知的障害の障害特性は一般の人でも当てはまることがあり、悩んでいる人もいるかもしれません。また自分の子どものことで悩んでいる方もいらっしゃると思います。ここでは、知的障害の特性や特徴を細かく解説していきます。
知的障害とは?
まず、知的障害の定義について解説していきます。
知的障害の定義
以下の三つの基準で社会生活において支援を必要としている状態を知的障害といいます。
・IQが70未満
・日常生活や社会生活で適応が難しい
・18才以下(発達期)で生じている
厳密には専門機関によって異なりますが、この三つは代表的な専門機関の基準で共通しています。
知的障害の原因
遺伝子や染色体などの異常があって起きる内的なものと、母体の感染症や外傷、薬物などによって起きる外的原因によるもの、周産期の出産トラブルによって低酸素や循環障害が起きたことによるもの、出生後、事故による頭部の外傷や、感染症、劣悪な養育環境や虐待などが原因になることがあります。
知的障害の遺伝
遺伝子的な原因のほとんどは、正常な遺伝子や染色体の突然異変によるものといわれています。遺伝子の突然変異は一定の発症率で誰にでも起こり得るものです。
知的障害の併存症
脳障害が原因で、知的障害に限らず、脳性マヒやてんかん、発達障害などの症状が一緒に発症する場合があります。
知的障害に多い合併症
・てんかん
・脳性マヒ
・ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
・ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)
・抑うつ障害群、双極性障害群 など
以上の項目は知的障害に多い合併症となっています。
てんかんや脳性マヒだと分かりやすく注意することができますが、
抑うつや双極性障害等の精神病にもかかりやすいので、周りの方の理解が必要です。
知的障害の特徴について
次に知的障害の障害特性を解説していきます。
話の趣旨が理解できない
難しい単語は分からないのはもちろん、早口だったり、色々なことを言われると分からなくなってしまいます。
ですので、短い言葉でゆっくり伝えたり、文字・写真・絵を使う事で伝える等がいいでしょう。
伝える事が不得意
知っている言葉が少ないので思っているように話せません。たくさんの事を話そうとしても、上手く説明出来なかったり途中で忘れたりしてしまいます。
ですので急かさずに話を待つことが大切です。選択肢を与える質問をすると分かりやすいでしょう。
状況にあわせて行動できない
複数の事を同時に行うことが難しく、混乱してしまうことがあります。いつもと違う出来事・人が居たりするとどうしていいのか分からなくなってしまい、上手く対応できない事もあります。
ですのでやるべきことをメモなどに書いて順番に伝えるといいでしょう。
知的障害の診断と判断基準について

知的障害の判断基準
知的障害には軽度・中度・重度・最重度に分かれており、IQ等で分けられます。
・軽度(IQ50~70)
・中度(IQ36~49)
・重度(IQ20~35)
・最重度(IQ19以下)
※専門機関によって若干違います。
またIQ70以下でも適応能力が高ければ、知的障害とみなされないこともあります。
適応能力とは
日常生活・社会生活に必要とされる能力が周りの同じ年齢の方と比較して、どの位、低いのかを基準にしています。具体的にいうと、数量や時間などの概念を理解する能力、対人関係におけるコミュニケーション能力、金銭管理や食事の準備など日常生活を過ごす上で必要となる能力などが挙げられます。
アメリカ精神医学会の『DSM-5』によると、適応能力には、以下の三つがあります。
・概念的領域
記憶、言語、読字、数量や時間などの概念を理解する能力
・社会的領域
対人コミュニケーションなどにおける能力
・実用的領域
日常生活における能力
その3つの能力の中で適切な行動をとるために支援が必要なことが1つでもあれば、適応能力が低い可能性があるといわれています。
知的障害の程度別解説
知的障害者の能力や特性は、個々人の生育歴や環境、療育や教育の成果等にもよるため、一律ではありませんが、一般的に障害程度別の状況は以下のとおりです。
・軽度
支援があれば文字や金銭を理解することができます。買い物・家事等も一人で出来るようになります。意思の疎通はパターン化されている事が多いので、他の人と比べると未熟です。
また、記憶・感情のコントロールは苦手です。
・中度
文字や金銭等は小学生レベルであり、常に支援が必要な状態です。買い物・家事等も1人で出来るようになるには時間が必要です。ただ、単純なコミュニケーションは出来ますが、判断や、意思決定をすることが難しいです。
・重度
文字や金銭を理解することが難しいです。食事や身支度などの日常的な行動は継続的な支援が必要です。身振りや、単純な単語・語句を区切ったコミュニケーションは可能です。
・最重度
認識できるものは目の前の物理的なものに限ります。常に支援が必要な状態です。食事や身支度や入浴など全ての行動で支援が必須です。身振りや、単純な単語・語句を区切ったコミュニケーションでも難しいことがあります。
知的障害を持っている方が利用できる福祉サービス

療育手帳
療育手帳は、児童相談所 又は 知的障害者更生相談所において「知的障害がある」と判定された方に交付される手帳です。国が定めたガイドラインに沿って、各自治体で判定基準や運用方法を定めて実施されています。
等級は「重度・中度」(A等級)と「軽度」(B等級)に区別されております。また、自治体ごとに違って、さらに細分化(A1、A2、B1、B2)されているところもあります。療育手帳の名前も自治体によって異なり、東京都では「愛の手帳」(等級は1度~4度)という名称で呼ばれています。
療育手帳が発行されると、障害者雇用への応募が可能になったり、公共料金の割引や助成金制度、税金の軽減など、受けられる可能性があります。
知的障害者更生相談所
18歳以上の知的障害のある方で日常生活・仕事などの相談や職業判定、療育手帳の判定・交付を行う場所です。都道府県や市に設置されていますので、日常生活や仕事で困ったことがあったら、まずはそこで相談してみると良いでしょう。
成年後見制度
日常生活を送る上で、賃貸や売買といった法的行為が必要になることもあります。その時の判断能力に不安がある場合、成年後見制度というサポートがあります。成年後見制度のサポート内容は、判断能力の程度に合わせて「補助人」「保佐人」「成年後見人」があります。
まとめ
知的障害者の障害特性には周りの方の理解が必要です。障害認定をされていない方でも、周りの方と上手くコミュニケーションがとれなかったり、ミスをしてしまうことがあります。また、知的障害の方は併存症で精神障害等も発症する場合があります。親御さんは社会制度や、支援機関等をチェックしてみるといいでしょう。また、そういった方を見かけた、または近くにいる場合は、周りの方も寄り添う努力が必要です。こういった障害特性があるということを理解していきましょう。
知的障害の方向けにたくさんの支援機関や制度等ありますので、そういった機関や制度を知ることが豊かな人生を作る足がかりとなると思います。1人で悩まずに支援機関に是非相談してみてください。
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