勢とされる症状、どちらのタイプも持ち合わせた混合型の3つに分類して考えられています。
最近では大人になってから診断を受ける「大人の発達障害」が広まっています。
知的障害の特徴
知的障害は先述した通り、軽度から最重度までに分類されます。
重症度によってその特徴もそれぞれ異なります。
代表的な例を重症度ごとにまとめて見ていきます。
軽度
- 文字を読んだり話したりすることができる。
- 金銭の概念を理解して買い物や家事も出来る
- 自分で計画を立てて行動することが苦手
- 記憶することや感情のコントロールが苦手
中等度
- 金銭の概念の理解や感覚は支援が必要
- 簡単な言葉や単純なコミュニケーションが取れる
- 自分での意思の決定や判断は難しい
重度
- 文字を読むことは難しい
- 短い語句や簡単な言葉であればコミュニケーションが取れる
- トイレや入浴、食事などの身辺自立は継続的な支援が必要
最重度
- 認知力が低いことで日常生活で常に支援が必要になる
- 身辺的な自立は難しく、トイレや入浴、身支度について常時支援が必要
- 言語コミュニケーションは難しいが、身振りや短い単語で伝わることもある
発達障害・知的障害者が利用できるサービス
発達障害者や知的障害者の生活を支えるためにいくつかのサービスが存在します。
代表的なものとして、障害者手帳制度と障害福祉サービスがあります。
これらを使うことで本人の安心したくらしの保証はもちろん、周囲の理解を促進する大切な制度やサービスとなっています。
障害者手帳制度
知的障害者は「療育手帳※」を、発達障害者は「精神障害者保健福祉手帳」を取得することができます。
この手帳を取得することで様々なサービスを受けることができるため、多くの方が取得することになります。
手帳は各市町村の障害福祉担当窓口に相談し、知的障害者としての判定を受けることで取得することができます。
※療育手帳は地方自治体によって手帳の名称が異なります。
手帳を保持していることで受けられる優遇やサービスには次のようなものがあります。
- 特別支援学校に入学できる
- 就職時に障害者雇用枠で応募ができる
- 所得税、住民税、自動車税などの控除や減免
- 公共交通機関の割引
- 各種料金の割引(NHKの受信料が半額など)
- 各種施設利用料等の割引(博物館や美術館、レジャー施設など)
手帳を取得することは生活をするうえで大きなメリットを受けることができるのです。
障害福祉サービス
障害福祉サービスは障害者が安心して暮らしていくために整備された幅広いサービスの総称で障害者総合支援法によって整備されています。
障害福祉サービスは主に介護給付と訓練給付に分かれており、さらに訪問系や日中活動系、施設系、就労系など細かく分類されていて、それぞれのニーズに合ったサービスを受給できる仕組みとなっています。
障害福祉サービス一覧はこちらです。
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 行援護
- 行動援護
- 療養介護
- 生活介護
- 短期入所
- 重度障害者等包括支援
- 施設入所支援
- 自立訓練(機能訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援(A型)
- 就労継続支援(B型)
障害福祉サービスは、手帳を取得していなくても市町村の障害福祉窓口でサービス需給の手続きをすることで利用することができます。
知的障害、発達障害といってもひとりひとりの特徴や暮らしの環境は異なります。それぞれが何を必要としているか、それらを満たす制度やサービスはどれか、複数の選択肢があることでより安心した暮らしに近づくことできると考えられます。
「制度のはざま」という言葉があるように、現状の制度やサービスで補えていない部分があるのも事実ですが、障がいに対する認知度や理解が深まっていく中で制度やサービスもさらに充実してくることが期待されます。
まとめ
発達障害と知的障害はどちらも先天的な障害である点は同じですが、「知的発達の遅れがあるかどうか」に違いがあります。
発達障害には広汎性発達障害や学習障害、注意欠陥多動性障害の3つの障害があり、知的障害は知的発達の重症度によって軽度から最重度に分けて考えられます。
また、別々の障害ではあるものの、二つの障害を併発する場合もありますので、それぞれの症状や特徴について把握しておくといいでしょう。
障害を抱えながら暮らしていく上では、マイノリティとして様々な障壁が社会には存在します。障壁を取り除き安心して暮らせるように、様々な制度や福祉サービスも日々整備されているのです。
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